岡山県のがけ条例——崖の近くに建てられるか

岡山県のがけ条例

岡山で崖の近くに家を建てる・買う人へ——最初に答えから。

まず、自分の土地にがけ条例がかかりそうかを確かめる。崖の高さ・角度と建物までの距離を入れると、条例の数字に当たりそうかと、相談先が分かります。結果は窓口に持っていけるPDFにできます(無料・登録不要)。
がけ条例 かんたん判定で確かめる(無料)

がけ条例とは

岡山県の「がけ条例」とは

窓口に行く前に。擁壁の図面と構造計算書は当社が用意します。全国対応。大臣認定擁壁も手配できます。窓口には、その図面を持って行けます。 土のねっこ(L型擁壁) やまがみ(土砂待受擁壁) 擁壁を相談する ☎ 0120-1181-46
見積・相談を依頼する(無料)☎ 0120-1181-46(平日9〜18時)

岡山県の「がけ条例」とは、建築物等の制限に関する条例 第3条のことです。高さ2メートルを超え、30度を超える崖の近くに建てるときは、原則として崖から一定の距離を保つことが求められます。

擁壁が要るかどうかは、条例の当てはめで決まります。擁壁の種類と、確かめる順は「擁壁の選び方」にまとめています。

図で見る——押すと、その話へ飛びます

まず、何から始める?契約の前に、建築士へ電話
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岡山にがけ条例はある?建築物等の制限に関する条例
岡山にがけ条例はある?
どこからが「がけ」ですか30度を超える斜面です
どこからが「がけ」ですか
どこから測るのですか上に建てるなら下端から
どこから測るのですか
レッドゾーンなら外れる?崖の下だけ、この条の対象外
レッドゾーンなら外れる?
擁壁を造れば済む?命じるのは2倍以上離すこと
擁壁を造れば済む?
結局、建てられますか2倍以上離せば満たせます
結局、建てられますか
離せないときは?道は2つ。1つめは検査済証
離せないときは?
2つめの道、認定とは?知事の認定(第2項第四号)
2つめの道、認定とは?
どんな建物が対象?居室のある建物だけです
どんな建物が対象?
市でも同じですか岡山市・新見市では適用外
市でも同じですか
災害危険区域なら?県の指定は、現在ありません
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守らないと、どうなりますか罰金は20万円以下。原則設計者
守らないと、どうなりますか
条件を満たせば安心ですか法第19条第4項が残ります
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どこに聞けばいい?土地のある市町村で変わります
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いつ、誰に相談しますか売買契約の前に動きます
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まずすること

岡山県のがけ条例で、まずやること

先にすることは、3つです。崖条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、崖から離す距離や工事の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って窓口へ、条例の当てはめを確かめる。窓口は、土地のある市町村で変わります——市町村名と、建物の用途・階数・延べ面積を伝えて、相談先と提出先を確かめてください。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

窓口や建築士に行く前に、図面はご用意できます。擁壁の図面と構造計算書は当社でご準備できます。持って行ける形でお渡しします。
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先に、この記事の要点を7つ。

  • ①岡山の「がけ条例」は、建築物等の制限に関する条例の第3条(昭和26年3月20日 岡山県条例第10号)です。題名に「岡山県」も「建築基準」も付きません
  • ②岡山市と新見市では、県の条例は適用されません(第14条)——岡山市には、市のがけ条例もありません(新見市は市独自の第3条を持っています)。ただし、がけ条例とは別に、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)と盛土規制法の区域は、どちらの市でもかかります。これとは別に、岡山市の条例第2条の災害危険区域があります——市は「現在のところ指定はありません」と書いています
  • ③かかるのは、居室(きょしつ)を有する建築物だけです——居住・執務・作業などに継続して使う部屋がある建物、という意味です
  • ④高さの境目が、崖の上と下で違います——崖の上に建てるなら2メートルを超える崖、崖の下に建てるなら5メートル以上の崖
  • ⑤起点も入れ替わります——崖の上に建てるときは崖の下端(かたん)から、崖の下に建てるときは崖の上端(じょうたん)から、崖の高さの2倍以上の水平距離を保つ、という条文です
  • ⑥土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)で対象外になるのは、崖の下だけです——それも、居室のある建築物自体がその区域内にあるときに限られます。外れるだけで、居室を有する建築物には建築基準法施行令第80条の3の構造の規制が別にかかります。その令第80条の3には、ただし書(=「ただし……この限りでない」で始まる、義務が外れる場合の定め)があります——土石等の高さ等以上の高さの門または塀(外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものに限ります)が、その衝撃を遮るように設けられている場合は、この限りではありません
  • ⑦2倍以上を離せば、第3条第1項の距離義務は満たせます。離せなくても、崖を覆う擁壁(ようへき=崖の土が崩れないように支える構造物)の工事等について所定の検査済証があるか、知事(倉敷・津山・玉野・笠岡・総社の5市では市長)の認定を受ければ(どちらも第3条第2項が定める道です)、第3条については原則として建てられます(外れるのは第3条第1項の距離の義務です——建築確認やほかの区域の規制で、可否は変わります)——ただし、災害危険区域・土砂災害の区域・建築基準法第19条第4項は別に確認してください

条文は2026年9月1日に、県が公表している条例本文・解説・崖認定基準のPDFで確認しました。

岡山にがけ条例はある

「がけ条例」の実体は、建築物等の制限に関する条例の第3条です

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岡山にがけ条例はある?
岡山にがけ条例はある?

