「うちの土地、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)だった」——最初に、答えを3つ。①住み続けられなくなる区域ではありません(区域に指定されたことだけで住めなくなる仕組みではありません——ただし、危険が大きいと認められる場合の「移転等の勧告」の制度は別にあります。後述します)。②区域指定だけで、すべての建築が一律に禁止されるわけではありません(居室のある建物には構造の規制があります。また、都市計画法の開発許可を要する場合、主として、開発行為を行う者自身の居住の用に供する住宅の建築を目的とする開発行為以外の開発行為は、原則としてレッドゾーンを開発区域に含められません——同法第33条第1項第8号。ただし書の例外があります)。③構造の規制への対応は、大きく2つ——建物側で受けるか、門・塀で遮るか(どちらも条文の要件があります——本文で見ます)。そして改修や移転には、自治体が制度を実施していれば補助を使えることがあります。この記事は、その順に整理します(条文は2026年8月28日にe-Gov法令検索で確認しました)。

まず、イエローのみか、レッドも重なるか——構造規制の有無が違います
土砂災害防止法の区域は2段階です。土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は、警戒避難体制を特に整備すべき区域(同法第7条)——避難の情報やハザードマップの整備が中心で、警戒区域のうちレッドゾーンが重なっていない部分には、この記事で扱う構造の規制はかかりません。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、警戒区域のうちから、土砂災害が発生した場合に建築物に損壊が生じ、住民等の生命・身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域を指定したものです——イエローとレッドの二者択一ではなく、レッドの場所はイエローでもあります。
第九条 都道府県知事は、基本指針に基づき、警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限及び居室(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
土砂災害防止法 第9条第1項・第2項
2 前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域並びにその発生原因となる自然現象の種類及び当該自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に関する事項(土砂災害の発生を防止するために行う建築物の構造の規制に必要な事項として政令で定めるものに限る。)を定めてするものとする。
第2項が、この制度の肝です。指定は、土砂災害の原因(急傾斜地の崩壊・土石流・地滑り)ごとに、区域だけでなく「建築物に作用すると想定される衝撃に関する事項」——土石等の高さや力の大きさ——を定めてされます。つまり規制の仕組みは全国共通、受け止めるべき数字は計画地点・区分ごとです。計画地点にかかる数字——条文の用語では「土石等の高さ等」「最大の力の大きさ等」(自然現象の種類や指定の区分で、示される項目が変わります)——は、都道府県が公表する指定の図書(公示図書)で確かめられます(市町村のハザードマップは、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります)。なお、住居の建築が制限される「災害危険区域」(建築基準法第39条に基づき自治体が指定)とは、別の制度です——レッドゾーンの指定だけで、すべての建築が一律に禁止されるわけではありません(都市計画法・災害危険区域・地方公共団体の条例などにより、開発や建築が制限される場合があります)。
いま住んでいる人へ——「直ちに違反」ではありません。ただ、土砂は待ちません
区域の指定の際に現に存する建物や、現に建築・修繕・模様替えの工事中の建物が、後で述べる構造の規制(建築基準法施行令第80条の3)に適合しなくなった場合は、この規定について、建築基準法第3条第2項の適用除外(いわゆる「既存不適格」)となることがあります——指定されたことだけで違反建築物になったり、改修の義務が自動的に生じたりするとは限りません。ただしこれは後から適用された規定=第80条の3についての扱いで、建物全体がほかの規定にも適法であることを保証するものではありません。増築・改築などを行うときの適用は、別に確認が必要です。
ただし、2つのことは知っておいてください。ひとつは、移転等の勧告の制度があることです。
