白山市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。
先にすることは、3つです。崖の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って白山市建設部建築住宅課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。
①その土地は白山市内ですか。はい=白山市建築基準条例 第5条(崖付近の建築物)です。石川県建築基準条例の関係規定は適用されません(県条例第二条第1項。条文は「この条例の関係規定は、適用しない」という書き方で、県条例の全部が適用されなくなるという意味ではありません)。②第5条は、こう配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるものを「崖」とし、建築物はその崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)から、崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならないと定めています。③義務の形は「離す」です——「擁壁を設けなさい」という書き方にはなっていません。④下端から2倍以上が取れれば、第5条については原則として建てられます。取れないときは、ただし書の3つの事由(崖の地盤が堅固/崖が堅固な擁壁等で保護されている/当該建築物の構造)により市長が安全上支障がないと認めて許可した場合に、同じく第5条については原則として建てられます。⑤ただし、白山市には条例で定める災害危険区域があります(第3条・第4条)。そのほかレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・建築基準法第19条第4項も、別に残ります。(条例は2026年9月5日に原文を確認しました。令和7年4月1日施行の版です)。
白山市内なら、白山市建築基準条例 第5条です

「がけ条例」という名前の条例はありません。白山市では、白山市建築基準条例(平成19年3月23日条例第5号)の第5条(崖付近の建築物)が、崖に近い建築物の決まりです。同条例の第1条は、この条例が建築基準法第39条、第40条、第43条第3項、第56条の2第1項及び第68条の2第1項の規定に基づくものだと定めており、第5条は第3章(建築物の敷地及び構造)に置かれています。
石川県建築基準条例の関係規定は、白山市の区域では適用されません。県条例第二条第1項が、そう定めています。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。白山市内の土地について調べるときは、白山市の条文の数字で読んでください。
(適用の除外)
石川県建築基準条例 第二条
第二条 建築主事を置く市町が、法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においては、この条例の関係規定は、適用しない。
2 第六条から第八条まで、第十四条、第十六条及び第十八条の規定は、都市計画区域以外の区域については、適用しない。
この条は、2つの条件を重ねています。①その市町が建築主事を置く市町であること、②その市町が法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項に基づく条例を定めたこと、の2つです。白山市は、建築主事を置く市町村に当たります——白山市には白山市建築審査会設置条例があり、建築基準法第78条第1項は、建築審査会を置くのは建築主事を置く市町村及び都道府県だと定めているからです。②のほうは、白山市建築基準条例の第1条が、この条例を法第39条・第40条・第43条第3項・第56条の2第1項・第68条の2第1項に基づくものだと定めています。
②で挙がっている条を、もう一度見てください。県条例第二条第1項が挙げているのは、法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項に基づく条例です。法第三十九条(災害危険区域)は、この列挙に入っていません。一方、白山市も自分の条例で災害危険区域を定めています(後述)。どちらの条例で読むことになるのかは、建築住宅課で確かめてください——ここは、この記事で断定できるところではありません。
参考までに、石川県建築基準条例の側も同じ構えです。県条例第三条は、法第三十九条第一項により災害危険区域として指定する区域を「急傾斜地崩壊危険区域及びこれに準ずる地域のうち、知事が指定する区域」とし、指定は告示によってその効力を生ずるとしています。県条例第四条も「災害危険区域内においては、居室のある建築物は、建築してはならない」という書き方です。居室(きょしつ)は、居住・執務・作業などに継続して使う部屋のことです。県と市で、指定のしかたが違います——県は「知事が指定する区域」、白山市は「石川県知事が本市の区域内において指定した急傾斜地崩壊危険区域」。白山市の条文には、市長が改めて指定するという段階がありません。区域の指定を確かめる先は、いずれにせよ石川県になります。
白山市内の土地なら、まず、石川県が指定した急傾斜地崩壊危険区域に入っていないかを確かめてください。そこが出発点です。そのうえで、崖の高さと距離を測る話に進みます。