「がけ条例」という名前の条例はありません。岡山県では、建築物等の制限に関する条例の第3条(崖に近接する建築物)がその中身です。題名に「岡山県」は入りません。「岡山県建築基準条例」を探しても見つかりません——探すのは「建築物等の制限に関する条例」です。県の窓口や様式では、この条にもとづく手続きを「がけ認定」と呼んでいます。

建築物等の制限に関する条例
建築物等の制限に関する条例

根拠は建築基準法第40条——地方公共団体が、条例で建築物の敷地・構造の制限を付け加えられる、という規定です。県の解説も、第3条は法第40条を受けたものだと書いています。第3条の条文に「都市計画区域内」の限定はありません。用途地域の外でも、崖と距離の条件に当たれば働きます。

どこからが「がけ」ですか

高さの境目が、崖の上と下で違います——上は「2メートルを超える」、下は「5メートル以上」

どこからが「がけ」ですか
どこからが「がけ」ですか

第3条 居室を有する建築物を建築する場合(前条第2項ただし書の規定により住居の用に供する建築物を建築する場合を除く。)において、当該建築物を、2mを超える高さの崖(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいう。以下この条において同じ。)の上に建築しようとするときにあつては崖の下端から、5m以上の高さの崖の下に建築しようとするとき(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第9条第1項の規定により知事が指定した土砂災害特別警戒区域内において居室を有する建築物を建築しようとする場合を除く。)にあつては崖の上端から、当該建築物との間にそれぞれ当該崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。

建築物等の制限に関する条例 第3条第1項

一文が長いので、崖の上に建てるか、下に建てるかで分けます。

 崖の上に建てる(建物より下に崖がある)崖の下に建てる(建物より上・背後に崖がある)
崖の高さ2メートルを超える5メートル以上
距離の起点崖の下端から崖の上端から
保つ距離建築物との間に、崖の高さの2倍以上の水平距離建築物との間に、崖の高さの2倍以上の水平距離
レッドゾーン内で居室のある建物を建てるとき括弧書きの除外はありません第3条の対象から外れます

県の解説も、同じことを一行で書いています——「建築物より下の崖は高さが2mを超えるものが、建築物より上(背後)の崖は高さが5m以上のものが対象です」。「2メートルを超える崖」とだけ覚えると、崖の下に建てるときに間違えます。

30度を超える斜面です
30度を超える斜面です
ちょうどは、上と下で違います
ちょうどは、上と下で違います

ちょうどの数字は、上と下で扱いが違います

  • 勾配は「30度を超える」——30.0度ちょうどは当たりません。上でも下でも同じです
  • 崖の上に建てるときは「2mを超える」——2.0メートルちょうどは当たりません
  • 崖の下に建てるときは「5m以上」——5.0メートルちょうども入ります。「超える」ではなく「以上」だからです

崖の定義は、条文の括弧書きにあります——「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地」。それだけです。条例に「硬岩盤(こうがんばん。風化の程度を含め、該当するかどうかは地質資料・調査で確かめます)」という言葉はありません。「岩だから外れる」とは条文のどこにも書かれていません。土質による違いが出てくるのは、あとに出る崖認定基準の中です。県の解説も、対象となる崖は「人工のもの又は自然のものに関係なく」と書いています——自分で造った崖でも、対象になります。

どこから測るのですか

起点は、直感と逆です——崖の上に建てるなら下端から、崖の下に建てるなら上端から

どこから測るのですか
どこから測るのですか

ここが岡山でいちばん取り違えやすいところです。崖の上に建てるとき、距離を測る起点は「崖の下端」——足元の崖のてっぺんではなく、崖の一番下です。崖の下に建てるとき、起点は「崖の上端」——目の前の崖の足元ではなく、崖の一番上です。どちらも、遠いほうの端が起点になります。

上に建てるなら下端から
上に建てるなら下端から
下に建てるなら上端から
下に建てるなら上端から

県の解説は、測る2点をこう定めています。

・B1点は、建築物の外壁の中心線で判断します。(外壁の中心に比べて基礎が大きく外にせり出している場合は基礎の中心線)
・B2点は、崖の上端(又は下端)。端とは、勾配が継続して30°以下になるか超えるかが分かれる地点をいいます。

「建築物等の制限に関する条例」の解説(令和7年4月改定) 第3条(2)

建物の側は、外壁の中心線です。外壁の面でも、庇の先でもありません。ただし基礎が外壁より大きく外にせり出しているときは、基礎の中心線になります。基礎伏図と断面図がないと決まりません。

崖の側の上端(じょうたん)・下端(かたん)は、勾配が続けて30度以下になるか超えるかが分かれる地点です。傾斜がゆるやかに変わっている土地では、どこが端かで崖の高さが変わり、保つ距離も変わります。

崖が段々に続くときの数え方も、解説の図に出ています。下の段の端から30度の斜線を引き、上の段の端がその斜線の上側にあれば、一体の崖——高さは通しで測ります。下側にあれば、別々の崖——それぞれの高さで、対象かどうかを見ます。1つの崖の数え方で、結論が変わります。ここは目測では決まりません。

レッドゾーンなら外れる

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の崖の下は、この条の対象外——代わりに令第80条の3がかかります

レッドゾーンなら外れる?
レッドゾーンなら外れる?

第3条第1項の括弧書きは、崖の下に建てる場合のうち、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内で居室を有する建築物を建てるときを、第3条の適用から外しています。括弧書きは、崖の下の場合にだけ付いています——崖の上に建てる場合には、同じ除外はありません。

崖の下だけ、この条の対象外
崖の下だけ、この条の対象外

県の解説は、理由をこう書いています。

土砂災害特別警戒区域内で崖下に建築する場合は、別途令第80条の3の構造規制がかかるため対象外です。

「建築物等の制限に関する条例」の解説(令和7年4月改定) 第3条【解説】

「レッドゾーンだから、より厳しい条例がかかる」と読むと、意味が逆になります。レッドゾーンでは建築基準法施行令第80条の3が働きます——居室を有する建築物の外壁と構造耐力上主要な部分のうち、知事が指定のときに定めた土石等の高さ等以下で、衝撃が作用すると想定される部分(条文はこれを「外壁等」と呼びます)について、力の大きさと高さに応じ、衝撃で破壊しない構造方法を国土交通大臣が定めた方法で用いなければならない、という規定です。建物の全部が対象ではありません。条例が外れたぶん、法令の構造の規制が入るという関係です。軽くなるわけではありません。

居室を有する建築物の守り方は、大きく2つあります。①衝撃が作用すると想定される部分の外壁等を、所定の構造とする——国土交通大臣が定めた構造方法で、衝撃で破壊を生じないものにします。②令第80条の3ただし書に適合する門または塀を設ける——土石等の高さ等以上の高さがあり、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして大臣が定めた構造方法を用いる門または塀を、居室を有する建築物の外壁等に作用すると想定される衝撃を遮るように設けたときは、外壁等の構造の規定はかかりません。どちらも、普通の境界塀の話ではありません。どの道を採るかは、設計者と窓口で確かめてください。この令第80条の3に対応する2つの方法と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

レッドゾーンでどんな構造が求められるかは、土砂災害特別警戒区域で求められる構造にまとめています(区域に入るかどうかの判定と、この条例の当てはめは、上の窓口で確かめてください)。

擁壁を造れば済む

義務の形は「2倍以上、離す」——条文に「擁壁を設けなさい」とは書いていません

擁壁を造れば済む?
擁壁を造れば済む?

