RETAINING WALL GUIDE
種類と、法令が定める基準を順に見ていきます
擁壁は、高低差のある土地で土を支える構造物です。主な種類と、製品を選ぶ前に確認したい条件を解説します。

WHAT IS A RETAINING WALL?
擁壁とは、土地の高低差で土が崩れないように支える構造物です
擁壁(ようへき)は、切土や盛土によって生じる土圧に抵抗し、斜面や段差を安定させるための構造物です。土を留めることから「土留め」と呼ばれることもあります。
身近な例では、棚田の石積みが段ごとの高低差を支えています。住宅地や道路の造成では、必要な高さ、土地の使い方、地盤、背面の荷重、排水などに応じて、L型擁壁、重力式擁壁、間知ブロック積みなどを使い分けます。
例えば山の斜面に宅地を造ろうとすると、それぞれの土地は水平にする必要が出てきます。山に作られた段々畑をイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。
ちょっと極端な例に思えるかもしれませんが、大分では平地が少なく斜面が多いため、擁壁が必要となる場面があります。また、横浜などの都市部にも傾斜地があり、擁壁が多く使われています。
見た目が似ていても、土を支える擁壁と、境界・目隠しを目的とする塀では役割と設計条件が異なります。既存構造物の状態を判断するときも、外観だけでなく図面、築造時期、地盤、排水、変状の有無を確認することが重要です。
FIRST CHECK
種類より先に確認すること
高低差と必要高さ
擁壁で支える土の高さ、敷地の形状、上下の土地との関係を確認します。
地盤・荷重・排水
地盤、建物・車両などの荷重、排水計画は構造と製品選定に影響します。
法規・設計条件
宅地造成、道路、隣地などの条件により、必要な確認事項が変わります。
WHY RETAINING WALLS
写真で見る、擁壁が必要になる場所
土地に高低差があると、土を安定して支える構造が必要になります。身近な地形と住宅造成地の例から、役割を確認できます。

この写真もよく見ると、中央付近の田で石を積んで田んぼが崩れないように支えているのが見えます。

この写真は新興住宅街の造成の様子ですが、さまざまな擁壁が使われているのがわかります。手前は現場打ちのL型擁壁、その奥は古い積みブロック、そのさらに奥は一部新しく積みブロックが積まれているのがわかります。
WALL TYPES
擁壁の種類一覧|主な形式と特徴
どの方法が適するかは、地盤・高さ・排水・法規・設計条件を踏まえて判断します。
敷地を広く使いたい。工期を短くしたい。この2つなら、工場で作るL型擁壁が向きます。ただし、地盤・擁壁の高さ・上に載る荷重・施工できる幅で、答えは変わります。種類を順に見ていきます。
L型擁壁
L字形の鉄筋コンクリート構造で土を支えます。現場打ちとプレキャストがあり、宅地造成などで検討されます。
L型擁壁はほぼ垂直に立った擁壁で、敷地を有効に使いやすいという特徴があります。
L型擁壁は、宅地や道路などで土を支える構造物です。構造計算がされているものを選んでください。現場打ちも、構造計算をしたうえで作ります。盛土規制法施行令第9条が、土圧・水圧・自重に対して破壊しない・転倒しない・滑らない・沈下しないことを構造計算で確かめるよう求めています。違うのは、作る場所です。工場は温度も湿度も管理できますが、現場は天候と条件に左右されます。現場打ちでは、配筋・かぶり・打設・養生の管理が、そのまま品質になります。
逆L型擁壁
底版を、土の側ではなく前面側へ出した形です。
底版を背面側へ出さないため、背面の掘削を抑えられる場合があります。隣地がすぐ後ろにある場所や、境界いっぱいに寄せたい場所で検討します。かわりに前面に用地が要り、底版の上に土が載らないぶん、同じ高さでも必要な断面が大きくなることがあります。基礎や排水の施工空間、仮設、隣接する構造物への影響も別に確かめます。L型と逆L型のどちらにするか、どれだけの断面が要るかは、用地だけでなく、地盤・荷重・安定性を踏まえて設計で決めます。
重力式擁壁
構造物自体の重さで土圧に抵抗する考え方の擁壁です。
