沖縄で崖の近くに家を建てる・買う人へ——最初に答えから。
先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、崖から離す配置や擁壁(ようへき=崖の土が崩れないように留めるコンクリートなどの壁)の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。相談先は、土地のある市町村で分かれます——那覇市・浦添市・宜野湾市・沖縄市・うるま市なら、その市に直接。それ以外の36市町村は、県の土木事務所です(この記事の窓口の節に表を置きました)。指定確認検査機関(民間の確認検査機関)へ確認申請を出す予定なら、その機関にも相談できます。高さも距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。
①沖縄の「がけ条例」は、建築基準法施行条例(昭和47年沖縄県条例第83号)の第5条です。②かかるのは、建築物を、高さ2メートルを超える崖に接し、または近接して建築しようとする場合。③そのとき条文が求めるのは擁壁ではなく、崖の高さの1.5倍以上の水平距離を保つこと。④どこから測るかは、崖の上か下かで入れ替わります——崖の上にあるなら崖の下端(かたん=斜面がふもとの地面と接するところ)から、崖の下にあるなら崖の上端(じょうたん=斜面が上の平らな地面と接するところ)から。県の解説は、水平距離を壁面または柱面で測るとしています。⑤この条例には、崖の勾配(傾き)の数値がありません——高さ2メートルを超えること以外に、条文も県の解説も角度を書いていません。だから、自分では線を引けません。⑥崖の上に建てる重量建築物は、1.5倍より広く取ることになります(第2項)。⑦距離が取れなくても、道はあります。第3項——建築物の用途、規模、構造、擁壁、崖等の状況により建築物の安全上支障がない場合には、第1項と第2項を適用しない、と条文が定めています。当てはまれば、第1項の距離の義務も第2項の割増しも外れます——第5条については原則として建てられます。⑧急傾斜地崩壊危険区域は、この条例では災害危険区域です(第3条第1項第1号)——その中では、住居の用途に供する建築物は原則として建築できません(第4条)。ただし、安全対策を講じ、特定行政庁が安全上支障がないと認める場合には例外があります(第4条ただし書。特定行政庁=とくていぎょうせいちょう。建築確認や是正命令を受け持つ役所の長。あとの窓口の節で読みます)。がけ条例より重い制限です。⑨盛土規制法の規制区域は、令和8年10月1日から指定されます——それまでは、この法律の許可を受けた工事という話が沖縄では成り立ちません。⑩県内で県の条例が適用されない市町村はありません——5市を含めて、県内41市町村すべてに第5条がかかります。条文は2026年9月4日に、沖縄県法規集の条例本文・細則本文と、県の「建築基準法施行条例の解説」(令和7年3月改正版・PDF)の2つを突き合わせて確認しました。
「がけ条例」の実体は、建築基準法施行条例の第5条です
「がけ条例」という題名の条例はありません。沖縄県では、建築基準法施行条例(昭和47年5月27日 沖縄県条例第83号)の第5条(崖に近接する建築物)がその中身です。題名に「沖縄県」が付きません——県が公表している条例本文の表題は「建築基準法施行条例」だけです。最終改正は令和6年12月27日 条例第52号です(沖縄県法規集。内容現在 令和8年4月1日)。
この条例には、沖縄ならではの生い立ちがあります。附則第2項は、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(昭和46年法律第129号)第4条の規定により条例としての効力を有する建築安全規則(1957年規則第51号)は、廃止すると書いています。1972年の本土復帰にあわせて、それまでの建築安全規則を置きかえた条例です。
根拠は建築基準法第40条——その地方の気候・風土の特殊性などにより、法第2章(建築物の敷地・構造・建築設備)の規定やこれに基づく命令の規定だけでは建築物の安全・防火・衛生の目的を十分に達しがたいと認める場合に、地方公共団体が条例で建築物の敷地・構造・建築設備の制限を付け加えられる、という規定です。条例第1条は、この法第40条を含む4つ(ほかに法第39条、法第43条第3項、法第56条の2第1項)と、手数料の根拠である地方自治法第228条を挙げています。第5条が置かれているのは、第3章「建築物の敷地及び構造」の先頭です。
都市計画区域の外でも、第5条はかかります
第23条の限定は、第5章に対するものです——条文は「この章の規定は、都市計画区域内に限り、適用する」と書いており、第23条は第5章(都市計画区域内の建築物の敷地等と道路との関係に関する制限の付加。第23条〜第28条)の中にあります。第5条は第3章(建築物の敷地及び構造)にあります——この区域限定はかかりません。なお、第29条も区域を指定していますが、これは日影による中高層の建築物の高さの制限(第6章)についてのもので、第5条には関わりません。つまり都市計画区域の外でも、第5条は働きます。用途地域のない土地でも、高さと距離の条件に当たれば対象です。