条文が命じているのは「当該崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」です。「擁壁を設けなければならない」という義務は、この条にはありません。擁壁(ようへき=崖の土が崩れないように支える構造物。塀とは役割が違います)が出てくるのは、次に見る第2項——距離の義務が外れるための条件としてです。

この土地の擁壁を検討する方へ

「安全な擁壁」の図面と構造計算書を、当社でご準備できます。工場で造る鉄筋コンクリートのL型擁壁「土のねっこ」(高さ500〜3,000mm)。高さ1メートル以下なら「土地分け丸」。全国対応。大臣認定擁壁も手配できます。この条に合うかどうかは、窓口で決まります。

当社はコンクリート製品のメーカーです。大分県内と関西圏では、施工業者をご紹介できます。それ以外の地域は、地域の施工業者さんにお願いしていただく形です。図面が無ければ、手書きの絵と写真で大丈夫です。絵に段差の高さと長さを書き込み、住所も添えてください。

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命じるのは2倍以上離すこと
命じるのは2倍以上離すこと

擁壁は、一つの形に限りません。崖の土を普段から支える一般的な擁壁だけでなく、崩れてきた土砂を建物の手前で受け止める待ち受け擁壁もあります。岡山県の認定基準は、崖と建物の間に河川等と防護壁を組み合わせる例(図3)も挙げています——この記事の「認定基準1」で見ます。どれも崖崩れの力を受ける前提で構造を計算するもので、敷地の境に立てる普通の塀とは、役割も構造も違います。

たとえば崖の上に建てるとき、崖の高さが3メートルなら、崖の下端から6メートル以上。崖の下に建てるとき、崖の高さが6メートルなら、崖の上端から12メートル以上です。高さ3メートルの崖の下に建てるなら、この条はかかりません——崖の下は5メートル以上が対象だからです。ただし、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、建築基準法第19条第4項の措置が別に要ります(下の節に書きました)。測る先は、建物の外壁の中心線。敷地が狭いほど、この距離は効きます。

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(この条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

結局、建てられますか

崖の高さの2倍以上を離せば、県条例第3条第1項の距離義務を満たせます

結局、建てられますか
結局、建てられますか

2倍以上離せば、第3条第1項の距離義務を満たせます。県の解説も、こう書いています——「対象となる崖の場合には、原則として、崖の高さの2倍以上の距離を離して建築することが必要です」。これは、建築の可否ぜんぶの保証ではありません。

2倍以上離せば満たせます
2倍以上離せば満たせます

ここで満たせるのは、県条例第3条第1項の距離義務です。建築基準法第19条第4項の措置、土砂災害の区域、盛土規制法の区域、急傾斜地崩壊危険区域の行為制限は、別に確認が要ります。

離せないときは

離せないときの道は2つ。1つめは「検査済証の交付があったとき」です(第2項第一号〜第三号)

離せないときは?
離せないときは?

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合は、適用しない。
一 崖を覆う擁壁の工事(これに付随する崖の災害防止工事を含む。)について、法第88条第1項において準用する法第7条第5項又は法第7条の2第5項に規定する検査済証の交付があつたとき。
二 崖を覆う擁壁の工事又は崖の災害防止工事について、都市計画法(昭和43年法律第100号)第36条第2項に規定する検査済証の交付があつたとき。
三 崖を覆う擁壁の工事又は崖の災害防止工事について、宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和36年法律第191号)第17条第2項又は第36条第2項に規定する検査済証の交付があつたとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、建築物の構造、崖の土質及び災害防止措置の状況により知事が当該建築物の安全上支障がないと認めたとき。

建築物等の制限に関する条例 第3条第2項

離さなくても、所定の検査済証があれば、第3条第1項の距離義務は適用されません——第3条については原則として建てられます(外れるのは距離の規定だけです。建築確認も、ほかの規制も、別に残ります)。ただし、第一号から第三号は、どれも「検査済証の交付があつたとき」です。擁壁を造った、では足りません——擁壁を造っただけでは外れません。検査済証の交付があったとき、です。いま斜面にコンクリートが打ってあっても、その工事の検査済証がなければ、この号には当たりません。

道は2つ。1つめは検査済証
道は2つ。1つめは検査済証
  • 第一号——工作物の確認を受けた擁壁の工事について、建築基準法の検査済証(法第88条第1項で準用する法第7条第5項、または法第7条の2第5項)
  • 第二号——開発許可を受けた工事について、都市計画法第36条第2項の検査済証
  • 第三号——盛土規制法の許可を受けた工事について、同法第17条第2項・第36条第2項の検査済証

第一号でいう擁壁は、法第88条第1項の工作物確認を受けたものです——対象になるのは高さ2メートルを超える擁壁です(令第138条第1項第五号)。その構造方法には建築基準法施行令第142条がかかります。同条第1項は、第一号から第五号までの基準に適合する構造方法か、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法か、そのどちらかを用いることとしています。大臣が定めた構造方法だけが必須、という意味ではありません。どちらの構造方法でも、条例第3条第2項第一号で要るのは、工事のあとに検査済証の交付を受けていることです。

第一号は「崖を覆う擁壁の工事」に「これに付随する崖の災害防止工事を含む」と括弧で足していますが、第二号・第三号は「崖を覆う擁壁の工事又は崖の災害防止工事」と並べています。読み方が号ごとに違います。

なお、改正前の宅地造成等規制法第13条第2項の検査済証の交付があったものは、条例の附則(令和5年3月20日公布分)の経過措置により、引き続き距離を保つ措置は不要だと県の解説が書いています。古い書類でも、捨てないでください。

2つめの道、認定とは

2つめは、認定です(第2項第四号)——「どうすれば建てられるか」は認定基準に書いてあります

2つめの道、認定とは?
2つめの道、認定とは?

