神奈川県平塚市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

平塚市のがけは、第5条

平塚市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。崖の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って平塚市建築指導課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は平塚市内ですか。はい=平塚市建築基準条例 第5条(崖付近の建築物)です——神奈川県建築基準条例は適用されません(同条例第53条第1項2026年3月31日までは、県条例の第2条の2・第2条の3〔災害危険区域〕だけが第1項では外れず、第2項で外れる形でしたが、この2条も第2項も2026年4月1日に削除されました——あとの節で書きます)。②平塚市の第5条は、高さ3メートルを超える崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)——崖の下に建てるときは、崖の上端(じょうたん=斜面の高いほうの肩)——からの水平距離が崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、または建築物の敷地を造成する場合に、崖の形状もしくは土質または建築物の位置・規模もしくは構造に応じて安全な擁壁を設けなければならないと定めています。③起点は、崖の上に建てるか下に建てるかで入れ替わります。ここを読み違えると、距離の答えが変わります。④この「2倍以内」は、規定がかかるかどうかの線引きです——2倍を超えて離れていれば第1項本文はかかりません。入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です。安全な擁壁を設ければ、第5条第1項については原則として建てられます。第1項ただし書の2つの号や、第2項の2つの場合に当たる道もあります。⑤ただし、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・災害危険区域法第19条第4項は、別に残ります。⑥そして平塚市には、高さ2メートルを超える崖を対象にした市の指導方針があります。(条例・解説は2026年9月5日に原文を確認しました。神奈川県建築基準条例の2026年4月1日改正は、2026年9月6日に県公報・新旧対照表・県の解説で確認しました)。

平塚市内なら、平塚市建築基準条例 第5条です

平塚市内なら、平塚市建築基準条例 第5条です
平塚市建築基準条例 第5条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という名前の条例はありません。平塚市では、建築基準法第40条などに基づく平塚市建築基準条例(平成18年10月1日条例第33号)の第5条(崖付近の建築物)が、崖に近い建築物の決まりです。神奈川県建築基準条例は、平塚市の区域では適用されません——県条例第53条第1項が、法第4条第1項または第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条または法第43条第3項に基づく条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては適用しない、と定めています。2026年3月31日までは、この第1項に括弧書きがあり、第2条の2・第2条の3の2条だけは第1項では外れませんでした——その2条も、括弧書きも、それを外していた第2項も、2026年4月1日に削除されています(次の節)。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。なお、ここで入れ替わるのはこの記事が扱う崖付近の建築物などについての話で、県が所管する土砂災害の区域の指定などは別に残ります。平塚市内の土地について調べるときは、平塚市の条文の数字で読んでください。

(適用の除外)
第53条 この条例は、法第4条第1項又は第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条又は法第43条第3項の規定に基づき条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては、適用しない。

神奈川県建築基準条例 第53条第1項(2026年4月1日施行の現行)

平塚市は、法第40条に基づく第5条(崖付近の建築物)に加えて、法第39条第1項に基づく第3条(災害危険区域の指定)と、同条第2項に基づく第4条(災害危険区域内の建築物)も自分の条例に持っています(法第39条は、第1項が区域の指定第2項が区域内の建築の制限と分かれています)。崖のことも、災害危険区域のことも、平塚市の条例で読みます。

県条例の災害危険区域の条は、2026年4月1日に削除されました。2026年3月31日までは、第53条第1項「この条例(第2条の2及び第2条の3の規定を除く。)は……適用しない」という書き方で、第2条の2・第2条の3の2条だけは第1項では外れず、その2条を外すのは第2項(条件は市が法第39条第1項又は第2項に基づく条例を定めたとき)でした。平塚市は第3条・第4条をその根拠で持っているので、そのころも結論は同じ——県条例は平塚市の区域では適用されませんでした。2026年4月1日の改正で、第2条の2・第2条の3は削除され、第53条第1項の括弧書きも、その2条を外していた同条第2項も、罰則の第59条第1項にあった「第2条の3、」も削られています(神奈川県公報 令和7年12月23日 号外第70号・神奈川県条例第84号/県の新旧対照表)。いまは、第53条第1項だけで、県条例は丸ごと外れます——手元の資料が「第53条第1項・第2項の両方で外れる」と書いていたら、それは2026年3月31日までの条文です。ただし、いまの第53条にも第2項・第3項はあります。旧第3項・第4項が繰り上がったもので、自然公園法の特別地域などの区域についての別の規定です。

