石川県金沢市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

金沢市のがけは、第2条

金沢市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。崖の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って金沢市建築指導課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地が金沢市内なら、読む決まりは金沢市建築基準条例 第2条(崖付近の建築物)です崖付近の建築物については、石川県建築基準条例の関係規定は適用されません(県条例第二条第1項)——外れるのは「この条例の関係規定」で、条例の全部ではありません災害危険区域の第三条・第四条は、法第39条に基づく規定です——あとの節で書きます。②第2条は、勾配が30度を超える傾斜地で、高さが3メートルを超えるものを「崖」とし、建築物はその崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)から崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならないと定めています。③義務の形は「離す」です——擁壁を設けなさい、という書き方にはなっていません。④下端から2倍以上が取れれば第2条については原則として建てられます——2倍が取れても、建築確認・建築基準法第19条第4項・災害危険区域・土砂災害の区域は、別に確認が要ります。取れないときは、ただし書の3つの事由(崖の地盤が堅固/崖が堅固な擁壁等で保護/当該建築物の構造)により安全上支障がないと認められる場合に、同じく第2条については原則として建てられます(この場合も、別の確認は同じように残ります)。⑤ですから、災害危険区域レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・建築基準法第19条第4項は、別に残ります。(条例・規則は2026年9月5日に原文を確認しました)。

金沢市内なら、金沢市建築基準条例 第2条です

金沢市内なら、金沢市建築基準条例 第2条です
金沢市建築基準条例 第2条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という名前の条例はありません。金沢市では、金沢市建築基準条例(昭和36年4月1日条例第6号)の第2条(崖付近の建築物)が、崖に近い建築物の決まりです。崖付近の建築物については、石川県建築基準条例の関係規定は金沢市の区域では適用されません——県条例第二条第1項が、建築主事を置く市町が法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においてはこの条例の関係規定は適用しない、と定めているからです。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。金沢市内の土地について調べるときは、金沢市の条文の数字で読んでください。

ただし、外れるのは「この条例の関係規定」で、県条例の全部ではありません。第二条第1項が挙げているのは法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項の3つです。県条例の第一条(趣旨)は、根拠として法第三十九条も挙げており、災害危険区域の第三条・第四条は、その法第三十九条に基づく規定です。県条例の側の災害危険区域の規定がどう扱われるかは、金沢市の建築指導課で確かめてください。

(適用の除外)
第二条 建築主事を置く市町が、法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においては、この条例の関係規定は、適用しない。

石川県建築基準条例 第二条第1項

金沢市は、自分の条例に崖の条を置いています。金沢市建築基準条例の第1条は、この条例が建築基準法第40条又は第50条、第43条第3項、第56条の2に基づくものだと定めていて、崖の第2条は法第40条(条例による制限の付加)によるものです。

(崖付近の建築物)
第2条 建築物は、崖(勾配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の下端から崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、崖の地盤が堅固であり、若しくは崖が堅固な擁壁等で保護されており、又は当該建築物の構造により、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。

金沢市建築基準条例 第2条

条文を探すときは、字に注意してください。金沢市の条例は、見出しも本文も「崖」という漢字を使っています。市の例規集を「がけ」と平仮名で検索すると、この条には行き当たりません。

そして第2条は、都市計画区域の外でも効きます。金沢市建築基準条例には、都市計画区域内に限って適用する条があります——第11条「この章の規定は、都市計画区域内に限り適用する。」。ただし、この第11条は第3章(都市計画区域内の建築物の敷地構造設備及び建築物と道路との関係)にかかるもので、崖の第2条は第2章(建築物の敷地及び構造)にあります。都市計画区域の外だから外れる、という条文にはなっていません。

どこからが「崖」か——勾配30度超・高さ3メートル超。硬岩盤を除く定めはありません

「崖」の意味は、第2条の括弧書きの中にあります。条件は2つ——①勾配(こうばい)が30度を超える傾斜地で、②その高さが3メートルを超えるもの。条文は「超える」なので、30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは当たりません

金沢市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)を「崖」から除く定めがありません。土質による除外も、自然の斜面か人が造ったのり面かの書き分けも、この括弧書きには書かれていません。「うちは岩だから外れる」とは、この条文からは読めません。土質は、崖に当たるかどうかではなく、次に出てくるただし書(崖の地盤が堅固)のほうで扱われる形になっています。勾配と高さの測定、土質の見分けは、建築士に見てもらってください。

