北海道釧路市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

釧路市のがけは、第5条

釧路市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

北海道釧路市の「がけ条例」とは、建築基準法施行条例 第5条のことです。崖の近くに建てるときは、原則として崖から一定の距離を保つことが求められます。

先にすることは、3つです。がけの規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、がけから離す配置や擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、不動産会社に、測量図や擁壁の資料が残っていないかを聞く——あるものを建築士に見せて、足りない現況の測量図・断面図・配置案を作ってもらう。そのうえで、その図面を持って釧路市の建築指導課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(この条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

その土地が釧路市内なら、釧路市の「建築基準法施行条例」第5条(がけ付近の建築物)です。②かかるのは、高さが2メートルを超えるがけ(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地)に接し、または近接する敷地に建築物を建てるときです(延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類するものは除きます)。③そのとき条文が求めるのは、擁壁を設けることではなく、建築物の外壁面とがけとの間に、がけの高さの2倍以上の水平距離を保つことです。④どこから測るかは、がけの上に建てるか下に建てるかで入れ替わります——がけ上ならがけの下端から、がけ下ならがけの上端から。⑤2倍の距離が取れなくても、道は3つあります。条文が挙げる第1号(がけの形状または土質)・第2号(擁壁、またはこれに代わる措置)・第3号(がけ下のみ。鉄筋コンクリート造等、または流土止め)のどれかに該当すれば、第5条が定める「2倍以上の水平距離を保つ」義務は適用されません——ただし、外れるのは、この距離の義務だけです。建てられるかどうかは、ほかの規制も合わせて確かめてから決まります。⑥具体的には、建築基準法第19条第4項(がけ崩れ等のおそれがある場合の措置)、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の構造規制、盛土規制法の許可は、別に残ります。⑦条文は2026年9月5日に、釧路市例規集の本文で確認しました。

釧路市内なら、釧路市の「建築基準法施行条例」第5条です

釧路市内なら、釧路市の「建築基準法施行条例」第5条です
建築基準法施行条例 第5条。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という題名の条例はありません。釧路市では、建築基準法施行条例(平成17年10月11日 釧路市条例第205号)の第5条(がけ付近の建築物)が、その中身です。条例の題名に「釧路市」は付きません——例規集の見出しも「建築基準法施行条例」です。探すときに戸惑うところなので、先に書いておきます。根拠は建築基準法第40条——その地方の気候・風土の特殊性などにより、法第2章の規定などだけでは建築物の安全・防火・衛生の目的を十分に達しがたいと認める場合に、地方公共団体が条例で建築物の敷地・構造・建築設備の制限を付け加えられる、という規定です。条例第1条は、この第40条(法第88条第1項で準用する場合を含む)と、法第43条第3項・法第56条の2第1項を根拠に挙げています。

(がけ付近の建築物)
第5条 高さが2メートルを超えるがけ (地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいう。以下この条において同じ。) に接し、又は近接する敷地に建築物 (延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類するものを除く。以下この条において同じ。) を建築する場合にあっては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該建築物の外壁面とがけとの間に、がけ上にあってはがけの下端から、がけ下にあってはがけの上端から、がけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。
(1) がけの形状又は土質により建築物の安全上支障がないと認められる場合
(2) がけにがけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁を設ける場合又はこれに代わる措置を講ずる場合
(3) がけ下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造部の全部若しくは一部を鉄筋コンクリート造若しくはこれに類する構造とすることによって、建築物の安全上支障がないと認められるとき、又はがけと当該建築物との間に適当な流土止めを設けるとき。

建築基準法施行条例(釧路市) 第5条

もうひとつ、都市計画区域の外でも、第5条はかかります。この条例の第1章(総則)には第1条(趣旨)しかなく、都市計画区域の外を除くという定めは、条例の本文の中には見当たりませんでした(各節の中には、自動車車庫の節のような、その節だけの適用除外があります)。市街化調整区域や都市計画区域の外の土地でも、がけがあるなら、同じ順番で確かめてください