県条例第三条・第四条が白山市の区域でも重ねてかかるのかは、条文だけでは決められませんでした。県条例第二条第1項の列挙に法第三十九条が入っていない以上、県条例の側の災害危険区域の規定も残り得ます。市条例の第3条・第4条だけを見て終わりにせず、県条例第三条・第四条の扱いも、あわせて建築住宅課で確かめてください。以下は市条例の条文にそって書きますが、それで白山市内の災害危険区域の規定を読み切ったかどうかは、確かめていません。
(崖付近の建築物)
白山市建築基準条例 第5条
第5条 建築物は、崖(こう配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の下端から崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、市長が崖の地盤が堅固であり、若しくは崖が堅固な擁壁等で保護されており、又は当該建築物の構造により、安全上支障がないと認めて許可した場合は、この限りでない。
条文を探すときは、字に注意してください。白山市の条例は、見出しも本文も「崖」という漢字を使っています。例規集を「がけ」と平仮名で検索すると、この条には行き当たりません。
条例全体の並びも、見ておくと迷いません。白山市建築基準条例は7つの章でできています——第1章 総則(第1条・第2条)、第2章 災害危険区域(第3条・第4条)、第3章 建築物の敷地及び構造(第5条〜第7条)、第4章 特殊建築物(第8条〜第17条)、第5章 日影規制(第18条)、第6章 地区整備計画の区域(第19条)、第7章 罰則(第20条・第21条)。崖に関わる条は、第2章と第3章に分かれています。第5条(崖付近の建築物)だけを見て終わりにすると、もっと重い第4条(災害危険区域の建築の制限)を見落とします。
第5条は、都市計画区域の外でも効きます
白山市建築基準条例には、適用区域を都市計画区域内に限る条があります。
(適用区域)
白山市建築基準条例 第2条
第2条 第6条から第8条まで、第14条、第16条及び第18条の規定は、都市計画区域内に限り、適用する。
この列挙に、第5条はありません。挙げられているのは第6条(敷地の路地状部分の幅員)、第7条(長屋の出入口)、第8条(興行場等の敷地と道路との関係)、第14条、第16条、第18条です。崖の第5条は、都市計画区域の内外を問わずかかります。
白山市は、海側の平野から白山の山あいまで、南北に長い市です。山間部の土地は都市計画区域の外にあることが多く、「都市計画区域の外だから、建築の決まりはゆるい」と思われがちです。けれど崖の第5条は、そこにも効きます。そして、都市計画区域の外では建築確認が要らない規模の建物もありますが、確認が要らないことと、条例が適用されないことは別です——確認申請が不要でも、条例の適合義務は残ります。
どこからが「崖」か——30度超・高さ3メートル超。2つとも満たしたときです
条文は、崖を「こう配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるもの」と定義しています。30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは、当たりません(どちらも「超える」です)。2つとも満たしたときだけ、第5条の崖です——40度でも高さ2.5メートルなら崖ではなく、5メートルでも25度なら崖ではありません。
ただし、「崖ではない」は「何もしなくてよい」ではありません。建築基準法第19条第4項は、建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合に、擁壁の設置その他安全上適当な措置を求めています。この規定に、崖の高さや角度の下限はありません。高さ2.5メートルの急斜面の直下でも、かかり得ます。
白山市の条文には、崖を土質で分ける定めも、段になった崖を一体とみなす定めも、書かれていません。自然にできた崖か、人が切ったり盛ったりした崖かの区別も書かれていません。「うちは岩だから外れる」とは、条文からは読めません。土質は、崖に当たるかどうかではなく、ただし書の「崖の地盤が堅固であり」のほうで効きます——そしてそれは、市長が認めて許可することがらです。自分で判定するものではありません。
距離の起点は「崖の下端」だけ。上に建てるか下に建てるかで入れ替わりません
条文は、「崖の下端から崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」とだけ書いています。崖の上か下かで、起点を入れ替えていません。たとえば高さ4メートルの崖なら、下端から8メートル。崖の下に建てるときも、崖の上に建てるときも、測る起点は下端です。
崖の上に建てるときが、間違えやすいところです。崖の上に立つと、足元は上端です。けれど条文が起点にしているのは下端——つまり、斜面の下の足元から水平に測って、そこから8メートルの位置よりさらに崖から遠ざかったところに建てることになります。崖の上端から8メートル、ではありません。下端がどこかを断面図で決めることが、最初の山場になります。
そして条文は「建築物は、崖の下端から……水平距離を保たなければならない」と書いています。母屋だけの話ではありません。離れ、車庫、物置も建築物です。母屋は8メートル取れても、車庫が取れない——という配置は起こります。棟ごとに見ることになります。
