茨城県古河市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

古河市のがけは、第6条

古河市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。崖の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って古河市建築指導課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は古河市内ですか。はい=古河市建築基準条例 第6条です茨城県建築基準条例の崖の規定は適用されません(県条例第46条の7第1項)。いいえ(古河市以外)の方へ——その市町村が茨城県建築基準法等施行細則 第19条に挙げられていなければ、読むのは茨城県建築基準条例 第5条です。まず、その市町村の建築の窓口に、どちらを読むのかを確かめてください。古河市の崖の条は「第6条」です。②古河市の第6条は、高さが2メートルを超える崖(勾配が30度を超える傾斜地)について、水平距離が崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、または建築物の敷地を造成する場合に、安全な擁壁を設けなければならないと定めています。③距離の起点が、建てる場所と反対側の端になります——原則は崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)からで、崖の下に建てる場合は崖の上端(じょうたん=斜面の高いほうの肩)からです。近いほうの端から測るのではありません。④安全な擁壁を設ければ、第6条第1項については原則として建てられます。⑤ただし、災害危険区域(条例第57条・第58条)レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・法第19条第4項は、別に残ります。(条例・法令は2026年9月5日に原文を確認しました)。

古河市内なら、古河市建築基準条例 第6条です

古河市内なら、古河市建築基準条例 第6条です
古河市建築基準条例 第6条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という名前の条例はありません。古河市では、建築基準法第40条などに基づく古河市建築基準条例(平成17年9月12日 条例第133号)の第3章「崖」第6条が、崖に近い建築物の決まりです。この条例は、市町村合併に伴って平成17年9月12日に制定されたもので、附則は、施行の日の前日までに合併前の古河市建築基準条例(平成16年古河市条例第32号)の規定によりされた処分・手続その他の行為は、この条例の相当規定によりなされたものとみなす、と定めています。

条番号を書き写すときに、気をつけてください。崖の条は第6条で、第5条は「大規模の建築物等の敷地と道路との関係」の条です。建築士や窓口とやりとりするときは、「古河市建築基準条例 第6条」と条番号まで書いてください。また、第6条は令和2年古河市条例第13号で改正されています(目次の改正規定、第3章の章名の改正規定、第6条・第61条第2項・第62条の改正規定は公布の日から施行)。古い写しを見て判断しないでください。

茨城県建築基準条例(昭和36年茨城県条例第21号)は、古河市の区域では原則として適用されません。県条例第46条の7第1項は、法第4条第1項または第2項の規定により建築主事(けんちくしゅじ=建築確認の審査をする行政の職員)を置く、規則で定める市町村の区域内においては適用しない、と定めています。建築主事を置く市のうち、規則で定められた市町村の区域では、県条例ではなく、その市町村の条例で崖を見る、ということです。建築主事を置いていれば自動的に外れる、という書き方ではありません——規則に挙げられていることまでが要ります。その「規則で定める市町村」を挙げているのが、茨城県建築基準法等施行細則 第19条で、そこに古河市が挙げられています。

(適用除外)
第46条の7 この条例(第4章の4(第46条の4第1項第2号に掲げる区域に係る部分に限る。)の規定を除く。)は,法第4条第1項又は第2項の規定により建築主事を置く規則で定める市町村の区域内においては,適用しない。

茨城県建築基準条例 第46条の7第1項

県条例が「全部」消えるわけではありません。第46条の7第1項の括弧書きは、第4章の4のうち第46条の4第1項第2号に掲げる区域に係る部分を除外から外しています。第46条の4第1項第2号は「出水による危険の著しい区域として知事が指定した区域」——つまり水(出水)のほうの災害危険区域です。崖の規定(県条例第5条)は古河市の区域では適用されませんが、出水の区域の話は県条例の側に残ります。崖の話をしているのか、水の話をしているのかを、窓口で取り違えないでください。

(崖)
第6条 高さが2メートルを超える崖(勾配が30度を超える傾斜地をいう。以下この条において同じ。)の下端(崖の下にあっては、当該崖の上端)からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合には、当該崖の形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて、安全な擁壁を設けなければならない。ただし、崖の形状又は土質により安全上支障がない部分については、この限りでない。

