石川県小松市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

小松市のがけは、第5条

小松市で、がけの近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

石川県小松市の「がけ条例」とは、小松市建築基準条例 第5条のことです。崖の近くに建てるときは、原則として崖から一定の距離を保つことが求められます。

先にすることは、3つです。がけの規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って小松市建築住宅課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は小松市内ですか。はい=小松市建築基準条例 第5条(がけ付近の建築物)ですがけからの距離については、小松市内では県条例ではなく市の条例で読みます——石川県建築基準条例第二条第1項が、建築主事を置く市町が法第40条・第43条第3項・第56条の2第1項の規定による条例を定めたときは、その市町の区域内では「この条例の関係規定は、適用しない」と定めているからです。ただし、災害危険区域(法第39条)の規定まで外れるとは、条文には書かれていません——県条例の災害危険区域の規定が残るかどうかは、市と県の両方に確かめてください。あとの節で書きます。②第5条は、勾配が30度を超える傾斜地で、高さが3メートルを超えるものを「がけ」とし、建築物はそのがけの下端(かたん=斜面の低いほうの足元)からがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならないと定めています。③義務の形は「離す」です——擁壁を設けなさい、という書き方にはなっていません。④下端から2倍以上が取れれば第5条については原則として建てられます。取れないときは、ただし書の3つの事由(がけの地盤が堅固/がけが堅固な擁壁等で保護/当該建築物の構造)により安全上支障がないと認められる場合に、同じく第5条については原則として建てられますこれは第5条の距離の条件の話で、建築の可否そのものが決まるわけではありません。⑤ただし、災害危険区域(第3条・第4条)・レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・建築基準法第19条第4項は、別に残ります。(条例・細則は2026年9月6日に原文と版を確認しました)。

小松市内なら、小松市建築基準条例 第5条です

小松市内なら、小松市建築基準条例 第5条です
小松市建築基準条例 第5条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という名前の条例はありません。小松市では、小松市建築基準条例(昭和58年3月22日条例第7号)の第5条(がけ付近の建築物)が、がけに近い建築物の決まりです。石川県建築基準条例の「関係規定」は、小松市の区域では適用されません——県条例第二条第1項が、建築主事を置く市町が法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においてはこの条例の関係規定は適用しない、と定めているからです。条文が書いているのは「この条例の関係規定は、適用しない」までで、「関係規定」がどこまでを指すかは、条文に定義されていません——「県条例の全部が外れる」とは書かれていません。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。がけからの距離について小松市内の土地を調べるときは、小松市の条文の数字で読んでください。

(適用の除外)
第二条 建築主事を置く市町が、法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においては、この条例の関係規定は、適用しない。

石川県建築基準条例 第二条第1項

小松市は、建築主事を置き、自分の建築基準条例を持っています。建築主事を置いていることは、市の規則と市のページから確かめられます——小松市建築基準法施行細則は、工事監理者届・工事施工者届・工事の取りやめ届の提出先を建築主事と定めています。小松市も自分のページで、確認が要る建築物について、建築主は工事着手前に建築主事の確認を受ける必要があるとし、申請窓口を市役所2階建築住宅課または民間の指定確認検査機関としています。小松市建築基準条例の第1条は、この条例が建築基準法第39条・第40条などに基づくものだと定めていて、がけの第5条は法第40条(地方公共団体の条例による制限の附加)による制限です。石川県も、小松市の建築確認の窓口として小松市都市創造部建築住宅課を自分のページに載せています。

(がけ付近の建築物)
第5条 建築物は,がけ(勾配が30度を超える傾斜地で,その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の下端からがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし,がけの地盤が堅固であり,若しくはがけが堅固な擁壁等で保護されており,又は当該建築物の構造により安全上支障がないと認められる場合は,この限りでない。

小松市建築基準条例 第5条

条文を探すときの、小さな注意です。小松市の条例は、読点に全角のカンマ「,」を使っています。そして「勾配」の「勾」には振り仮名(こう)が付いていて、市の例規集の画面では「勾こう配」と並んで見えることがあります。誤字ではありません——検索するときは「がけ」「勾配」の両方で当たってみてください。

そして第5条は、都市計画区域の外でも効きます。小松市建築基準条例には、都市計画区域の外に適用しない条を並べた第2条(適用の除外)がありますが、そこに第5条は入っていません——列挙されているのは第6条から第8条まで、第14条、第16条及び第18条です。都市計画区域の外だから外れる、という条文にはなっていません。小松市も自分のページで、都市計画区域外では第三号建築物の確認申請は原則として不要としつつ、土砂災害特別警戒区域内の居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有する建築物では確認申請が必要になると書いています——確認が要らないことと、条例が外れることは、別の話です。