いっぽうで、第5条が名指ししているのは「建築物」だけです。敷地を造成する行為そのものについては、この条は触れていません。だからといって、土を切ったり盛ったりが自由という意味ではありません——盛土や切土は、盛土規制法や、区域に入っていれば急傾斜地法第7条第1項第3号(のり切、切土、掘さく又は盛土)の許可の話になり得ます。「崖を削って平らにすれば条例が外れる」と考える前に、その工事自体に許可が要らないかを確かめてください。
2倍が取れないとき——市長の許可を受ければ、第5条については原則として建てられます
道はあります。第5条ただし書は、市長が次のいずれかにより安全上支障がないと認めて許可した場合には、2倍の距離を保たなくてよいとしています。
- 崖の地盤が堅固であること
- 崖が堅固な擁壁等で保護されていること
- 当該建築物の構造により、安全上支障がないこと
これを満たして許可を受ければ、第5条については、原則として建てられます。「原則として」と書くのには、理由があります——これは第5条の義務を満たすという意味で、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。そして、崖の規定を満たしても、建築基準法の一般の制限は別に残ります——用途地域による用途や建ぺい率・容積率の制限、高さの制限(斜線制限など)、接道の義務。「崖の条例が通った=その計画が建てられる」ではありません。
3つの事由の読み方に、注意が要ります。条文は「市長が……安全上支障がないと認めて許可した場合」と書いています。3つのどれかに当てはまれば自動的に外れる、という書き方ではありません。①3つのいずれかに当たること、②市長が安全上支障がないと認めること、③許可すること——この3つがそろって、はじめて外れます。「堅固な擁壁があるから大丈夫」と自分で判断して設計を進めると、申請の段階でやり直しになります。
そして、この許可は建築確認とは別の手続です。許可を先に受けてから確認申請へ、という順番になります。いつ出せばよいか、何を添えるかは、建築住宅課の建築指導係に早めに聞いてください——設計が固まってからでは、間に合わないことがあります。相談に行くときは、現況の測量図・断面図・配置案と、既存の擁壁があればその記録と写真を持って行き、ほかに要る資料を建築指導係に聞いてください。確認申請そのものは、建築基準法第6条の2により指定確認検査機関に出すこともできます。けれど、第5条ただし書の許可を出せるのは市長だけです。民間の機関に確認申請を出す計画でも、許可は白山市から受けることになります。「民間に出すから市には行かなくていい」ではありません。
既存の擁壁があるときは、「堅固」を誰がどう確かめるかが問題になります。条文は「堅固な擁壁等で保護されており」としか書いていません。古い石積みがあるから安心、ではありません。擁壁の許可・確認の記録(宅地造成の許可、開発許可、建築基準法第88条第1項の工作物の確認)と検査済証、そして現況——割れ、はらみ、傾き、水抜き穴の状態——を、建築士に見てもらってください。記録が見つからないと、安全性を示すために追加の調査や擁壁の改修を求められることがあります。その費用も、土地の値段に関わります。
白山市には、条例で定める災害危険区域があります(第3条・第4条)
ここは、第5条より重い規定です。白山市建築基準条例の第2章は、建築基準法第39条第1項の災害危険区域にあてられています。
(指定)
白山市建築基準条例 第3条・第4条
第3条 法第39条第1項の規定により災害危険区域として指定する区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により石川県知事が本市の区域内において指定した急傾斜地崩壊危険区域とする。
(建築の制限)
第4条 災害危険区域内においては、居室のある建築物は、建築してはならない。ただし、市長が次の各号のいずれかに該当する場合で、安全上及び避難上支障がないと認めて許可したときは、この限りでない。
(1) 当該建築物の基礎及び主要構造部の構造が鉄筋コンクリート造又はこれに類するものであるとき。
(2) 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条第3項に規定する急傾斜地崩壊防止工事の施工により、当該建築物が被害を受けるおそれがないとき。
読み方は、こうです。石川県知事が白山市内で急傾斜地崩壊危険区域を指定すると、その区域はそのまま白山市の災害危険区域になります。そして災害危険区域内では、居室のある建築物は、建築してはならないのが原則です。第5条の「2倍離す」よりも、はるかに強い制限です。
ただし、道はあります。市長が2つの号のいずれかに該当する場合で、安全上及び避難上支障がないと認めて許可したときは、この限りでないとされています——①基礎及び主要構造部の構造が鉄筋コンクリート造又はこれに類するものであるとき、②急傾斜地崩壊防止工事の施工により、当該建築物が被害を受けるおそれがないとき。①は、一般的な木造のままでは通りにくい、ということです。ただし条文は「鉄筋コンクリート造又はこれに類するもの」と書いています——何が「これに類するもの」に当たるかは、構造の内容を示して市に確かめることになります。いずれにせよ、建てられるかどうかだけでなく、建て方と工事費が変わります。②は工事が施工されていることが前提で、区域に指定されていることだけでは足りません。工事の実施状況は、石川県に確かめることになります。
