石川県七尾市のがけ条例——七尾市建築基準条例 第5条

七尾市のがけは、第5条

七尾市で、がけの近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。がけの規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って七尾市都市建築課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は七尾市内ですか。はい=まず読むのは、七尾市建築基準条例 第5条(がけ付近の建築物)です。石川県建築基準条例は、県条例第二条第1項が挙げる3つの条(法第40条・第43条第3項・第56条の2第1項)の関係規定が適用されませんただし、災害危険区域の第三条・第四条は法第39条に基づくもので、この3つに入っていません——あとの節で書きます。第5条だけを見れば済む、という意味ではありません。②第5条は、勾配が30度を超える傾斜地で、高さが3メートルを超えるものを「がけ」とし、建築物はそのがけの下端(かたん=斜面の低いほうの足元)からがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならないと定めています。③義務の形は「離す」です——擁壁を設けなさい、という書き方にはなっていません。④下端から2倍以上が取れれば第5条については原則として建てられます。取れないときは、ただし書の3つの事由(がけの地盤が堅固/がけが堅固な擁壁等で保護/当該建築物の構造)により安全上支障がないと認められる場合に、同じく第5条については原則として建てられますこれは、ただし書により第5条の距離の義務が適用されないという意味です——建てられるかどうかの全体が決まるわけではありませんただし書に当たるかどうかも、自分や設計者だけでは決められません——図面と資料を用意して、窓口で確かめる形になります。⑤ただし、災害危険区域(第3条・第4条)・レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・建築基準法第19条第4項は、別に残ります。(条例・細則は2026年9月5日に原文を確認しました)。

七尾市内なら、七尾市建築基準条例 第5条です

七尾市内なら、七尾市建築基準条例 第5条です
七尾市建築基準条例 第5条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という名前の条例はありません。七尾市では、七尾市建築基準条例(平成16年10月1日条例第229号)の第5条(がけ付近の建築物)が、がけに近い建築物の決まりです。石川県建築基準条例は、七尾市の区域では、その「関係規定」が適用されません——県条例第二条第1項が、建築主事を置く市町が法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においてはこの条例の関係規定は適用しない、と定めているからです。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。七尾市内の土地について調べるときは、七尾市の条文の数字で読んでください。ただし、外れるのは県条例の全部ではありません——第二条第1項が挙げているのは法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項の3つで、災害危険区域の根拠である法第三十九条は入っていません。県条例の災害危険区域(第三条・第四条)をどう扱うかは、あとの節で書きます。

(適用の除外)
第二条 建築主事を置く市町が、法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においては、この条例の関係規定は、適用しない。

石川県建築基準条例 第二条第1項

七尾市建築基準条例の第1条は、この条例が法第39条・第40条・第43条第2項・第56条の2第1項に基づくものだと定め、それぞれの中身として災害危険区域の指定と区域内の建築の制限/建築物の敷地・構造・建築設備に関する制限の付加/敷地と道路との関係に関する制限の付加/日影の対象区域の指定を並べています。がけの第5条は、このうち「制限の付加」=法第40条に当たります。石川県も、七尾市の建築確認の窓口として七尾市建設部都市建築課を自分のページに載せています。

(がけ付近の建築物)
第5条 建築物は、がけ(勾配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の下端からがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、がけの地盤が堅固であり、若しくはがけが堅固な擁壁等で保護されており、又は当該建築物の構造により安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。

七尾市建築基準条例 第5条

そして第5条は、都市計画区域の外でも効きます。七尾市建築基準条例には、都市計画区域の外に適用しない条を並べた第2条(適用の除外)がありますが、そこに第5条は入っていません——列挙されているのは第6条から第8条まで、第14条、第16条及び第18条です。都市計画区域の外だから外れる、という条文にはなっていません。

