ブロック塀耐震診断
ブロック塀の耐震診断がしきりにいわれています。
ブロック塀の耐震診断でどのようなことがわかるのでしょうか。逆に言えばブロック塀に弱点があるからこそ、そこを調べるわけです。
ブロック塀が倒れる理由
- 基礎
- 鉄筋
- 劣化
この3点が問題になるわけです。
つまり
基礎がきちんとあるか
鉄筋がきちんとブロックの中にあるか
劣化していないか(鉄筋腐食)
を調べるということになります。
この3点がとても厄介なのが外から簡単にはわからないということです。
このことから大阪の高槻市ではブロック塀の耐震診断は不可能であると判断しています。
しかしながら安全であると判断できなくても、明らかに危ないブロック塀は判断できますので、一概に無意味というわけでもないと思われます。危ないブロック塀と認識された場合は早めの撤去と新設の塀をご検討してください。
[検査の前に]
そのブロック塀はいつ作られましたか?一般的な12cmのブロック塀は15年が耐用年数と言われています。15年以上たった塀は基本的に危険だと思ってください。
また、そもそも建築基準法施工令や建築学会基準を守って作られているブロック塀は現実的にほとんどありません。様々な研究データからおよそ8割のブロック塀に十分な基礎がありません。また、その他要因を含めますと90%以上の塀は基準に合致していないといわれています。
ブロック塀は基本的に安全なものが少ないという認識で、検査を実施されてください。
見た目での検査
- 傾いていないか
基礎・地盤・塀の壁そのものに問題があります >>> 明らかに危険です - ひび割れがないか
中の鉄筋がさびて膨張してブロックを押し割っていると思われます >>> 明らかに危険です。 - 錆汁がでていないか
中の鉄筋がさびている可能性があります。さびて細くなってしまうとその塀は簡単に折れます >>> 明らかに危険です - 高すぎないか
現行基準では2.2mが最大です。それ以上の場合は法律に違反している状態です。ブロック塀の事故から決められた基準ですので、やはり危険です。 - 控え壁はあるか
設置されているブロック塀があまりないと思うので意味がないような気がしますが、なければ当然NGです
。
控え壁よりも基礎と鉄筋、劣化が非常に重要です。
基礎
なんでも基礎が大事ですが、特にブロック塀は基礎が作られていないことが多くその有無は実は何よりも大事です。
しかしながら基礎があるかどうか調べるには実際に地面を掘らなければなりません。建築基準法施工令では基礎は35cmの高さで30cm地面の中に埋まっている必要がある、となっています。
ということですので、実際に掘って基礎が地面から30cm下までしっかりあるか確認してください。
その際にブロックを使った基礎はNGです。
普通のコンクリートで作られた基礎である必要があります。
そして地面の上に5cm以上基礎が出ているか確認してください。
鉄筋
見た目でわかるのは明らかに鉄筋が腐食している場合だけです。錆による錆汁、膨張によっての破裂です。
鉄筋の問題は奥が深く一概に言えませんし、鉄筋探査機を使ったとしても正確な状態がわかるわけでもありません。
特に大阪地震で問題になったのが、基礎と塀が一本の鉄筋でつながっていないブロック塀です。重ね継ぎ手と呼ばれる手法でジョイントされていますが、ブロック塀においては禁じられています。基礎から数10㎝鉄筋をだしブロックを積み鉄筋を重ね合わせる手法です。
また、鉄筋の端は抜けを予防するためにフック状にする必要がありますが、それも簡単にはわかりません。
つまり、錆汁があったり爆裂があったりすると大変危険、ということがわかりますが、これは年月が経ってからようやくこのようになります。
昨日作ったブロック塀の鉄筋がしっかりしているか、というのはわかりません。
劣化
結論から述べますと[検査の前に]に書いた通りなのですが、ブロック塀は耐用年数が15年ほどしか見込めません。そのため多くのブロック塀かなり老朽化した状態になっています。
ブロック塀はお手軽にできる大きな構造物ですが、鉄筋コンクリート構造となり複雑な仕組みです。
簡単に言うとコンクリートは強く長持ちしますが、特定の向きの力に弱いという弱点があります(引っ張り)。そこでその弱点を補うのが鉄筋となります。
鉄筋はその構造ががっちりなるために役立ちますが、弱点があります。それは寿命です。
鉄筋とコンクリートは相思相愛です。コンクリートの弱い引っ張られる力を鉄筋が補い、鉄筋が酸素・水に触れるとあっという間にさびてしまうのをコンクリートの強力なアルカリ成分と緻密な構造で守ります。
コンクリートそのものは200年以上かけ強度を増していきますが、鉄筋コンクリート作りは数十年が寿命とされています。これはコンクリートが酸性雨などで徐々に酸化し鉄筋を守る力が弱くなるためです。
また、様々な理由によりコンクリートそのものに微細なクラックがはいり、そこから水・酸素の侵入を許してしまうためです。
ブロック塀は鉄筋の保護がつぎのような理由で問題があります。
継ぎ目が多い
ブロックそのものが透水性がある
強度が弱い=セメント量が少ない=アルカリ分が少ない
(ブロック、モルタルとも)
モルタルの充填が必ずしも確実でない。
このようなブロック塀の根本的なところでブロック塀は寿命が短くなっています。
検査まとめ
高さがあまり高くなく、傾いておらず、ぐらぐらせず、年数があまりたっていない場合は危険ではないかもしれません。
しかしながらブロック塀はプライベートとパブリックの境目です。ブロック塀が倒れるのは基本的にパブリックな道路側です。これは敷地がほとんどの場合道路よりも高いことに起因すると思われます。
異常を感じた場合は、自治体に相談されできるだけ早く撤去、やり替えを行うようにされてください。
当社としては工場でつくる耐震コンクリート塀、塀のねっこをぜひおすすめさせていただきます。
耐震診断義務付けについて
2018年11月27日、いよいよ2019年1月1日から旧建築基準法で作られたブロック塀の耐震診断が義務づけられました。
対象となるのは避難路の沿道にある一定規模以上の既存耐震不適格のブロック塀等は、耐震診断が義務付けられます。
ブロック塀等が倒壊した場合に通行障害が生じることを防ぐため
ということです。もちろん直接的な被害の予防も含まれるでしょう。
道路に面する塀の長さが 25m以上(8mから25mの間で市町村長か知事が変更可能)
高さ
当該部分から当該前面道路の境界線までの水平距離に当該前面道路の幅員の2分の1に相当する距離※4を加えた数値を2.5で除して得た数値
*この距離とすることが不適当である場合、2m以上(高さ 2÷2.5=0.8m以上)の範囲において、都道府県知事又は市町村長が規則で定めることができる。
ちょっと難しいですが計算してみます。
一般的な道路の1車線あたりの幅が2.75mから3.5mということですので1車線3mと仮定します。
2車線道路の場合6mですね。
塀からすぐに道路とします。
その場合6m/2/2.5つまり1車線を2.5で割ります。
3m÷2.5=1.2mの高さ以上の場合耐震診断の義務が生じます。
注意事項を見ると高さ0.8m(ブロック4段)からおおよそ対象にしたい、ということなのでしょう。
もっとも厳格に適用した場合、長さ8m、高さ0.8mから対象です。数字的にはとても覚えやすいですね。
参考リンク
日本建築防災協会のブロック塀チェックのチラシ