京都府京都市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

京都市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。崖の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って京都市都市計画局建築指導部 建築審査課(075-222-3616)へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は京都市内ですか。はい=京都市建築基準条例 第7条(崖の付近の建築制限)です。京都府の建築基準法施行条例は適用されません(府条例第20条)。②第7条は、高さが2メートルを超える崖(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地)について、崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)及び上端(じょうたん=斜面の高いほうのふち)から、それぞれ崖の方向に水平距離が崖の高さの2倍以内の位置に、建築物を建築してはならないと定めています。③起点は「下端」と「上端」の両方です。崖の下に建てるときも上に建てるときも、それぞれの起点から2倍を測ります。④ただし書は5つあり、そのどれかに当たれば第7条については、原則として建てられます——基準に適合する擁壁(またはこれと同等以上の安全性を有する擁壁)が設けられているとき(第3号)、建築物の構造により安全上支障がないとき(第5号)などです。⑤ただし、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・災害危険区域建築基準法第19条第4項は、別に残ります。(条例・市の解説は2026年9月5日に原文を確認しました)。

京都市内なら、京都市建築基準条例 第7条です

「がけ条例」という名前の条例はありません。京都市では、建築基準法第40条などに基づく京都市建築基準条例(平成13年4月5日条例第1号)の第7条(崖の付近の建築制限)が、崖に近い建築物の決まりです。京都府の建築基準法施行条例は、京都市の区域では適用されません——府条例第20条が、そう書いています。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。京都市内の土地について調べるときは、京都市の条文の数字で読んでください。

(適用除外)
第20条 京都市の区域については、この条例の規定は、適用しない。

建築基準法施行条例(昭和35年京都府条例第13号)第20条

市の解説(「崖付近の建築制限」)は、この規定の位置づけをこう書いています——建築基準法第19条第4項に規定される建築物の安全性を確保するため、原則として、建築物と高さ2メートルを超える崖の間に一定距離を保たなければならない。ただし、安全確保のための措置がなされている場合については建築制限が解除される。制度の起こりは古く、市の解説は「京都府建築基準施行条例により、昭和35年8月5日に施行されている」としています。対象区域は、京都市の全域です(市の解説Q11)——都市計画区域の内外で分かれていません。

(崖の付近の建築制限)
第7条 高さが2メートルを超える崖(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいい、小段等によって上下に分離された崖がある場合において、下層の崖の下端から水平面に対し30度の角度をなす面の上方に上層の崖の下端があるときは、その上下の崖は、一体のものとみなす。以下同じ。)の下端及び上端からそれぞれ崖の方向に水平距離が当該崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

京都市建築基準条例 第7条(本文。漢数字は算用数字に改めました)

どこからが「崖」か——高さ2メートル超・30度超。2つとも満たしたときです

条文は、崖を「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地」と定義し、そのうち高さが2メートルを超えるものを第7条の対象にしています。条文の上では、30.0度ちょうど・2.0メートルちょうどは当たりません(どちらも「超える」です)——ただし、境界に近いときこそ、測量図・断面図で建築士と窓口に確かめてください「ちょうどだから外れる」を、自分で決めないでください。「2メートル」を、うろ覚えの数字で置き換えないでください。京都市内の土地について読むのは、京都市の条文の数字です。よそで聞いた線を当てはめて「うちは外れる」と決めると、測らずに進めることになります。

崖が敷地の外にあっても、制限を受けます。市の解説Q1は、敷地内外にかかわらず建築制限を受けるとし、道路等を挟んで崖が存在する場合も、崖の高さの2倍の範囲内は建築制限を受けると図で示しています。「隣の土地の崖だから関係ない」とは読めません。

段になった崖は、一体で見ることがあります。条文の括弧書きは、小段(こだん=斜面の途中にある平らな段)等によって上下に分離された崖がある場合に、下層の崖の下端から水平面に対し30度の角度をなす面の上方に上層の崖の下端があるときは、その上下の崖を一体のものとみなす、と定めています。市の解説Q2は「一体の崖として扱われる場合」と「扱われない場合」を図で分けています——30度の斜線より上に上層の下端があるかどうかが分かれ目です。一体とみなされれば、高さも距離も大きくなります。