県の解説は削除の理由をこう書いています——土砂災害防止法の施行から土砂災害特別警戒区域の指定までの間、崖崩れによる被害を防止するため急傾斜地崩壊危険区域を災害危険区域としてきたが、特別警戒区域の指定が令和3年度までに完了し、法により制限を受ける区域が整理されたため。県が所管する区域でも、「急傾斜地崩壊危険区域=災害危険区域」ではなくなりました。ただし平塚市の災害危険区域は、市の条例(第3条・第4条)で別に定められています——県条例の削除で無くなるものではありません。また急傾斜地崩壊危険区域そのものも残っています(急傾斜地法第7条第1項の知事の許可。窓口は建築の窓口とは別で、所在地を所管する県の土木事務所・治水事務所です。担当課の名前は事務所によって違います)。なお改正条例の附則は、「この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」と定めています。

(崖付近の建築物)
第5条 高さ3メートルを超える崖の下端(崖の下にあっては、崖の上端)からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合には、崖の形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて、安全な擁壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する部分については、この限りでない。
(1) 崖の形状又は土質により安全上支障がない部分
(2) 崖の上部の盛土の部分で、高さが2.5メートル以下、斜面の勾配が45度以下であり、かつ、その斜面を芝又はこれに類するもので覆ったもの

平塚市建築基準条例 第5条第1項

どこからが「崖」か——勾配30度超・高さ3メートル超。硬岩盤を除く定めはありません

平塚市の条文は、「崖」を「勾配(こうばい=斜面の角度)が30度を超える傾斜地」と定義しています(第4条の括弧書き。第5条もこの定義によります)。そのうえで、高さが3メートルを超えるものが第5条第1項の対象です。市の解説も「本条でいう『崖』とは勾配が30度を超える傾斜地で高さが3メートルを超えるものをいいます」と書いています。30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは、当たりません(条文は「超える」です)。

平塚市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)を「崖」から除く定めがありません。土質は、崖に当たるかどうかではなく、第1項ただし書第1号(崖の形状又は土質により安全上支障がない部分)のほうで効きます。市の解説は、この第1号を、具体的には砂利、真砂土(まさど)、関東ローム層及び硬質粘土その他これらに類するもので、勾配が35度以下、かつ、土質試験等に基づく地盤の斜面安定計算により崖の安全性が確かめられたもの等としています。土の名前は、現地の見た目だけでは決まりません——調査の資料と設計者の判断で確かめてください「うちは岩だから外れる」とは読めません。土質の見分けと、勾配・高さの測定は、建築士に見てもらってください。

距離の起点は、崖の上に建てるか下に建てるかで入れ替わります

がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか

条文は、「崖の下端(崖の下にあっては、崖の上端)からの水平距離」と書いています。この括弧書きが、この条文のいちばんの山場です。

がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
  • 崖の上に建てるとき——起点は崖の下端。下端から水平に測って、崖の高さの2倍以内なら第1項本文がかかります
  • 崖の下に建てるとき——起点は崖の上端。上端から水平に測って、崖の高さの2倍以内なら第1項本文がかかります

市の解説の図1(崖付近)も、「崖の上端から2H」と「崖の下端から2H」の2つを並べて示しています(Hは崖の高さ)。市の解説は、「崖付近」とは崖の崩壊等により影響を受ける範囲をいい、崖の高さの2倍以内としている、と書いています。どちらの点から測るかで、同じ敷地でも答えが変わります。上端と下端がどこかを図面で決めることが、最初の山場になります。

そして対象は、建築物を建てる場合だけではありません。条文は「建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合」と書いています——造成の段階から、この規定はかかります。

安全な擁壁を設ければ、第5条第1項については原則として建てられます

安全な擁壁を設ければ、道はあります。まず見るのは、2倍以内に入るかどうかです。2倍を超えて離れていれば、第1項本文はかかりません(外れるのは第1項本文だけです——災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は、別に確認してください)。入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です。崖の形状もしくは土質、または建築物の位置・規模もしくは構造に応じて安全な擁壁を設ける——これを満たせば、第5条第1項については、原則として建てられます「安全な擁壁」に当たるかどうかを、ご自身で決める必要はありませんし、決められません——設計者(建築士)が図面と資料で整理し、条例の当てはめは市の窓口で確かめます。「原則として」と書くのには、理由があります——これは第5条第1項の義務を満たすという意味で、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。