どこからが「崖」か——高さは「2メートルを超える」。勾配の数値は、条例にありません
(崖に近接する建築物)
建築基準法施行条例(沖縄県) 第5条
第5条 建築物を高さ2メートルを超える崖に接し、又は近接して建築しようとする場合は、崖の上にあつては崖の下端から、崖の下にあつては崖の上端から、その建築物との間に、その崖の高さの1.5倍以上の水平距離を保たなければならない。
2 鉄筋コンクリート造等の重量建築物を崖の上に建築しようとする場合においては、前項の数値を安全上支障がない程度に増大しなければならない。
3 前2項の規定は、建築物の用途、規模、構造、擁壁、崖等の状況により建築物の安全上支障がない場合には、適用しない。
押さえるところは3つあります。①高さは「2メートルを超える」——2.0メートルちょうどは当たりません(「以上」ではありません)。②「崖」の勾配の数値が、条文にありません。ほかの条にも定義は置かれておらず、県が公表している「建築基準法施行条例の解説」も、第5条について角度を書いていません。③「接し、又は近接して建築しようとする」の主語は「建築物」です——条文は「敷地が」ではなく「建築物を……崖に接し、又は近接して建築しようとする場合」と書いています。
②を、自分で判定しないでください。目の前の斜面が条例のいう「崖」に当たるかは、条文の数値からは決まりません。測って図にするのは建築士、当たるかどうかを判断するのは、建築行政の窓口か、確認申請を出す先です。「30度より緩いから外れる」と自分で決めないでください——その30度は、沖縄の条例には書かれていません。
もうひとつ、書類の側にずれがあります。県の建築基準法施行細則(昭和56年2月2日 沖縄県規則第1号。最終改正 令和8年3月31日規則第17号)は、確認申請書に添える図書として「建築物の敷地が高さ2メートル以上のがけに接し、又は近接する場合には、がけの高さ、がけの下端及び上端と当該建築物との距離並びにがけの形状を明示した断面図」を求めています(第4条第1項第3号)。条例は「2メートルを超える」、細則は「2メートル以上」です。ちょうど2.0メートルの崖は、条例の距離の義務からは外れますが、細則の断面図の求めには入ります。細則は「がけ」、条例は「崖」と表記も違います——この記事では、条例に合わせて「崖」と書きます。ここは県の細則の話です——那覇市・宜野湾市はどちらも「2メートルを超える/こえる」と書いており、5市では各市の規則を確かめてください。
ここで外れても、条例第5条から外れるだけです。崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、建築基準法第19条第4項の措置は別に残ります(あとの節で読みます)。
かかる範囲は「崖の高さの1.5倍」——起点が、崖の上と下で入れ替わります
言葉を決めておきます。下端(かたん)は、崖の斜面がふもとで下の地面と接するところ。上端(じょうたん)は、崖の斜面が上の平らな地面と接するところです。断面図の上で、どこが下端でどこが上端かが決まります。
そのうえで、条文は起点を「崖の上にあつては」と「崖の下にあつては」で分けています。崖の上にあるなら、起点は「崖の下端」。崖の下にあるなら、起点は「崖の上端」。言いかえると、起点は、いつも自分がいる側とは反対側の端です。
| 建築物の位置 | 距離の起点 | 保つ距離 |
|---|---|---|
| 崖の上にある | 崖の下端から | 崖の高さの1.5倍以上 |
| 崖の下にある | 崖の上端から | 崖の高さの1.5倍以上 |
がけの上に建てるとき、起点を取り違えると、必要な水平距離を長く見積もります。崖の上に建てるなら、測り始めるのは手前の上端ではなく、向こう側の下端です——斜面の水平幅も、必要な水平距離に含めて数えます(斜面の水平幅=上端と下端の水平のへだたり)。手前の上端から1.5倍を取ると、斜面の水平幅のぶんだけ余計に離すことになり、土地に余裕があるのに、あきらめてしまいます。崖の下に建てるときも同じです——起点は上端で、やはり斜面の水平幅が中に入ります。ただし、斜面の水平幅が1.5倍の中に収まるとは限りません——斜面が緩いほど水平幅は大きくなり、この条例には勾配の数値がないので、収まるかどうかは、条文の数値だけでは決まりません。高さ2メートルを少し超える崖なら、下端から3メートルあまり。高さ5メートルの崖なら、下端から7.5メートルです。上端から先に何メートル離すかは、断面図と申請先で決まります。