どこからが「がけ」か——高さ2メートルを「超える」、勾配(こうばい)30度を「超える」

条文は「がけ」を「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地」と定義し、そのうえで高さが2メートルを超えるものを第5条の対象にしています。押さえるところは4つです。

  • 勾配は「30度を超える」——30.0度ちょうどは当たりません
  • 高さは「2メートルを超える」——2.0メートルちょうども当たりません(「以上」ではありません)
  • 自然のがけか、人が切ったり盛ったりしてできた斜面かを分ける言葉は、条文にありません。造成でできた斜面も、数字が当たれば「がけ」です
  • 岩を除く言葉も、条文にはありません。硬い岩の斜面でも、高さ2メートル超・30度超なら、条文の上では「がけ」です。土質は、第1号(形状・土質による除外)のほうで効きます——「うちは岩だから外れる」と、条文からは読めません

そして、条文にはがけの高さをどこからどこまで測るかの定義がありません下端(かたん)=斜面がふもとの地面と接するところ上端(じょうたん)=斜面が上の平らな地面と接するところですが、斜面の途中に緩いところや小段(こだん=斜面の途中の平らな部分)があるとき、上下をひとつのがけとして見るのか、二つに分けて見るのかは、断面図の上で窓口が判断します「途中に平らな道があるから、うちのがけは低いほうだけ」とは限りません。この判定は、目測ではできません。

除かれるのは、延べ面積10平方メートル以内の物置・納屋・畜舎などだけです

条文の括弧書きは「延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類するものを除く」です。ここに住宅は入りません。10平方メートルは、たたみ6畳ぶんほど。物置でも、10平方メートルを超えれば対象ですし、10平方メートル以内でも「物置、納屋、畜舎その他これらに類するもの」に当たらない用途なら対象です。「小さいから大丈夫」と自分で決めないでください。なお、10平方メートル以内の増築でも、建築基準法上の手続きが不要になる場合があるのは防火地域・準防火地域外などの条件つきで、条例に適合させる義務は、確認申請の要否とは別です(後述)。

距離の起点は、がけの上と下で入れ替わります——ここが、いちばん間違えやすいところです

がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか

条文は「当該建築物の外壁面とがけとの間に、がけ上にあってはがけの下端からがけ下にあってはがけの上端から、がけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」と書いています。

がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
  • がけの上に建てるなら、起点は「がけの下端」です。がけの上端ではありません
  • がけの下に建てるなら、起点は「がけの上端」です。がけの下端ではありません
  • 起点は、建てる場所とは反対側の端です。近いほうの端から測るのではありません——条文の言葉は「がけ上にあってはがけの下端から、がけ下にあってはがけの上端から」です
  • 測る先は建築物の外壁面です。敷地の境界線でも、建物の中心でもありません
  • 2倍以上」なので、ちょうど2倍なら適合します

たとえば高さ3メートルのがけなら、6メートルです。がけの上に建てるなら、がけの下端から水平に6メートル。がけの下に建てるなら、がけの上端から水平に6メートル。起点をどちらか一方に決めてしまうと、必要な距離を取り違えます。

そして、条文は「がけに接し、又は近接する敷地」と書いています——がけが敷地の中になくても、隣の土地にあってもかかります。「うちの土地の中にがけは無い」は、この条が外れる理由になりません。反対に、この条文が対象にしているのは「建築物を建築する場合」で、敷地の造成そのものを対象にする言葉は、第5条の中にはありません(造成には、後で書く盛土規制法などが別に効きます)。

2倍の距離が取れなくても、道は3つあります

先に答えを書きます。第5条は「次の各号のいずれかに該当する場合を除き」と書いていて、3つの号のどれかに当たれば、第5条が定める「2倍以上の水平距離を保つ」義務は適用されません「離せないから建てられない」ではありません。ただし——外れるのは、その距離の義務だけです。建築基準法第19条第4項、土砂災害特別警戒区域の構造規制、盛土規制法の許可は、別に確認してください。どの号に当てはめるかを考え、その根拠となる図面や資料を示すのは設計者(建築士)です。そのうえで、確認申請の対象になる計画では、建築主事等(けんちくしゅじとう=建築確認を行う市の職員)または指定確認検査機関(していかくにんけんさきかん=建築確認を行う民間の機関)が適合性を審査します——提案するのは設計者、判断するのは審査する側です。