急傾斜地崩壊危険区域では、建てること以外にも許可が要ります。急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項は、区域内で次の行為をするには、原則として石川県知事の許可が必要としています——①水を放流し、又は停滞させる行為その他水のしん透を助長する行為 ②ため池、用水路その他の急傾斜地崩壊防止施設以外の施設又は工作物の設置又は改造 ③のり切、切土、掘さく又は盛土 ④立木竹の伐採 ⑤木竹の滑下又は地引による搬出 ⑥土石の採取又は集積 ⑦前各号に掲げるもののほか、急傾斜地の崩壊を助長し、又は誘発するおそれのある行為で政令で定めるもの。「木を切る」「土を掘る」「水を流す」が、原則として許可の対象です。庭を造る、水はけを直す、樹を伐る——建てたあとの暮らしにも効いてきます。
ただし、同項にはただし書があります。条文は「ただし、非常災害のために必要な応急措置として行なう行為、当該急傾斜地崩壊危険区域の指定の際すでに着手している行為及び政令で定めるその他の行為については、この限りでない。」と続きます。この記事は、政令で定める「その他の行為」の中身までは確かめていません。自分の計画が許可の要る行為に当たるかどうかは、石川県の砂防担当窓口に確かめてください。
言葉の意味も、法律が決めています。同法第2条第1項は「急傾斜地」とは、傾斜度が30度以上である土地をいうとし、第3項は「急傾斜地崩壊防止工事」とは、急傾斜地崩壊防止施設の設置又は改造その他……急傾斜地崩壊危険区域内における急傾斜地の崩壊を防止するための工事をいうとしています。ここで「30度以上」と書かれていることに気づいてください。白山市建築基準条例第5条の崖は「30度を超える」——30.0度ちょうどのとき、法律の急傾斜地には当たり、条例の崖には当たらない、という関係になります。2つの制度は、別々に働きます。そして、区域を指定するのは県知事で、指定は公示によってその効力を生ずるとされています(同法第3条第4項)。
だから、土地を見に行く前に地図で当たりを付けてください。急傾斜地崩壊危険区域に入っているかどうかは、石川県の土砂災害情報システム「石川県SABOアイ」や、県の砂防課の資料で当たりを付けられます。入っているなら、その土地は「崖から離せば建つ土地」ではなく、「居室のある建物は原則として建てられない土地」です。買う前に知ることです。
レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります
- 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは石川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
- 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第5条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第5条が外れる理由になりません
- 急傾斜地崩壊危険区域——石川県知事が指定します。白山市では、これがそのまま条例の災害危険区域になります(条例第3条)。土砂災害警戒区域とは別の制度なので、両方を確かめてください
- 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、崖の高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、こう配30度以下でも、かかり得ます
レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物(同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます。白山市には都市計画区域の外の土地があります。「都市計画区域外だから確認は要らない」と決めつけないでください。「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。レッドゾーンに入っているなら、まず石川県に区域の指定を、建築住宅課に計画の扱いを確かめてください。そのうえで、レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。
土地を買う前に、どこで何が調べられるか
調べる順番があります。白山市の崖のことは、市の条例と県の区域指定の2つに分かれています。先に見るのは、県の区域です——急傾斜地崩壊危険区域に入っていれば、そこは条例の災害危険区域で、居室のある建築物は原則として建てられません。第5条の「2倍離す」を検討する前に、この一段があります。
- 急傾斜地崩壊危険区域・土砂災害警戒区域・特別警戒区域——石川県が指定します。石川県SABOアイ(石川県土砂災害情報システム)で当たりを付け、最終確認は県で。区域の指定は公示によって効力を生じます(急傾斜地法第3条第4項)ので、地図が最新とは限りません
- 条例の本文——白山市例規集(第10編 建設/第1章 土木・建築)。見出しも本文も「崖」の漢字です