古河市建築基準条例 第6条第1項

どこからが「崖」か——高さ2メートル超・勾配30度超

条文は、「崖」を勾配(こうばい)が30度を超える傾斜地と定義し、そのうえで高さが2メートルを超えるものを第6条の対象にしています。ここは、2つに分けて読んでください。勾配が30.0度ちょうどの傾斜地は、この条にいう「崖」に当たりません(条文は「超える」です)。②勾配が30度を超えていても、高さが2.0メートルちょうどなら、第6条第1項が対象にしている「高さが2メートルを超える崖」には当たりません「崖」に当たることと、第6条第1項の義務がかかることは、別です。どちらの要件にも届かなければ、第6条第1項の擁壁の義務はかかりません——ただし、建築基準法第19条第4項は別に残ります(後述)。

条文は、崖が敷地の中にあることを要件にしていません。「高さが2メートルを超える崖の下端……からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し」と書かれているだけで、その崖が誰の土地にあるかは書かれていません。隣の土地の崖でも、道を挟んだ向かいの崖でも、距離が2倍以内なら要件に当たり得ます。「うちの敷地の中に崖はない」は、外れる理由になりません。

また、自然の崖か、人が切ったり盛ったりしてできた斜面かも、条文は区別していません。書かれているのは「勾配が30度を超える傾斜地」だけです。宅地を造ったときにできた法面(のりめん)も、要件を満たせば「崖」です。河川の堤防や水路の脇、道路の切土のそばも、形と高さしだいでは当たり得ます。平らな土地の多い地域だから関係ない、とは限りません。高さと角度をどう測るか、途中に小段(こだん=斜面の途中にある平らな段)や通路がある崖をどう数えるかは、現地の形と図面で決まります建築士に測ってもらい、当てはめは市の窓口で確かめてください。斜面の上に立って目で見ただけでは、30度を超えているかどうかは分かりません。2メートルちょうどに見える崖が2.1メートルだった、はよくあります。

距離の起点は、建てる場所と反対側の端です

がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか

ここが、いちばん間違えやすいところです。条文は「崖の下端(崖の下にあっては、当該崖の上端)からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置」と書いています。つまり——崖の上に建てるなら、起点は下端。崖の下に建てるなら、起点は上端。建てる場所に近いほうの端ではありません。崖の上に建てるのに、足元(下端)から測る。崖の下に建てるのに、肩(上端)から測る。起点が、入れ替わります。

がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか

この書き方の効き目は、はっきりしています。崖そのものの水平の幅(斜面が水平方向に占める長さ)も、「2倍」の中に含めて数えることになるからです。たとえば高さ3メートルの崖なら、2倍は6メートル。崖の上に建てるなら、下端から6メートルの範囲で、この6メートルには斜面が水平に占めている長さが入ります。「崖の肩から6メートル」ではありません。逆に、崖の下に建てるなら、上端から6メートルです。図面で、どちらの端が起点かを最初に決めてください。

そして対象は、建物を建てる場合だけではありません。条文は「建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合」と書いています——造成の段階から、この規定はかかります。建築物の敷地を造成する工事なら、建物の設計より前でも対象になり得ます。「まだ建物の話をしていないから」は、後回しにしてよい理由になりません。

2倍を超えて離れていても、「何もしなくてよい」という意味ではありません。2倍を超えれば条例第6条第1項の本文はかかりませんが、建築基準法第19条第4項は別に残ります。同項は、建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合に、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講ずることを求めるもので、崖の高さにも、距離にも、条文上の線引きがありません。「2倍の外だから安全」ではなく、「2倍の外だから条例第6条第1項の義務はかからない」——ここまでが正しい読み方です。

安全な擁壁を設ければ、第6条については原則として建てられます

擁壁だけが道ではありません。条文は、崖と当該建築物との間に安全な施設を設けたときにも、この義務を適用しないと書いています(第6条第2項)。擁壁で受けるか、あいだで受けるか、建物側で受けるか——どれが自分の敷地に合うかは、設計者に見積りを並べてもらって比べてください。

安全な擁壁を設ければ、道はあります。まず見るのは、2倍以内に入るかどうかです。入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です——条文は「◯倍以上あければよい」という書き方になっていません。崖の形状もしくは土質、または建築物の位置・規模もしくは構造に応じて、安全な擁壁を設ける——これを満たせば、第6条第1項については、原則として建てられます

「原則として」と書くのには、理由があります——これは第6条第1項の義務を満たすという意味で、建築基準法第19条第4項、条例第57条・第58条の災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。

第1項ただし書は、崖の形状又は土質により安全上支障がない部分については、この限りでないと定めています。「部分については」と書かれていることに、注意してください。崖全体でひとまとめに「安全だ/危険だ」と判定する書き方ではなく、部分ごとに見る書き方です。ある部分が外れても、外れない部分には本文が残ります。「一部が安全なら全部外れる」とは読めません。