県の解説は、この号をこう説明しています。

崖の高さの2倍以上の距離を離すことができない場合でも、建築物の構造、崖の土質及び災害防止措置の状況により知事が当該建築物の安全上支障がないと認めたときは建築することができます。(本条第2項第4号)

「建築物等の制限に関する条例」の解説(令和7年4月改定) 第3条(3)

離せない場合でも、認定を受けられれば第3条第1項の距離義務は適用されません——条例第3条については原則として建てられます。ただし、これも建築の可否ぜんぶの保証ではありません。その中身は「建築物等の制限に関する条例第3条第2項第四号の認定基準」(令和7年3月19日改定、令和7年4月1日施行)に書かれています。ここが、答えの側の資料です。認定を出すのは知事——倉敷市・津山市・玉野市・笠岡市・総社市では、各市長です。

知事の認定(第2項第四号)
知事の認定(第2項第四号)
認定基準に3つの道
認定基準に3つの道

認定基準1——崖の崩壊に対して安全が見込まれる場合

  • 崖の下に建てるとき・建物で受けるなら——崖崩れにより被害を受ける恐れのある部分を鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造とし、崖側に開口部は原則として設けない(居室以外で土砂流入のおそれのない小開口は除かれます)
  • 崖の下に建てるとき・直接受けるなら——図2の待ち受け擁壁など構造耐力上安全な擁壁を設け、崖崩れの影響が建築物に過大な被害を及ぼさない計画とします
  • 崖と建物の間に河川等があるなら——図3には、河川等と防護壁を組み合わせる例があります。河川等の断面積が想定崩壊土砂量の断面積の2倍を超えるなどの条件により、土石等が建物まで到達しないとするものです(図3は深さ2メートル以上の河川等を対象としています)
  • 崖の上に建てるとき——基礎の根入れを深くするか、支持杭を使う(根入れ=基礎を地中に埋める深さ。支持杭=固い地層まで届かせて建物を支える杭)ことで、崖が崩壊しても建築物の倒壊の恐れがないと認められるもの

普通の塀を置けばよい、という意味ではありません。図2の擁壁も図3の防護壁も、崖崩れの力を受ける前提で構造を計算するものです。構造安全性、図3の計算条件、そして認定の可否は、設計者と窓口で確かめてください。なお、レッドゾーンのところで見た令第80条の3の「門または塀」は、国の法令の構造の規制の話で、この認定基準の防護壁とは別のものです。

崖の上の根入れの深さは、認定基準の図4が数字で示しています。崖の下端から、土質に応じた角度で斜線を引き、その斜線より深い位置に基礎の根入れ先端を置く、という決め方です。支持杭なら、杭の先端がその深さを満たすこと。

崖の土質崖の下端から引く斜線の角度
軟岩(風化の著しいものを除く)60度
風化の著しい岩40度
砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの35度

(崖認定基準 図4)

認定基準2——崖面の安全が見込まれる場合

  • 土質試験等に基づく地盤の斜面安定計算で、崖の安全が確かめられるもの
  • 切土でできる崖で、土質と勾配に応じて図5に適合し、のり面保護工(のりめんほごこう=斜面を植生やコンクリートで覆い、崩れを防ぐ工事)がなされるもの
  • 切土でできる崖で垂直高が5メートルを超える場合に、犬走りを設けるなど図6に適合し(犬走り=いぬばしり。斜面の途中に設ける水平な小段)、のり面保護工がなされるもの
  • そのほか、盛土規制法か都市計画法の技術的基準を満たしているもの

この表は、距離を離せないときに認定を受けるための基準です。図5は、切土でできる崖について、崖の面の角度(θ)で3つに分けています。

のり面の土質擁壁不要崖の上端から垂直距離5メートルを超える部分に擁壁を要する擁壁を要する
軟岩(風化の著しいものを除く)60度以下60度超〜80度以下80度超
風化の著しい岩40度以下40度超〜50度以下50度超
砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの35度以下35度超〜45度以下45度超

(崖認定基準 図5。角度は崖の面の角度で、条例の崖は30度を超えるものなので、この表に出てくるのも30度を超える崖です。「擁壁不要」の欄でも、のり面保護工は要ります。)

犬走り

高い崖には、何を設けるのが標準ですか

図6は、垂直高が5メートルを超える崖に犬走りを設けるときの標準です。高さ5メートルごとに、幅1メートル以上の犬走りを設けるのを標準とし、安定した良質な土質で安全性が確保される場合はのり高の上限を10メートルにできる、と書かれています。のり面の高さ(法高=のりだか。崖の上端から測る垂直方向の高さで、斜面に沿った長さではありません)に応じた角度の上限は、次のとおりです。

のり面の土質法高 H≦5メートル(崖の上端からの垂直距離)法高 H>5メートル(崖の上端からの垂直距離)
軟岩(風化の著しいものは除く)80度以下60度以下
風化の著しい岩50度以下40度以下
砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土、その他これらに類するもの45度以下35度以下
上記以外の土質(岩屑、腐食土(黒土)、埋土、その他これらに類するもの)30度以下30度以下

(崖認定基準 図6の表。この認定基準の中で「上記以外の土質」が出てくるのは、この表だけです——岩屑・腐食土(黒土)・埋土などは、高さにかかわらず30度以下です)

どの土質に当たるかを決めるのは、読者ではありません。土質を調べて図にするのは地盤調査と設計者、認定基準への当てはめを判断するのは、所管する知事または市長の窓口です。「うちは岩だから大丈夫」は、土質試験の結果ではありません。