第二十六条 都道府県知事は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には特別警戒区域内に存する居室を有する建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれが大きいと認めるときは、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対し、当該建築物の移転その他土砂災害を防止し、又は軽減するために必要な措置をとることを勧告することができる。
同法 第26条第1項
この勧告をした場合に必要があると認めるときは、知事は、勧告を受けた人に対し土地の取得についてのあっせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定められています(同条第2項)。
もうひとつは、規制の扱いがどうであれ、その区域で想定されている土砂の衝撃そのものが消えるわけではないことです。規制の話と、安全の話は別です。住み続けるなら、次の「守り方」の検討は早いほうに利があります——そして後で述べるとおり、第80条の3について既存不適格となる建築物は、自治体が制度を実施していれば、対策改修の補助を使えることがあります。
これから建てる・買う人へ——一律禁止ではありませんが、構造規制と開発・立地の制限を確かめる区域です

レッドゾーン内で居室のある建物(「居室」は、居住・執務・作業など継続的に使用する部屋のこと〔建築基準法第2条第4号〕。住宅に限らず、事務所・店舗も入り得ます)を建てる場合、後述の構造規制(施行令第80条の3)を満たす設計が必要です。建築確認の要否と、この規制が確認審査の対象になるかは別です——確認申請が不要な場合や、建築物・設計者の区分により関係図書の添付・審査が省略される場合でも、適合の義務はなくなりません。設計者が告示等への適合を確保し、必要に応じて所管の行政庁・指定確認検査機関と事前に協議します。また、建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域の外で、同項第1号・第2号に当たらない居室を有する建築物でも、建物の全部または一部がレッドゾーン内にあり、かつ敷地の過半がレッドゾーン内にある場合は、土砂災害防止法第25条により同項第3号が適用され、建築確認が必要になります。敷地の過半がレッドゾーン内でなければ——レッドゾーン部分がちょうど半分の場合を含めて——第25条による追加の確認対象にはなりません(建築基準法第6条など他の規定で確認が必要になる場合は別です)。そして確認の要否にかかわらず、レッドゾーンにかかる建物の部分には第80条の3の構造規制が適用されます(行政の案内)——「確認が要らない」と「構造規制がない」は別です。また、区画形質の変更を伴う開発行為で、レッドゾーン内に建築が予定されている建築物の用途が制限用途——住宅(自己の居住の用に供するものを除く。分譲住宅・賃貸住宅など)と、高齢者・障害者・乳幼児など特に防災上の配慮を要する人が利用する社会福祉施設・学校・医療施設のうち政令で定めるもの——であるもの(特定開発行為)には、都道府県知事の許可が必要です(土砂災害防止法第10条第1項。権限の移譲により市区町村長等が許可権者になっている地域があります——たとえば新宿区では2026年4月1日から区の許可です。実際の申請先は所在地の自治体で確認してください。開発区域がレッドゾーンの内外にまたがる場合、レッドゾーン外に建築が予定されている建築物は「予定建築物」から除かれます——区域外に建築予定といえるかは、敷地・配置図等をもとに許可権者側が確認するので、計画段階で窓口に確かめてください。また、用途が未定など、予定建築物が制限用途以外の用途であることが確定していない場合も、制限用途に含まれます(第2項が制限用途を、列挙した用途「以外の用途でないもの」と定めているためで、公的な手引きも用途未定の建築物は制限用途に該当すると整理しています)。ただし書により、非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築を目的とする開発行為は除かれます——同法施行令第5条)。レッドゾーンの指定の際、既にその区域内で特定開発行為に着手していた場合は、この許可ではなく指定の日から起算して21日以内の届出が必要で(同法第14条第1項。第10条第1項ただし書の行為を除きます)、届出の後、予定建築物の用途の変更その他の必要な助言・勧告が行われることがあります(同条第2項)。国又は地方公共団体が行う特定開発行為は、許可権者との協議の成立をもって許可を受けたものとみなされます(同法第15条)。そして許可を受けた後も、開発区域のうちレッドゾーン内の土地では、対策工事等の完了検査を経て完了の公告(同法第18条第3項)があるまで、制限用途の建築物は建築できません(同法第19条)。開発行為を行う人自身が住むための家は、この許可の「制限用途」には当たりません——「自己の居住の用」とは開発行為を行う主体みずからが住むことをいい、事業者が建てて売る分譲住宅や、貸すための住宅・社宅・寮などは、入居する人が住むものであっても当たりません(鹿児島県のFAQ等)。ただし、構造の規制のほか、都市計画法の開発許可や市街化調整区域の立地規制、災害危険区域など、別の許可・制限が掛かることがあります。