どこからが「がけ」か——勾配30度超・高さ3メートル超。硬岩盤を除く定めはありません

「がけ」の意味は、第5条の括弧書きの中にあります。条件は2つ——①勾配(こうばい)が30度を超える傾斜地で、②その高さが3メートルを超えるもの。条文は「超える」なので、30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは当たりません

七尾市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)を「がけ」から除く定めがありません。土質による除外も、自然の斜面か人が造ったのり面かの書き分けも、この括弧書きには書かれていません。「うちは岩だから外れる」とは、この条文からは読めません。土質は、がけに当たるかどうかではなく、次に出てくるただし書(がけの地盤が堅固)のほうで扱われる形になっています。勾配と高さの測定、土質の見分けは、建築士に見てもらってください。

同じ定義は、市の細則にも出てきます。七尾市建築基準法施行細則 第3条第1項第1号は、確認申請書に添える図書を、こう定めています。

(1) がけ(勾配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)に近接して建築するものである場合 建築物からがけの下端までの水平距離並びに当該がけの形状及び土質等を表示する図書

七尾市建築基準法施行細則 第3条第1項第1号

建築士に頼む図面は、この3つが軸になります——がけの下端から建築物までの水平距離がけの形状土質等。同じ細則の第3条第1項第3号は、法第86条の7による既存の建築物に対する制限の緩和を受ける場合に既存不適格調書(様式第2号)を添えることも定めています。

距離の起点は「がけの下端」——上に建てても下に建てても入れ替わりません

上に建てても下に建てても、起点は下端です
上に建てても下に建てても、起点は下端です

第5条は、「がけの下端からがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」とだけ書いています。がけの上に建てるか下に建てるかで、起点を入れ替える書き方をしていません。がけの上に建てる場合も、がけの下に建てる場合も、測る起点は下端で、そこから水平距離でがけの高さの2倍。高さ4メートルのがけなら8メートル以上、高さ6メートルなら12メートル以上で、そこまで離せば第5条は満たせます

がけの上に建てるときが、間違えやすいところです。敷地から見えているのは上端の際で、下端は斜面の下——敷地の外や、他人の土地にあることもあります。それでも条文が測れと言っているのは下端からの水平距離です。市の細則が図書に求めているのも「建築物からがけの下端までの水平距離」です。図面では、断面を描いてがけの下端を平面に落としてから、下端からの距離を確かめてください。

測る先がどこか(外壁の外面か、柱の外面か、軒先か)は、市の条例にも細則にも定めがありません。この記事が読んだ範囲では、測る位置を決められませんでした。図面を持って、都市建築課に確かめてください(市が別に示した資料があるかどうかも、あわせて聞いてください)。

対象の建築物は、用途で絞られていません。条文は「建築物は、」で始まります——居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)があるかどうか、住宅かどうかを問わない書き方です。倉庫でも車庫でも、建築物であれば当たります。ここでいう「建築」には、新築だけでなく増築・改築・移転も含まれます(建築基準法第2条第13号)。

下端から2倍以上を取れば、原則として建てられます(第5条)

道はあります。第5条が求めているのは距離を保つことで、一定の範囲の中なら擁壁を設けよ、という形ではありません。がけの下端から、2倍以上の水平距離が取れれば第5条については原則として建てられます「原則として」と書くのには、理由があります——2倍以上を取れば第5条の距離の義務は満たせますが、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。

そして2倍の距離が取れていても、それで安全の検討が終わるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりませんこの規定に、がけの高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます。

2倍が取れないとき——ただし書の3つの事由

2倍の距離が取れないとき、頼るのは第5条のただし書です。事由は3つ——①がけの地盤が堅固であること、②がけが堅固な擁壁等で保護されていること、③当該建築物の構造によること。このいずれかにより「安全上支障がないと認められる場合」に、距離の規定が外れます3つのどれかにより安全上支障がないと認められるなら、2倍が取れなくても第5条については原則として建てられます「認められる」かどうかを、自分や設計者だけで決めることはできません——図面と資料を用意して、窓口で確かめる形になります。見込みで着工できる、という意味ではありません。