認定基準3と、個別のがけ認定申請が要らない「あらかじめ認定」

認定基準3は、基準1・2以外の措置で、地域の特性に即し、十分な技術的根拠を持って計画され、建築物の埋没及び倒壊の恐れがないものです。

認定基準1・2・3のどれかに当てはまれば、知事(倉敷・津山・玉野・笠岡・総社の5市では市長)の認定を受けられます——条例第3条については原則として建てられます。ただし、災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は別に確認してください。建築確認その他の手続きも、別に必要です。当てはまるかは、まず設計者が資料で根拠を示します——認定をするのは知事(上の5市では市長)で、目測で決めるものではありません。

認定基準の第3条は、認定されたものとみなす場合を3つ挙げています。次の3つに当たる場合は、条例第3条第2項第四号の認定を受けたものとみなされます——個別の認定申請は要りません。その結果、第3条第1項の距離の義務は適用されません。建築確認その他の手続きは、別に必要です。当たるかどうかを決めるのは、あなたではなく窓口です。

  • 擁壁等の災害防止措置が公共事業により実施され、公共により維持管理がなされるもの、又はこれと同等のもの
  • 県土保全条例に基づく開発許可等の内容に適合していることの確認を受けたもの
  • 認定基準2で認定を受けて建てた既存建築物の敷地内に建てる場合で、影響のある崖が、既存建築物で認定した崖の条件と異ならないもの

県が事務を行う区域では、認定申請は様式第11号。手数料は無料です

県の様式集では、崖の認定申請は整理番号46「認定申請書(条例第3条)」——県細則事務取扱要領様式第11号です。備考にはこう書かれています——「がけ認定申請の手数料は無料です。」そして様式集は、この手続きについて「県民局の窓口で必ず事前相談を行ってください」と求めています。いきなり出す書類ではありません。

ただし、これは県が条例の事務を行う区域の話です。倉敷市・津山市・玉野市・笠岡市・総社市では、この認定を出すのが各市長なので、様式も窓口も、各市に確かめてください——市が独自の申請書を出している場合があります。岡山市・新見市では、そもそも県の条例が適用されません。

県の解説は、もうひとつ断っています——都市計画区域外で建築確認が要らない規模の建築物(法第6条第1項第三号相当)については認定手続きは要りませんが、認定基準を参考に適切な措置を講じてください、と。手続きが要らないことと、措置が要らないことは別です。

どんな建物が対象

県条例第3条の対象は、居室のある建物を建築するときです(ほかの規制は別に確認)

どんな建物が対象?
どんな建物が対象?

県の解説は、第3条の対象をこう限っています。

・居室を有する建築物のみが対象です。(棟単位で適用。)
・建築(新築、増築、改築、移転)するときが対象であり、大規模の修繕、大規模の模様替、用途変更などは対象外です。

「建築物等の制限に関する条例」の解説(令和7年4月改定) 第3条【解説】
居室のある建物だけです
居室のある建物だけです
  • 居室のない建物は対象外——物置や車庫だけなら、この条はかかりません(他の規制は別です)
  • 棟単位で見ます——敷地の中に居室のある棟とない棟があるなら、棟ごとの判断です
  • 新築だけでなく、増築・改築・移転も対象です(建築基準法第2条第13号の「建築」)
  • 大規模の修繕・大規模の模様替は対象外だと、県の解説が書いています

用途変更については、県の解説は対象外としています。ただし建築基準法第87条第2項は、建築物の用途を変更する場合に、原則として法第40条に基づく条例の規定を準用すると定めています(同項は「次項の建築物を除く」と断っています)。用途を変える計画なら、窓口で当てはめを確かめてください。この記事では、県の解説の記載として示します。

市でも同じですか

岡山市と新見市では、この条例は適用されません(第14条)

市でも同じですか
市でも同じですか

(市町村条例との調整)
第14条 市町村において、この条例の規定に相当する内容を規定する条例が定められた場合には、当該市町村の区域については、この条例の規定は、適用しない。

建築物等の制限に関する条例 第14条

県の解説は、この条を受けて、対象の市を名指ししています。

岡山市及び新見市については、独自の条例を定めているため、本条例第14条の規定により、本条例を適用しません。

「建築物等の制限に関する条例」の解説(令和7年4月改定) 冒頭
岡山市・新見市では適用外
岡山市・新見市では適用外
倉敷など5市は県条例。窓口は市
倉敷など5市は県条例。窓口は市

岡山市には、がけ条例がありません——ただし、規制が無いわけではありません

岡山市の条例は岡山市建築基準法施行条例(平成12年市条例第118号)で、全部で8条です。崖に関する条はありません。市自身が、よくある質問のページでこう答えています。

Q1.岡山市で独自にがけ条例を定めていますか?
A.岡山市は、がけ条例を定めていません。(岡山県が定めているがけ条例(建築物等の制限に関する条例 第3条)は岡山市内においては適用除外です。)
※がけ条例による建築規制はありませんが、建築基準法第19条において敷地内の安全性を設計者が適切に判断する必要があります。
なお、土砂災害特別警戒区域や宅地造成及び特定盛土等規制法で指定された区域は別途適法性の確認が必要です。

岡山市「構造関係規定に関するよくある質問」8.『がけ条例』について

岡山市内では、がけ条例に当たる規定が無く、県条例第3条による距離の義務も、認定も、罰則もありません。これは条例の話です——建築基準法第19条第4項や、土砂災害防止法にもとづく規制は、別に残ります。市の条例には「罰則」の条そのものがありません。市も「敷地内の安全性を設計者が適切に判断する必要があります」と書いています。ただし、残るのが第19条第4項だけということではありません——市自身が、「土砂災害特別警戒区域や宅地造成及び特定盛土等規制法で指定された区域は別途適法性の確認が必要です」と書いています。レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら建築基準法施行令第80条の3の構造の規制が、市の条例第2条の災害危険区域に指定されていれば住居の建築制限が、それぞれ別にかかります。条例が無いことは、安全でよいという意味ではありません。