「擁壁がすでにある」ことと、「安全な擁壁がある」ことは、別です。条文が求めているのは安全な擁壁で、そこに古い石積みや練積みがあることではありません。いつ・どういう基準で造られたのか、検査済証などの書類が残っているのか、いまの状態はどうか——ここが確かめられなければ、条文の要求を満たしていると言うことはできません。既存の擁壁がある土地では、売買契約の前に、その擁壁の資料が残っているかを売主に確かめてください。資料が無いこと自体が、費用の見積りを変えます。

そして、擁壁そのものにも手続きがあります。高さが2メートルを超える擁壁は、工作物(こうさくぶつ=建物ではないが土地に定着する構造物)として建築主事等(けんちくしゅじ=建築確認の審査をする行政の職員)または指定確認検査機関(民間の確認検査機関)の確認を受ける必要があります(建築基準法施行令第138条第1項第5号が「高さが二メートルを超える擁壁」を指定し、手続は法第88条第1項)。「擁壁を造れば終わり」ではありません。また、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の規制区域に入る土地では、盛土や切土に別の許可等が要る場合があります——区域の指定状況は、市と県の窓口で確かめてください。

古河市では、盛土規制法の宅地造成等工事規制区域を必ず確かめてください。市が公表している「建築基準法等に基づく古河市内の建築制限」(2025年10月1日更新)は、古河市全域にわたる制限として、盛土規制法に基づく規制区域の欄に「宅地造成等工事規制区域」を挙げ、「古河市に特定盛土等規制区域はございません。」と注記しています。崖のある土地の造成は、条例第6条だけの話では終わりません。

設計に使う数値も、同じページで確かめておいてください。ここから先は、建築士に渡す数字です。中身の意味は分からなくて構いません——ただし、この数値を建築士に確かめてもらってください。市は、古河市全域にわたる制限として地震地域係数Z=1.0(昭和55年建設省告示第1793号)、基準風速Vo=30メートル毎秒(平成12年建設省告示第1454号)、地表面粗度区分=3(同告示)、垂直積雪量=30センチメートル(平成12年建設省告示第1455号・古河市建築基準法施行細則)、凍結深度=指定なしを挙げています。これらは建築物の構造計算に使う数値です。擁壁に何が要るかは、設計者に確かめてください。建築士に渡す資料として、最初にそろえておくと手戻りが減ります。

擁壁の代わりに、建物側で受ける道もあります(第6条第2項)

ここは「安く済む道」ではありません。第6条第2項に当たれば擁壁を設けなくてよくなりますが、代わりに基礎や建物の構造で崖崩れを受け止めることになります。擁壁より安く済むとは限りません。どちらが安いかは、設計者に両方の見積りを出してもらって比べてください。

2 前項本文の規定は、崖の上に建築物を建築する場合、当該建築物の基礎が崖に影響を及ぼさないとき、又は崖の下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造物(崖崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く。)を鉄筋コンクリート造りとしたとき、若しくは当該崖と当該建築物との間に安全な施設を設けたときは、適用しない。

古河市建築基準条例 第6条第2項

第2項は、第1項「本文」の適用を外す規定です。まず、崖の上に建てるか、崖の下に建てるかで分かれます。

  • 崖の上に建てる場合で、その建築物の基礎が崖に影響を及ぼさないとき。「影響を及ぼさない」かどうかは、基礎の形式と深さ、崖の土質、荷重の伝わり方で決まります。これは構造の設計の話で、目で見て決められるものではありません
  • 崖の下に建てる場合は、道が2つあります。その建築物の主要構造物を鉄筋コンクリート造りとしたとき。括弧書きで「崖崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く」とされているので、被害を受けるおそれのある部分は鉄筋コンクリート造りにする、という読み方になります。どこまでが「おそれのある部分」かを決めるのが、設計者の仕事です。②当該崖と当該建築物との間に安全な施設を設けたとき。崩れてきた土を受け止める施設を、崖と建物の間に置く場合です

②の「安全な施設」は、崖の上に建てるときの道ではありません。条文は「又は崖の下に建築物を建築する場合において、……鉄筋コンクリート造りとしたとき、若しくは当該崖と当該建築物との間に安全な施設を設けたとき」と書いています。「若しくは」でつながれた2つは、どちらも「崖の下に建築物を建築する場合において」の中にあります。崖のに建てるときに第2項で外れるのは、基礎が崖に影響を及ぼさないときだけです。