ここは、読み間違えやすいところです。3つの事由のどれかに当たるだけでは、足りません。条文は「〔3つの事由〕により安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない」という形で、事由と「認められること」が重なっています。誰がどう認めるのかは、条文に書かれていません——七尾市の第5条のただし書には、別個の許可の手続が明記されていません。確認申請の対象となる計画では、原則として審査の中で適合性が確かめられます(確認の特例で、条例の規定の審査が省かれる場合があります(省かれるのは、特定行政庁が規則で定めた規定(とくていぎょうせいちょう=許可・認定や是正命令を受け持つ役所。建築主事等を置く市町村ではその市町村長、それ以外は都道府県知事)に限られます。令第10条第三号ハ・第四号ハ)——省かれても、適合の義務は残ります)。ただし書を使う計画は、着工前に都市建築課へ確かめてください。

②の「堅固な擁壁等で保護されており」で通すなら、何をもって安全性を示すかを先に決めます。既にある擁壁について、どの現況調査・計算書・許可の資料で示すかは、市と個別に協議することになります。古い石積みがあるから安心、ではありません。また、高さ2メートルを超える擁壁を新たに設けるなら、建築基準法施行令第138条第1項第5号により建築基準法第88条第1項による工作物としての確認の対象になり得ます——擁壁そのものの手続きが別に立ちます。擁壁を新しく設ける場合の技術基準は、市の条例と細則には書かれていません——建築基準法施行令第142条が、法第88条第1項で読み替えて準用する法第20条第1項の技術的基準として、腐食しない材料の構造・石造の裏込め・水抜穴・構造計算による安全性などを定めています。道は2つ書かれています——これらの基準に適合する構造方法か、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法かです。どの資料でそれを示すかは、市の都市建築課と協議してください。

災害危険区域(第3条・第4条)——居室のある建築物は原則として建てられません。例外は2つの号です

先に断っておきます。市と県のどちらの告示がその土地にかかっているかは、この記事では確かめていません——市の都市建築課と石川県土木部建築住宅課の両方に確かめてください

七尾市建築基準条例は、第2章に災害危険区域を置いています。第3条は、建築基準法第39条第1項により災害危険区域として指定する区域を、急傾斜地崩壊危険区域及びこれに準ずる地域のうち、市長が指定する区域としています。指定するときは、その旨と区域を告示しなければならず(第2項)、指定の解除と区域の変更にも、同じ告示の手続が準用されます(第3項)。

(建築の制限)
第4条 災害危険区域内においては、居室のある建築物は、建築してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合で安全上及び避難上支障がないと認められるときは、この限りでない。
(1) 当該建築物の基礎及び主要構造物の構造が鉄筋コンクリート造又はこれに類するものであるとき。
(2) 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条第3項に規定する急傾斜地崩壊防止工事の施行により、当該建築物が被害を受けるおそれがないとき。

七尾市建築基準条例 第4条

禁止されるのは「居室のある建築物」です。「住宅」ではありません——事務所でも店舗でも、居室があれば当たります。例外は2つの号だけで、しかも号に当たるだけでは足りず、「安全上及び避難上支障がないと認められるとき」という条件が重なります。自分の土地が区域に入っているかどうかは、窓口で区域図に当ててもらってください