どこまでを測るかは、県の解説が図で示しています。解説の「水平距離の考え方」の図は、「崖と建築物との水平距離は、壁面又は柱面で測るものとします」と注記しています。基礎や庇の先ではなく、壁面(壁が無いなら柱面)まで、ということです。これは条文ではなく、県の解説の図の注記です——申請先が同じ取り方をするかは、申請先に確かめてください。
第2項——崖の上の重量建築物は、1.5倍より広く取ることになります
第2項は、鉄筋コンクリート造等の重量建築物を崖の上に建築しようとする場合に、第1項の数値を安全上支障がない程度に増大しなければならないと定めています。1.5倍が上限ではありません。建物が重ければ、1.5倍より広く取ることになります。
どこまで増やすかの数値は、条文にありません。「安全上支障がない程度に」としか書かれておらず、県の解説も倍率を示していません。ここも、設計者と申請先が決めるところです。自分の建物が「鉄筋コンクリート造等の重量建築物」に当たるかどうかも、条文には判定の基準がありません——断面図と設計の内容で、申請先が判断します。
義務の形は「離す」です——擁壁は、義務が外れる道のひとつ
条文が命じているのは「水平距離を保たなければならない」です。「擁壁を設けなさい」とは書いていません。擁壁は、第5条第3項の中に「建築物の用途、規模、構造、擁壁、崖等の状況により」という形で出てきます——擁壁を設ければ、第3項に当たり得ます——義務そのものではなく、義務が外れる側の手がかりとして置かれています。
だから、読む順番はこうなります。①まず、1.5倍の距離を取れるか(重量建築物なら、それ以上)。取れれば第5条第1項・第2項に適合します。②取れないなら、第3項に当てはめる——建築物の用途、規模、構造、擁壁、崖等の状況により、建築物の安全上支障がないこと。③どちらにも当てはまらないときは、その配置案では第5条に適合しません——配置を変える、擁壁を設ける、建物の構造を変える余地は残ります。
距離を取れない場合は、安全性の確認が必要です——政令第142条の擁壁か、「安全上支障がないことに関する報告書」
条文は「安全上支障がない場合」としか書いていません。中身を示しているのは県の「建築基準法施行条例の解説」(令和2年1月作成、令和3年2月・令和6年3月・令和7年3月改正、沖縄県土木建築部建築指導課 編)です。解説はこう書いています——「崖に近接する場合は、政令第142条の構造規定に適合する擁壁を設計する必要があります」。さらに、「本条第3項に該当する場合、建築主は申請敷地及び建築物について、政令第142条に適合する擁壁を設置するか、建築確認申請の際に『安全上支障がないことに関する報告書』の提出を求めることがあります」と続けています。
解説が並べているのは2つです。ひとつは、建築基準法施行令第142条に適合する擁壁を設置すること。もうひとつは、「安全上支障がないことに関する報告書」を出すこと。解説がこの2つを挙げているのは「本条第3項に該当する場合」です——この2つを満たせば第3項に当たる、とは書いていません。どちらを求めるかは、申請先が決めます——解説の言い方も「求めることがあります」です。何をそろえれば通るかは、計画を固める前に申請先に聞いてください。最初の電話で聞けるのは、必要な図書と手順までです——この土地で当たるかどうかの判断は、断面図を出したうえでの個別の審査になります。2回に分けて考えてください。
その令第142条第1項は、道を2つ書いています。ひとつは、同項各号に掲げる基準に適合する構造方法——鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること、擁壁の裏面に水抜穴を設けること、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算で安全性を確かめること、などです。もうひとつは、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法。条文はこの2つを「又は」でつないでいます——大臣が定めた構造方法でなければならない、ではありません。どちらの道を使うかは、擁壁の設計を頼む建築士に確かめてください。
これに当たると認められれば、第1項の距離の義務も第2項の割増しも外れ、第5条については原則として建てられます——第3項は「前2項の規定は」と書いており、第1項と第2項の両方を外します。条件は、確かめるのが読者ではないことです。調べて図にするのは地盤調査と建築士、当てはめを判断するのは申請先です。災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は、別に確認してください。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——令第80条の3の構造規制は、第5条とは別に残ります
名前のよく似た2つを分けておきます。土砂災害警戒区域(イエロー)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、「特別」の2字しか違いませんが、別のものです。この記事で「レッドゾーン」と書くのは、「特別」が付くほうだけです。