どこからが「がけ」か——勾配30度超・高さ3メートル超。硬岩盤を除く定めはありません

「がけ」の意味は、第5条の括弧書きの中にあります。条件は2つ——①勾配(こうばい)が30度を超える傾斜地で、②その高さが3メートルを超えるもの。条文は「超える」なので、30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは当たりません

小松市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)を「がけ」から除く定めがありません。土質による除外も、自然の斜面か人が造ったのり面かの書き分けも、この括弧書きには書かれていません。「うちは岩だから外れる」とは、この条文からは読めません。土質は、がけに当たるかどうかではなく、次に出てくるただし書(がけの地盤が堅固)のほうで扱われる形になっています。勾配と高さの測定、土質の見分けは、建築士に見てもらってください。

同じ定義は、市の細則にも出てきます。小松市建築基準法施行細則 第2条第1号は、確認申請書に添える図書を、こう定めています。

(1) がけ(勾配が30度を超える傾斜地で,その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)に近接して建築するものである場合 建築物からがけの下端までの水平距離及び当該がけの形状,土質等を表示する図書

小松市建築基準法施行細則 第2条第1号

建築士に頼む図面は、この3つが軸になります——がけの下端から建築物までの水平距離がけの形状土質等。市は、確認申請書は正・副各1部(計2部)、建築計画概要書は1部と案内しており、細則に定められた図書のほかに必要な添付書類は建築住宅課へとしています。

距離の起点は「がけの下端」——上に建てても下に建てても入れ替わりません

上に建てても下に建てても、起点は下端です
上に建てても下に建てても、起点は下端です

第5条は、「がけの下端からがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」とだけ書いています。がけの上に建てるか下に建てるかで、起点を入れ替える書き方をしていません。がけの上に建てる場合も、がけの下に建てる場合も、測る起点は下端で、そこから水平距離でがけの高さの2倍。高さ4メートルのがけなら8メートル以上、高さ6メートルなら12メートル以上で、そこまで離せば第5条は満たせます

がけの上に建てるときが、間違えやすいところです。敷地から見えているのは上端の際で、下端は斜面の下——敷地の外や、他人の土地にあることもあります。それでも条文が測れと言っているのは下端からの水平距離です。市の細則が図書に求めているのも「建築物からがけの下端までの水平距離」です。図面では、断面を描いてがけの下端を平面に落としてから、下端からの距離を確かめてください。

測る先がどこか(外壁の外面か、柱の外面か、軒先か)を小松市が示した資料は、見つけられませんでした。市の条例と細則の本文には、その定めがありません。そこは建築住宅課に確かめてください

対象の建築物は、用途で絞られていません。条文は「建築物は,」で始まります——居室があるかどうか、住宅かどうかを問わない書き方です。倉庫でも車庫でも、建築物であれば当たります。ここでいう「建築」には、新築だけでなく増築・改築・移転も含まれます(建築基準法第2条第13号)。

下端から2倍以上を取れば、原則として建てられます(第5条)

道はあります。第5条が求めているのは距離を保つことで、一定の範囲の中なら擁壁を設けよ、という形ではありません。がけの下端から、2倍以上の水平距離が取れれば第5条については原則として建てられます「原則として」と書くのには、理由があります——2倍以上を取れば第5条の距離の義務は満たせますが、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。

そして2倍の距離が取れていても、それで安全の検討が終わるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりませんこの規定に、がけの高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます。

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(この条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

2倍が取れないとき——ただし書の3つの事由

2倍の距離が取れないとき、頼るのは第5条のただし書です。事由は3つ——①がけの地盤が堅固であること、②がけが堅固な擁壁等で保護されていること、③当該建築物の構造によること。このいずれかにより「安全上支障がないと認められる場合」に、距離の規定が外れます3つのどれかにより安全上支障がないと認められるなら、2倍が取れなくても第5条については原則として建てられます

