神奈川県秦野市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

秦野市のがけは、第5条

秦野市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。崖(がけ)の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、仲介業者・売主に、擁壁や造成の既存の資料(確認済証・検査済証、造成の許可と完了検査の書類、測量図)を求めたうえで、建築士に現地の確認と、現況の測量図・断面図・配置案の作成を依頼する。そのうえで、その図面を持って秦野市の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は秦野市内ですか。はい=まず秦野市建築基準条例 第5条です第4条・土砂災害の区域・法第19条第4項は、別に確認します——⑤へ)。神奈川県建築基準条例は適用されません(同条例第53条第1項)。②秦野市の第5条は、高さ3メートルを超える崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)から、または崖の下に建てるなら崖の上端からの水平距離が、崖の高さの2倍以内のときに、安全な擁壁を設けなければならないと定めています。③この「2倍以内」は、規定がかかるかどうかの線引きです——2倍を超えて離れていれば、第1項本文はかかりません(外れるのは第1項本文だけです——災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は、別に確認してください)。けれど2倍以内に入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です。④安全な擁壁を設ければ、第5条第1項については原則として建てられます擁壁が安全かどうかを決めるのは、あなたではありません——測量図・断面図・構造の資料と現況をそろえ、市の窓口と確認の手続で確かめます)。第1項ただし書の2つの号に当たると、その当たった部分についてだけ本文が適用されません。第2項に当たる場合は、第1項が適用されません——外れる範囲が違います。⑤ただし秦野市には、災害危険区域の第4条という高さの下限が無い規定と、高さ2メートル超の崖を対象にした市の指導方針があります。レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・法第19条第4項も、別に残ります。(条例・解説は2026年9月5日に原文を確認しました)。

秦野市内なら、秦野市建築基準条例 第5条です

秦野市内なら、秦野市建築基準条例 第5条です
秦野市建築基準条例 第5条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という名前の条例はありません。秦野市では、建築基準法第39条・第40条などに基づく秦野市建築基準条例(平成12年12月18日条例第26号)の第5条(崖付近の建築物)が、崖に近い建築物の決まりです。神奈川県建築基準条例は、秦野市の区域では適用されません——県条例第53条第1項が、法第4条第1項または第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条または法第43条第3項に基づく条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては適用しない、と定めています。この第1項だけで、県条例は全部が外れます。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。秦野市内の土地について調べるときは、秦野市の条文の数字で読んでください。

(適用の除外)
第53条 この条例は、法第4条第1項又は第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条又は法第43条第3項の規定に基づき条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては、適用しない。

神奈川県建築基準条例 第53条第1項(2026年4月1日施行の改正後)

この第53条第1項は、2026年4月1日に変わりました——ただし、秦野市内の土地について、読む条例は変わりません。改正の前も後も、秦野市の条例で読みます。改正前は「この条例(第2条の2及び第2条の3の規定を除く。)は…」という括弧書き付きで、その2条——急傾斜地崩壊危険区域を災害危険区域として指定する第2条の2と、区域内の建築物の構造を定める第2条の3——を外す条件は、第2項が別に定めていました。2026年4月1日の改正で、第2条の2・第2条の3は両方とも削除され、第1項の括弧書きも、その2条を外していた第2項も削除されました(第59条第1項の罰則の列挙からも「第2条の3、」が削られています)。いまは、第53条第1項だけで、県条例は秦野市の区域では全部が外れます。

いまの第53条にも第2項・第3項はあります——ただし中身が入れ替わりました。改正前の第3項・第4項が繰り上がったもので、自然公園の特別地域などの区域について一部の条を適用しない、という規定です。第1項で県条例が外れる話とは、別の規定です。県の解説は、第2条の2を削除した理由を、土砂災害特別警戒区域の指定が令和3年度までに完了しており、法により制限を受ける区域が整理されたためと書き、第2条の3の削除はその区域解除に伴うものとしています。なお、2026年3月31日までにした行為の罰則は、改正前の条文で判断されます(改正条例の附則2「この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」)。

なお秦野市は、法第40条に基づく第5条に加えて、法第39条第1項に基づく第3条(災害危険区域の指定)と、同条第2項に基づく第4条(災害危険区域内の建築物)も自分の条例に持っています。崖のことも、災害危険区域のことも、秦野市の条例で読みます