「安全な擁壁」の中身は、市の指導方針(後述)に書かれています。指導方針第3条は、建築物を崖の上または下に建築する場合は盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法。指導方針の本文では旧法名で書かれています)に定められた技術的基準による擁壁等を設置し、安全を図らなければならないとしています(ただし書があり、各号のいずれかに当たるものは、この限りでないとされています)。指導方針第6条は、これに加えて、高さが3メートルを超える練積み造(ねりづみぞう=石やコンクリートブロックをモルタル等で固めながら積む形式)の擁壁は原則として谷積み(たにづみ=石やブロックの積み方の一種。どの積み方かの判断は設計者・施工者の領分です)とすること、高さが5メートルを超える鉄筋コンクリート造擁壁は構造計算にあたり地震力の水平力を加算すること、高さが0.6メートルを超える擁壁は鉄筋コンクリート造、重力式コンクリート造又は練積み造とすることなどを定めています。

擁壁を設けなくてよい場合——ただし書の2号と、第2項の2つ

第5条第1項ただし書は、2つの号のどれかに当たる部分について、本文を適用しないと定めています。崖全体でひとまとめに判定するのではなく、部分ごとに見る書き方です。

  • 第1号(形状・土質で安全)——崖の形状又は土質により崖が崩壊する危険性がなく安全上支障がない部分。市の解説は、具体的には砂利、真砂土、関東ローム層及び硬質粘土その他これらに類するもので、勾配が35度以下、かつ、土質試験等に基づく地盤の斜面安定計算により崖の安全性が確かめられたもの等としています。土の名前は、現地の見た目だけでは決まりません——調査の資料と設計者の判断で確かめてください
  • 第2号(上部の盛土)——崖の上部の盛土の部分で、高さが2.5メートル以下、斜面の勾配が45度以下であり、かつその斜面を芝又はこれに類するもので覆ったもの。市の解説の図2は、この号が盛土の部分についてのものであることを示しています

さらに第2項は、次のどちらかに当たるときは第1項の規定を適用しないと定めています。市の解説は、原則的には安全な擁壁により崖崩れを防止しなければならないが、本項では建築物が崖崩れにより崩壊しない対策を講じた場合には前項の規定を受けないことを定めている、と説明しています。

  • 崖の上に建築物を建築する場合——当該建築物の基礎が崖に影響を及ぼさないとき。市の指導方針は、崖の上に建築する建築物の基礎を鉄筋コンクリート造(布基礎等)とし、崖の高さの0.7倍以上離し、かつ崖の下端と建築物の基礎とを結ぶ線の勾配を45度以下としたものを、指導方針じたいの擁壁の義務を外すただし書(第3条第1号)として挙げています。条例第5条第2項に当たるかどうかは、これとは別に判断されます
  • 崖の下に建築物を建築する場合——当該建築物の主要構造部(崖崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く)を鉄筋コンクリート造としたとき、もしくは崖と当該建築物との間に適当な流土止め(りゅうどどめ=崩れてきた土を受け止める壁)を設けたとき。市の指導方針は、流土止めは崖の下端から1.5メートル以上離すことが望ましいこと、外壁を開口部のない鉄筋コンクリート造としてもよい部分は原則高さ1.5メートル以下とすることなどを図で示しています

この2号と2つの場合は、素人が自分で判定するための一覧ではありません。どれに当たるかを確認するのは設計者(建築士)で、条例の当てはめの相談先は平塚市建築指導課です。

崖の上に建てるなら、排水の措置も要ります(第5条第3項)

3 高さ3メートルを超える崖の上にある建築物の敷地には、崖の上部に沿って排水溝を設ける等崖への流水又は浸水を防止するための適当な措置を講じなければならない。

平塚市建築基準条例 第5条第3項

第3項は崖の上の話です。市の解説は、崖の上にある建築物の敷地には、雨水・汚水等の崖面への流下や擁壁の裏側または崖への浸透などにより崖崩れを誘発しないように排水溝等の排水設備を設ける必要があるとしています。第1項ただし書や第2項に当たって擁壁が要らない場合でも、第3項は別の義務です——第3項には、ただし書がありません。

条例の外に、市の指導方針があります——高さ2メートルを超える崖が対象です

平塚市には、条例とは別に「崖付近に建築する建築物等に係る指導方針」(平成19年4月1日、平塚市まちづくり政策部建築指導課)があります。指導方針は自らを、建築基準法第19条第4項及び条例第5条の規定に基づき、崖付近に建築される建築物及びその敷地の安全性を確保するための一般的な指導方針と位置づけています。

この指導方針の「崖」は、地表面の勾配が30度を超える土地で高さが2メートルを超えるものです。市の解説は「条例では高さが3メートルを超える崖について規定していますが、この『方針』では、高さが2メートルを超える崖付近の建築物についても一定の安全性を確保する措置が必要なことから基準を設けたものです」と書き、さらに「指導方針では、崖下の崖付近の範囲を崖の下端から崖の高さの2倍としており、条例の適用はないが、指導方針の適用を受ける場合がありますので留意してください」と注意しています。