自重で土を支えるシンプルな構造。鉄筋を入れない形もあり、その場合は鉄筋がさびて膨らむ壊れ方が起きません。かわりに体積が要ります。
もたれ式擁壁
背面の地山に、寄りかかるように立てる形です。
背面の地山や裏込め土に支えられながら、自重で土圧に抵抗する形式です。掘る量が少なく、体積も減らせます。背面が崩れないことが前提で、国土交通省中部地方整備局『設計要領 第4章 土工』(版 v201503・4-13ページの擁壁形式の選定表)は、選定上の目安として「比較的安定した地山や切土部に用いる」としています。使えるかどうかは、底面・背面の地盤、裏込め材、荷重の条件をみて、計画ごとに設計して決まります。自治体によっては、切土に用いることや高さの上限を運用で定めています。
間知ブロック・石積み
斜面にもたれかかるように積み上げる方法です。既存の状態、背面、排水の確認が重要です。
ブロックを積んで地盤にもたれさせて土を安定させる方法。ブロック1個は40kg程度で、大型の製品より小回りがききます。ただし1個40kgは重量物です。実際には重機や吊り具などの補助具を使い、複数人で作業します。
構造計算で一つずつ設計するのではなく、法令で決められた勾配・厚さ・根入れ・裏込めに合わせて造ります(盛土規制法施行令第10条・別表第四)。
しかし、現場の土質も、上に載る荷重も、水の抜け方も、一つひとつ違います。古いもの、裏込め・基礎・排水が十分でないものでは、地震ではらみ、傾斜、崩壊が実際に起きています。平成16年新潟県中越地震の調査報告は「斜面に設けられた空積・練積やブロック積みの擁壁の変状や崩壊が多く見られた」と書いています(国土交通省国土技術政策総合研究所・独立行政法人建築研究所『平成16年新潟県中越地震建築物被害調査報告(速報)の概要』(3ページ))。
擁壁と間違えやすい構造——張りブロックと塀
次の2つは、見た目が擁壁に似ていますが、土圧を受け持つ擁壁ではありません。
SHAPE GUIDE
形で見る、擁壁と法面保護

壁と底版がL字形につながり、底版上の土の重さも利用して土圧に抵抗します。

断面を厚く取り、構造物自体の重さで土圧に抵抗します。

背面の土を留めるために、地盤にもたれさせて積み上げる構造です。

緩い勾配の法面の表面を覆う構造で、土圧を受け持つ設計ではありません。
SLOPE ANGLE
角度によって、擁壁の設置義務が外れることがあります
崖の勾配が緩ければ、擁壁を設けなくてよい場合があります。その角度の境目が、法令の表にそのまま書かれています。ただし、角度は入口の1つにすぎません。角度の例外から外れても、それだけで「擁壁が必ず要る」とは決まりません。
先に、この表がかかる範囲です。これは盛土規制法の許可対象となる工事等で生じる崖面についての基準です。擁壁の設置義務がかかるのは、同法施行令第3条第1号から第3号——盛土で高さ1mを超える崖を生ずるもの、切土で高さ2mを超える崖を生ずるもの、盛土と切土を同時にして高さ2mを超える崖を生ずるもの——にあたる工事の部分です(第8条第1項第1号は、同令第3条第4号・第5号の盛土・切土を除いています)。
そのうえで、もう1つ条件があります。角度による例外が使えるのは切土をした土地の部分に生ずる崖です。盛土をした部分の崖には、この角度の例外は使えません。
| 土質 | 擁壁を要しない勾配の上限 | 擁壁を要する勾配の下限 |
|---|---|---|
| 軟岩(風化の著しいものを除く) | 60度 | 80度 |
| 風化の著しい岩 | 40度 | 50度 |
| 砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの | 35度 | 45度 |
宅地でよく出てくるのは3段目です。35度と45度が、角度による例外の境目になります。
角度による例外は、3つの帯に分かれます
| 勾配(3段目の土質の場合) | 角度による例外は |
|---|---|
| 35度以下 | 角度による例外に該当 |
| 35度を超え45度以下 | その上端から下方に垂直距離5m以内の部分に限り、角度による例外に該当 |
| 45度を超える | 角度による例外には該当しない |
真ん中の帯には、5mという条件が付いています。条文はこう書いています。