(崖付近の建築物)
第5条 高さ3メートルを超える崖の下端(崖の下にあっては、崖の上端)からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成するときは、崖の形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて、安全な擁壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する部分については、この限りでない。
(1) 崖の形状又は土質により、安全上支障がないもの
(2) 崖の上部の盛土の部分で、その高さが2.5メートル以下及び斜面の勾配が45度以下であり、かつ、その斜面を芝又はこれに類するもので覆ったもの

秦野市建築基準条例 第5条第1項

どこからが「崖」か——勾配30度超・高さ3メートル超。土質で崖から外す定めはありません

秦野市の条文は、「崖」を「勾配が30度を超える傾斜地」と定義しています(第4条の括弧書き。同じ定義が第5条にも及びます)。そのうえで第5条は、高さ3メートルを超えるものを対象にしています。30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは、当たりません(条文は「超える」です)。市の解説も、「崖」とは地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいう、と書いています。

秦野市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)など、土質を理由に「崖」から除く定めがありません。土質は、崖に当たるかどうかではなく、第1項ただし書第1号(安全上支障がないもの)のほうで効きます。「うちは岩だから外れる」とは読めません。土質の見分けと、勾配・高さの測定は、建築士に見てもらってください。

距離の起点は、崖の上に建てるか下に建てるかで入れ替わります

がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか

条文は「崖の下端(崖の下にあっては、崖の上端)からの水平距離」と書いています。崖の上に建てるなら、起点は下端崖の下に建てるなら、起点は上端です。建てる場所によって、測り始める点が入れ替わります。市の解説は、この「崖付近」を崖の崩壊等により影響を受ける範囲と説明し、崖の高さの2倍以内としています。たとえば高さ4メートルの崖なら、その起点から8メートルです。どちらの点から測るのかを最初に決めることが、山場になります。

がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか

そして対象は、建築物を建てる場合だけではありません。条文は「建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成するとき」と書いています——造成の段階から、この規定はかかります。

安全な擁壁を設ければ、第5条第1項については原則として建てられます

擁壁だけが道ではありません。条文は、崖と当該建築物との間に適当な流土止めを設けたときにも、この義務を適用しないと書いています(第5条第2項)。擁壁で受けるか、あいだで受けるか、建物側で受けるか——どれが自分の敷地に合うかは、設計者に見積りを並べてもらって比べてください。

安全な擁壁を設ければ、道はあります。まず見るのは、2倍以内に入るかどうかです。2倍を超えて離れていれば、第1項本文はかかりません(外れるのは第1項本文だけです——災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は、別に確認してください)。入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です。崖の形状もしくは土質、または建築物の位置・規模もしくは構造に応じて、安全な擁壁を設ける——これを満たせば、第5条第1項については、原則として建てられます「安全な擁壁」かどうかは、擁壁があることだけでは決まりません——崖の形状・土質、建築物の位置・規模・構造に応じた設計を、まず設計者が図面と構造の資料で示し、確認申請を要する計画では建築主事等または指定確認検査機関がその適合を審査します。運用の疑義は市の窓口へ。「原則として」と書くのには、理由があります——これは第5条第1項の義務を満たすという意味で、災害危険区域、土砂災害の区域、建築基準法第19条第4項は、別に確認してください。

「安全な擁壁」の考え方について、市の解説は、盛土規制法(市の解説の本文では宅地造成等規制法)に基づく「宅地防災マニュアルの解説」や、神奈川県建築行政連絡協議会の「擁壁の取扱い」によることができる、と書いています。高さ2メートルを超える擁壁は、建築基準法施行令第138条第1項第5号により法第88条第1項の工作物に指定されており、建築主事等または指定確認検査機関の確認を受ける必要があります——擁壁そのものにも手続きがあります。

ただし書は2つ。「当該部分については」と書かれています

第5条第1項ただし書は、2つの号のどれかに当たる場合に、当該部分については本文を適用しないと定めています。崖全体でひとまとめに判定するのではなく、部分ごとに見る書き方です。当たった部分については本文が外れますが、当たらない部分には残ります。