レッドゾーンの中で居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋。住宅なら、ふつう当てはまります)を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3が、外壁及び構造耐力上主要な部分(土石等の高さ等以下で、衝撃が作用すると想定される部分。条文は「外壁等」と呼びます)を、知事が定めた最大の力の大きさ等と土石等の高さ等に応じて、想定される衝撃が作用しても破壊を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法にするよう求めています。ただし書は、土石等の高さ等以上の高さの門または塀(外壁等と同等以上の耐力を有するものとして大臣が定めた構造方法によるものに限る)を、衝撃を遮るように設ければ、この限りでないとしています。この構造規制は、条例第5条とは別の規定です——1.5倍の距離を取って第5条第1項に適合していても、レッドゾーン内の居室のある建物には残ります。土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第25条により、レッドゾーン(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除きます。都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区・知事が指定する区域のことで、そこはもともと同号で確認の対象です)内の居室を有する建築物は、都市計画区域の外でも、原則として建築確認の対象になります(同項第1号・第2号に当たるものは、もともと対象です)。敷地が区域の内外にまたがるときは、この第25条があわせて適用している建築基準法第91条により、敷地の過半がどちらに属するかで決まります——窓口で確かめてください。これは、令第80条の3の構造の規定まで敷地の過半で外れる、という意味ではありません。
自分の土地がどちらかは、目で見ても分かりません。どちらでもないこともあります。県は、区域を指定するときは県の公報により公示される(土砂災害防止法第7条第4項・第9条第4項)とし、公示事項を記載した図書(指定図書)は、指定区域のある市町村及び県土木事務所で閲覧できると案内しています。地図で見るなら「沖縄県地図情報システム」ですが、県は「指定された区域のデータ掲載に時間を要する場合など、最新の情報となっていない場合があります」と断り、指定図書での確認が必要な場合は市町村または所管の県土木事務所の窓口で確かめるよう求めています。地図に出ていないことは、指定されていないことの証明になりません。
指定の状況は、県の土木事務所ごとに公表されています——北部土木事務所 計画調査班(電話0980-53-2958)、中部土木事務所 計画調査班(098-894-6518)、南部土木事務所 計画調査班(098-869-1788)、宮古土木事務所 都市港湾班(0980-72-2769)、八重山土木事務所 河川都市港湾班(0980-82-3262)です。県の公表は事務所ごとで、合計を示す表は見当たりませんでした——ただし、国土交通省の全国集計「全国における土砂災害警戒区域等の指定状況」(令和8年6月30日時点)では、沖縄県は土砂災害警戒区域が計1,555、うち特別警戒区域が1,346です。土地を買う前なら、不動産会社にも「この区域に入るか」を確かめてください。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さの門・塀を衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。
盛土規制法の規制区域は、令和8年10月1日から指定されます
ほかの制度と並べて読むときに、いまの沖縄では、まだ始まっていないものがあります。県は「沖縄県では、令和8年10月1日から県内全域(一部の地域を除く。)が宅地造成等工事規制区域又は特定盛土等規制区域(以下「規制区域」という。)に指定されます」と公表しています(ページの更新日は2026年7月6日)。那覇市も、「沖縄県に合わせて令和8年10月1日に『宅地造成等工事規制区域』を指定し、盛土規制法の運用を開始する予定」とし、市全域を宅地造成等工事規制区域に指定する案を公表しています(ページの更新日は令和8年8月25日)。