- 崖の高さ・こう配・下端の位置——設計を担当する建築士に相談してください。必要な測量図・断面図をどう用意するか、誰が測るかは、計画の内容によって変わります。地図やハザードマップでは出ません
そして、費用の話を先にしてください。白山市の第5条は「離す」義務なので、敷地が広ければ配置で解決できる場合があります。取れないときは、ただし書の許可を目指すことになり、そこで擁壁の新設・やり替え、地盤調査、構造の割増しが出てきます。この差は、土地の値段に反映されるべきものです。契約の前に、建築士に「この土地で、この間取りなら、いくら余分にかかるか」を出してもらってください。買ったあとでは、その金額を土地の値段や契約の条件に反映することが難しくなります。
罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます
(罰則)
白山市建築基準条例 第20条
第20条 第4条から第17条まで及び第19条の規定のいずれかに違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工した場合においては、当該建築物の工事施工者)は、50万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において、その違反が建築主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主に対して同項の刑を科する。
第5条は「第4条から第17条まで」に含まれます。つまり罰則の対象です。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いないで工事を施工した場合は工事施工者に替わります。違反が建築主の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主にも同項の刑——すなわち50万円以下の罰金が科されます(第2項)。災害危険区域の第4条も、この列挙に入っています。
第21条は両罰規定です——法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人にも同条の刑を科する。ただし、この条にはただし書があります——「法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し、相当の注意及び監督が尽くされたことの証明があったときは、その法人又は人については、この限りでない。」
是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)
罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます。命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。
そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適用要件を満たせば適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます。
既存の建物の増築・改築・用途変更
既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。白山市建築基準条例の条項目次を見た範囲では、「既存の建築物に対する適用の除外」や「制限の緩和」に当たる条は見当たりませんでした(第1章総則、第2章災害危険区域、第3章建築物の敷地及び構造、第4章特殊建築物、第5章日影規制、第6章地区整備計画の区域、第7章罰則)。ただし、専用の条が見当たらないことは、緩和が無いことの証明にはなりません——法や施行令、市の規則、条例の附則による扱いが別にあり得ますし、この記事はそこまで確かめていません。増築・改築をするなら、第5条は原則としてかかってくると考えて、早めに建築住宅課に相談してください。
建築基準法の側の緩和も見ておきます。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。
用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。
窓口——白山市建設部 建築住宅課です
- 条例第5条の当てはめ、第5条ただし書の許可、確認申請——建設部 建築住宅課 建築指導係 076-274-9561(本庁3階。〒924-8688 石川県白山市倉光二丁目1番地。ファクス 076-274-4188)。土地を買う前に、まずここです
- 開発・住宅に関すること——建設部 建築住宅課 開発指導係・住宅係 076-274-9567
- 急傾斜地崩壊危険区域・土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定——石川県。区域を指定するのは県知事です。石川県土木部 砂防課 076-225-1751(〒920-8580 金沢市鞍月1丁目1番地。ファクス 076-225-1752)。区域は石川県土砂災害情報システム「石川県SABOアイ」でも公表されています
売買契約の前に、専門家と確かめること