第1号——がけの形状または土質により、安全上支障がないと認められる場合

条文は「安全上支障がないと認められる場合」とだけ書いています。何度以下なら支障がないか、どの土質なら支障がないか——数字は、条文には書かれていません。だから、この号は読者が自分で判定できる号ではありません。土質を見分けるのは地盤の調査と建築士の仕事で、第5条には、誰がどの手続で認めるかまでは書かれていません——確認申請の対象となる計画では建築主事等または指定確認検査機関が適合性を審査します。それ以外の扱いは、市の窓口に確かめてください。「岩に見えるから第1号でいける」と決めて設計を進めないでください。先に窓口へ、断面図を持って相談してください。

第2号——がけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁を設けるか、これに代わる措置を講ずる場合

これが、がけの上でも下でも使える道です。ただし、条例には擁壁の規模や構造が書かれていません——「がけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁」という書き方です。何をもって「おそれのない構造」とするかは、設計者が図面や、必要に応じた調査結果・計算書で示し、審査する側が判断します(何が要るかは、がけの状態と計画で変わります)。

手がかりになるのは、法令の側の基準です。建築基準法施行令第142条は、法第88条第1項で確認の対象になる工作物(こうさくぶつ=建築物以外の、擁壁や煙突などの構築物)のうち擁壁についての技術的基準を定めています。令第142条第1項は、道を2つ書いています——ひとつは同項各号に掲げる基準に適合する構造方法、もうひとつはこれと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法です。条文はこの2つを「又は」でつないでいます。掲げられている基準は——第1号「鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること」、第3号「擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること」、第5号「その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること」など。そして高さが2メートルを超える擁壁は、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区や、知事が指定する区域の中なら、令第138条第1項第5号により法第88条第1項の工作物の確認の対象になります(法第88条第1項は、擁壁について法第6条第1項を同項第3号の建築物に係る部分に限って準用しています——これらの区域の外なら、2メートルを超えても工作物の確認の対象ではありません)——擁壁そのものにも手続きがあります

「昔から石積みがあるから安心」ではありません。いつ、どの基準で造られたものかが分からない土留めは、「おそれのない構造の擁壁」として通るとは限りません。確認済証・検査済証・許可の書類が残っているかを、契約の前に売主に聞いてください。

第3号——がけの下に建てる場合だけの道です(鉄筋コンクリート造等、または流土止め)

第3号は「がけ下に建築物を建築する場合において」と書かれています——がけの上に建てる場合には使えません。中身は2つです。

  • 当該建築物の主要構造部(しゅようこうぞうぶ=壁・柱・床・はり・屋根・階段)の全部もしくは一部を鉄筋コンクリート造もしくはこれに類する構造とすることによって、建築物の安全上支障がないと認められるとき
  • がけと当該建築物との間に適当な流土止め(りゅうどどめ=崩れた土砂を建物の手前で受け止める構造物)を設けるとき

「適当な」の中身は、条文に書かれていません。どこに、どの高さで、どんな構造で設けるかは、がけの形状と土質から、崩れてくる土砂の量を見込んで決めるものです。塀を立てれば済む、という話ではありません。設計者が図で示し、窓口が判断します。

条例に数字が書かれていない、ということの意味

がけの判定と離す距離について、条文に数字で書かれているのは「高さ2メートル超」「30度超」「2倍以上」です。ほかに、対象から除かれる物置等について「延べ面積が10平方メートル以内」という数字があります。しかし、3つの号のほうには、角度も、擁壁の厚さも、流土止めの高さも、書かれていません

これは、良い知らせでもあり、悪い知らせでもあります。良いほうは、「この角度なら建てられない」という線が、条例には引かれていないこと——計画しだいで道は残ります。悪いほうは、自分では答えが出せないこと。だから、順番がひっくり返らないようにしてください。設計を固めてから窓口に行くのではなく、断面図ができた時点で、配置を決める前に相談する。2倍の距離が取れるかどうかで、建物の位置も、間取りも、擁壁の要否も、費用も変わります。

