ブロック塀における控え壁の役割

ブロック塀について調べれば調べるほど、法令で決められている控え壁の役割がなかなかわかりにくいと言うのが本当のところです。(1.2m以上のブロック塀に必要)

参考 [安全なブロック塀を作るルール]https://concretus.jp/blockwall-info/blockwall-rule/

控え壁は塀にT字状でつっかえ棒のような形状をしています。

書籍によると元々塀という物は柱があり、それに幕を張ったのがルーツであると書かれています。控え壁はその柱の役割と言うことのようです。

そもそもなぜ控え壁が必要となっているのでしょうか。日本建築学会の「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」では、ブロック塀は壁厚に対して長さが長いことがブロック塀の弱さであるといった意味合いが書かれています。

ペラペラの板が立っていて弱い、と言うことですね。

紙で考えるとわかりやすいかもしれません。1枚の紙はくにゃくにゃしてちゃんと立ちませんが、折り目をつけると自立します。

まずは動画をどうぞ!

控え壁を1カ所だけ作ったモデル。

自立できず支えを使う。

控え壁を2カ所作ったモデル。

自立する。

 

では、実際に控え壁がどのような役割をしているか考えてみましょう。

1,構造が強くなる
2,重心位置が変わる
3,つっかい棒となる

1,構造が強くなる
折り目のない紙ではペラペラで立たなかったのが、折り目を付けただけでしっかり自立するようになったのでわかり易いですね。

2,重心位置が変わる
3.4mおきに長さ(奥行)が0.4mの控え壁が来た場合7mm(9%)とわずかに敷地側に重心が移動します。

3,つっかいぼうとなる
動画を見ていただくとわかりますが、何をどうやっても控え壁がない方に転倒します。

「1,構造が強くなる」は純然たる強化となります。しかし、実際の地震の現場では控え壁がブロック塀と連結されておらずブロック塀は倒れるが控え壁だけが残るといった調査データが大分大学の菊池教授などの調査によって明らかにされています。

「2,重心位置が変わる」はわずかに敷地側に重心が移動するので、道路側への転倒の可能性を減少させます。

「3,つっかいぼうとなる」は地震でゆすられた塀が控え壁がつっかい棒として作用し、控え壁のない方、つまり道路側へ倒れる作用となります。

そもそも敷地はほとんどの場合道路より高くなっています。そしてそのちょうど境目に塀が位置します。これは土の圧力により塀には常に道路側へ倒れようとする力が働いていることを意味します。

1.ブロック塀の構造を強化する>>>「構造が強くなる」

2,敷地側に倒れようとする力>>>「重心位置が変わる」

3,道路側に倒れようとする力>>>「つっかい棒となる」

4,敷地のほうが道路より高い>>>「敷地側の土圧作用」

 

最後に4、が追加されてしまいましたが「つっかい棒」+「敷地側の土圧作用」が重心位置の移動より遥かに強くほとんどの場合控え壁があっても道路側の転倒を有効に防ぐことは難しいようです。

それならばなぜ、控え壁のことばかりマスコミは報道するのでしょうか。それはブロック塀の健全性について目視で判断できるところが控え壁ぐらいしかないからです。

最も重要なのは基礎と鉄筋であり、それらをしっかり工事したという前提で控え壁により剛性を増すことにより地震による振動増幅を防ぐことです。

控え壁なしですっきりとしたエクステリアを実現する 
コンクリートの守り壁 塀のねっこ