崖の形が場所によって違うときは、断面ごとに見ます。市の解説Q3は、平面的に不連続な崖について「斜面を任意の位置で断面を切り、それぞれの箇所で高低差を考慮し、範囲を決定する」としています。崖の高さが場所で違えば、制限を受ける範囲も場所ごとに違います。

崖の下に水路や河川があるときは、水路底・河川底が崖の下端です(市の解説Q14)。水面ではありません。起点が下がるぶん、崖の高さも、2倍の距離も大きくなります。

道路・河川・鉄道の整備でできた崖(擁壁)も、第7条の対象です(市の解説Q8)。ただし、その擁壁の下部に建築する場合で、道路法の道路区域内の法面(のりめん=切り土・盛り土でできた斜面)、河川法の河川区域内の堤防・護岸、鉄道事業法・軌道法の鉄道敷きの法面のいずれかに当たり、適切に維持保全され、傾きやひび割れ等がなく、健全性が保たれているものは、条例で規定する崖に当たらないとしています。一方、その擁壁の上部に建築する場合は、築造時の想定以上の荷重が擁壁にかかる可能性があるとして、管理者への確認や構造上の安全性の確認が必要としています。

距離の起点は「下端」と「上端」の両方。ここが、いちばん間違えやすいところです

条文は、「崖の下端及び上端からそれぞれ崖の方向に水平距離が当該崖の高さの2倍以内の位置」と書いています。起点はひとつではありません。崖の下に建てるなら下端から2倍、崖の上に建てるなら上端から2倍——市の解説の図も、崖の下側と上側にそれぞれ「H×2」の帯を描き、その帯の中を「制限あり」、外を「制限なし」としています。

たとえば高さ3メートルの崖なら、下端から6メートル、上端から6メートル。この2つの帯のどちらかに建築物が入れば、第7条本文がかかります。「崖の上だから、下端から測って離れていれば大丈夫」ではありません。下端がどこか、上端がどこかを図面で決めることが、最初の山場になります。

そして、条文の書き方も見ておいてください。京都市の第7条は、「擁壁を設けなければならない」とは書いていません。「建築物を建築してはならない」——禁止の形です。だから、まず効くのは配置です。第7条本文との関係では、2倍の帯の外に建物を置ければ、本文はかからず、そのまま建てられます敷地が広いなら、建物の位置をずらすことが、いちばん安い解決になり得ます。置けないときに、ただし書の5つを見ていくことになります。ただし、これは第7条の話だけです——帯の外に出しても、建築基準法第19条第4項の措置や、土砂災害の区域の規制は、別に残ることがあります。

もうひとつ、「建築物」に何が入るかも、設計の早い段階で確かめてください。母屋だけでなく、離れ、車庫、物置も建築物に当たり得ます母屋は帯の外に置けても、車庫が帯の中に入る——という配置は起こります。条文は「建築物を建築してはならない」なので、棟ごとに見ることになります。市販の小さな物置まで当たるかどうかは、自分では決められません——建てるつもりのものを全部、配置案に描き込んだうえで、どれが「建築物」に当たるかを設計者と窓口に確かめてください。

5つのただし書のどれかに当たれば、第7条については原則として建てられます

道はあります。順番は、まず配置です。2倍の帯の外に建物を置けるなら、そもそも本文がかかりません。置けないときに、ここから先を見ます。第7条ただし書は5つの号を挙げ、そのいずれかに該当するときは本文を適用しないとしています。どれかに当たれば、第7条については原則として建てられます。ただし書に当たるかは、各号の条件と除外を、図面と資料で確かめます。各号に当たるかどうかを図と資料で示すのは設計者で、窓口・審査で確かめられます。「原則として」と書くのにも、理由があります——これは第7条の禁止が外れるという意味で、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。そして、崖の規定を満たしても、建築基準法の一般の制限は別に残ります——用途地域による用途や建ぺい率・容積率の制限、高さの制限(斜線制限など)、接道の義務。「崖の条例が通った=その計画が建てられる」ではありません。ただし、「どれかに当たれば必ず外れる」という単純な話ではありません。各号には、それぞれ除かれる場合や条件が付いています(たとえば第1号は、崖の地表面に崖面崩壊防止施設を設置するときが除かれます)。市の解説も、5つを挙げる前に、既存の擁壁については、適切に維持保全され、傾きやひび割れ等がなく、健全性が保たれているものに限るという但し書きを置いています。既にある擁壁を頼りにする号(第1号・第3号)では、とくにここが効きます。