そして、「窓口が判断する」ことの中には、時間が含まれます。地盤の調査が要ることもあれば、擁壁の構造計算が要ることもあります。売買契約の日取りを先に決めてしまうと、この時間が取れません。

市が公表している運用の手引きは、探した範囲では見つけられませんでした。市の公式サイトのサイト内検索と、建築確認申請まわりのページを当たりましたが、がけの高さの算定方法や、土質と勾配の対応表のような、数字を補う資料は見つかっていません(窓口で配っている紙の資料の有無までは、確かめていません)。だから、「どこまでやれば第1号・第2号・第3号に当たるか」は、確かめられた公開資料だけでは判断できません——市の窓口や、確認申請を出す指定確認検査機関に確かめてください。これは、記事や本で代えられる部分ではありません。

確認申請には、がけの形状又は土質を記載した断面図が要ります(細則第5条)

(確認申請書等の添付書類)
第5条 条例第5条 の規定の適用を受ける建築物に係る確認申請書又は計画通知書には、その計画に係る建築物の敷地とがけ (高さ2メートルを超えるものに限る。) との状況を示す断面図 (当該がけの形状又は土質についても記載してあるもの) を添付しなければならない。

建築基準法施行細則(釧路市) 第5条第1項

建築基準法施行細則(平成17年10月11日 釧路市規則第227号)は、条例第5条の適用を受ける建築物の確認申請書に、敷地とがけとの状況を示す断面図——がけの形状または土質も記載したもの——を添えるよう定めています。これが、建築士に用意してもらうものの中身です。がけの高さも、勾配も、外壁面までの水平距離も、この断面図の上で決まります。目測では決まりません。なお細則第2条は、指定確認検査機関が行う確認等の事務についても、第5条(第3項を除く)は適用するとしています——民間の指定確認検査機関に出す場合でも、この断面図は要ります

建築士が設計した一戸建ての住宅でも、この条は「審査を省ける規定」には挙げられていません。建築基準法第6条の4(建築物の建築に関する確認の特例)と施行令第10条は、建築主事等の審査を要しない規定を定める仕組みで、法第39条から第41条までに基づく条例の規定については特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築確認や是正命令を受け持つ行政庁。原則として、建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事です。ただし、法第97条の2・第97条の3により建築主事等を置く市町村——いわゆる限定特定行政庁——の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事です。法第2条第35号ただし書)が規則で定めるものが対象です。釧路市の細則第7条がその「規則で定める規定」として挙げているのは条例第10条・第11条・第16条・第28条第2項及び第3項・第29条(および別の区分で条例第10条・第11条・第16条第1項及び第3項・第28条第3項〈第3号を除く〉・第38条)で、条例第5条は挙げられていませんいずれにせよ、条例に適合させる義務は、審査の有無にかかわらず残ります。

レッドゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第5条の距離を取っても、あるいは3つの号のどれかに当たっても、次の3つは別に残ります。

  • 建築基準法第19条第4項——「建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない」。この規定に、がけの高さや角度の下限はありません——高さ2メートル以下でも、30度以下でも、かかり得ます
  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは北海道知事です。区域内で居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋。住宅ならふつう当てはまります)を有する建築物を建てるときは、建築基準法施行令第80条の3の構造の規定が別にかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造の規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第5条に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第5条が外れる理由になりません

「特別」の2字しか違いませんが、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)とイエローゾーン(土砂災害警戒区域)は別のものです。自分の土地がどちらかは、目で見ても分かりません。どちらでもないこともあります。北海道は、指定した区域を北海道土砂災害警戒情報システムで公開しています。指定の内容を記載した図書は、土砂災害防止法第9条第7項により、関係する市町村の事務所で縦覧できます。最終確認は、その図書で行ってください。土地を買う前なら、不動産会社にも「この区域に入るか」を確かめてください。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