切土をした土地の部分に生ずる崖又は崖の部分であつて、その土質が別表第一上欄に掲げるものに該当し、かつ、次のいずれかに該当するものの崖面/(1)その土質に応じ勾配が別表第一中欄の角度以下のもの/(2)その土質に応じ勾配が別表第一中欄の角度を超え、同表下欄の角度以下のもの(その上端から下方に垂直距離五メートル以内の部分に限る。)
宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第8条第1項第1号イ
この2つのほかに、擁壁を設けなくてよい崖面が2つ挙げられています。土質試験その他の調査・試験にもとづく地盤の安定計算で、崖の安定を保つために擁壁の設置が必要でないと確かめられた崖面。そして、第14条第1号により崖面崩壊防止施設が設置された崖面です。
崖が上下に分かれているときの数え方も、同じ条にあります。第8条第2項は、イ(1)に該当する崖の部分——つまり中欄の角度以下の緩い部分——によって上下に分けられている場合、その緩い部分は存在せず、上下の崖の部分は連続しているものとみなすとしています。緩い段をはさんでも、5mの数え方は途切れません。
擁壁が要らない範囲でも、表面を守る決まりがあります
擁壁を設けなくてよいということは、何もしなくてよいという意味ではありません。この節の対象となる盛土・切土の工事では、擁壁等で覆わない崖面について、施行令第15条により侵食防止措置が必要です。同条は、崖面が風化その他の侵食から保護されるよう、石張り、芝張り、モルタルの吹付けその他の措置を講ずることとしています。張りブロックはその一種で、土圧を受け持つ設計ではありません。見た目が間知ブロックに似ていても、役割が違います。
練積み造(間知ブロック積みなど)の擁壁には、勾配と高さの上限があります
練積み造の擁壁について、同令の別表第四は勾配ごとに高さと下端部分の厚さの基準を定めています。勾配の区分は3つで、それぞれに高さの上限があります。
| 勾配 | 別表第四にある高さの上限 |
|---|---|
| 七十度を超え七十五度以下 | 3m以下 |
| 六十五度を超え七十度以下 | 4m以下 |
| 六十五度以下 | 5m以下 |
上限は勾配だけではありません。高さにもあります。第10条第1号は、擁壁の勾配・高さ・下端部分の厚さを別表第四の基準に適合させることを求めています。別表第四が用意しているのは、上の表までです。勾配または高さが表の範囲から外れると、適合させる区分がありません。その場合は、別の構造形式か、適用できる認定擁壁を検討することになります。
角度は、擁壁が要るかどうかだけでなく、どの形式が使えるかにも効いてきます。実際の判断は、土質調査と設計、そして所管する行政への確認によります。
TOP THICKNESS
天端の厚みは、見分ける手がかりの一つです
上から覗いたときの厚み——天端(てんば)の厚みは、種類によって違います。ただし、厚みだけで種類が決まるわけではありません。
| 種類 | 天端の厚み | その数字の性質 |
|---|---|---|
| プレキャストL型擁壁 | おおむね 100〜250mm程度 | 製品の規格。全国一律の法定値はありません |
| 練積み造(間知石など) | 40cm以上(第一種・第二種) 70cm以上(第三種) | 法令が定める最低値 |
| 現場打ちコンクリート擁壁 | 設計ごとに決まります | 天端厚についての法定値はありません |
性質の違う数字が並んでいます。練積み造の40cm・70cmは法令の最低値、プレキャストの数値はメーカーの規格、現場打ちは設計値です。例えば、当社の宅地造成用L型擁壁の天端幅は150mm・200mmです(製品ページに公開している仕様)。
練積み造には、法令に数字があります
擁壁の上端の厚さが、擁壁の設置される地盤の土質が、同表上欄の第一種又は第二種に該当するものであるときは四十センチメートル以上、その他のものであるときは七十センチメートル以上であること
宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第10条第1号