  • 第1号(宅地造成等・開発行為の許可を受けたとき)——当該崖を含む土地の区域における宅地造成等に関する工事または開発行為について、盛土規制法第12条第1項もしくは第30条第1項、または都市計画法第29条第1項の許可を受けたとき。市の解説は「許可を受け、工事完了検査(検査済証の交付)を受けている場合」としています。ただし、崖の地表面に「崖面崩壊防止施設」を設置するときは除かれます——市の解説Q16は、崖面崩壊防止施設は地盤の変動等を許容するものであり、必ずしも建築物の安全性の確保につながらないから、と説明しています(この場合でも、第5号に当たる計画なら第5号を根拠にできる、とも書いています)。なお、旧宅地造成等規制法第8条第1項の許可を受けている場合も第1号を適用できます(附則の規定。市の解説Q15)
  • 第2号(急傾斜地崩壊防止工事で整備されているとき)——当該崖が、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第12条第1項または第13条第1項もしくは第2項の規定による急傾斜地崩壊防止工事により整備されているとき。市の解説Q4は、京都府の砂防課もしくは土木事務所で、区域の指定状況や工事の実施状況を確認したうえで、工事が完了しているなら実施状況図等を確認申請に添付する、工事が計画されていない箇所や未実施の箇所なら別途対策の検討資料が要る、と場合分けしています。区域に入っている=この号に当たる、ではありません
  • 第3号(基準に適合する擁壁が設けられているとき)——当該崖の地表面に、令(=建築基準法施行令)第138条第1項第5号に規定する擁壁に係る基準に適合する擁壁その他これと同等以上の安全性を有する擁壁が設けられているとき。市の解説は「令第138条第1項第5号に該当し、令第142条の規定に適合する擁壁であり、検査済証が交付されている場合など」とし、関連条文に平成12年建設省告示第1449号第3を挙げています。その令第142条第1項は、同項が掲げる基準に適合する構造方法か、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法か、そのどちらかを用いることとしています——大臣が定めた構造方法による擁壁でも、この技術的基準に適合します
  • 第4号(擁壁が要らない土質・勾配か、安定計算で確かめたとき)——当該崖の地表面が盛土規制法施行令第8条第1項第1号イまたはロに該当するとき。イは、土質が同令別表第1の上欄に当たり、勾配が中欄の角度以下のもの、または中欄を超え下欄の角度以下でその上端から下方に垂直距離5メートル以内の部分に限るもの。ロは、土質試験その他の調査又は試験に基づき地盤の安定計算をした結果、崖の安定を保つために擁壁の設置が必要でないことが確かめられた崖面です

第4号が指す条文は、市の解説にそのまま引かれています。

イ 切土をした土地の部分に生ずる崖又は崖の部分であつて、その土質が別表第1上欄に掲げるものに該当し、かつ、次のいずれかに該当するものの崖面
(1)その土質に応じ勾配が別表第1中欄の角度以下のもの
(2)その土質に応じ勾配が別表第1中欄の角度を超え、同表下欄の角度以下のもの(その上端から下方に垂直距離5m以内の部分に限る。)
ロ 土質試験その他の調査又は試験に基づき地盤の安定計算をした結果崖の安定を保つために擁壁の設置が必要でないことが確かめられた崖面

宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第8条第1項第1号(京都市「崖付近の建築制限」Q5の引用による)

その別表第1は、こうなっています——軟岩(風化の著しいものを除く)は、擁壁を要しない勾配の上限60度/擁壁を要する勾配の下限80度風化の著しい岩は40度/50度砂利、真砂土(まさど)、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するものは35度/45度「うちは岩だから外れる」とは読めません——同じ「岩」でも、風化の著しいものは、擁壁を要しない勾配の上限が60度から40度へ20度低くなり、擁壁を要する勾配の下限は80度から50度へ30度低くなります2つの列で、下がり方が違います)。土質の見分けと勾配・高さの測定は、建築士に見てもらってください。