ここは、読み間違えやすいところです。3つの事由のどれかに当たるだけでは、足りません。条文は「〔3つの事由〕により安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない」という形で、事由と「認められること」が重なっています。誰がどう認めるのかは、条文に書かれていません——小松市の第5条のただし書には、別個の許可の手続が明記されていません。確認申請の対象となる計画では、3つの事由のどれで安全上支障がないかを図書で示すのは設計する建築士で、原則として審査の中で適合性が確かめられます(確認の特例で、条例の規定の審査が省かれる場合があります(省かれるのは、特定行政庁が規則で定めた規定(とくていぎょうせいちょう=許可・認定や是正命令を受け持つ役所。建築主事等を置く市町村ではその市町村長、それ以外は都道府県知事)に限られます。令第10条第三号ハ・第四号ハ)——省かれても、適合の義務は残ります)。ただし書を使う計画は、着工前に建築住宅課へ確かめてください。市は申請・相談の受付時間を9時から12時とし、それ以外の時間を希望する場合は事前連絡を、と案内しています。

②の「堅固な擁壁等で保護されており」で通すなら、何をもって安全性を示すかを、建築士と先に決めます。既にある擁壁について、どの現況調査・計算書・許可の資料で示すかは、建築士が市と個別に協議することになります。古い石積みがあるから安心、ではありません。また、高さ2メートルを超える擁壁を新たに設けるなら、建築基準法施行令第138条第1項第5号により建築基準法第88条第1項による工作物としての確認の対象になり得ます——擁壁そのものの手続きが別に立ちます。擁壁を新しく設ける場合の技術基準を小松市が示した文書も、見つけられませんでした——そこも窓口へ。

災害危険区域(第3条・第4条)——居室のある建築物は、原則として建てられません

小松市建築基準条例は、第2章に災害危険区域を置いています。第3条は、建築基準法第39条第1項により災害危険区域として指定する区域を、急傾斜地崩壊危険区域及びこれに準ずる地域で市長が指定する区域としています。市長は、その区域を告示しなければなりません(第2項)。

(建築の制限)
第4条 災害危険区域内においては,居室のある建築物は,建築してはならない。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合で安全上及び避難上支障がないと認められるときは,この限りでない。
(1) 当該建築物の基礎及び主要構造部の構造が鉄筋コンクリート造り又はこれに類するものであるとき。
(2) 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条第3項に規定する急傾斜地崩壊防止工事の施行により,当該建築物が被害を受けるおそれがないとき。

小松市建築基準条例 第4条

禁止されるのは「居室のある建築物」です。「住宅」ではありません——事務所でも店舗でも、居室があれば当たります。例外は2つの号だけで、しかも号に当たるだけでは足りず、「安全上及び避難上支障がないと認められるとき」という条件が重なります。自分の土地が区域に入っているかどうかは、窓口で区域図に当ててもらってください

ここは、条文だけでは決められない箇所です。災害危険区域の該当が疑われる敷地なら、区域図と計画図を持って、小松市建築住宅課と、石川県土木部建築住宅課(076-225-1778)の両方へ——「この土地には、市と県の、どちらの災害危険区域の規定がかかりますか」と聞いてください。これを売買契約の前に済ませてください。

両方に聞くのは、条文だけでは決められないからです。県条例第二条第1項が県条例を外す条件として挙げているのは法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項の3つで、法第三十九条(災害危険区域)は入っていません。条文どおり読めば、小松市でも県条例の第三条・第四条は外れないように読めます。一方で小松市は、自分の条例で指定の仕組みを持っています。二重になるのか、県が小松市では指定しないのかは、条文からは決められませんでした——指定の告示と区域図は、この記事では確かめていません。

なお、急傾斜地崩壊危険区域内での切土・盛土・工作物の設置などは、条例とは別に、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第5条の距離を取っても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは石川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第5条のがけに当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第5条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です

小松市建築基準条例の現行本文を読んだ範囲では、レッドゾーンであることを理由にがけの規定を外す定めを、確認できませんでした——最終的な当てはめは、建築住宅課で確かめてください。条文のうえでは、レッドゾーンの中でも外でも第5条は同じようにかかり、レッドゾーンの中なら、その上に土砂災害防止法の規制が重なります。第5条は居室の有無を問わず建築物について判定し、令第80条の3は居室を有する建築物にかかります——両方を通すことになります。

レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます。小松市が自分のページに書いている「土砂災害特別警戒区域内において、居室を有する建築物の場合は、確認申請が必要となります」は、この仕組みのことです。「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません——ちょうど半分になる場合にどちらの規定によるかは、この記事では確かめられませんでした。窓口で個別に確かめてください)。

石川県内の指定は、県の石川県土砂災害情報システム(通称SABOアイ)で確認できます。市町村のハザードマップは避難の確認には有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります——境界と数値は、県が公表する指定の図書で確かめてください。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