令第80条の3が求めているのは、こういうことです。レッドゾーン内の居室を有する建築物外壁及び構造耐力上主要な部分のうち、都道府県知事が区域の指定のときに定めた「土石等の高さ」以下の部分で、土砂災害の原因となる自然現象により衝撃が作用すると想定される部分(条文はこれを「外壁等」と呼びます)の構造は、自然現象の種類・知事が定めた最大の力の大きさ土石等の高さに応じて、想定される衝撃が作用しても破壊を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いなければならない。ただし、土石等の高さ以上の高さの門または塀(外壁等と同等以上の耐力を有するものとして大臣が定めた構造方法によるものに限ります)を、衝撃を遮るように設けた場合は、この限りでない——。2倍の距離を取って第5条に適合していても、この構造の規制は残ります。反対に、令第80条の3に適合しても、第5条の距離の義務は外れません——2つは別々に効きます。

もうひとつ、都市計画区域の外でも、建築確認が要る場合があります。土砂災害防止法第25条は、レッドゾーン内の居室を有する建築物を、建築基準法第6条第1項第3号の区域内の建築物とみなして、確認・検査の規定を適用すると定めています(同項第1号・第2号に掲げるものを除く)。「都市計画区域の外だから確認は要らない」とは読めません。なお、敷地が区域の内外にまたがるときの扱いですが、「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する建築基準法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。

レッドゾーンでどんな構造が求められるかは、土砂災害特別警戒区域で求められる構造にまとめています(区域に入るかどうかの判定と、この条例の当てはめは、上の窓口で確かめてください)。

がけを削る・土を盛る工事を伴うなら、盛土規制法は別に効きます

第5条は「建築物を建築する場合」の規定です。造成そのものには、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)が別に効きます。北海道は、市町村ごとに規制区域(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)を指定して、道の都市計画課のページで公表しています。自分の土地が規制区域に入るかどうかは、そこで当たりを付けて、市の窓口で確かめてください。

ひとつ気をつけたいのは、擁壁の確認の扱いです。建築基準法第88条第4項により、盛土規制法第12条第1項などの許可を受けなければならない場合の擁壁については、法第88条第1項のうち確認・検査に関する部分が適用されません。この扱いで外れるのは、擁壁に関する工作物の確認だけです。建築物のほうの確認申請が要るかどうかは、別に判定します(規模や区域などで決まるもので、この記事では判定できません)。

既存の建物を増築・改築するなら、第5条はかかってきます

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により、その扱いは切れるのが原則です。

条例の側にも、第5条を軽くする特例は見当たりませんでした。第4章(雑則)には、仮設興行場等(第53条)、耐火設計された建築物(第54条)、避難上の安全の検証(第55条〜第57条)、一の敷地とみなすこと等(第58条)、敷地の形態及び敷地と道路との関係等(第59条)といった緩和・特例の条が並んでいますが、そこが挙げている条の並びに第5条はありません

用途を変更する場合も、建築基準法第87条第2項により、法第40条に基づく条例の規定は準用されます——工事を伴わない用途変更でも、条例は付いてきます。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。個別の当てはめは、建築指導課で確かめてください。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

第62条 第2条第1項若しくは第3項 (第3条第2項において準用する場合を含む。) 、第3条第1項、第4条、第5条、第7条、(中略)又は第46条から第50条までの規定に違反した場合における当該建築物又は建築設備の設計者 (設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物又は建築設備の工事施工者) は、50万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において、その違反が建築物の建築主又は建築設備の設置者の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築物の建築主又は建築設備の設置者に対して同項の刑を科する。

建築基準法施行条例(釧路市) 第62条(強調・中略は引用者)

第5条は、罰則の対象です。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いない・従わない施工では工事施工者に替わります。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑が科されます(第62条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人、使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも同じ刑が科されます(第63条)。これを両罰規定(りょうばつきてい=行為をした人だけでなく、その法人や雇い主にも同じ罰金を科す定め)といいます。