  • 第5号(建築物の構造により安全上支障がないとき)——市の解説は、崖上と崖下で中身を分けています。崖上対策は、建築物の基礎等を崖の下端からの安息角(あんそくかく)をなす面より下方に設けるとともに、基礎部の応力および水平力が崖に影響を及ぼさないように計画する場合。市の解説は、安息角を「土砂を積み上げたとき、自発的に崩れることなく安定を保つ斜面の最大角度」と説明し、土質試験等によらない場合は30度とするとしています。具体例として、基礎フーチング下端を安息角の面より下方に設ける方法、杭基礎先端を下方に設ける方法、地盤改良底を下方に設ける方法を挙げています。崖下対策は、安息角をなす面より上方の土砂が崩壊した際に、建築物または塀(いわゆる待受け擁壁)に生じる外力に対して安全な計画とする場合。市の解説は、崖崩れによる被害を受けるおそれのある部分等には、原則として開口部を設けることはできないとしています

市の解説Q6は、第5号の考え方として、安息角をなす面より上方の土砂を考慮して建築物の壁等を補強する、令第80条の3(土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)の規定を準用する等の対応が考えられるとしています。居室(きょしつ)とは、居住・執務・作業・集会・娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室のことです(法第2条第4号)。Q7は、土砂災害特別警戒区域の指定がない箇所であっても、基礎調査の結果や平成13年国土交通省告示第332号の式を用いること等により、令第80条の3に準じた検討を行うことが考えられる、と書いています。

この5つは、素人が自分で判定するための一覧ではありません。どれに当たるかを確認するのは設計者(建築士)です。確認申請の対象となる計画では、建築主事等または指定確認検査機関の審査でも見られます——ただし、確認申請が不要な計画では、その審査そのものがありません審査が無い計画ほど、設計者の確認と、窓口への事前相談が要ります審査が無いことは、第7条がかからないことではありません)。市の解説Q9は、既存の擁壁について、許可や確認済証があることに加えて、検査済証等により許可・確認を受けた計画に基づき適切に施工されていることが確認でき、設計者による現地調査により劣化等が生じておらず適切に維持保全されていることが確認できれば、第1号または第3号に該当する場合がある、としています。「昔の許可がある」だけでは足りません。確認できない場合は、既存擁壁の安全性を検討する等の対応が必要になります。

土地を買う前に、どこで何が調べられるか

京都市は、不動産調査等で使う制限の情報について、案内のページを出しています。用途地域・高度地区・防火地域は京都市都市計画情報等検索ポータルサイトで地図上から、建築基準法の道路種別は指定道路図提供システムで、それぞれ来庁せずに調べられます。建築計画概要書は建築審査課の窓口で閲覧できます。電話での問い合わせは075-222-3616、受付時間は午前8時45分から11時30分、午後1時から3時です。

ただし、崖のことは、これらの地図では分かりません。用途地域や高度地区は都市計画の話で、第7条は都市計画とは別の、京都市全域にかかる制限です(市の解説Q11)。都市計画情報等検索ポータルサイトや指定道路図提供システムで、用途地域・高度地区・防火地域・道路種別に何も引っかからなくても、そこに崖の情報は載っていません——第7条にかかるかどうかは、これらの地図ではなく、測量図と断面図で決まります敷地の中や周りの傾斜地は、実際に測らないと判定できません。測るのは建築士の仕事です。売買契約の前に、現況の測量図と断面図を用意してもらってください。

もうひとつ、調べる順番があります。ただし書は号ごとに分かれるのではなく、「すでにあるものを根拠にする」か「これから設計する」かで、やることが変わりますすでにある擁壁や工事を根拠にするなら(第1号の許可、第2号の急傾斜地崩壊防止工事、第3号の擁壁を既存のもので通す場合)——調べるのは土地の履歴と現況で、時間がかかります。許可番号、検査済証、工事の実施状況、擁壁の図面、そして現地の劣化の有無。これから設計するなら第3号の擁壁を新たに造る場合、第4号の土質・勾配の調査、第5号の建築物の構造)——出てくるのは設計と工事費です。第3号は、この両方に顔を出します——既存の擁壁で通すのか、新しく造るのかで、調べる先も金額もまるで違います。どちらの道で行くかで、土地に払える金額が変わります。だから、契約の前なのです。