市の条例の第2条は、急傾斜地崩壊危険区域内で、崩壊による危険の著しい区域を市長が災害危険区域として別に指定する形をとっています。指定されれば住居の用に供する建築物は建てられません(市長が技術的基準に適合する擁壁の設置等により安全上支障がないと認めた場合を除きます)。ただし市は、よくある質問のページ(確認申請・不動産調査に関するよくある質問)で「現在のところ指定はありません」と書いています(市のページは、見出しが「災害危険区域について」で、本文は「建築基準法第39条第1項に規定する災害区域」という書き方です)。これは市が指定したときに働く規定です。最新の指定状況は、市の窓口で確かめてください。

市独自の第3条

新見市は、市独自の第3条を持っています

新見市の条例は新見市建築基準法施行条例(平成18年条例第83号)で、第3条にがけの規定があります。市が公表している「建築設計に必要な資料」も、がけ条例の欄に「有(市建築基準法施行条例第3条)」と書いています。

市の条例第3条第1項は、高さの境目も、起点も、保つ距離も、県の条例と同じ形です——がけの上に建てるなら2メートルを超える高さのがけ、がけの下に建てるなら5メートル以上の高さのがけが対象で、起点は、上に建てるならがけの下端、下に建てるならがけの上端。保つのはがけの高さの2倍以上の水平距離です。

県の条例と違うところが、2つあります。1つは、県条例第3条第1項にある土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の除外が、市の条文には見当たらないこと。もう1つは、距離の義務が外れる場合を定めた第2項が、3つの号だということです——第1号が建築基準法の検査済証、第2号が都市計画法第36条第2項の検査済証、第3号が「がけを覆う擁壁その他の市長が定める基準の災害防止措置を講じていると市長が認めたもの」。県条例の第三号にあたる、盛土規制法の検査済証の号は、市の条文には見当たりません。

その第3号でいう「市長が定める基準」が、市の「がけに近接する建築物の災害防止措置に関する基準」(令和2年10月1日改正)です。条例第3条第1項に適合して建築することができないやむを得ない理由がある場合に限り適用すると、基準の第1条が断っています。基準はがけの上端を「継続的に30度を下回る最初の地点」とし、がけの状況を点数で判定する別表を置いています。点数の当てはめも、認めるかどうかも、決めるのは市長です——新見市内の土地なら、市の窓口で確かめてください。

倉敷・津山・玉野・笠岡・総社では、県の条例がかかります

この5市でも、県の「建築物等の制限に関する条例」第3条が適用されます。県の解説は、知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例(平成11年岡山県条例第51号)第2条・別表第一により、この5市の区域ではこの条例の事務を当該市長が行うと書いています。条例は県のもの、窓口は市という形です。同条例の別表第一八十一の項は、条例第3条第2項第四号のがけの認定を、この5市が処理する事務として挙げています。だからこの5市では、認定を申請する先は市長です。県の相談窓口のページも、この5市を「その他の市及び指定確認検査機関の窓口」として市の連絡先を載せています。

災害危険区域なら

県条例第2条の災害危険区域は、現在のところ指定がありません(土砂災害の区域・急傾斜地崩壊危険区域は別です)

災害危険区域なら?
災害危険区域なら?

(この記事で確かめた時点での話です)

県の指定は、現在ありません
県の指定は、現在ありません

条例の第2条は、知事が別に指定した区域を災害危険区域とし、その中では住居の用に供する建築物を建築してはならないと定めています。ただし県の解説は、こう書いています。

災害危険区域を指定した場合の建築制限についての規定ですが、現在のところ、本条例の規定により知事が指定した災害危険区域はありません。

「建築物等の制限に関する条例」の解説(令和7年4月改定) 第2条【解説】

だから、第3条の冒頭にある除外(第2条第2項ただし書で住居を建てる場合)も、いまのところ働く場面がありません。県が指定していないだけで、市が指定する道は別にあります——岡山市の条例第2条がその形です。

また、急傾斜地崩壊危険区域そのものは残っています。区域内での切土・盛土・のり切り・土石の採取などには、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項により知事の許可が要ることがあります。建築の窓口とは別の窓口です。なお、同項ただし書により、非常災害のために必要な応急措置として行う行為、区域の指定の際すでに着手している行為、政令で定めるその他の行為は、許可の対象から外れます。ただし、許可が要らないことと、届出が要らないことは違います——区域が指定されたとき、すでにその行為に着手していた人は、指定の日から起算して14日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければなりません(同条第3項。非常災害のために必要な応急措置として行う行為と、第1項ただし書の政令で定めるその他の行為を除きます)。国または地方公共団体は、同条第4項により許可ではなく協議によります。

「指定の日」がいつで、14日をどう数えるか——ここでいう「指定の日」は、区域の指定が公示によって効力を生じた日です。知事は指定をするとき国土交通省令で定めるところにより区域を公示し(同法第3条第3項)、指定は、その公示によって効力を生じます(同条第4項)。数え方の目印は、条文の「その指定の日から起算して」という書き方です。民法第138条は、期間の計算方法について「法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う」とし、民法第140条は「期間の初日は、算入しない」を原則としています。急傾斜地法第7条第3項の「その指定の日から起算して」は、起算日を条文の側で定めた書き方で、指定の日を1日目として数えます。ただし、この届出について、国や県が数え方を示した資料は見つかりませんでした——日にちが際どいときは、区域を所管する県の窓口(急傾斜地法の許可の窓口)に、指定の公示日と提出期限を確かめてください。なお、この届出をしなかったり、うその届出をしたりすると、同法第29条第2号により1万円以下の罰金です。

守らないと、どうなりますか

罰則は第15条——20万円以下の罰金。処罰の対象は原則、設計者です

守らないと、どうなりますか
守らないと、どうなりますか

第15条 第2条第2項、第3条第1項、第4条から第6条まで、第7条第1項、第8条第1項から第3項まで、第9条第1項又は第10条第1項の規定に違反した場合における建築物又は工作物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物又は工作物の工事施工者)は、20万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において、その違反が建築主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主又は工作物の築造主に対しても同項の刑を科する。