土質の区分は、同令の別表第四にあります。第一種は「岩、岩屑、砂利又は砂利混じり砂」、第二種は「真砂土、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの」、第三種は「その他の土質」です。
同じ第10条には、石材その他の組積材の控え長さを30cm以上とすること、コンクリートを用いて一体の擁壁とすること、その背面に栗石・砂利・砂利混じり砂で有効に裏込めすることも書かれています。
根入れも、練積み造の規定です
第10条第4号です。これは練積み造の擁壁についての決まりで、すべての擁壁に共通する数値ではありません。岩盤に接着して設置する場合を除き、擁壁の前面の根入れの深さは次のとおりです。
| 地盤の土質 | 根入れの深さ |
|---|---|
| 第一種・第二種 | 擁壁の高さの15%以上、かつ35cm以上 |
| 第三種 | 擁壁の高さの20%以上、かつ45cm以上 |
15%と35cmは、どちらか一方ではなく、両方を満たす必要があります。高さ2mなら15%は30cmですが、35cmに満たないので35cm。高さ3mなら45cmとなり、こちらは15%のほうが効きます。
大臣認定を受けた擁壁は、構造の規定が置き換わります
構造材料又は構造方法が第八条第一項第二号及び第九条から第十二条までの規定によらない擁壁で、国土交通大臣がこれらの規定による擁壁と同等以上の効力があると認めるものについては、これらの規定は、適用しない
宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第17条
適用されなくなるのは、条文が挙げている第8条第1項第2号と、第9条から第12条までの構造の規定です。大臣認定擁壁は、これらに代えて認定の仕様を適用します。擁壁を設置すること自体を定めた第8条第1項第1号や、崖面の侵食防止(第15条)、任意に設ける擁壁への準用(第13条)まで外れるわけではありません。
大分県の『盛土規制法運用の手引』(令和8年4月・91ページ)は、この「特殊の材料又は構法による擁壁」の例としてプレキャスト製品による鉄筋コンクリート造擁壁を挙げ、「大臣認定擁壁については、政令に基づく技術的基準の適用はありません」としています。条文の上で適用が外れるのは、上に挙げた規定です。認定を受けた製品は、認定の仕様に従います。
DRAINAGE HOLES
水抜き穴には、決まりがあります
擁壁の壁面に、穴が並んでいるのを見たことがあると思います。あれは飾りではありません。
まず、どの擁壁に、どの決まりがかかるかです。ここを飛ばすと、数字を取り違えます。
| どんな擁壁か | かかる決まり |
|---|---|
| 盛土規制法で設置が義務づけられる擁壁 | 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第12条(下の数値基準) |
| 盛土規制法の許可を要する工事の中で任意に設ける、高さ2mを超える擁壁 | 同施行令第13条により、建築基準法施行令 第142条を準用 |
| 建築基準法第88条の工作物に当たる擁壁(高さ2m超) | 建築基準法施行令 第142条(工作物としての規定) |
| 大臣認定を受けた擁壁 | 認定の仕様によります |
2つ目と3つ目は、入口が違います。盛土規制法施行令第13条が準用するのは、法第12条第1項または第16条第1項の許可を受けなければならない宅地造成に関する工事により設置する擁壁で、高さが2mを超えるもの(義務設置のものを除く)です。これとは別に、建築基準法施行令第138条第1項第5号が「高さが二メートルを超える擁壁」を法第88条第1項の工作物に指定していて、この経路でも第142条がかかります。
盛土規制法が「特定盛土等」として扱う工事にも、擁壁の同じ決まりが及びます。同施行令第18条(宅地造成等工事規制区域内の特定盛土等)と第30条第1項(特定盛土等規制区域内の特定盛土等)が、第7条から第17条までの規定を準用(=同じ規定を当てはめること)しているためです。(特定盛土等規制区域では、第13条にある許可の根拠を法第30条第1項・第35条第1項に読み替えます。)