  • 第1号(安全上支障がないもの)——「崖の形状又は土質により、安全上支障がないもの」。市の解説は、土質試験及び斜面の安定計算を行う等により安全性が確かめられる必要がある、としています。崖の形状、土質、排水状況、道路や工作物などの近接状況も判断の要素に挙げられています
  • 市の解説は、旧宅地造成等規制法施行令第6条の別表第1を載せています。擁壁を要しない勾配の上限擁壁を要する勾配の下限が土質ごとに示され、軟岩(風化の著しいものを除く)は60度/80度、風化の著しい岩は40度/50度、砂利・真砂土・関東ローム・硬質粘土その他これらに類するものは35度/45度です。注書きは土質が把握できない場合や盛土の場合は30度以下とする、としています
  • 第2号(崖の上部の盛土の部分)——その高さが2.5メートル以下および斜面の勾配が45度以下であり、かつその斜面を芝またはこれに類するもので覆った、崖の上部の盛土の部分。外れるのはその盛土の部分だけで、下にある既存の崖の部分には本文が残ります

第2項に当たれば、第1項は適用されません

2 前項の規定は、崖の上に建築物を建築する場合において、その建築物の基礎が崖に影響を及ぼさないとき、又は崖の下に建築物を建築する場合において、その建築物の主要構造部(崖崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く。)を鉄筋コンクリート造とし、又は崖とその建築物との間に適当な流土止めを設けたときは、適用しない。

秦野市建築基準条例 第5条第2項
  • 崖の上に建てる場合——「基礎が崖に影響を及ぼさないとき」。市の解説は、深基礎により建築する場合で基礎の根入れ(=基礎を地中に埋め込む深さ)が安息角(あんそくかく=土が自然に安定する角度)の範囲内に入っている場合をいう、としています。杭基礎の場合は杭長の3分の1の範囲がその範囲内に入っていること。同じ解説は、この緩和は木造や軽量鉄骨造など比較的軽量の建築物(1平方メートル当たり45キロニュートン程度以下)に限られ、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造は別途構造計算による検討が必要と打ち消しています
  • 崖の下に建てる場合——主要構造部(崖崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く)を鉄筋コンクリート造とするか、崖とのあいだに適当な流土止めを設ける。市の解説は、基礎の立上げの高さは3メートルを限度とする、としています

第2項が外すのは第1項です。次に見る第3項(排水)は、別に残ります。

崖の上に建てるなら、排水の措置も要ります(第5条第3項)

3 高さ3メートルを超える崖の上にある建築物の敷地には、崖の上部に沿って排水溝を設ける等の崖への流水又は浸水を防止するための適切な処置をとらなければならない。

秦野市建築基準条例 第5条第3項

第3項は崖の上の話です。市の解説は、原則として崖の上部に排水溝の設置が必要としつつ、崖の上部の勾配を崖とは反対側にするなど、崖への流水等を防止するための適当な措置を講じた場合は必ずしも設置を要しない、としています。第3項にただし書はありません。

高さ2メートルを超える崖にも、市の指導方針があります

「3メートル以下だから何もしなくてよい」とは読めません。秦野市建築基準条例の解説には、巻末資料として「崖付近に建築する建築物の指導方針」が収められています。この方針は、建築基準法第19条第4項および条例第5条に基づき、崖付近に建築される建物についての一般的な指導の方針を定めたものです。

方針の第2条は「崖」を地表面の勾配が30度を超える土地で高さが2メートルを超えるものと定義しています。方針の解説は、条例が高さ3メートルを超える崖について規定しているのに対し、この方針では高さが2メートルを超える崖付近の建築物についても一定の安全性を確保する措置が必要なことから基準を設けた、と書いています。方針は、条例の定義が自然崖(法面)を対象としているのに対し、自然崖および隣地にある安全性に疑問がある土留めなどを崖に見立てて安全性の検討を行うことができるものとし、開発許可を受けて構築された崖には適用されないとしています。

  • 方針 第3条(崖の上又は下に建築する場合)——盛土規制法(方針の本文では宅地造成等規制法)に定められた技術的基準による擁壁等を設置し、安全を図る。ただし、崖の上に建てる建築物の基礎を鉄筋コンクリート造とし、崖の下端から水平距離で崖の高さの0.7倍以上離し、かつ崖の下端と建築物の基礎とを結ぶ線の勾配を45度以下としたもの、または崖の下で流土止め等を設置したもの・崖に直接面する外壁を鉄筋コンクリート造としたものは、この限りでない
  • 方針 第4条(既存の土留がある場合)——土留の構造が鉄筋コンクリート造・コンクリート間知練積み造・石造で、はらみや沈下及び風化等がないものであること等の条件のもとで、第3条によらない扱いが示されています
  • 方針 第6条(擁壁の構造等)——高さが3メートルを超える練積み造擁壁は原則として谷積みとすること、高さが2メートルを超える鉄筋コンクリート造擁壁は構造計算にあたり地震時の水平力を加算すること、高さが0.6メートルを超え2メートル以下の擁壁は鉄筋コンクリート造・重力式コンクリート造または練積み造とすること