建築物等の制限に関する条例 第15条

列挙の中に「第3条第1項」が入っています。崖の距離の規定は、罰則の対象です。この罰金で処罰の対象になるのは、原則として設計者——設計図書を用いずに施工した場合、または設計図書に従わずに施工した場合は工事施工者です。是正命令の名宛人(なあてにん=命令を受ける人)は、これとは別に定められています。第3条第2項は、適用除外の規定なので列挙に入っていません。

罰金は20万円以下。原則設計者
罰金は20万円以下。原則設計者

第2項は、その違反が建築主の故意によるとき、設計者や工事施工者を罰するほか、建築主や工作物の築造主にも同じ刑を科すると定めています。「発注しただけ」で終わらない場合があります。

第16条は両罰規定です。法人の代表者や、法人・人の代理人、使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人にも同じ刑を科する——ただし、違反行為を防止するため相当の注意及び監督が尽されたことの証明があったときは、その法人又は人については除かれます。

是正命令は、建築主・所有者なども対象になり得ます(法第9条第1項)

罰金で処罰されるのが原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、建築主、工事の請負人(下請人を含みます)、現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して、工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他の是正に必要な措置を命ずることができる、と定めています。故意は要件ではありません。設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます。

命令に違反した場合は、法第98条第1項第一号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。罰金20万円の話とは、桁が違います。そして、命令の相手方は、居住者に限られません。直前に列挙した建築主・工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者・建築物または敷地の所有者・管理者・占有者が、その相手方です。土地や建物を買った所有者に、命令が及ぶこともあります。

条件を満たせば安心ですか

条例が外れても、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば建築基準法第19条第4項の措置が要ります

条件を満たせば安心ですか
条件を満たせば安心ですか

4 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

建築基準法 第19条第4項

これは、がけ崩れ等への安全措置を定めた国の法律の規定です。(ただし、この規定にも、適用されない場合と、条例で緩和される場合があります——くわしくは、すぐ下の「この規定が働かない場合」をご覧ください。)崖が2メートルちょうどでも、勾配が30度ちょうどでも、レッドゾーンで条例が外れても、岡山市のように条例そのものが無い区域でも——崖崩れ等による被害を受けるおそれがあるなら、擁壁の設置その他安全上適当な措置が要ります。求められているのは擁壁だけではなく「その他安全上適当な措置」を含みます。「条例に当たらないから何もしなくてよい」とは読めません。おそれの有無も、どの措置で足りるかも、あなたが決めるものではありません——崖と地盤を調べて図にするのは建築士等、条例と法の当てはめを判断するのは所管の建築行政の窓口と申請先です。

法第19条第4項が残ります
法第19条第4項が残ります

この規定が働かない場合——法第19条第4項にも、次の例外があります。法第3条第1項の文化財等の建築物。法第3条第2項の、その規定の施行・適用の際にすでに存在していた建築物や敷地(いわゆる既存不適格。ただし同条第3項各号に当たるものは除かれ、第一号は「改正後の規定の適用の際、これに相当する従前の規定に違反していたもの」です)。法第85条第1項の、非常災害区域等で災害の発生した日から1か月以内に工事に着手する応急の修繕・応急仮設建築物(防火地域内は除きます。応急仮設建築物は、国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建てるものと、被災者が自ら使う延べ面積30平方メートル以内のものです)。法第85条第2項の、災害時の公益上必要な応急仮設建築物と、工事現場の事務所・下小屋・材料置場などの仮設建築物。第85条は、第1項と第2項で対象も要件も違います——「応急仮設建築物なら外れる」とは読めません。

もうひとつ、条例で外したり緩めたりできる仕組みがあります。法第41条は、法第6条第1項第三号の区域の外(都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区・知事が指定する区域の、いずれにも入らない土地)で、市町村が国土交通大臣の承認を得て条例を定め、区域を限って法第19条を適用しない、または制限を緩和することを認めています(法第6条第1項第一号の建築物と、同項第二号の建築物のうち木造以外のものには使えません)。自分の土地がどれに当たるかは、窓口で確かめてください。

どこに聞けばいい

相談先は、土地のある市町村で変わります——まず市町村名と計画の規模を伝える

どこに聞けばいい?
どこに聞けばいい?

どこに相談するかは、土地のある市町村で変わります。県の解説と、県の相談窓口のページから見ると、次の4つに分かれます。ただし、これは目安です——建物の規模によって提出先が県になることがあります。市町村名と、建物の用途・階数・延べ面積を伝えて、相談先と提出先を確かめてください。

土地のある市町村で変わります
土地のある市町村で変わります
  • ①岡山市——県条例第3条は適用外で(第14条)、市独自のがけ条例もありません。がけ認定の申請そのものがありません。建築基準法第19条第4項、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)、盛土規制法の区域などについて、市の窓口へ相談します。建築確認の申請先は、市の建築主事等または指定確認検査機関です
  • ②新見市——県の条例は適用されません(第14条)。市の条例第3条によります。相談も申請も新見市の窓口へ
  • ③倉敷市・津山市・玉野市・笠岡市・総社市——県の条例は適用されます。ただし事務処理特例条例により、第3条第2項第四号の認定を出すのは各市長です。相談も申請も各市の窓口になります
  • ④その他の市町村——知事が特定行政庁です。実務上の相談窓口は県民局です。県民局で事前相談のうえ、知事の認定を申請します(県様式第11号・手数料無料)。自分の市町村がここに入るかは、下の県民局の担当エリアの表で確かめてください。

県が事務を行う市町村は、二段構えです。県の窓口のページは、こう書いています。

確認申請・完了検査等の相談窓口はすべて県民局となっております。電話での問い合わせも以下の相談窓口あてにお願いします。
(略)なお、建築基準法の各種申請等の提出先は市町村の建築基準法担当課になります。

岡山県建築指導課「確認申請等の相談窓口と担当エリア」

これらの市町村では、相談する先と、出す先が違います。

相談窓口(県)担当エリア電話
備前県民局 建設部管理課 建築指導班備前市、瀬戸内市、赤磐市、和気町、吉備中央町086-233-9847
備中県民局 建設部管理課 建築指導班井原市、高梁市、浅口市、早島町、里庄町、矢掛町086-434-7160
美作県民局 建設部管理課 建築指導班真庭市、美作市、鏡野町、美咲町、久米南町、新庄村、勝央町、奈義町、西粟倉村0868-23-1260