是正命令は、建築主・所有者なども対象になり得ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含みます)もしくは現場管理者、または当該建築物もしくは建築物の敷地の所有者、管理者もしくは占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例に適合させる義務は残ります。建築確認は「計画が法令に合っているかを、着工前に見てもらう手続き」で、確認が要らないこと=規定がかからないこと、ではありませんここを取り違えると、建ててしまってから第5条の違反が見つかる、ということが起こり得ます。そのときに命じられるのは、上に書いた除却・使用禁止などで、相手方は建築主・所有者です。着工の前に、窓口で確かめてください。

すでにがけの近くに住んでいる方へ——市に、移転の補助の制度があります

これから建てる方の話ではありません。すでにがけの近くに建っている家に住んでいて、移転を考えている方のための制度が、市にあります——釧路市がけ地近接危険住宅移転事業補助金。市は「がけ地の崩壊等により住民の生命に危険を及ぼすおそれのある区域に所在する住宅の移転を促進するため、住宅の移転に要する費用の一部を補助する制度です」と書いています。

  • 補助の対象になる住宅——①「市の条例(建築基準法施行条例 第5条)で建築を制限しているがけ付近の区域内に存在する昭和50年以前に建築された既存不適格住宅」、②「土砂災害特別警戒区域内にある建築基準法施行令第80条の3の規程に適合していない既存不適格住宅」(市のページの表記のまま)
  • 補助額——除却等費:補助対象住宅の除却等に要する費用(1戸あたりの限度額97万5千円)/建物助成費:移転先の住宅の建設(購入)に要する資金を金融機関等から借り入れた場合の、当該借入金利子に相当する費用(限度額があります
  • 事前協議が要ります。市は「補助の対象となるか否かについて、住宅の現況についての事前協議が必要になります」と書き、あわせて「予算措置の状況によっては、翌年度以降の申請となる場合がある」とも注意しています
  • 問い合わせ先——住宅都市部 建築指導課 指導防災係 0154-31-4569

この記事が見たのは、市のページ(2022年8月25日更新と表示)です。金額も要件も変わり得ますので、使うときは指導防災係に直接お尋ねください。

窓口——釧路市 住宅都市部 建築指導課です

  • 建築確認申請の受付・審査——住宅都市部 建築指導課 建築審査係 0154-31-4577(ファクス 0154-24-0581)。〒085-8505 釧路市黒金町7丁目5番地・釧路市役所本庁舎5階土地を買う前に、まずは建築指導課へ——ただし、この記事で確かめられたのは、建築審査係が建築確認申請の受付・審査の窓口であることまでです。がけの条の相談先がどの係かは、確かめていません。電話で「がけ条例のことで」と伝えて、担当の係をお尋ねください
  • がけ地近接危険住宅移転事業の補助・定期報告など——住宅都市部 建築指導課 指導防災係 0154-31-4569すでにがけの近くに住んでいて、移転を考えている方は、こちらにも聞いてください
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定——指定するのは北海道知事です。区域の図書は、市の事務所で縦覧できます

相談のときに用意しておくとよい資料の例は、3つです細則が求めている法定の添付書類は、確認申請書等に添える断面図です——下の3つは、相談を実のあるものにするための資料の例で、部数や面数が条文で決まっているわけではありません)。①現況の測量図(がけの位置と敷地の関係が分かるもの)、②断面図(がけの形状・勾配・高さ、そして土質を書き込んだもの。がけの向きが場所で変わるなら、複数の位置で切ったものがあると話が早く進みます)、③建物の配置案(外壁面からがけまでの水平距離が書き込んであるもの)。「がけがあるみたいなんですが」だけでは、答えは返ってきません——条例の当てはめは、図の上でしか決まらないからです。図を作るのは建築士の仕事です。まず不動産会社に、測量図や過去の擁壁の資料が残っていないかを聞いてください。あるものを建築士に見せてから、足りないぶんを作ってもらうほうが、費用も時間も少なくて済みます。