ここに、条文だけでは決められない点が残ります。県条例第二条第1項が県条例を外す条件として挙げているのは法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項の3つで、法第三十九条(災害危険区域)は入っていません。条文どおり読めば、七尾市でも県条例の第三条・第四条は外れないように読めます。一方で七尾市は、自分の条例で指定の仕組みを持っています。どちらの条例による指定が、いまその土地にかかっているのかは、条文だけでは決まりません——市条例第3条第2項は、指定したときに告示しなければならないと定め県条例第三条第4項は、指定は告示によってその効力を生ずると定めています。どちらも、告示を見なければ、区域がどこかは分かりませんこの記事では、七尾市の区域についての告示を確かめていません。災害危険区域の該当が疑われる敷地なら、市の都市建築課と、石川県土木部建築住宅課(076-225-1778)の両方に確かめてください——区域図と計画図を持って行き、「この土地に、市と県のどちらの告示がかかっているか」を聞いてください。禁止の中身(居室のある建築物は原則禁止・例外は2つの号)は、市条例第4条も県条例第四条もほぼ同じ書き方です——どちらがかかっても、確かめることは同じです。

なお、急傾斜地崩壊危険区域内での切土・盛土・工作物の設置などは、条例とは別に、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第5条の距離を取っても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは石川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第5条のがけに当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第5条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です

七尾市建築基準条例は、第1条から第20条までと附則をあわせても短い条例です。この記事では、その全文を通して読みました——土砂災害特別警戒区域を理由にがけの第5条を外す条は、置かれていません(「土砂災害」「特別警戒」「第80条の3」の語も出てきません)。適用除外を定めた第2条が挙げているのも、第6条から第8条まで・第14条・第16条・第18条だけです。条文のうえでは、レッドゾーンの中でも外でも第5条は同じようにかかり、レッドゾーンの中なら、その上に土砂災害防止法の規制が重なります。第5条は居室の有無を問わず建築物について判定し、令第80条の3は居室を有する建築物にかかります——両方を通すことになります。

レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。敷地が区域の内外にまたがるなら、どちらに過半があるかは目測で決めず、区域図と敷地の図面で窓口に確かめてください。

石川県内の指定は、県の石川県土砂災害情報システム(通称SABOアイ)で確認できます。市町村のハザードマップは避難の確認には有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります——境界と数値は、県が公表する指定の図書で確かめてください。レッドゾーンに入っていたら、この記事の範囲では次の3つを確かめてください——①県の告示図書で区域の境界、②その計画に令第80条の3の構造規制がかかるか(居室を有する建築物か)、③建築確認が要る計画になるか(土砂災害防止法第25条)。どれも、図面を持って市の都市建築課と石川県に確かめます。構造の考え方の詳しいところと、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています——補助については、制度名・対象費目・上限額・受付時期を、市の担当課に確かめてください。

既存の建物の増築・改築・用途変更——条例の側に緩和の定めがありません

七尾市建築基準条例には、既存の建築物・仮設建築物・用途変更についての緩和や適用除外の条が置かれていません——全文(第1条から第20条まで、附則を含む)を通して読んで確かめました(「既存不適格」「仮設」「第85条」「用途変更」の語も出てきません)。適用除外の第2条が定めているのは、第6条から第8条まで・第14条・第16条・第18条を都市計画区域以外の区域には適用しないことだけで、がけの第5条も、災害危険区域の第4条も、そこに入っていません。条例の側に定めが無いので、ここから先は建築基準法の側の仕組みを見ることになります——ただし、実際に当てはまるかどうかは、条文を読んだだけでは決まりません。窓口で確かめてください。

①既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)——条例の規定の施行・改正のときに適法に存在し、その施行・改正によって適合しなくなった建築物等には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません(条例の全部が外れるという意味ではありません)。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません——この条例には届きません(同条第2項・第3項も同じです)。これは、書き落としではありません——同じ法律の第87条第2項・第3項は、準用するものとして「第39条第2項、第40条…の規定に基づく条例の規定」と、条例をはっきり名指ししています。条例を対象にするときは、そう書いてあります。第86条の7第1項には、その名指しがありません。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=許可・認定や是正命令を受け持つ側。原則として、建築主事等を置く市町村の区域ではその市町村の長、それ以外の区域では都道府県知事です。ただし、限定特定行政庁の区域内の政令で定める建築物については都道府県知事です。建築基準法第2条第35号)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