同じ定義は、市の規則にも出てきます。金沢市建築基準法施行規則 第2条第1号は、確認申請書に添える図書として、崖に近接して建築する場合の図書を求めています。

(1) 崖(勾配が30度を超える傾斜地で高さ3メートルを超えるものをいう。)に近接して建築物を建築する場合は、崖の上下端から当該建築物までの水平距離、崖の形状及び土質等を示す図書

金沢市建築基準法施行規則 第2条第1号

ここは、金沢市で図面をそろえるときの要点です。条例の第2条が測れと言っているのは下端からの水平距離ですが、規則が図書に求めているのは「崖の上下端から当該建築物までの水平距離」——上端と下端の両方です。あわせて崖の形状土質等も示すことになっています。建築士に頼む図面は、①上下端からの水平距離、②崖の形状、③土質等の3つが軸になります。

距離の起点は「崖の下端」——上に建てても下に建てても入れ替わりません

上に建てても下に建てても、起点は下端です
上に建てても下に建てても、起点は下端です

第2条は、「崖の下端から崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」とだけ書いています。崖の上に建てるか下に建てるかで、起点を入れ替える書き方をしていません。崖の上に建てる場合も、崖の下に建てる場合も、測る起点は下端で、そこから水平距離で崖の高さの2倍。高さ4メートルの崖なら8メートル以上、高さ6メートルなら12メートル以上で、そこまで離せば第2条は満たせます

崖の上に建てるときが、間違えやすいところです。敷地から見えているのは上端の際で、下端は斜面の下——敷地の外や、他人の土地にあることもあります。それでも条文が測れと言っているのは下端からの水平距離です。図面では、断面を描いて崖の下端を平面に落としてから、下端からの距離を確かめてください。

測る先がどこか(外壁の外面か、柱の外面か、軒先か)を金沢市が示した資料は、見つけられませんでした(2026年9月6日までに当たった範囲です)。市の条例と規則の本文には、その定めがありません。そこは建築指導課に確かめてください

対象の建築物は、用途で絞られていません。条文は「建築物は、」で始まります——居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)があるかどうか、住宅かどうかを問わない書き方です。倉庫でも車庫でも、建築物であれば当たります。ここでいう「建築」には、新築だけでなく増築・改築・移転も含まれます(建築基準法第2条第13号)。

下端から2倍以上を取れば、原則として建てられます(第2条)

道はあります。第2条が求めているのは距離を保つことで、一定の範囲の中なら擁壁を設けよ、という形ではありません。崖の下端から、2倍以上の水平距離が取れれば第2条については原則として建てられます「原則として」と書くのには、理由があります——2倍以上を取れば第2条の距離の義務は満たせますが、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。

そして2倍の距離が取れていても、それで安全の検討が終わるわけではありません。建築物が崖崩れ等による被害を受けるおそれがある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりませんこの規定に、崖の高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます。

2倍が取れないとき——ただし書の3つの事由

2倍の距離が取れないとき、頼るのは第2条のただし書です。事由は3つ——①崖の地盤が堅固であること、②崖が堅固な擁壁等で保護されていること、③当該建築物の構造によること。このいずれかにより「安全上支障がないと認められる場合」に、距離の規定が外れます3つのどれかにより安全上支障がないと認められるなら、2倍が取れなくても第2条については原則として建てられます

ここは、読み間違えやすいところです。3つの事由のどれかに当たるだけでは、足りません。条文は「〔3つの事由〕により、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない」という形で、事由と「認められること」が重なっています。誰がどう認めるのかは、条文に書かれていません——金沢市の第2条のただし書には、別個の許可の手続が明記されていません。確認申請の対象となる計画では、原則として審査の中で適合性が確かめられます(確認の特例で、条例の規定の審査が省かれる場合があります(省かれるのは、特定行政庁が規則で定めた規定(とくていぎょうせいちょう=許可・認定や是正命令を受け持つ役所。建築主事等を置く市町村ではその市町村長、それ以外は都道府県知事)に限られます。令第10条第三号ハ・第四号ハ)——省かれても、適合の義務は残ります)。ただし書を使う計画は、着工前に建築指導課へ確かめてください。

②の「堅固な擁壁等で保護されており」で通すなら、何をもって安全性を示すかを先に決めます。既にある擁壁について、どの現況調査・計算書・許可の資料で示すかは、市と個別に協議することになります。古い石積みがあるから安心、ではありません。また、高さ2メートルを超える擁壁を新たに設けるなら、建築基準法施行令第138条第1項第5号により建築基準法第88条第1項の工作物としての確認の対象になり得ます——擁壁そのものの手続きが別に立ちます。擁壁を新しく設ける場合の技術基準を金沢市が示した文書も、見つけられませんでした(同じ範囲です)——そこも窓口へ。