レッドゾーンは、第7条とは別に重なります

市の解説は、市条例第7条の規定が適用され、土砂災害特別警戒区域にも指定されている場合、その区域内の居室を有する建築物については、市条例第7条の規定に適合したうえで、令第80条の3の規定にも適合する必要があると書いています。どちらか一方ではありません。令第80条の3は、土石等の力に対する構造の規制です。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは京都府知事です。指定箇所や公示図書(位置図・区域図)は、京都府の「土砂災害警戒区域等指定箇所情報」で市町村ごとに確認できます
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第7条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第7条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——市の解説Q13は、第7条に該当しない斜面や高さが2メートル以下の崖に近接して建築する場合について、法第19条第4項に規定されているとおり、建築物が崖崩れ等による被害を受けるおそれがある場合は擁壁の設置その他の安全上適当な措置を講じる必要があるとしています。この規定に、崖の高さの下限はありません
  • 災害危険区域(法第39条)——京都府の「災害危険区域及び土砂災害特別警戒区域の指定について」のページは、府内で災害危険区域が指定されている市として福知山市と舞鶴市を挙げています(いずれも出水が理由)。京都市は挙げられていません。ただし指定は変わり得ます——計画の時点で窓口に確かめてください

レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

既存の建物——大規模の修繕・大規模の模様替・用途変更「だけ」なら第7条は適用されません。増築・改築は別です

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。京都市の条例には、ここに特別な扱いが置かれています。

第43条の4 法第3条第2項の規定により第3条、第4条、第7条及び第8条の規定の適用を受けない建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分について大規模の修繕、大規模の模様替え又は用途の変更をする場合においては、法第3条第3項第3号及び第4号並びに第87条第3項の規定にかかわらず、第3条、第4条、第7条及び第8条の規定は、適用しない。

京都市建築基準条例 第43条の4第1項(漢数字は算用数字に改めました)

この第43条の4第1項が対象にしているのは、「法第3条第2項の規定により第3条、第4条、第7条及び第8条の規定の適用を受けない建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分」です。この記事でいえば、第7条について既存不適格になっている建物等のこと——ふるい建物なら何でも、という条ではありません。そのうえで、大規模の修繕・大規模の模様替え・用途の変更「のみ」を行う場合は、第7条は適用されません。市の解説Q12も、同じ趣旨を書いています。ただし、増築・改築は、この第1項に挙げられていません——増築や改築をするなら、第7条は原則としてかかってきます。「リフォームだから外れる」と「増築だから外れる」は、まったく別の話です。どちらに当たるかの判断は、建築指導部の窓口で確かめてください。

建築基準法の側の緩和も見ておきます。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築主事又は建築副主事を置く市町村ではその市町村長、それ以外では都道府県知事。ただし、限定特定行政庁(法第97条の2により、政令で定める事務に限って建築主事等を置く市町村)の区域内では、政令で定める建築物について都道府県知事です。法第2条第35号)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者に来ます

第7条は、罰則の対象です。京都市建築基準条例第45条第1項は、第3条、第4条、第5条第1項もしくは第2項、第6条、第7条、第8条ほかの規定に違反した場合における当該建築物・工作物・建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、または設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該工事施工者)を、50万円以下の罰金(条文は「500,000円以下の罰金」と書いています)に処すると定めています。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同項の刑——すなわち50万円以下の罰金が科されます(第45条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも各本条の刑が科されます(第47条の両罰規定)。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適用要件を満たせば適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます。

窓口——京都市都市計画局建築指導部です

  • 確認申請の審査・確認申請事務の相談——都市計画局建築指導部 建築審査課 075-222-3616(ファックス 075-212-3657)。受付時間は午前8時45分から11時30分、午後1時から3時です。第7条の当てはめは確認申請の審査で見られます
  • 建築の相談・指導、建築基準法等による許可・認定・指定——都市計画局建築指導部 建築指導課 075-222-3620(ファックス 075-212-3657。京都市中京区寺町通御池上る上本能寺前町488番地・市役所内)。受付時間は午前8時45分から11時30分、午後1時から3時です
  • 急傾斜地崩壊危険区域の指定状況・急傾斜地崩壊防止工事の実施状況——京都府の砂防課または土木事務所(市の解説Q4)。ただし書第2号に当たるかどうかは、ここで確かめます。京都府建設交通部砂防課 075-414-5318(京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町。ファックス 075-432-6312)。府のページは、区域を「京都府建設交通部砂防課または、区域指定所在地を所管する土木事務所及び市(区)町村の役所・役場で必ず確認して下さい」とし、問い合わせ先は指定区域によって異なるとしています
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(公示図書)——京都府。区域を指定するのは府知事です