指導方針は条例ではありません——罰則の対象ではなく、行政指導の基準です。それでも、高さ2メートル超3メートル以下の崖でも、市の窓口では指導方針の話が出ます「3メートルを超えていないから何もない」とは考えないでください。なお、指導方針は都市計画法第36条の規定による検査済証の交付を受けた擁壁等については適用されないとしています。

災害危険区域(第3条・第4条)——令和7年4月1日現在、市内に9箇所の指定があります

平塚市建築基準条例 第3条は、建築基準法第39条第1項の災害危険区域を、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項により神奈川県知事が本市の区域内において指定した急傾斜地崩壊危険区域としています。市の解説は、令和7年4月1日現在、市内で9箇所が指定されていると書いています。市の解説は、これらの区域内で建築物を建築する場合には神奈川県知事(所管は神奈川県平塚土木事務所)の許可が必要だとしています。指定は変わり得ます——計画の時点で、市の窓口で確かめてください。

第4条は、災害危険区域内において居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有する建築物を建築する場合に、第5条に規定するもののほか、その建築物の基礎及び主要構造部を鉄筋コンクリート造又はこれに類する構造とし、かつその居室は崖に直接面していないものでなければならない、と定めています(当該建築物が崖崩れによる被害を受けるおそれがない場合はこの限りでない、というただし書があります)。市の解説は、対象を規模・用途を問わず居室を有する建築物とし、「崖に直接面して」とは崖の高さよりも下に床がある階の崖に面する部分をいい、崖の上端よりも上の部分に床がある階には適用されないと説明しています。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第5条の擁壁を設けても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは神奈川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第5条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第5条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物が崖崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、崖の高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます。市の指導方針は、自らを「建築基準法第19条第4項及び条例第5条の規定に基づき」定めたものと位置づけており、市の解説は、高さ2メートルを超える崖まで対象を広げた理由を「一定の安全性を確保する措置が必要なことから基準を設けたもの」と書いています

レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。なお、法第6条第1項第1号は別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの、第2号は二以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超える建築物です。

区域に入っているかどうかは、平塚市のハザードマップで当たりを付けられます。最終確認は、神奈川県の告示図書(法定図書)で行ってください。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

既存の建物の増築・改築・用途変更——第5条は、条例の緩和の列挙に入っていません

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。

平塚市建築基準条例の第75条(既存建築物に対する制限の緩和)は、9つの項に分けて緩和する条を列挙する形です。その列挙のどこにも、第5条(崖付近の建築物)はありません。つまり、増築・改築などをするなら、崖の第5条は原則としてかかってきます。ただし第5条の義務は「安全な擁壁を設ける」ことなので、既にあるものが安全な擁壁と判断できれば足りる場合もあり得ます——個別の当てはめは、市の窓口で確かめてください。

なお、条例第74条(仮設建築物に対する制限の緩和)は、法第85条第6項又は第7項の許可を受けた仮設興行場等について第5条から第18条までなどを適用しないとしています。これは仮設の興行場等の話で、一般の住宅の話ではありません。

建築基準法の側の緩和も見ておきます。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません(同条第2項・第3項も同じです)。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(=許可・認定や是正命令を受け持つ役所。平塚市では市長)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

第77条 第4条、第5条第1項若しくは第3項、第8条第1項、第10条、(中略)の規定に違反した場合における当該建築物、工作物又は建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物、工作物又は建築設備の工事施工者)は、50万円以下の罰金に処する。

平塚市建築基準条例 第77条第1項(中略は引用者)

第5条第1項と第3項は、どちらも罰則の対象です。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いない・従わない施工では工事施工者に替わります。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑が科されます(第77条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも刑が科されます(第77条第3項の両罰規定)。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、適合の義務は審査の有無にかかわらず残ります。確認申請の提出先は、建築主事等のほか指定確認検査機関もあります。

窓口——平塚市まちづくり政策部建築指導課です

  • 条例第5条の当てはめ・確認申請の相談——建築指導課建築審査担当 0463-21-9732(〒254-8686 平塚市浅間町9番1号 本館6階)
  • 建築指導に関すること——建築指導課建築指導担当 0463-21-9731
  • 建築物の安全に関すること——建築指導課建築安全担当 0463-20-8860
  • 災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域)内の建築の許可——神奈川県平塚土木事務所(市の解説が所管として挙げています)
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(告示図書)——神奈川県。区域を指定するのは県知事です