このほか、がけの近くでは、地方公共団体の建築基準条例等、いわゆる「がけ条例」(がけからの距離や擁壁の規制)が並んでかかることがあります。中身は都道府県や市で異なり、同じ県内でも所管する自治体によって違う場合があります——当サイトの県別の記事で扱います。なお、特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、災害で破損した部分の応急修繕(着手時期を問いません)や、所定の応急仮設建築物の工事に災害発生の日から1か月以内に着手する場合に、建築基準法第85条第1項の適用除外があります——応急仮設建築物を防火地域内に建築する場合は除かれます。
第80条の3への建築上の対応は2つ——建物で受けるか、門・塀で遮るか

構造規制の中身を見ると、対策の道筋が見えてきます。規制の対象は、外壁の全部と一律に決まるものではありません——土石等の高さ等以下で、衝撃が作用すると想定される外壁・構造耐力上主要な部分が対象で、その範囲は計画ごとに異なります。
(土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)
建築基準法施行令 第80条の3本文(定義の括弧書き等を略)
第八十条の三 (略)土砂災害特別警戒区域(以下この条及び第八十二条の五第八号において「特別警戒区域」という。)内における居室を有する建築物の外壁及び構造耐力上主要な部分(当該特別警戒区域の指定において都道府県知事が(略)定めた土石等の高さ又は土石流の高さ(略)以下の部分であつて、(略)により衝撃が作用すると想定される部分に限る。(略)「外壁等」という。)の構造は、(略)当該自然現象により想定される衝撃が作用した場合においても破壊を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。
型1:家で受ける。対象になるのは、知事が定めた「土石等の高さ等」以下で、土砂災害の原因となる自然現象(河道閉塞による湛水を除きます)により衝撃が作用すると想定される部分(外壁等)だけです。その部分を、指定において定められた力の大きさ等・高さ等に応じて、衝撃で破壊を生じない構造(国土交通大臣が定めた構造方法=平成13年国土交通省告示第383号)にします。新築なら、設計の段階からこの規制を前提にして設計する型です。
型2:塀で受ける。同じ条文のただし書に、もう一つの道が書いてあります。
ただし、土石等の高さ等以上の高さの門又は塀(当該構造方法を用いる外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものに限る。)が当該自然現象により当該外壁等に作用すると想定される衝撃を遮るように設けられている場合においては、この限りでない。
同条ただし書
土石等の高さ等以上の高さの門・塀が、外壁等と同等以上の耐力をもち(大臣が定めた構造方法によるものに限ります)、想定される衝撃を遮るように設けられているなら、その門・塀によって衝撃が遮られる外壁等について、本文の構造方法を用いる義務がなくなります(門・塀を一つ設ければ建物全体で規制が外れる、という意味ではありません)。ここでいう門・塀は一般的な境界塀ではなく、告示所定の仕様または構造計算により必要な耐力を確保したもので、告示の仕様規定による場合は防護壁と建物の基礎を一体化させる必要があるとされています(行政の案内)。つまり——建物側の外壁等を所定の構造にする代わりに、告示に適合する門・塀で衝撃を遮る。いま住んでいる家の外壁改修が大がかりになる場合や、窓・玄関など開口部の多い面を守りたい場合に、候補になる型です。なお、これらの構造対策は、避難や移転、斜面側の対策工事を不要にするものではありません。
どちらの型でも、設計の出発点は同じです。計画地点に示された「土石等の高さ等」と「最大の力の大きさ等」を、都道府県の指定図書(公示図書)で確かめること——その数字を出発点に、壁や塀に必要な高さ・耐力を建築士と検討します。確認申請の要否や審査の範囲にかかわらず、設計者が第80条の3・告示第383号等への適合を確保し、必要に応じて所管の行政庁・指定確認検査機関と事前に協議します。