この2つの経路に当たらなくても、表の1行目の、設置が義務づけられる擁壁には、高さにかかわらず第12条がかかります(第17条の大臣認定を受けた擁壁は、認定の仕様によります)。表のどれにも当たらない擁壁には、これらの政令による技術的基準は直接は適用されません。ただし、自治体の条例や開発の審査基準が別にかかる場合があります。安全上必要なときは、義務設置の擁壁の基準に準じて設計します。どの決まりがかかるかは、設置が義務づけられるものか、許可を要する工事か、高さはいくらかを、設計者と計画地を所管する窓口で確かめて判断します。
義務設置の擁壁にかかる数値
第八条第一項第一号の規定により設置される擁壁には、その裏面の排水を良くするため、壁面の面積三平方メートル以内ごとに少なくとも一個の内径が七・五センチメートル以上の陶管その他これに類する耐水性の材料を用いた水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺その他必要な場所には、砂利その他の資材を用いて透水層を設けなければならない
宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第12条
壁面3平方メートルに1個。内径7.5cm以上。そして穴の周りに透水層を作ります。
冒頭の「第八条第一項第一号の規定により設置される擁壁には」が効いています。すべての擁壁に一律にかかる数字ではありません。
数え方
法令が定めているのは面積あたりの個数で、穴と穴の横方向の間隔ではありません。
例えば、地上に見えている壁面が高さ2m・長さ10mの垂直な擁壁なら、壁面積は20平方メートルです。20を3で割って切り上げるので、水抜き穴は少なくとも7個。ただし、それをどう並べるかは、この条文には書かれていません。
並べ方は、行政の手引に書かれています
大分県の『盛土規制法運用の手引』(令和8年4月・90ページ)は、第12条の解説としてこう書いています。
- 壁面の面積 3㎡ に 1 箇所以上、千鳥状に配置すること
- 内径は、75mm以上とすること
- 擁壁の下部地表面近く及び湧水等のある箇所に特に重点的に配置すること
- 地盤面下の壁面で地下水の流路にあたっている壁面がある場合は、有効に水抜穴を設けて地下水を排出すること
一直線に等間隔ではなく、千鳥です。そして下のほうと、水が出ている場所に多く置く。水は下に溜まるからです。ただし、これは大分県の運用です。千鳥配置は、法令が全国一律に定めた配置ではありません。計画地を所管する行政の基準をご確認ください。
透水層についても、同じ手引に寸法があります。
- 擁壁天端から30cm程度下方から、最下段の水抜穴の下端まで設けること
- 砕石を用いる場合は、透水層の厚さを30cm以上とすること
- 透水層の最下部には、不透水層となる止水コンクリートを設けること
なぜ抜くのか
擁壁の背面に水が溜まると、背面の土の重さが増え、土の強度が下がります。そのうえで水圧が加わります。設計で見ている土圧に、上乗せされることになります。水抜き穴は、その水を擁壁の外へ出すためのものです。
穴の数を確かめるときは、間隔だけでは判断できません。地上に見えている壁面の面積、穴の総数、配置、そしてその擁壁にどの決まりがかかっているかを、あわせて見る必要があります。
建築基準法施行令のほう
擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること
建築基準法施行令 第142条第1項第3号
砂利を詰めることまで書かれていますが、「3平方メートルに1個」「内径7.5cm以上」という数字はありません。その数字は、宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第12条のほうにあります。
PRECAST OR CAST-IN-PLACE
プレキャスト擁壁とは|現場打ち擁壁との違い
鉄筋コンクリート製の擁壁には、工場で製品をつくって現場へ運ぶプレキャストと、現場で型枠・鉄筋を組み、コンクリートを打設する現場打ちがあります。
