「塀」と検索すると「塀 DIY」がかなり上位に出てきます。おそらく多くの方が塀のDIYに取り組もうと思っているのだろうと思います。しかし、塀、特にブロック塀のDIYは次に述べる理由で非常に危険です。
ブロック塀は倒れると人を傷つけてしまう
2018年に発生した大阪地震は高槻市にある寿栄小学校のブロック塀倒壊事故を引き起こしました。 熊本地震でも震源地の益城町でブロック塀が倒れ、死傷者が発生しています。熊本地震では裁判になり争われました。大阪の寿栄小学校でもその責任が、施工者、管理者(学校)にあるのではないかとなってきているようです。
つまり、ブロック塀で誰かを傷つけた際は、その塀の持ち主、もしくは施工した人が責任を取らなければなりません。
ココで問題なのが、被害を負わせた際に保険が有効に活用されるかどうか、と言うことです。我々が独自に調査した範囲では、法令・基準に則り施工されたのであれば保険が出る可能性がある、と言うことです。逆に言えば法令・基準を遵守していない場合、保険の適用もされず持ち主が自分で損害賠償をする必要が出てくる可能性があります。
ブロック塀の基準
建築基準法施工令62条の6、8
建築学会 壁式構造関係設計基準週・同解説(メーソンリー編)
建築学会 既存コンクリートブロック塀の耐震診断指針(案)・同解説
ブロック塀問題は1978年の宮城県沖地震から
ブロック塀の問題は今始まった訳ではなく1978年の宮城県沖地震で多くの死傷者を出したことから、その問題が大きくクローズアップされました。
下のグラフは宮城県沖地震での被害者ですが、死者28名中ブロック塀での死者は17名と61%がブロック塀が原因。さらにブロック塀の被害は0歳から10歳の子供が47%と集中しています。
1978年宮城県沖地震による年齢別死者
死傷者の内ブロック塀が原因は61%
年齢 | 宮城県沖地震死者総数 | その他 | ブロック塀 が原因 | ブロック塀被害者年齢別比率 | 被害者の内 ブロック塀が原因 |
0-10 | 9 | 1 | 8 | 47% | 89% |
11-20 | 1 | 0 | 1 | 4% | 100% |
21-30 | 2 | 2 | 0 | 0% | 0% |
31-40 | 1 | 1 | 0 | 0% | 0% |
41-50 | 1 | 1 | 0 | 0% | 0% |
51-60 | 2 | 2 | 0 | 0% | 0% |
61-70 | 5 | 1 | 4 | 14% | 80% |
70-80 | 7 | 3 | 4 | 14% | 57% |
合計 | 28 | 11 | 17 | - | 61% |
ブロック塀は倒れると道路をつぶしてしまう
ブロック塀が倒れると道路にいる人に危害を加えます。
実は殆どのブロック塀が敷地側に倒れるのではなく、敷地の外、道路側に倒れてしまいます。
これには理由があって、殆どの宅地は道路よりも高くなっています。これは雨の時など道路に降った雨が敷地内に入るのを防ぐためです。
道路と敷地の境目に建っているブロック塀はその影響をもろに受けます。地震時にブロック塀が揺すられた際、敷地側は土が高いのでそちらには振れにくく、道路側は邪魔をする土が低い(少ない)のでそちらに多めに振られます。また、土そのものが通常時からブロック塀を押す力があり、地震時にはそれがさらに増幅されブロック塀を押します。
揺れ方と土圧により、ブロック塀は自然と道路側に倒れてしまいます。
ブロック塀は倒れると避難経路を潰してしまう
ブロック塀が道を塞ぐと、大切な避難経路にブロック塀のが倒れ込み大きな障害物となり避難の障害となります。
ブロック塀は倒れるとレスキューチームの道を塞いでしまう
避難経路を塞いでしまうだけでなく、消防車・救急車・パトカー・自衛隊車両の通行を完全に妨げてしまいます。
ブロック塀は寿命が短い
ブロック塀の寿命、耐用年数を皆さんご存じでしょうか。
ブロックの幅 | 耐用年数 |
10cm | 12年 |
12cm | 15年 |
かなり意外だったのではないでしょうか?
100年・200年住宅が持つことを目標としている現在、ブロック塀の寿命の短さは非常にアンバランスだとおもいませんか。
ブロック塀の基礎を作るのは大変
何でも大切な基礎。ブロック塀も勿論基礎が大事です。1978年の宮城県沖地震で多くの被災者を出して以降、基礎のスペックも厳しくなり下記のような複雑な仕様となっています。
ブロック塀に必要な基礎のスペック
基礎の決まり
項目 | 建築基準法施行令 | 建築学会基準 |
構造 | 鉄筋コンクリート(RC)構造 (ブロック不可) | 鉄筋コンクリート(RC)構造 (ブロック不可) |
形状 | 規定なし | I形基礎 L形基礎 逆T形基礎 |
基礎高さ | 35cm以上 | 別表 |
基礎地中部分 | 30cm以上 | 別表 |
基礎地上部分 | 指定なし | 5cm以上 |
基礎幅 | 明確な規定無し (ブロック壁体以上と考える) | ブロック壁体以上の幅であること |
鉄筋径 | 鉄筋径9mm | D10以上 |
鉄筋端部加工 | 端部フック加工し縦筋横筋へフックをかける | - |
鉄筋配置 | 基礎は横筋が必要+壁体から伸びる縦筋を横筋に鍵かけ(フック) | - |
ブロック塀の場合の塀高さ(m)と最小限根入れ深さ(mm)
塀の高さ(m) | 1.2 | 1.4 | 1.6 | 1.8 | 2.0 | 2.2 |
I形基礎 | 350 | 400 | 450 | 500 | – | – |
L形、逆T基礎 | 350 | 350 | 350 | 350 | 400 | 450 |
ブロック塀の鉄筋を作るのは大変
ブロック塀の高さと鉄筋間隔
控壁 | ブロック塀の高さ | 縦筋間隔(D10) | 縦筋間隔(D13) | 横筋間隔(D) |
付き | 1.6以下 | 800 | – | 800 |
1.6-2.2 | 400 | – | 800 | |
無し | 1.2以下 | 800 | – | 800 |
1.2-1.6 | 400 | 800 | 800 |
ブロック塀には控壁が必要
ブロック塀は今後規制が厳しくなる(取り壊しの可能性)
続きは随時追加していきます