お金の話——「外壁の改修・塀の設置等」への補助の枠組みがあります

国の「住宅・建築物安全ストック形成事業(土砂災害関係)」には、「土砂災害対策改修事業」という支援メニューがあります(2026年8月29日に確認した国の資料では、レッドゾーン内で第80条の3について既存不適格の建築物が対象。補助率23%〔うち国費11.5%〕・補助対象限度額420万円/棟——420万円は補助金額の上限ではなく、補助率を掛ける対象事業費の限度です。実施例では、名古屋市が「改修工事費の23パーセントかつ上限96万6千円」——ちょうど420万円×23%——としています)。これを活用して、自治体が改修への補助制度を実施している場合があります——対象になる工事の例として、外壁側の改修や、防護壁(門・塀)の設置が国の資料に示されています。ただし、実施の有無・名称・補助率・限度額・対象工事は自治体ごとに異なり、年度によっても変わります。このほか、移転を支援する系統の制度(がけ地近接等危険住宅移転事業)を設けている自治体もあります。お住まいの市町村の窓口(建築・防災の担当課)で、今年度の制度を確かめてください。当サイトでも、県別の情報を順次整理しています。
いま、確かめておくこと

- ① 区域と数字——都道府県の公示図書で。計画地・自宅がイエローのみか、レッドも重なるか。レッドも重なるなら、計画地点に示された土石等の高さ等・最大の力の大きさ等はいくつか(都道府県が公表する指定の図書で。ハザードマップは作成時点より後の指定が反映されていないことがあります)
- ② 自分の局面——建築士と。いま住んでいるなら、既存不適格の扱いと、改修(建物側で受けるか、門・塀で遮るか)の検討。これから建てるなら、設計にどちらの型を織り込むか。既存の住宅を買うなら、建物のどの部分が区域にかかるか・区域の指定日と建築時期・確認済証等の有無・第80条の3への適合状況(既存不適格として扱われるか、区域指定後の増改築等の履歴、確認できない事項の有無を含む)・将来の増改築や改修の可否を、契約の前に確認(重要事項説明で「区域内」の説明を受けても、構造の適合まで確認されたことにはなりません)
- ③ お金——市町村の窓口で。改修・移転の補助制度を実施しているか、今年度の制度(対象・率・限度額・受付期間)を確認する
「門・塀で遮る」方法を検討する場合——当社は、土砂防護塀「やまがみ(山守)」について、施行令第80条の3ただし書・告示第383号に適合する門・塀として採用できるかを、計画ごとに個別に検討します。計画地点の公示図書に記載された事項(自然現象の種類・土石等の高さ等・最大の力の大きさ等)と、門・塀の配置、建物・基礎の条件を確認し、既存のお住まいへの後付けが可能かどうかも計画ごとに判断します。建築士による設計と、必要に応じた所管行政庁・指定確認検査機関との事前協議が前提です。→ 製品ページ:やまがみ|土砂防護塀(レッドゾーンでの新築に)
出典
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第2条・第7条・第9条・第10条・第14条・第15条・第18条・第19条・第24条・第25条・第26条)
- 神奈川県「特定開発行為許可制度の手引き」(県公式PDF・用途未定の取扱い等)
- 鹿児島県「土砂災害防止法に関するよくある質問」(自己の居住の用の解釈等)
- 新宿区「土砂災害防止法に基づく特定開発行為の許可について」(権限移譲の例)
- 同法施行令(e-Gov法令検索・第5条・第6条)
- 土砂災害特別警戒区域内における建築物の構造規制にご注意ください(新潟県公式)
- 土砂災害防止法(神奈川県公式・特定開発行為の案内)
- 重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧(国土交通省)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第80条の3)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条第2項・第6条・第6条の4・第20条・第39条・第40条・第85条)
- 都市計画法(e-Gov法令検索・第33条第1項第8号)
- 土砂災害特別警戒区域における建築物の構造規制について(岐阜県公式・第25条の確認要否・告示第383号・防護壁と基礎の一体化の案内)
- 住宅・建築物安全ストック形成事業(土砂災害関係)(国土交通省資料PDF)
- 土砂災害対策改修費補助金(名古屋市公式・実施例)
- 災害危険区域等にある既存不適格等の住宅等の移転や改修への支援制度(国土交通省)