これは「素人が自分で判定する一覧」ではありません。どれに当たるかを確かめるのは設計者(建築士)です。確認申請の対象となる計画でも、確認特例により条例の規定の審査が省略されることがあります(後述)——「審査で見てもらえるから大丈夫」とは考えないでください。審査されるかどうかとは別に、条例に適合させる義務は残ります。条例の当てはめの相談先は、古河市 建築指導課です。また、第2項が外すのは第1項の「本文」だけです。第3項の排水の措置は、別に残ります。

崖の上に建てるなら、排水の措置も要ります(第6条第3項)

3 高さが2メートルを超える崖の上にある建築物の敷地には、崖のかたに沿って排水溝を設ける等当該崖への流水又は浸水を防止するため安全な措置を講じなければならない。

古河市建築基準条例 第6条第3項

第3項は崖の上の話です。「崖のかた」は、崖の肩、つまり斜面の上端の縁のことです。ここに沿って排水溝を設ける等、崖への流水または浸水を防止するための安全な措置を講じなければならない、と定めています。水を、崖に流し込まない・しみ込ませないための義務です。雨水の落とし先、樋(とい)の向き、敷地の傾きが、この条に関わってきます。

第3項には、ただし書がありません。そして第3項の要件は「高さが2メートルを超える崖の上にある建築物の敷地」であって、擁壁があるかどうか、第1項の2倍以内かどうかは書かれていません。第1項の関係で擁壁が要らないと整理できた場合でも、第3項は別の義務として残ります。設計に排水の計画が入っているかを、必ず確かめてください。

災害危険区域(第57条・第58条)——住居の用に供する建築物は、原則として建てられません

この区域は、茨城県知事が場所を決めて指定したものです。崖のそばなら自動的に入る、というものではありません。入っているかどうかは、茨城県 土木部河川課ダムと、市の窓口で確かめてください。入っていなければ、この節の話はかかりません。

そのうえで——ここは、第6条とは別の、もっと重い規定です。古河市建築基準条例は、建築基準法第39条第1項の災害危険区域を、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域と定めています(第57条)。そして第58条が、その区域では住居の用に供する建築物を建築してはならないと定めています。

(災害危険区域)
第57条 法第39条第1項に規定する災害危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域とする。
(建築の制限)
第58条 前条の災害危険区域においては、住居の用に供する建築物を建築してはならない。ただし、建築物の構造若しくは敷地の状況又は崩壊防止工事の施工により市長が被害を受けるおそれがないと認めるときは、この限りでない。

古河市建築基準条例 第57条・第58条

ただし書があります。建築物の構造もしくは敷地の状況、または崩壊防止工事の施工により、市長が被害を受けるおそれがないと認めるときは、この限りでない——つまり「絶対に建てられない」ではありません。決めるのは市長で、判断の材料は構造・敷地の状況・崩壊防止工事です。また、禁止されているのは「住居の用に供する建築物」で、条文はそれ以上のことを書いていません——自分の計画がこれに当たるかどうかも、窓口で確かめてください。認めてもらえるかどうかを、自分で決めないでください。計画の早い段階で窓口に相談してください。

急傾斜地崩壊危険区域を指定するのは、茨城県知事です。急傾斜地法第3条第1項は、崩壊するおそれのある急傾斜地で、その崩壊により相当数の居住者その他の者に危害が生ずるおそれのあるものおよびこれに隣接する土地のうち、同法第7条第1項各号に掲げる行為が行われることを制限する必要がある土地の区域を指定できる、と定めています。同法の「急傾斜地」は傾斜度が30度以上である土地です(第2条第1項)。条例第6条の「30度を超える」とは、書き方が違います——法は「30度以上」、条例第6条は「30度を超える」です。30.0度ちょうどは、法では急傾斜地に当たり、条例第6条の崖には当たりません。

区域内では、建物のことだけでなく行為そのものが制限されます。急傾斜地法第7条第1項は、①水を放流し、または停滞させる行為その他水のしん透を助長する行為、②ため池、用水路その他の急傾斜地崩壊防止施設以外の施設または工作物の設置または改造、③のり切、切土、掘さくまたは盛土、④立木竹の伐採、⑤木竹の滑下または地引による搬出、⑥土石の採取または集積、⑦その他政令で定めるもの——これらを都道府県知事の許可を受けなければしてはならないと定めています(非常災害のために必要な応急措置として行う行為、指定の際すでに着手している行為などは除きます)。違反すると、6月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金です(同法第28条第2号)。この区域に入っている土地では、庭木を切る、土を盛る、といったことも、許可の対象になり得ます。区域の外なら、この許可は要りません。