宅地造成用擁壁「土のねっこ」の製品資料には、「建築基準法、宅地造成マニュアル準拠」「鉄筋かぶり40mm以上」と記載しています。宅地造成・開発への使用については「大分県、大分市にて確認済」としています——確認の時期・部署・対象条件までは公開していません。お住まいの自治体で使えるかどうかは、計画ごとに窓口へご確認ください。製品には水抜き穴があります。裏込め・透水マット・根入れなどの排水と施工の条件は、地盤・荷重・排水条件に基づいて計画ごとに決めます。
擁壁の技術的基準は、根拠となる法律で分かれます。盛土規制法の許可工事などで設置が義務づけられる擁壁には、同法施行令第8条から第12条が適用されます。これとは別に、建築基準法第88条の工作物として扱われる擁壁には、同法施行令第142条が適用されます。同条第1項が求めるのは各号の基準に適合する構造方法で、これと同等以上のものとして国土交通大臣が定めた構造方法も認められます。鉄筋のかぶり厚さの最低値は、令第142条第2項が準用する令第79条にあります(直接土に接する壁は4cm以上)。定義と部位ごとの数字は、下の「用途によって確認先と設計条件が変わります」でまとめて説明します。
| 比較項目 | プレキャスト | 現場打ち |
|---|---|---|
| 製造 | 管理された工場で製造し、完成品を現場へ搬入します。 | 現場で型枠・配筋・打設・養生を行います。 |
| 工程 | 据え付けを中心に工程を組みやすく、現場作業の短縮につながります。 | 形状への対応幅が広い一方、打設と養生の期間が必要です。 |
| 品質管理 | 工場の製造工程で材料、配筋、寸法、強度などを管理します。 | 天候や施工条件を踏まえ、現場ごとの管理が重要になります。 |
| 計画時の確認 | どちらも、構造計算、地盤、基礎、排水、搬入・施工条件、関係法令や許認可の確認が必要です。 | |
外から見て、プレキャストか現場打ちかの見当をつける手がかりもあります。プレキャストは工場で作った部材を運んできて据え付けるので、壁面に製品どうしの縦の継ぎ目が繰り返し現れます。
宅地造成用のL型擁壁には、製品長2,000mmのものが多くあります。約2mごとに継ぎ目が並んでいれば、プレキャストである可能性が高くなります。ただし、短尺品もコーナー品もあり、高さの変わる区間では長さの違う製品が入ります。現場打ちにも施工目地や型枠の継ぎ目があります。外から見ただけで断定することはできません。
プレキャストは「置けば終わり」という製品ではありません。規格への適合だけでなく、現場条件に合う設計、基礎、接合、背面処理、排水、据え付け管理まで含めて計画します。
USE AND RULES
用途によって確認先と設計条件が変わります
外観が似たプレキャストL型擁壁でも、宅地造成・開発向けと道路向けでは、想定する用途、確認する基準、製品仕様が異なります。
一見すると外見はほとんど同じなのですが、準拠している基準が違います。宅地に使えるかどうかは、商品名だけでは決まりません。適用する基準、認定や構造計算、現場の条件、そして所管する行政の審査で判断します。
鉄筋のかぶり厚さとは、コンクリートの表面から、いちばん外側にある鉄筋の表面までの距離です。腐食の防止、鉄筋とコンクリートの付着、構造性能、施工の条件を踏まえて決め、法令上の最低値を満たす必要があります。建築基準法施行令第79条第1項は、直接土に接する壁・柱・床・はりと布基礎の立上り部分は4cm以上、基礎は捨コンクリートの部分を除いて6cm以上と定めています。擁壁には、同令第142条第2項がこの第79条を準用します。部位によって数字が違うので、計画に使う製品の仕様は図面でお確かめください。なお、同令第79条第2項により、この最低値と同等以上の耐久性と強度を持つものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材と、大臣の認定を受けた部材には、この最低値は適用されません。
かぶり厚さと部材の厚さは、別の設計要素です。同じ外形でも、鉄筋をどこに置くかでかぶりは変わります。かぶりを大きく取ると鉄筋の位置が内側に寄るので、必要な構造性能を保つために、部材の厚さや配筋を調整することがあります。どこまで取るかは、必要な性能と法令上の最低値の両方から決まります。