まぎらわしいものが、もうひとつあります。京都市には「京都市斜面地等における建築物等の制限に関する条例」もあります。市の概要は、斜面地または段地である建築物の敷地で、その高低差が3メートルを超えるものを「斜面地等」と定義し、用途地域と高度地区で指定された区域内で、建築物が周囲の地面と接する位置の高低差は6メートルを超えてはならないとすること等を定めるものだと説明しています。この記事の崖の規定(建築基準条例第7条)とは別の条例です——目的も、対象区域も、数字も違います。斜面地の土地を調べるときは、どちらの話をしているのかを窓口で確かめてください。問い合わせ先は、どちらも建築審査課(075-222-3616)です。

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。すでに契約を進めている方、もう土地をお持ちの方も、手遅れではありません——設計を始める前に、同じことを確かめてください。早いほど、間取りと費用の選べる幅が残ります。買ったあとでは、擁壁や構造の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは京都市建築指導部の窓口です。

  • ① その土地は京都市内か。京都市内なら、読むのは京都市建築基準条例 第7条です(京都府の建築基準法施行条例は適用されません。府条例第20条)。対象区域は京都市の全域です
  • ② 敷地の中や周りに、地表面が30度を超える土地で、高さが2メートルを超えるものがあるか。敷地の外の崖でも、道路を挟んだ崖でも対象です(市の解説Q1)。段になった崖は、30度の斜線の上に上層の下端があれば一体とみなします
  • ③ 建てる場所は、崖の下端から2倍以内か、上端から2倍以内か。起点は両方です。崖の下に建てるなら下端から、上に建てるなら上端から測ります。崖の下に水路や河川があるときは、水路底・河川底が下端です(市の解説Q14)
  • ④ かかるなら——ただし書5つのどれかに当たれば、第7条については原則として建てられます。第3号(基準に適合する擁壁)と第5号(建築物の構造)は、設計で対応を検討できる候補です——ただし、成立するかどうかは、図面・構造の検討と審査で決まります方針を立てて図と計算で示すのは設計者(建築士)確認申請の対象になる計画では、その審査でも見られます確認申請が不要な計画では審査がないので、窓口への事前相談で確かめてください
  • ⑤ 既存の擁壁があるなら、許可・確認済証と検査済証、そして現況の確認から。市の解説Q9は、許可や確認済証があることに加えて、適切に施工されていること、設計者による現地調査により劣化等が生じていないことが確認できれば第1号または第3号に該当する場合がある、としています。図書が見つからないときは、所有者等への問い合わせが方法のひとつですが、工作物の築造計画概要書では具体的な擁壁の位置を特定できないことがあるとも書かれています
  • ⑥ 急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか。入っているなら、京都府の砂防課または土木事務所で工事の実施状況を確認します。区域に入っている=第2号に当たる、ではありません(市の解説Q4)
  • ⑦ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。京都府の指定箇所情報で当たりを付け、最終確認は京都府の公示図書で。レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら、第7条に適合したうえで令第80条の3にも適合する必要があります
  • ⑧ 崖が道路・河川・鉄道の法面や擁壁ではないか。下部に建てる場合と上部に建てる場合で、市の解説の扱いが違います(Q8)。上部に建てるときは、管理者への確認が要ります
  • ⑨ 既存の建物なら——法第3条第2項により第7条の適用を受けない建築物(=建てたときは適法だった既存不適格の建物)等について、大規模の修繕・大規模の模様替え・用途の変更「だけ」なら、第7条は適用されません(条例第43条の4第1項)。「既存の建物なら外れる」ではありません——もともと第7条の適用を受けている建物には、この扱いは働きません。増築・改築も、この列挙に入っていません自分の工事がどれに当たるかは、素人には決められません——工事内容の分類を、窓口で確かめてください
  • ⑩ 第7条に当たらない斜面や、高さ2メートル以下の崖でも、法第19条第4項は残ります(市の解説Q13)。「2メートル以下だから何もしなくていい」ではありません
  • ⑪ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第45条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

  • 崖付近の建築制限(京都市公式PDF・京都市建築基準条例第7条の抜粋と解釈・例示・QA全16問)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第86条の7・第87条・第91条・第98条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第7条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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