レッドゾーンでどんな構造が求められるかは、土砂災害特別警戒区域で求められる構造にまとめています(区域に入るかどうかの判定と、この条例の当てはめは、上の窓口で確かめてください)。

既存の建物の増築・改築・用途変更——条例の側の緩和は、現行本文では確認できませんでした

小松市建築基準条例の現行本文を読んだ範囲では、既存不適格・仮設建築物・用途変更についての緩和の定めを、確認できませんでした——附則や改正附則の経過措置までは、この記事では確かめていません。確認できた範囲では、使えるのは建築基準法の側の仕組みです。増築・改築・用途変更を考えているなら、条例の側に別の定めがないかも含めて、建築住宅課に確かめてください。

①既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)——条例の規定の施行・改正のときに適法に存在し、その施行・改正によって適合しなくなった建築物等には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません(条例の全部が外れるという意味ではありません)。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません——この条例には届きません(同条第2項・第3項も同じです)。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築行政を行う市長や知事。原則として、建築主事等を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外では都道府県知事。ただし、限定特定行政庁の区域内の政令で定める建築物については都道府県知事です。法第2条第35号)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

②用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。がけの第5条だけでなく、災害危険区域内の第4条も対象です(居室のない倉庫を、居室のある用途に変える場合などに問題になります)。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用されます。号ごとに結論が違います——第1号(増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を伴う場合)は、法第3条第3項で判断します。第2号(政令で指定する類似の用途相互間で、修繕・模様替をしないか、それが大規模でない場合)は、その用途変更だけを理由に条例が遡って適用されることはありません。第3号は法第48条(用途地域)に関する例外で、がけの規定には関わりません。

③仮設・災害時——法第85条第2項は、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場その他これらに類する仮設建築物などについて、「第三十九条及び第四十条の規定並びに第三章の規定は、適用しない」と定めています(ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積50平方メートルを超えるものについては法第62条が適用されます)。第5条は法第40条による付加制限です。ただし、条文は「第四十条の規定」とだけ書いていて「同条に基づく条例の規定」とは書いていません——これに当たる仮設建築物に第5条が及ぶかどうかは、所管の窓口で確かめてください。また、特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、法第85条第1項の特例があります(ただし、防火地域内に建築する場合を除きます)。

罰金は原則、設計者に(建築主は故意のときだけ)。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

(罰則)
第19条 第4条から第17条までの規定に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施行した場合においては,当該建築物の工事施行者)は,50万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において,その違反が建築主の故意によるものであるときは,当該設計者又は工事施行者を罰するほか,当該建築主に対して同項の刑を科する。

小松市建築基準条例 第19条

がけの第5条は、罰則の対象です。条例第19条第1項が挙げる範囲は「第4条から第17条まで」で、がけの第5条も、災害危険区域の第4条も、どちらも入ります。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いないで工事を施行した場合工事施行者に替わります。額は50万円以下の罰金です。建築主に刑が科されるのは、違反が建築主の故意によるときに限られます(第2項)。条例第20条は両罰規定で、法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人にも同じ刑が科されます——ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意及び監督を尽くしたことの証明があった場合の、法人・人への刑に限られます(行為者への刑は残ります)。

是正命令は、建築主・所有者なども対象になり得ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例を守る義務は残ります。ここは、2つを分けて読んでください——①確認申請そのものが要らない場合と、②確認申請は要るが、確認特例(法第6条の4・施行令第10条)によって審査の一部が省略される場合は、別の話です。どちらの場合も、条例に適合させる義務そのものが消えるわけではありません。②で何が審査され、何が省略されるかは、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まりますが、小松市がこの規則で何を定めているかは、この記事では確かめていません——建築住宅課に「第4条・第5条は、確認の審査で見てもらえますか」と聞いてください。なお建築確認は、業務範囲に対応する指定確認検査機関にも申請できます(法第6条の2)——市も、提出先を市役所2階建築住宅課または民間の指定確認検査機関と案内しています。

窓口——小松市都市創造部建築住宅課です

  • 建築確認申請・条例第5条の当てはめ——建築住宅課(建築確認・省エネ・耐震)0761-24-8105石川県も、小松市の窓口としてこの課とこの番号を載せています。窓口は市役所2階、申請・相談の受付は9時から12時
  • 開発許可・建築確認・空き家の担当——建築住宅課 0761-24-8106(市の各課連絡先の一覧に載っている直通)
  • 災害危険区域の指定・県条例の適用——石川県土木部建築住宅課 076-225-1778市と県の両方に確かめてください
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(告示図書)——石川県。区域を指定するのは県知事です