指定されているかどうかは、茨城県の公表資料と、市の窓口で確かめてください。「うちの市には無いだろう」で済ませないでください。指定の有無も、指定の範囲も、確かめるのはこの2か所です。そして指定は変わり得ます——過去に調べた資料や、不動産広告の記載を、そのまま信じないでください。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第6条の安全な擁壁を設けても、次の3つは別に残ります。

似た名前の区域が、この記事には4つ出てきます。混ざりやすいので、先に並べておきます——①災害危険区域(条例が定める区域。この市では②と同じ範囲)/②急傾斜地崩壊危険区域(指定するのは茨城県知事。区域内では住居の建築が原則禁止、切土などに県知事の許可)/③土砂災害特別警戒区域=レッドゾーン(指定するのは茨城県知事。居室のある建物に構造の規制)/④土砂災害警戒区域=イエローゾーン(指定するのは茨城県知事。構造の規制ではなく、警戒避難の区域)。どれも、崖があれば自動的に入るものではありません。入っているかどうかは、市の窓口と、茨城県の土砂災害警戒区域等指定箇所(市町村一覧)で確かめてください。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは茨城県知事です(土砂災害防止法第9条第1項)。区域内で居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です(同法第7条第1項)。条例第6条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第6条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、崖の高さの下限はありません——高さ2メートル以下でも、かかり得ます

レッドゾーンに入っていると、ふつうなら建築確認が要らない小さな建物でも、確認が必要になることがあります。確認申請(かくにんしんせい=建てる前に、計画が法令に合っているかを審査してもらう手続き)が、そこで初めて要ることになる、という意味です。仕組みは、こうです(土砂災害防止法第25条。条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。ただし、これを「過半でなければ確認は要らない」と読んでよいかは、条文からは決まりませんでした——第25条が「みなす」のは建築物であって敷地ではなく、法第91条が適用を定めているのも「この法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定」です。敷地が区域の内外にまたがるなら、目安で決めず、窓口で確かめてください。

増築・改築をするなら、第6条は原則としてかかってきます

これから新しく建てる方は、この節は飛ばして構いません。いま建っている建物を増築・改築・用途変更する方だけ、お読みください。

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。

古河市建築基準条例には、既存建築物のための緩和が置かれています——第62条(既存の建築物に対する制限の緩和)です。第1項から第4項まで、緩和する条を号ごとに列挙する形になっています。その列挙に、第6条(崖)はありません。同じく第61条(一の敷地とみなすこと等による制限の緩和)の列挙(第3条、第5条、第7条、第11条、第12条、第16条、第17条、第22条から第27条まで及び第37条から第39条まで)にも、第6条はありません。つまり、増築・改築などをするなら、崖の第6条は原則としてかかってきます。ただし第6条の義務は「安全な擁壁を設ける」ことなので、既にあるものが安全と確かめられれば足りる場合もあり得ます——個別の当てはめは、建築指導課で確かめてください。

建築基準法の側の緩和も見ておきます。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)だけです——同項の「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項)。同一敷地内の移転か、支障がないと特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築行政を行う市長や知事)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

用途変更(=建物の使い道を変えること)——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます(準用=別の場面にも当てはめて使うこと)。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

ここから先は、条例を守らずに建てた場合の話です。図面を作って、第6条の当てはめを窓口で確かめてから建てれば、この節の話に入らずに済みます。ただし、窓口で聞けば罰が当たらなくなる、という意味ではありません——罰の対象になるかどうかは、実際の計画と工事が条例に適合しているか、誰がその違反に関わったかで決まります。それでも書くのは、「知らなかった」では済まない相手が誰かを、先に知っておいてほしいからです。

(罰則)
第63条 この条例の規定に違反した建築物、工作物又は建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、その建築物、工作物又は建築設備の工事施工者)は、50万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反が建築主、工作物の築造主又は建築設備の設置者の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主、工作物の築造主又は建築設備の設置者に対して同項の罰金刑を科する。

古河市建築基準条例 第63条

この罰則は、条を列挙していません。「この条例の規定に違反した」と包括的に書かれているので、第6条の違反も、第58条(災害危険区域の建築の制限)の違反も、この罰則の対象になり得ます。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いない・従わない施工では工事施工者に替わります。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑が科されます(第63条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも罰金が科されます(第64条の両罰規定)。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主(=工事を発注した人。多くは施主)、工事の請負人(=工事を請け負った工務店や建設会社。下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適用要件を満たせば適合義務は残ります——確認特例(建築基準法第6条の4・同法施行令第10条。条例の第6条とは別のものです)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます。