②用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。がけの第5条だけでなく、災害危険区域内の第4条も対象です(居室のない倉庫を、居室のある用途に変える場合などに問題になります)。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用されます。号ごとに結論が違います——第1号(増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を伴う場合)は、法第3条第3項で判断します。第2号(政令で指定する類似の用途相互間で、修繕・模様替をしないか、それが大規模でない場合)は、その用途変更だけを理由に条例が遡って適用されることはありません。第3号は法第48条(用途地域)に関する例外で、がけの規定には関わりません。

③仮設・災害時——法第85条第2項は、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場その他これらに類する仮設建築物などについて、「第三十九条及び第四十条の規定並びに第三章の規定は、適用しない」と定めています(ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積50平方メートルを超えるものについては法第62条が適用されます)。第5条は法第40条による付加制限なので、同項が法第39条・第40条を適用除外に挙げている結果として、がけの第5条も、災害危険区域の第4条も適用されませんただし、法第85条第2項は列挙した規定を外す制度であって、条例の全部を外すものではありませんそして、当てはまるかどうかは、用途・建てる期間・建てる主体・防火地域かどうか・延べ面積といった要件しだいです——この5つを整理して、建築士か都市建築課に確かめてください。また、特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、法第85条第1項の特例があります(ただし、防火地域内に建築する場合を除きます)——同項が適用しないとする「建築基準法令の規定」とは、法・命令とあわせて条例の規定をいうと定義されています(法第6条第1項)。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

罰則と是正命令は、来る相手が違います

第19条 第4条から第17条までの規定のいずれかに違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施行した場合においては、当該建築物の工事施行者)は、50万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において、その違反が建築主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施行者を罰するほか、当該建築主に対して同項の刑を科する。

七尾市建築基準条例 第19条

がけの第5条は、罰則の対象です。第19条第1項が挙げる範囲は「第4条から第17条まで」で、がけの第5条も、災害危険区域の第4条も、どちらも入ります。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いないで工事を施行した場合工事施行者に替わります。額は50万円以下の罰金です。建築主に刑が科されるのは、違反が建築主の故意によるときに限られます(第2項)。第20条は両罰規定で、法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人にも同じ刑が科されます——ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意及び監督を尽くしたことの証明があった場合の、法人・人への刑に限られます(行為者への刑は残ります)。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます(七尾市がこの規則で何を定めているかは、市の規則を見なければ分かりません——都市建築課へ)。なお建築確認は、業務範囲に対応する指定確認検査機関にも申請できます(法第6条の2)——その場合の相談先は、まずその機関へ。

窓口——七尾市建設部都市建築課です

  • 建築確認申請・条例第5条の当てはめ——建設部都市建築課 建築行政グループ 0767-53-8429(直通)。建築確認申請、建築物・昇降機等の定期調査報告、道路位置指定などを所管します。石川県も、七尾市の窓口としてこの課と番号を載せています
  • 都市計画・景観の相談——建設部都市建築課 都市計画・景観グループ 0767-53-8469(直通)
  • 災害危険区域の指定・県条例の適用——石川県土木部建築住宅課 076-225-1778市と県の両方に確かめてください
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(告示図書)——石川県。区域を指定するのは県知事です