特定行政庁(原則として、建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事。ただし、法第97条の2第1項・第2項により建築主事等を置く市町村(限定特定行政庁)では、その区域内の政令で定める建築物については都道府県知事)が市になっているのは、次の7市です。この7市では、まず市の窓口に、建物の用途・階数・延べ面積を伝えて、相談先と提出先を確かめてください。7市のうちどこが限定特定行政庁かは、この記事では確かめていません——限定特定行政庁なら、政令で定める規模の建築物は県の窓口になります。県か市かを、この記事だけで決めないでください。

市の窓口電話この記事での位置づけ
岡山市 都市整備局住宅・建築部建築指導課086-803-1447(構造審査係)県条例は適用外。市のがけ条例もありません
新見市 建設部 都市整備課0867-72-6118県条例は適用外。市独自の第3条があります
倉敷市 建設局建築部 建築指導課086-426-3501県条例が適用。事務は市長が行います
津山市 都市建設部 都市計画課0868-32-2099県条例が適用。事務は市長が行います
玉野市 建設部 都市計画課0863-32-5538県条例が適用。事務は市長が行います
笠岡市 建設部 都市計画課0865-69-2141県条例が適用。事務は市長が行います
総社市 建設部 建築住宅課0866-92-8289県条例が適用。事務は市長が行います

最新の担当エリアと連絡先は、県の確認申請等の相談窓口と担当エリアで確かめてください。全県の総括は岡山県 土木部都市局 建築指導課です。建築確認そのものは、業務の範囲内であれば指定確認検査機関(民間の確認検査機関)にも申請できます(法第6条の2)。ただし、崖の認定を出すのは知事または各市長です——県が事務を行う市町村なら県民局での事前相談から、倉敷市など5市なら市の窓口から始まります。

契約の前に

売買契約の前に、専門家と確かめること

いつ、誰に相談しますか
いつ、誰に相談しますか

この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは窓口です。個別の判断は、建築士と窓口にご確認ください。

窓口に行く前に。擁壁の図面と構造計算書は当社が用意します。全国対応。大臣認定擁壁も手配できます。窓口には、その図面を持って行けます。 土のねっこ(L型擁壁) やまがみ(土砂待受擁壁) 擁壁を相談する ☎ 0120-1181-46

売買契約の前に動きます
売買契約の前に動きます
  • ①その土地は、岡山市か新見市の中か、外か。岡山市なら条例そのものがなく、新見市なら市の条例です。倉敷・津山・玉野・笠岡・総社なら県条例だが、窓口は市です
  • ②敷地内や隣接地に限らず、計画する建物の周辺に、勾配が30度を超える崖がないか。道路や水路、別の土地を挟む崖も含めて見ます——条文は、崖が同じ敷地や隣接地にあることを要件にしていません。目測ではなく、現況の測量図と断面図で
  • ③その崖は、建物より下にあるのか(崖の上に建てる)、上・背後にあるのか(崖の下に建てる)。下なら2メートル超、上なら5メートル以上が境目です
  • ④建てる位置が、崖の高さの2倍以上の水平距離を保てるか。ちょうど2倍でも、条文の「2倍以上」を満たします。起点は、崖の上なら下端、崖の下なら上端です
  • ⑤その建物に居室があるか。棟ごとに見ます。増築・改築・移転も対象です
  • ⑥すでに擁壁または崖の災害防止工事があるなら、その工事について、建築基準法・都市計画法・盛土規制法のどの検査済証が交付されているか。第二号・第三号は、擁壁以外の崖の災害防止工事も対象です。該当する書類がなくても、第四号の認定を受けられる可能性は別に確認します
  • ⑦県条例がかかる区域で距離を保てないなら、第2項第四号の認定の道があります。認定を出すのは、県が事務を行う市町村では知事、倉敷市など5市では各市長です。県が事務を行う区域なら県民局で事前相談(様式第11号・手数料無料)から
  • ⑧その土地が土砂災害警戒区域・特別警戒区域・急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか。県の最新の指定図書で
  • ⑨条例が外れても、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、建築基準法第19条第4項の措置が別に要ります(おそれの有無を判断するのは建築士と窓口です)

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、崖から離す距離や工事の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に。崖の高さと、崖からの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の窓口に、お尋ねください。

お問い合わせ

相談と見積(無料)

土のねっこが使えるか、図面か、段差の高さと長さ・現場の写真・住所からお答えします。図面と構造計算書は当社でご準備できます。

当社はコンクリート製品のメーカーです。大分県内と関西圏では、施工業者をご紹介できます。それ以外の地域は、地域の施工業者さんにお願いしていただく形です。

全国に配送します(沖縄・北海道・離島を除く)

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出典

条文は2026年9月1日に、岡山県が公表している条例本文のPDF・解説(令和7年4月改定)・崖認定基準(令和7年3月19日改定)・崖の影響範囲の解説図で確認しました。法令はe-Gov法令検索で確認しました。新見市建築基準法施行条例第3条は、新見市例規集(内容現在 令和8年6月29日)で、2026年9月6日に条文そのものを確認しました——第2項の柱書と第1号から第3号まで、第1項の全文です。ただし、市長が定める基準の別表の中身までは読み込んでいません。岡山市の災害危険区域については、市の確認申請・不動産調査に関するよくある質問に「現在のところ指定はありません」とあるのを確かめました(2026年9月3日閲覧)。ただし、指定が無いことを告示そのもので確かめたわけではありません。倉敷市・津山市・玉野市・笠岡市・総社市については、5市それぞれの申請の手引きまでは読めていません——認定の事務が各市長にあることは事務処理特例条例の別表第一で確かめました。また、この記事は岡山県内の条例だけを読んだもので、他の都道府県との比較はしていません。

岡山県のレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)については、区域図の調べ方・建築の決まり・待ち受け擁壁・補助金・相談先を岡山県のレッドゾーンのページにまとめています。

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