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、がけから離す配置や擁壁の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士まず相談する先は釧路市の建築指導課です。そして確認申請では、建築主事等または指定確認検査機関の審査で見られます——相談・審査・設計は、それぞれ別の役割です。建築指導課には係が分かれています。この記事で確かめられたのは、建築審査係が建築確認申請の受付・審査の窓口であることまでです——がけの条の相談先がどの係かは、電話で「がけ条例のことで」と伝えて確かめてください。

  • ① その土地は釧路市内か。釧路市内なら、読むのは建築基準法施行条例(平成17年釧路市条例第205号)第5条です
  • ② 敷地の中や隣に、勾配が30度を超え、高さが2メートルを超える土地があるか。目測ではなく、現況の測量図と断面図で造成でできた斜面も、岩の斜面も、条文の上では「がけ」に当たり得ます
  • ③ 建てる位置は、がけの高さの2倍の水平距離を取れるか。起点はがけの上なら下端、がけの下なら上端——建てる場所とは反対側の端です。測る先は外壁面ちょうど2倍なら適合します
  • ④ がけが隣の土地にあってもかかります。「接し、又は近接する敷地」だからです
  • ⑤ 距離が取れないなら、3つの号のどれに当てはめるか——第1号(形状・土質)、第2号(擁壁、またはこれに代わる措置)、第3号(がけの下だけ。鉄筋コンクリート造等、または流土止め)。どれかに当たれば、第5条の距離の義務は外れ、この条については原則として建てられます——外れるのはこの条の距離の義務だけで、建てられるかどうかは、⑩〜⑬も合わせて確かめてから決まります
  • ⑥ 第1号・第2号・第3号のどれにも、条例は数字を書いていません。「何度以下ならよい」「擁壁は何センチ」を自分で決めないでください。設計者が図面や、必要に応じた調査結果・計算書で示し、審査する側が判断します
  • ⑦ すでに擁壁や土留めがあるなら、いつ・どの基準で造られたかを調べる。確認済証・検査済証・許可の書類が残っているかを、契約の前に売主に聞いてください
  • ⑧ 高さが2メートルを超える擁壁を新たに造るなら、工作物の確認(法第88条第1項・令第138条第1項第5号)が別に要ります——ただし、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区や知事が指定する区域の中に限ります(法第6条第1項第3号)。ただし盛土規制法などの許可を受けなければならない場合の擁壁は、確認の部分が適用されません(法第88条第4項)
  • ⑨ 確認申請には、がけの形状又は土質を記載した断面図が要ります(細則第5条第1項。原文は「又は」です)。民間の指定確認検査機関に出す場合も同じです(細則第2条)
  • ⑩ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。北海道土砂災害警戒情報システムで当たりを付け、市で縦覧できる図書で確かめたうえで、不動産会社と市の窓口にも「この土地は区域の内か外か」を確かめてください(区域の境目は、素人には読み違えやすいところです)。レッドゾーンで居室のある建物なら、令第80条の3の構造が別に要ります
  • ⑪ がけを削る・土を盛る工事を伴うなら、盛土規制法や都市計画法の許可が要るかを、市の窓口へ
  • ⑫ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第62条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます
  • ⑬ 第5条の距離の義務が外れても、法第19条第4項の措置は別に要ります。「条例をクリアした=安全」ではありません

どれくらい日数がかかるかは、がけの状態と計画で変わりますので、この記事では示せません。建築士と窓口に、最初に「いつごろ答えが出るか」を聞いてください——それが分かって初めて、売買契約の日取りを動かせます。擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(第5条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

この記事で扱っていないこと

この記事が読んだのは、釧路市の条例・細則の本文と、建築基準法・施行令・土砂災害防止法・盛土規制法の条文です。そこから外れることは、書いていません。

  • 個別の土地に第5条がかかるかどうかの判定——これは、現況の測量図と断面図がないと決まりません。この記事では決められません
  • 土砂災害の区域が、市内のどこにあるか——指定するのは北海道知事で、区域の範囲はこの記事では当たっていません
  • 費用と工期——がけの状態と計画で変わるため、目安も示していません。建築士に見積もってもらってください
  • すでに建っている建物への当てはめ——原則だけ書きました。実際の扱いは、建物ごとに違います

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

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