災害危険区域——金沢市の条例には、この章がありません

金沢市建築基準条例には、災害危険区域の章がありません。第1条が引くのは建築基準法第40条・第50条・第43条第3項・第56条の2で、法第39条(災害危険区域)を引いていません。章立ても、第1章 総則/第2章 建築物の敷地及び構造/第3章 都市計画区域内の建築物の敷地構造設備及び建築物と道路との関係/第4章 罰則で、災害危険区域の章は置かれていません。

災害危険区域に当たるかどうかを、自分で判定しないでください。崖の近くの敷地なら、当たるか分からない場合も含めて、市の建築指導課と、石川県土木部建築住宅課(076-225-1778)の両方に所在地の分かる資料と、区域図・計画図を持って確かめてください。この記事だけでは、金沢市内に指定された区域があるかどうかを断定できません。

なぜ両方なのか——県条例第二条第1項が県条例を外す条件として挙げているのは法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項の3つで、法第三十九条(災害危険区域)は入っていません。条文どおり読めば、金沢市でも県条例の第三条・第四条(災害危険区域の指定と、その区域内の建築の制限)は外れないように読めます。石川県も、災害危険区域は建築基準法第39条第1項に基づき石川県建築基準条例第3条第1項の規定により指定されている、と自分のページに書いています。ただし、金沢市内に指定された区域があるかどうかは、この記事では確かめきれませんでした(県が公開している告示の写しは画像のPDFで、文字を機械で取り出せませんでした)。だから、市と県の両方に聞いてください。

なお、急傾斜地崩壊危険区域内での切土・盛土・工作物の設置などは、条例とは別に、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第2条の距離を取っても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは石川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第2条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第2条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物が崖崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です

金沢市の条例には、レッドゾーンを理由に崖の規定を外す定めが見当たりません。条例と規則の全文を機械で検索したところ、「土砂災害」「特別警戒」「第80条の3」はいずれも0件でした。つまりレッドゾーンの中でも外でも第2条は同じようにかかり、レッドゾーンの中なら、その上に土砂災害防止法の規制が重なります。第2条は居室の有無を問わず建築物について判定し、令第80条の3は居室を有する建築物にかかります——両方を通すことになります。

レッドゾーンでは、ふつうなら建築確認が要らない規模の建物でも、確認が要ることがあります。当たるかどうかは自分で決めず区域図・配置図・建物の用途を持って、確認申請の提出先(市の建築指導課、または指定確認検査機関)に確かめてください。仕組みはこうです。土砂災害防止法第25条(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。

石川県内の指定は、県の石川県土砂災害情報システム(通称SABOアイ)で確認できます。市町村のハザードマップは避難の確認には有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります——境界と数値は、県が公表する指定の図書で確かめてください。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

既存の建物の増築・改築・用途変更——条例の側に緩和の定めがありません

金沢市建築基準条例の全文を検索したところ、「既存不適格」「仮設」「第85条」「用途変更」の語は、いずれも0件でした。条例の側に定めが無い以上、使えるのは建築基準法の側の仕組みです。

①既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)——条例の規定の施行・改正のときに適法に存在し、その施行・改正によって適合しなくなった建築物等には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません(条例の全部が外れるという意味ではありません)。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません——この条例には届きません(同条第2項・第3項も同じです)。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(=許可・認定や是正命令を受け持つ側。金沢市の場合は市長)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

②用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用されます。号ごとに結論が違います——第1号(増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を伴う場合)は、法第3条第3項で判断します。第2号(政令で指定する類似の用途相互間で、修繕・模様替をしないか、それが大規模でない場合)は、その用途変更だけを理由に条例が遡って適用されることはありません。第3号は法第48条(用途地域)に関する例外で、崖の規定には関わりません。

③仮設・災害時——法第85条第2項は、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場その他これらに類する仮設建築物などについて、「第三十九条及び第四十条の規定並びに第三章の規定は、適用しない」と定めています(ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積50平方メートルを超えるものについては法第62条が適用されます)。この第2項の列挙には、法第19条も入っています——これに当たる仮設建築物には、この記事で繰り返している法第19条第4項の措置義務も及びません。第2条は法第40条による付加制限なので、法第85条第2項の対象になる仮設建築物には、第2条も適用されません。確かめるべきなのは第2条の根拠ではなく、個別の建築物が同項の対象に当たるかのほうです——所管の窓口で確かめてください。また、特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、法第85条第1項の特例があります(ただし、防火地域内に建築する場合を除きます)。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