だから、「盛土規制法の許可を受けた工事で造られた擁壁だから」という説明は、2026年9月5日現在の沖縄では成り立ちません(指定の日を過ぎたら、この節の前提は変わります——読んでいる日が2026年10月1日(令和8年10月1日)より後なら、指定と運用の開始を県・市の窓口で確かめてください)。指定の前は、規制区域が無いので、その許可そのものが存在しないからです。読み替えて安心しないでください。県は、指定日をはさむ工事の扱いも示しています——指定日以降に盛土規制法に該当する工事の開発許可を受けた場合は、盛土規制法第15条または第34条により同法の許可を受けたものとみなされます(みなし許可)。指定日以前に開発許可を受け、着手済みかつ未完了の場合は、盛土規制法の許可は不要ですが、令和8年10月22日までに工事内容等の届出が必要(指定日から21日以内)です。指定日前に開発許可を受け、指定日時点で未着手の場合は、改めて盛土規制法の許可が必要になります。
土地を買う時期と、工事を始める時期が、この日をまたぐなら、手続きが変わります。盛土規制法に関する許可・届出等は、沖縄県土木建築部建築指導課 盛土対策班(電話098-866-2413)が受けています。那覇市なら、まちなみ共創部建築指導課 指導グループ(電話098-951-3244)です(市は事前相談に電話での予約を求めています)。崖の工事に許可が要るかどうかと、建築物が条例第5条に適合するかどうかは、別の判断です——片方が通っても、もう片方が自動で通るわけではありません。
いまの沖縄で崖の造成に関わる県の制度としては、都市計画法の開発許可と、沖縄県県土保全条例に基づく開発許可等があります。どの制度が当たるかは、計画の規模と場所で変わります——県の建築指導課か、所管の土木事務所に確かめてください。
罰金の名宛人は原則、設計者。違反建築物には、建築主・所有者らへ除却等の是正命令が出ることがあります
第31条 第4条、第5条第1項若しくは第2項、第6条から第8条まで、第10条から第17条まで、第18条から第22条まで、第24条、第25条第1項若しくは第2項、第26条又は第27条の規定に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物の工事施工者)は、50万円以下の罰金に処する。
建築基準法施行条例(沖縄県) 第31条
2 前項に規定する違反があつた場合において、その違反が建築主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主に対して同項の罰金刑を科する。
並んでいるのは「第5条第1項若しくは第2項」です——第3項は、この列挙に入っていません(第3項は適用除外の定めで、守るべき義務の条項ではないからです)。罰則の名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則、設計者——設計図書を用いずに、または設計図書に従わずに工事を施工した場合は工事施工者です。刑は50万円以下の罰金です。第31条第2項は、その違反が建築主の故意によるものであるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主にも同じ罰金刑を科すると定めています。
第32条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、同条の罰金刑を科する。ただし、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し、相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
建築基準法施行条例(沖縄県) 第32条
第32条は両罰規定です——行為者を罰するほか、その法人または人にも第31条の罰金刑を科します。ただし書の免責には、範囲があります。免責されるのは、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の違反行為について、防止のため相当の注意及び監督が尽されたことの証明があったときです。法人の代表者自身の違反は、このただし書に含まれていません——条文が「代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため」と書いているからです。
仮設の建築物には、別の定めがあります。第30条は、第3章から第6章までの規定は、次に掲げる建築物については適用しないとしています——法第85条第6項の許可を受けた仮設興行場等または仮設建築物、法第85条第7項の許可を受けた仮設興行場等、法第87条の3第6項または第7項の許可を受けた建築物の3つです。第5条は第3章にありますので、これらの許可を受けたものには第5条はかかりません。
是正命令は、建築主・所有者などが相手方になり得ます(法第9条第1項)