まぎらわしいものが、もうひとつあります。平塚市建築基準条例には第8条(地下室建築物の階数の制限)もありますが、こちらは建築基準法第50条に基づき、一定の用途地域内で高低差が3メートルを超える共同住宅・長屋の階数を制限するもので、この記事の崖の規定とは別です。斜面地の土地を調べるときは、どちらの話をしているのかを窓口で確かめてください。

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは平塚市建築指導課の窓口です。

  • ① その土地は平塚市内か。平塚市内なら、読むのは平塚市建築基準条例 第5条です(神奈川県建築基準条例は適用されません。県条例第53条第1項かつて例外だった第2条の2・第2条の3は、2026年4月1日に削除されました災害危険区域は、平塚市の条例 第3条・第4条で見ます
  • ② 敷地の中や周りに、勾配が30度を超える傾斜地で、高さが3メートルを超えるものがあるか。硬岩盤を除く定めはありません。高さ2メートルを超え3メートル以下でも、市の指導方針の対象です
  • ③ 起点は、崖の上に建てるなら「崖の下端」、崖の下に建てるなら「崖の上端」です。そこから水平に測って崖の高さの2倍以内なら、第1項本文がかかります。敷地の造成も対象です
  • ④ かかるなら——安全な擁壁を設ければ第5条第1項については原則として建てられます。市の指導方針は、盛土規制法(指導方針の本文では旧法名)の技術的基準によることに加えて、高さ0.6メートルを超える擁壁は鉄筋コンクリート造・重力式コンクリート造又は練積み造とすることなどを定めています
  • ⑤ 第1項ただし書の2つの号、または第2項の2つの場合に当たるか。ただし書は「該当する部分については」なので、崖の部分ごとに見ます。第2項は、崖の上と崖の下で中身が分かれています
  • ⑥ 高さ3メートルを超える崖の上に建築物の敷地を置くなら第3項の排水の措置(崖の上部に沿った排水溝など)が計画に入っているか。第3項にただし書はありません。条文が書いているのは「崖の上にある建築物の敷地」なので、建築物を伴わない造成だけの場合にどう扱われるかは、市の窓口で確かめてください
  • ⑦ 既存の土留めがあるなら、資料と現況の確認から。市の指導方針第4条は、土留の構造が鉄筋コンクリート造・コンクリート間知練積み造・石造であり、はらみや沈下及び風化等がないもので、同条の各号のいずれかに当たる場合は、前条(指導方針第3条)の規定は適用しないとしています
  • ⑧ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。市のハザードマップで当たりを付け、最終確認は神奈川県の告示図書
  • ⑨ 災害危険区域に入っていないか。市の解説は、令和7年4月1日現在、市内で9箇所が指定されていると書いています。入っていれば第4条により、居室を有する建築物は、基礎及び主要構造部を鉄筋コンクリート造又はこれに類する構造とし、崖に直接面する居室は置けませんただし、その建築物が崖崩れによる被害を受けるおそれがない場合は、この限りでない、というただし書があります——当たるかどうかは、自分で決めずに窓口で確かめてください。区域内での建築には、神奈川県知事(神奈川県平塚土木事務所)の許可が要ります
  • ⑩ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例第75条の緩和の列挙に、第5条はありません
  • ⑪ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。確認申請の提出先は建築主事等のほか指定確認検査機関もあります。違反すれば、条例第77条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

  • 平塚市建築基準条例(平塚市公式・条例本文のPDFと「平塚市建築基準条例及び同解説」令和7年4月1日改訂のPDF。第3条・第4条・第5条・第74条・第75条・第77条、および巻末の「崖付近に建築する建築物等に係る指導方針」)
  • 神奈川県公報 令和7年12月23日 号外第70号(神奈川県条例第84号=神奈川県建築基準条例の一部を改正する条例。「第2条の2及び第2条の3を削る。」「第53条第1項中『(第2条の2及び第2条の3の規定を除く。)』を削り、同条中第2項を削り、第3項を第2項とし、第4項を第3項とする。」「第59条第1項中『第2条の3、』を削る。」/附則1に施行期日=令和8年4月1日、附則2に罰則の経過措置)/神奈川県建築基準条例 新旧対照表(令和7年12月23日改正・県公式。現行の第53条第1項は、これで確認しました)/神奈川県建築基準条例第3条等の解説(令和8年3月31日・県建築指導課。削除の理由は、これで確認しました
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第4条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第50条・第85条・第86条の7・第87条・第91条・第98条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第5条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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