道路向け製品を宅地へ、または宅地向け製品を道路へ自動的に転用できるとは限りません。認定書、製品仕様書、設計条件をそろえ、計画地を管轄する自治体、道路管理者、設計者などへ早い段階で確認してください。
| 用途区分 | 主な確認先 | 確認資料・条件の例 |
|---|---|---|
| 宅地造成・開発 | 自治体の宅地・開発・建築関係窓口、設計者 | 盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法)、建築基準法、自治体の条例・技術基準、認定条件、許可や確認の要否など。 |
| 道路・道路付帯施設 | 道路管理者、設計者 | 道路土工構造物技術基準と関連する指針、製品仕様、荷重・排水・維持管理条件など。 |
| 既存擁壁の利用 | 自治体、設計者、調査・診断の専門家 | 図面や検査記録、劣化・傾き・ひび割れ・ふくらみ・排水状態、現在の計画で安全性を確認できるかなど。 |
大臣認定擁壁とは
盛土規制法施行令第17条に基づき、特殊な材料や構法を用いる擁壁について、国土交通大臣が同施行令に定める擁壁と同等以上の効力があると認める制度です。認定の有無だけで現場への適否が決まるものではなく、認定条件、設計条件、自治体の審査、施工・品質管理を合わせて確認します。
国土交通省「大臣認定擁壁」(外部サイト) 国土交通省「盛土規制法に関する法令等」(外部サイト) e-Gov法令検索「宅地造成及び特定盛土等規制法」(外部サイト) e-Gov法令検索「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令」(外部サイト) e-Gov法令検索「建築基準法施行令」(外部サイト) 国土交通省「道路土工構造物技術基準」(外部サイト)
法令、告示、自治体の運用、技術基準は改定されることがあります。実際の計画では必ず最新情報をご確認ください。
WALL OR RETAINING WALL
塀と擁壁は、支えるものが違います
| 比較項目 | 塀 | 擁壁 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 境界の表示、目隠し、防犯など。 | 高低差のある土地で土圧に抵抗し、土を支えること。 |
| 見え方 | 表裏の両面が地上に見えます。 | 片側が背面土に接し、外から見えるのは反対側の面です。 |
| 設計で重視する条件 | 自重、風圧、地震時の安全性、基礎など。 | 土圧、上載荷重、地盤、滑動・転倒・支持力、排水など。 |
| 副次的な役割 | 火災予防・防犯・浸水防止・目隠し・意匠・車の進入防止・防風・防音 | フェンス基礎(フェンスの荷重を見込んで設計した場合) |
| 素材 | コンクリート・アルミ板・竹・樹脂 | 鉄筋コンクリート・無筋コンクリート・石材・コンクリートブロック(擁壁用として適合を確認したもの。塀用の空洞ブロックとは別です) |
| 費用 | 高さ・長さ・地盤・基礎・排水で大きく変わります。一律の比較はできません。 | |
擁壁の上へ塀を設ける場合は、擁壁と塀を別々に考えるだけでは不十分です。追加される荷重や基礎の納まりを含め、全体として確認してください。
PRODUCT SELECTION
用途から見る関連製品
やまがみ
やまがみは、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)で、土砂から建物を守るために設置するプレキャストコンクリート製の防護塀です。使えるかどうかは、想定する外力、敷地の条件、構造計算、そして自治体の審査で決まります。
ブロック塀・基礎の安全情報
塀と基礎の点検・新設を検討している方は、確認する観点と現行法令の確認先をまとめたガイドをご覧ください。
PRODUCT CONSULTATION
擁壁製品と設計条件を相談する
高低差、地盤調査の結果、図面、必要高さ、排水計画など、分かる範囲でお知らせください。コンクレタスは製品と適用条件の相談を承ります。小規模な擁壁工事は当社で施工します。対応できるのは大分近郊のほか、協力会社のある地域(主に関西圏)です。規模の大きい工事は信頼できる施工会社をご紹介します。