(罰則)
第19条 第2条から第10条まで及び第12条から第18条までの規定に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物の工事施工者)は、500,000円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において、その違反が建築主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主に対して同項の刑を科する。

金沢市建築基準条例 第19条第1項・第2項

崖の第2条は、罰則の対象です。第19条第1項が挙げる範囲は「第2条から第10条まで及び第12条から第18条まで」で、第2条はその先頭に入っています。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合工事施工者に替わります。額は500,000円以下の罰金——正文は算用数字で書かれています。建築主に刑が科されるのは、違反が建築主の故意によるときに限られます(第2項)。第3項は両罰規定で、法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人にも第1項の刑が科されます。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)は、建築基準関係規定のうち「政令で定める規定」を、確認の審査から除く仕組みです(法第6条の4第1項)。その「政令で定める規定」に、法第39条から第41条までの規定に基づく条例の規定のうち、特定行政庁が規則で定める規定が挙げられています(令第10条第3号ハ・第4号ハ)。つまり、市が規則でその条例規定を挙げていれば審査から外れ、挙げていなければ審査の対象に残ります。金沢市建築基準法施行規則(令和7年7月1日施行)の全文を確かめたところ、この「規則で定める規定」を置いた条は見当たりませんでした(2026年9月6日確認)。そうであれば、条例第2条は審査から外れていないことになります——ただしこれは条文を読んだ範囲の話で、市の運用には確かめていません。いずれにしても、審査されるかどうかにかかわらず、条例に適合する義務は残ります——「確認が下りたから第2条も大丈夫」とも、「審査されないから見なくてよい」とも読まないでください。なお建築確認は、業務範囲に対応する指定確認検査機関(していかくにんけんさきかん=国や知事の指定を受けて建築確認を行う民間の機関)にも申請できます(法第6条の2)——その場合の相談先は、まずその機関へ。

窓口——金沢市都市整備局建築指導課です

  • 建築確認申請・条例第2条の当てはめ——都市整備局建築指導課 審査第1、第2係 076-220-2328・2330(建築物及び工作物、建築設備、昇降機の確認・検査、各種建築物の相談・指導)
  • 建築指導課の代表——076-220-2326(指導係。建築許可申請、建築計画概要書の閲覧、確認〔検査〕済の証明〔台帳記載事項証明書〕の交付など)。土地の履歴を調べるときの入口はここです
  • 開発許可・道路の相談——建築指導課 宅地係 076-220-2329(開発許可および43条許可、道路位置指定、道路調査)
  • 災害危険区域の指定・県条例の適用——石川県土木部建築住宅課 076-225-1778市と県の両方に確かめてください
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(告示図書)——石川県。区域を指定するのは県知事です