窓口——古河市建築指導課です。場所は三和庁舎です

  • 条例第6条の当てはめ・確認申請の相談——古河市 建築指導課 〒306-0198 茨城県古河市仁連2065番地(三和庁舎) 電話 0280-76-1511(代表)/ファクス 0280-76-1594。本庁舎ではありません。行く前に、場所を確かめてください
  • 係の分かれ方——建築指導係(建築基準法に基づく許可および認可、建築審査会、中高層建築物)/建築審査係(建築基準法に基づく確認・検査など)/宅地開発係(都市計画法に基づく開発行為の事前協議・申請の受付および許可)。造成の話と、建物の話は、係が分かれています。造成を伴う計画なら、両方に関わることがあります——計画の中身を伝えて、どの係が相談先かを先に確かめてください
  • 開庁時間(庁舎共通)——午前8時30分から午後5時15分。開庁日は月曜日から金曜日(祝日・休日および年末年始〈12月29日から1月3日〉を除く)
  • 急傾斜地崩壊危険区域・土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定——茨城県。区域を指定するのは県知事です。急傾斜地崩壊危険区域内の行為の許可も、県知事が出します(急傾斜地法第7条第1項)。県の担当は茨城県 土木部河川課ダム(〒310-8555 水戸市笠原町978番6/FAX 029-301-1370)。電話は用件で分かれています——急傾斜地崩壊危険区域内の行為の制限は 029-301-4495土砂災害警戒区域等の指定箇所は 029-301-4498(2026年9月6日に県の各ページの問い合わせ欄で確認した番号です)

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは古河市建築指導課の窓口です。

  • ① その土地は古河市内か。古河市内なら、読むのは古河市建築基準条例 第6条です(茨城県建築基準条例の崖の規定は適用されません。県条例第46条の7第1項・県細則第19条)。条番号は第6条です
  • ② 敷地の中や周りに、勾配が30度を超える傾斜地で、高さが2メートルを超えるものがあるか。条文はその崖が誰の土地にあるかを問うていません。隣の土地の崖でも、要件に当たり得ます。造成でできた法面も同じです
  • ③ 起点は、建てる場所と反対側の端。崖の上に建てるなら下端から、崖の下に建てるなら上端から、水平距離が崖の高さの2倍以内か。崖の水平の幅も、この2倍の中に入ります。敷地の造成も対象です
  • ④ かかるなら——安全な擁壁を設ければ、第6条第1項については原則として建てられます。第1項ただし書は「安全上支障がない部分については」なので、崖の部分ごとに見ます
  • ⑤ 第2項の除外に当たるか。崖の上に建てるなら=基礎が崖に影響を及ぼさないこと、の1つだけ。崖の下に建てるなら=主要構造物を鉄筋コンクリート造りとするか、崖と建築物の間に安全な施設を設けるか、の2つ——「安全な施設」は崖の下に建てる場合の道です。判断するのは設計者です
  • ⑥ 崖の上に建てるなら、第3項の排水の措置(崖のかたに沿った排水溝など)が計画に入っているか。第3項にただし書はありません
  • ⑦ 既存の擁壁があるなら、いつ・どの基準で造られたかの資料が残っているか。「擁壁がある」ことは「安全な擁壁がある」ことではありません。高さが2メートルを超える擁壁は、工作物として確認が別に要ります(令第138条第1項第5号・法第88条第1項)
  • ⑧ 急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか。入っていれば、条例第58条により住居の用に供する建築物は原則として建てられません(市長が被害を受けるおそれがないと認めるときを除く)。区域内では、切土・盛土・立木竹の伐採なども県知事の許可の対象です——ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為、区域の指定の際すでに着手している行為、政令で定めるその他の行為は、この許可から除かれます(急傾斜地法第7条第1項ただし書。→急傾斜地崩壊危険区域等における行為の制限について(茨城県)
  • ⑩ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例第61条・第62条の緩和の列挙に、第6条はありません建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります——違反すれば、条例第63条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

  • 古河市建築基準条例(古河市例規集・令和7年4月1日施行の本文。第6条・第57条・第58条・第61条・第62条・第63条・第64条・附則)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第4条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)/建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第10条・第80条の3・第137条の16・第138条第1項第5号)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(この条例の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。レッドゾーン内で建てる場合の考え方は、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

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