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは小松市建築住宅課です。

  • ① その土地は小松市内か。小松市内なら、がけからの距離について読むのは小松市建築基準条例 第5条です(石川県建築基準条例は、その「関係規定」が適用されません。県条例第二条第1項)。災害危険区域(法第39条)については、県条例が残るかどうかを市と県の両方に確かめてください——県条例第二条第1項が外す条件に、法第39条は挙がっていません
  • ② 敷地の中や周りに、勾配が30度を超え、高さが3メートルを超える傾斜地があるか。30度ちょうど・3メートルちょうどは「超える」に当たりません。条文に硬岩盤を除く定めはありません
  • ③ 図面に「がけの下端」を落として測る。そこから水平に2倍取れているか。がけの上に建てても下に建てても、起点は下端です。高さ4メートルなら8メートル以上。測る先(外壁の外面か柱外面か)は建築住宅課に確認
  • ④ 2倍以上が取れれば、第5条については原則として建てられます。取れないなら、ただし書の3つの事由(地盤が堅固/堅固な擁壁等で保護/建築物の構造)のどれで示すかを決める。事由に当たるだけでは足りません——安全上支障がないと認められることまで要ります
  • ⑤ 確認申請に添える図書をそろえる。小松市建築基準法施行細則第2条第1号は、建築物からがけの下端までの水平距離がけの形状土質等を表示する図書を求めています
  • ⑥ 既存の擁壁で通すなら、資料と現況の確認から。許可の年月日・文書番号、検査済証等の資料、いまの排水・傾斜・ひび割れの状況を、市と協議して決めます。高さ2メートルを超える擁壁を新設するなら、令第138条第1項第5号・法第88条第1項の確認が別に立ち得ます
  • ⑦ 災害危険区域に入っていないか。入っていれば居室のある建築物は原則、建築できません(住宅に限りません)。例外は2つの号のいずれかに当たり、かつ安全上及び避難上支障がないと認められるときだけ。市と県の双方に、告示・区域図・適用条例を確かめてください
  • ⑧ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。SABOアイで当たりを付け、最終確認は石川県の告示図書で。レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら、令第80条の3の構造規制が別にかかります。レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら、確認申請の要否を窓口で確かめてください——都市計画区域の外で、ふだんは確認の対象にならない規模でも、土砂災害防止法第25条により確認が必要になり得ます敷地が区域の内と外にまたがるときは、区域との位置関係と敷地の過半も、あわせて窓口で見てもらってください——自分で判定するところではありません
  • ⑨ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例の側の緩和は、現行本文では確認できませんでした(附則・改正附則は確かめていません)。法第86条の7第1項はこの条例には届きません(届くのは第4項の移転と施行令第137条の16)
  • ⑩ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。都市計画区域の外でも第5条は効きます(第2条の列挙に第5条は入っていません)。違反すれば、条例第19条の罰則(50万円以下の罰金。原則、設計者)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます。確認申請は、指定確認検査機関にも提出できます(法第6条の2)
  • ⑪ 今の家が古く、がけの近く・災害危険区域・レッドゾーンにあるなら、移転や建て替えへの支援があるかどうかを、市に聞く。がけ地近接等危険住宅移転事業という制度があり、石川県のページでは事業主体が市町とされています——小松市で実施しているかどうかは、この記事では確かめていません。聞くのは4つ——①小松市で実施しているか ②対象になる住宅と対象者 ③対象になる費目と上限額 ④申請の時期(工事や契約の前に申請が要るか)

参考にした資料(2026年9月6日に原文と版を確認)

  • 小松市建築基準条例(小松市例規集・現行本文。第1条・第2条・第3条・第4条・第5条・第19条・第20条。昭和58年3月22日条例第7号。令和3年4月1日施行の版で、最終改正は令和3年3月5日条例第2号。2026年9月6日に沿革情報まで確認)
  • 小松市建築基準法施行細則(小松市例規集・現行本文。第2条第1号・第4条・第5条。昭和58年3月31日規則第15号。令和7年9月18日施行の版。2026年9月6日に確認)
  • 石川県建築基準条例(石川県例規集・第二条第1項・第三条・第四条。昭和49年10月8日条例第67号。令和7年4月1日施行の版で、最終改正は令和7年3月25日条例第17号。2026年9月6日に沿革情報まで確認)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条・第6条の2・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条。2026年9月6日にe-Gov法令検索で取得。現行の版=令和8年5月27日施行)

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