方針は条例そのものではありませんが、市の指導の物差しとして公開されています。高さ2メートル超の崖がある土地では、条例の3メートルだけを見て安心しないでください。

災害危険区域(第3条・第4条)——高さの下限がありません

(災害危険区域の指定)
第3条 本市は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により神奈川県知事が指定した本市における急傾斜地崩壊危険区域を、法第39条第1項の規定による災害危険区域として指定する。

秦野市建築基準条例 第3条

区域を指定するのは神奈川県知事で、秦野市はそれをそのまま災害危険区域としています。市の解説は、この法指定区域が神奈川県告示によって指定され、令和3年12月1日現在で20区域と書いています(指定は変わり得ます——計画の時点で確かめてください)。また、急傾斜地法と土砂災害防止法の所管部局は、秦野市の場合神奈川県平塚土木事務所であり、これらの区域内で建築物を建築する場合には神奈川県知事の許可が必要となる、としています。

(災害危険区域内の建築物)
第4条 前条の規定により指定する災害危険区域内において、居室を有する建築物を建築するときは、次条に規定するもののほか、その建築物の基礎及び主要構造部は、鉄筋コンクリート造又はこれに類する構造にし、かつ、その居室は、崖(勾配が30度を超える傾斜地をいう。同条において同じ。)に直接面してはならない。ただし、崖崩れによる被害を受けるおそれがないときは、この限りでない。

秦野市建築基準条例 第4条

第4条の崖には、高さの下限がありません。括弧書きは「勾配が30度を超える傾斜地」だけで、市の解説も崖の高さは関係しませんと書いています。対象は居室を有する建築物(居室=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)で、市の解説は規模・用途に関係なくかかるとしています。「崖に直接面していない」とは、崖の上端よりも上の部分に床がある階には適用されない、という意味です。

ただし書の「崖崩れによる被害を受けるおそれがないとき」について、市の解説は4つを挙げています——建築物が面している崖すべてが神奈川県による急傾斜地の崩壊対策工事済で、県知事の許可をとった場合崖上の建築物で基礎の根入れ等が安息角以深とした場合建築物が崖下端から崖の高さの2倍以上離れている場合、その他崖崩れに関して対策を講じ被害を受けるおそれのない場合。どれも、素人が目で決められるものではありません。

急傾斜地崩壊危険区域では、のり切・切土・掘削・盛土工作物の設置または改造、立木竹の伐採、土石の採取・集積など、急傾斜地法第7条第1項が挙げる行為に神奈川県知事の許可が要ります。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第5条の擁壁を設けても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは神奈川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第5条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第5条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物が崖崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、崖の高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます。市の指導方針も、この条を根拠のひとつに挙げています

レッドゾーンでは、通常なら確認申請が要らない規模でも、確認申請が必要になる場合があります(申請の回数が増えるという意味ではなく、確認の対象になる建築物が広がるという意味です)。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。なお、法第6条第1項第1号は別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で床面積の合計が200平方メートルを超えるもの、第2号は二以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超える建築物です。

区域に入っているかどうかは、神奈川県の告示図書(法定図書)をもとに、県または市の窓口で確認してください。指定するのは県知事なので、地図サービスの表示と告示が食い違うことがあります。自分の見た地図だけで判断しないでください——敷地の境界と区域の境界がどう重なるかは、測量図と告示図書を突き合わせて決まります。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

既存の建物の増築・改築・用途変更——第4条・第5条は、条例の緩和の列挙に入っていません

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。

秦野市建築基準条例 第69条(既存建築物に対する制限の緩和)は、第1項から第6項まで、対象になる条を項ごとに列挙する形です。その列挙に、第4条も第5条もありません。つまり、増築・改築・大規模な修繕・大規模な模様替えをするなら、崖の第5条は原則としてかかってきます。ただし第5条の義務は「安全な擁壁を設ける」ことなので、既にあるものが安全な擁壁と確認できれば足りる場合もあり得ます——個別の当てはめは、建築指導課で確かめてください。

なお、条例第68条(仮設建築物に対する制限の緩和)は、法第85条第6項または第7項に規定する仮設建築物について「第5条から第8条まで」等を適用しないと定めています。これは仮設建築物に限った規定です。第4条は、この列挙に入っていません。