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは七尾市都市建築課です。

  • ① その土地は七尾市内か。七尾市内なら、まず読むのは七尾市建築基準条例 第5条です(石川県建築基準条例は、第二条第1項が挙げる法第40条・第43条第3項・第56条の2第1項の関係規定が適用されません)。県条例の災害危険区域(第三条・第四条)は法第39条に基づくもので、その3つに入っていません——⑦で市と県の両方に確かめます
  • ② 敷地の中や周りに、勾配が30度を超え、高さが3メートルを超える傾斜地があるか。30度ちょうど・3メートルちょうどは「超える」に当たりません。条文に硬岩盤を除く定めはありません
  • ③ 図面に「がけの下端」を落として測る。そこから水平に2倍取れているか。がけの上に建てても下に建てても、起点は下端です。高さ4メートルなら8メートル以上。測る先(外壁の外面か柱外面か)は、配置図・断面図を持って「第5条の水平距離は、建物側のどこまで測る扱いですか」と都市建築課に確認
  • ④ 2倍以上が取れれば、第5条については原則として建てられます。取れないなら、ただし書の3つの事由(地盤が堅固/堅固な擁壁等で保護/建築物の構造)のどれで示すかを決める。事由に当たるだけでは足りません——安全上支障がないと認められることまで要ります
  • ⑤ 確認申請に添える図書をそろえる。七尾市建築基準法施行細則第3条第1項第1号は、建築物からがけの下端までの水平距離がけの形状土質等を表示する図書を求めています
  • ⑥ 既存の擁壁で通すなら、資料と現況の確認から。許可の年月日・文書番号、検査済証等の資料、いまの排水・傾斜・ひび割れの状況を、市と協議して決めます。高さ2メートルを超える擁壁を新設するなら、令第138条第1項第5号・法第88条第1項の確認が別に立ち得ます
  • ⑦ 災害危険区域に入っていないか。入っていれば居室のある建築物は原則、建築できません(住宅に限りません)。例外は2つの号のいずれかに当たり、かつ安全上及び避難上支障がないと認められるときだけ。市と県の双方に、告示・区域図・適用条例を確かめてください
  • ⑧ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。SABOアイで当たりを付け、最終確認は石川県の告示図書で。レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら、令第80条の3の構造規制が別にかかります。居室を有する建築物法第6条第1項第1号又は第2号に掲げるものを除く)をレッドゾーン内で建てるなら、都市計画区域の外でも、土砂災害防止法第25条により建築確認が必要になります(第25条は法第6条第1項第3号に規定する区域を対象から除いています)。敷地が区域の内外にまたがるときは、第25条が適用する法第91条により、敷地の過半の属する区域の規定によることになります——どちらに過半があるかは目測で決めず、区域図と敷地の図面で窓口に確かめてください
  • ⑨ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例の側に緩和の定めはありません。法第86条の7第1項はこの条例には届きません(届くのは第4項の移転と施行令第137条の16)
  • ⑩ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。都市計画区域の外でも第5条は効きます(第2条の列挙に第5条は入っていません)。違反すれば、条例第19条の罰則(50万円以下の罰金。原則、設計者)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます。確認申請は、指定確認検査機関にも提出できます(法第6条の2)
  • ⑪ 今の家が古く、がけの近く・災害危険区域・レッドゾーンにあるなら、がけ地近接等危険住宅移転事業を市に聞く。石川県のこの事業は事業主体が市町です——七尾市で実施しているかどうかを、この記事では確かめていません実施していない可能性もあります。都市建築課に、①担当課はどこか ②いま実施しているか ③対象になる住宅と費目 ④上限額 ⑤受付時期 ⑥必要書類を、この順で聞いてください

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

  • 七尾市建築基準条例(七尾市例規集・現行本文。第1条・第2条・第3条・第4条・第5条・第19条・第20条。平成16年10月1日条例第229号。最終改正は平成30年3月23日条例第25号で、平成30年4月1日施行の版。2026年9月6日に沿革情報まで確認)
  • 七尾市建築基準法施行細則(七尾市例規集・現行本文。第3条第1項第1号・第3号。平成16年10月1日規則第170号。最終改正は令和7年9月30日規則第37号で、令和7年9月30日施行の版。2026年9月6日に沿革情報まで確認)
  • 石川県建築基準条例(石川県例規集・現行本文。第二条第1項・第三条・第四条。昭和49年10月8日条例第67号。最終改正は令和7年3月25日条例第17号で、令和7年4月1日施行の版。2026年9月6日に沿革情報まで確認)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条・第6条の2・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第5条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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