確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。すでに契約を進めている方、もう土地をお持ちの方も、手遅れではありません——設計を始める前に、同じことを確かめてください。早いほど、間取りと費用の選べる幅が残ります。買ったあとでは、擁壁や構造の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは白山市建築住宅課の窓口です。
- ① その土地は白山市内か。白山市内なら、読むのは白山市建築基準条例 第5条です(石川県建築基準条例の関係規定は適用されません。県条例第二条第1項)
- ② まず、急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか。入っていれば、そこは条例の災害危険区域です(条例第3条)——居室のある建築物は、原則として建てられません(第4条)。許可を受ける道は、基礎及び主要構造部を鉄筋コンクリート造又はこれに類するものとするか、急傾斜地崩壊防止工事の施工により被害を受けるおそれがないことです。この確認を、いちばん先にしてください。なお、石川県建築基準条例の第三条・第四条も、白山市の区域で重ねてかかるのかどうかは、この記事では確かめきれませんでした——市条例の第3条・第4条だけで済ませず、県条例の側の扱いも窓口で確かめてください
- ③ 敷地の中や周りに、こう配が30度を超える傾斜地で、高さが3メートルを超えるものがあるか。2つとも満たしたときだけ、第5条の崖です
- ④ 建てる場所は、崖の下端から崖の高さの2倍以上か。起点は下端だけで、崖の上に建てるか下に建てるかで入れ替わりません。母屋だけでなく、離れ・車庫・物置も建築物です。取れるなら、第5条については原則として建てられます
- ⑤ 取れないなら——ただし書の許可です。崖の地盤が堅固/崖が堅固な擁壁等で保護されている/当該建築物の構造。3つのどれかに当たるだけでは足りません——市長が安全上支障がないと認めて許可することが要件です。許可は確認申請とは別の手続なので、早めに相談してください
- ⑥ 既存の擁壁があるなら、記録と現況の確認から。宅地造成の許可、開発許可、建築基準法第88条第1項の工作物の確認と検査済証。あわせて、割れ・はらみ・傾き・水抜き穴の状態を建築士に見てもらってください。記録が見つからない擁壁は、そのままでは安全性の根拠にできないことがあります——追加の調査や改修が要るかどうかを、建築士と窓口で確かめてください
- ⑦ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。石川県SABOアイで当たりを付け、最終確認は石川県で。急傾斜地崩壊危険区域とは別の制度なので、両方を見てください
- ⑧ 都市計画区域の外でも、第5条はかかります。条例第2条の「都市計画区域内に限り適用する」の列挙に、第5条はありません。「都市計画区域外だから関係ない」ではありません
- ⑨ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。白山市建築基準条例の条項目次を見た範囲では、既存建築物のための緩和に当たる条は見当たりませんでした——ただし、それは緩和が無いことの証明にはなりません。法や規則、附則による扱いが別にあり得ます
- ⑩ 第5条に当たらない斜面でも、法第19条第4項は残ります。高さ3メートル以下でも、こう配30度以下でも、擁壁の設置その他安全上適当な措置が要ることがあります
- ⑪ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第20条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます
参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)
- 白山市建築基準条例(白山市例規集・令和7年4月1日施行。第1条・第2条・第3条・第4条・第5条・第20条・第21条)
- 建築審査会(白山市。2026年9月6日に確認。白山市建築審査会設置条例があることを、白山市が建築主事を置く市町村であることの根拠として、建築基準法第78条第1項とあわせて見ました)
- 石川県建築基準条例(石川県例規集・第一条・第二条・第三条・第四条)
- 建築住宅課(白山市公式・所在地、係ごとの電話番号、ファクス)/建築指導に関すること(白山市公式)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第6条・第6条の4・第6条の2・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第78条第1項・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)/建築基準法施行令(同・第10条・第80条の3・第137条の16)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第9条・第25条)/急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(同・第2条第1項・第2条第3項・第3条第1項・第3条第4項・第7条第1項)
擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第5条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。