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは金沢市建築指導課です。

  • ① その土地は金沢市内か。金沢市内なら、読むのは金沢市建築基準条例 第2条です(崖付近の建築物については、石川県建築基準条例の関係規定は適用されません。県条例第二条第1項。外れるのは「関係規定」で、災害危険区域の第三条・第四条は法第39条に基づく規定です
  • ② 敷地の中や周りに、勾配が30度を超え、高さが3メートルを超える傾斜地があるか。30度ちょうど・3メートルちょうどは「超える」に当たりません。条文に硬岩盤を除く定めはありません
  • ③ 図面に「崖の下端」を落として測る。そこから水平に2倍取れているか。崖の上に建てても下に建てても、起点は下端です。高さ4メートルなら8メートル以上。測る先(外壁の外面か柱外面か)は建築指導課に確認
  • ④ 2倍以上が取れれば、第2条については原則として建てられます。取れないなら、ただし書の3つの事由(地盤が堅固/堅固な擁壁等で保護/建築物の構造)のどれで示すかを決める。事由に当たるだけでは足りません——安全上支障がないと認められることまで要ります
  • ⑤ 確認申請に添える図書をそろえる。金沢市建築基準法施行規則第2条第1号は、崖の上下端から建築物までの水平距離崖の形状土質等を示す図書を求めています——下端だけでなく、上端からも測ります
  • ⑥ 既存の擁壁で通すなら、資料と現況の確認から。許可の年月日・文書番号、検査済証等の資料、いまの排水・傾斜・ひび割れの状況を、市と協議して決めます。高さ2メートルを超える擁壁を新設するなら、令第138条第1項第5号・法第88条第1項の確認が別に立ち得ます
  • ⑦ 災害危険区域の該当を、市と県の両方に確かめる。金沢市の条例に災害危険区域の章はありませんが、県条例第二条第1項の列挙に法第39条は入っていないので、県条例第三条・第四条が残るように読めます。どちらか片方だけを確かめれば足りる、とは言えません
  • ⑧ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。SABOアイで当たりを付け、最終確認は石川県の告示図書で。レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら、令第80条の3の構造規制が別にかかります。居室を有する建築物法第6条第1項第1号又は第2号に掲げるものを除く)が区域内で、かつ敷地の過半が区域内なら、都市計画区域外でも土砂災害防止法第25条により確認が必要です(第25条は法第6条第1項第3号に規定する区域を対象から除いています)
  • ⑨ 増築・改築・移転・用途変更を考えた時点で、工事の中身が決まる前に、建築士と金沢市の建築指導課に相談する。そこで「この工事だと条例がどう当たるか」を先に聞いてください。条例の側に緩和の定めはありません(補足——法第86条の7第1項はこの条例には届きません。届くのは第4項の移転と施行令第137条の16です)
  • ⑩ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第19条の罰則(500,000円以下の罰金。原則、設計者)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます。確認申請は、指定確認検査機関にも提出できます(法第6条の2)——その場合の相談先は、まずその機関へ
  • ⑪ 崖の近くの家から移るときは、金沢市に補助の要綱があります。金沢市がけ地防災工事費等補助金交付要綱(平成3年告示第62号。令和7年7月1日施行の本文を2026年9月6日に確認)は、がけ地から、がけ地以外の市内の土地に住居を移転する人で、その移転にともなって「がけ近接等危険住宅」を除却する人を対象にしています(第3条第4号)。額は除却に要する費用の2分の1以内・上限150万円(別表)。ここでいう「がけ地」は、市条例第2条の崖のうち、建築基準法・宅地造成及び特定盛土等規制法その他の法令により防災工事を行うべき旨の勧告・改善命令等の措置を受けたものの下端から、崖の高さの2倍未満の位置にある土地です——距離だけでは決まらず、その崖が勧告や命令を受けていることまで要ります(第2条第1号・第2号)。「がけ近接等危険住宅」は、そのがけ地にある、個人が所有し自分で住んでいる既存不適格の住宅で、崖崩れの被害を受けるおそれのあるものです(第2条第9号・第10号)。市税を完納していることと、毎年度の予算の範囲内であることが条件で、市長が指定する他の補助制度の補助金を受ける場合は交付されません(第3条柱書・第6条)。防災工事・地盤調査・抑制工事・応急防災工事にも、別の区分の補助があります——ただし防災工事・地盤調査・抑制工事については、売却して利益を得る目的で造成する土地、土地家屋の売買を業とする者が営利目的で所有する土地、土地の有効活用を図ろうとするものは、補助の対象外です(第5条。除却と応急防災工事は、この第5条の対象ではありません)。そして、この要綱には令和6年能登半島地震の特例が置かれています(附則・令和6年1月24日告示第23号で追加)——令和6年1月1日から同年12月31日までの間に市長が被害の発生を確認した箇所で行う防災工事(工事の設計を含む)・地盤調査・応急防災工事について、補助率と限度額が引き上げられます(防災工事・応急防災工事とも4分の3→5分の4、2分の1→3分の2など)。この特例に「除却」は入っていません。附則は第2条第1号の「3メートル」を「2メートル」に読み替えるとも定めていますが、令和7年7月1日施行のいまの第2条第1号は市条例第2条を引く書き方になっており、この読替えがいまどう働くかは、この記事では確かめられませんでした——高さが3メートルに届かないがけで被災した場合も、対象外と決めつけずに市の担当課へ聞いてください。該当しそうなら、建築年・所在地・区域図・現況の写真を持って市の担当課へ——担当課が分からないときは、まず建築指導課(076-220-2326)に、この要綱の窓口を聞いてください。なお、国の「がけ地近接等危険住宅移転事業」を金沢市が実施しているかどうかは、この記事では確かめられませんでした

参考にした資料(2026年9月5日・6日に原文を確認)

  • 金沢市建築基準条例(金沢市例規集・現行本文。第1条・第2条・第11条・第19条。令和7年3月27日条例第25号による改正、令和7年7月1日施行の版)
  • 金沢市建築基準法施行規則(金沢市例規集・現行本文。第2条第1号。令和7年7月1日施行の版。全文を見て、令第10条第3号ハ・第4号ハの「規則で定める規定」を置いた条が無いことを確かめました
  • 石川県建築基準条例(石川県例規集・現行本文。令和7年4月1日施行の版。第一条・第二条第1項・第三条・第四条。2026年9月6日に確認)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条・第6条の2・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第2条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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