建築基準法の側の緩和も見ておきます。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません(同条第2項・第3項も同じです)。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(=許可・認定や是正命令を受け持つ人。秦野市の場合は市長)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。なお条例第69条第6項は、用途を変更する場合に第10条から第13条まで及び第15条を適用すると定めており、そこにも第4条・第5条はありません

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

第4条と第5条第1項・第3項は、罰則の対象です。秦野市建築基準条例 第75条第1項は、これらの規定に違反した建築物・工作物・建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、または設計図書に従わないで工事を施工した場合は工事施工者)を、50万円以下の罰金に処すると定めています。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則として設計者です。違反行為が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ罰金刑が科されます(第75条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも罰金が科されます(第75条第3項の両罰規定)。第5条第2項は、この列挙に入っていません。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、適合の義務は審査の有無にかかわらず残ります

窓口——秦野市都市部 建築指導課です

  • 条例第5条の当てはめ・確認申請の相談——秦野市都市部 建築指導課 建築指導担当 0463-83-0883(秦野市桜町1-3-2)。土地を買う前に、まずここです
  • 急傾斜地崩壊危険区域の範囲・許可——神奈川県。市の解説は、秦野市の場合の所管を神奈川県平塚土木事務所と案内しています
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(告示図書)——神奈川県。区域を指定するのは県知事です
  • 確認申請そのものの提出先——建築主事等(秦野市)のほか、指定確認検査機関にも出せます。どちらに出しても、条例の適合義務は同じです

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは秦野市建築指導課です。

  • ① その土地は秦野市内か。秦野市内なら、読むのは秦野市建築基準条例です(神奈川県建築基準条例は適用されません。県条例第53条第1項
  • ② 敷地の中や周りに、勾配が30度を超える傾斜地があるか。高さ3メートル超なら第5条高さ2メートル超なら市の指導方針、そして災害危険区域内なら高さを問わず第4条が視野に入ります
  • ③ 建てる場所は、起点から2倍以内か。起点は、崖の上に建てるなら下端、下に建てるなら上端です。2倍を超えて離れていれば、第5条第1項本文はかかりません。敷地の造成も対象です
  • ④ かかるなら——安全な擁壁を設ければ第5条第1項については原則として建てられます高さ2メートルを超える擁壁は、令第138条第1項第5号・法第88条第1項の確認が別に要ります(提出先は建築主事等または指定確認検査機関)
  • ⑤ 第1項ただし書の2つの号のどれかに当たるか。「当該部分については」なので、崖の部分ごとに見ます。第2号で外れるのは盛土の部分だけです
  • ⑥ 第2項に当たるか。崖の上なら基礎が崖に影響を及ぼさないこと、崖の下なら主要構造部を鉄筋コンクリート造とするか流土止めを設けること。市の解説は、崖の上の緩和を比較的軽量の建築物に限っています
  • ⑦ 高さ3メートルを超える崖の上に、建築物の敷地があるなら——第3項の排水の処置(崖の上部に沿って排水溝を設ける等)が計画に入っているか。第3項にただし書はありません
  • ⑧ 既存の擁壁・土留があるなら、検査済証等の資料と現況の確認から。市の指導方針は、はらみや沈下及び風化等がないものという条件を置いています
  • ⑨ 災害危険区域(=急傾斜地崩壊危険区域)に入っていないか。入っていれば第4条がかかり、崖の高さが3メートル以下でも、居室を有する建築物の基礎・主要構造部の構造と、居室の向きが制限されます。区域内の切土・盛土・工作物の設置には、急傾斜地法第7条第1項の県知事の許可が別に要ります
  • ⑩ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。レッドゾーンでは居室を有する建築物に令第80条の3の構造規制がかかります。「敷地の過半」だけで決まる話ではありません——建築物の用途・規模、区域とのかかり方、土砂災害防止法第25条と法第91条の関係を、市の建築の窓口で確かめてください(自分で判定しないでください)。区域に入るかどうかは、神奈川県の告示図書(法定図書)をもとに、県または窓口で確認——自分の見た地図だけで判断しないでください
  • ⑪ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例第69条の緩和の列挙に、第4条も第5条もありません
  • ⑫ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第75条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認。神奈川県条例の改正(第2条の2・第2条の3の削除と第53条の改正)は、2026年9月6日に県公報で確認しました

  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第4条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第5条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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