罰金の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、建築主、工事の請負人(下請人を含みます)、現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して、工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・使用禁止その他の是正に必要な措置を命ずることができる、と定めています。故意は要件ではありません。設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます。命令に違反した場合は、建築基準法第98条第1項第一号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
この記事が扱っているのは、これから建てる場合です(新築・増築・改築・移転)。すでに建っている家を崖から離す・建て替えることについては、この記事では沖縄県の制度を確かめられませんでした——県のページで「がけ地近接等危険住宅移転事業」の案内を探した範囲では、見当たりませんでした。お住まいの市町村の住宅の担当課と、沖縄県土木建築部 建築指導課(電話098-866-2413)に、移転や改修への補助があるかを尋ねてください——県の建築指導課のページは、指導班の所掌事務に「がけ地近接、危険住宅移転事業に関すること。」を挙げています。業務案内に載っていることは、いま募集があること・補助額・対象住宅を決めるものではありません。
第5条の距離の義務が外れても、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば建築基準法第19条第4項の措置が要ります
4 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。
建築基準法 第19条第4項
この規定は、県内のどこでも働きます(法第85条の応急仮設建築物など、法が適用されない場合を除きます)。条例の第5条に当たらない土地でも、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあるなら、擁壁の設置その他安全上適当な措置が要ります。求められているのは擁壁だけではなく、「その他安全上適当な措置」を含みます。「2メートルを超えないから何もしなくてよい」とは読めません。おそれの有無も、どの措置で足りるかも、建築士と窓口が決めます——崖と地盤を調べて図にするのは建築士等、条例と法の当てはめを判断するのは所管の建築行政の窓口と申請先です。高さ2.0メートルちょうどの崖も、第5条からは外れますが、この第19条第4項からは外れません。
5つの市も、県の条例の第5条です——市の独自の崖の条例は、当たった範囲で見当たりません
この条例には、建築主事を置く市の区域には適用しない、という条がありません。条例を通して読んだ範囲では、区域や市町村で適用を外す定めは見当たりませんでした。那覇市・浦添市・宜野湾市・沖縄市・うるま市にも、県の条例の第5条がかかります。
条例の中で5市の名前が出るのは、第30条の2(事務処理の特例)です。ここは、地方自治法第252条の17の2第1項により、この条例に基づく事務のうち第17条の2の規定による認定に関する事務、第24条第1項ただし書(第28条第1項において準用する場合を含む。)の規定による認定に関する事務、第27条第1項ただし書の規定による認定に関する事務を、5市が処理すると定めた条です。崖の第5条は、この表に入っていません。
市の側の規則も、県の条例を受けています。那覇市建築基準法の施行に関する規則(平成20年3月28日 那覇市規則第5号。最終改正 令和8年6月25日 規則第30号)は、第1条で建築基準法・同施行令・同施行規則、建築基準法施行条例(昭和47年沖縄県条例第83号)及び那覇市地区計画区域及び再開発地区計画区域内における建築物の制限に関する条例(平成5年那覇市条例第19号)の施行について必要な事項を定めるとしています。第3条第1項第4号は、確認申請書に添える図書として「建築物の敷地が高さ2メートルを超えるがけに接し、又は近接する場合には、がけの高さ、がけの下端及び上端と当該建築物との距離並びにがけの形状を明示した断面図」を求めています。那覇市の規則は「超える」で、県の条例と同じです。
那覇市が自前で定めている建築の条例は、がけのものではありません。市の規則が挙げている市の条例は、那覇市地区計画区域及び再開発地区計画区域内における建築物の制限に関する条例——建築基準法第68条の2に基づくもので、法第40条の条例ではなく、崖からの距離を定めるものでもありません。
ただし、これは「無い」と言い切れる範囲ではありません。この記事が読んだのは、県の条例・解説・細則と、那覇市の規則、宜野湾市の細則です。浦添市・沖縄市・うるま市の例規は読んでいません(宜野湾市も、読んだのは細則だけです)。市の建築担当課に、市独自の定めや取扱いが無いかを確かめてください。
災害危険区域——急傾斜地崩壊危険区域は、この条例では災害危険区域です
(災害危険区域の指定)
建築基準法施行条例(沖縄県) 第3条第1項
第3条 法第39条第1項の規定による災害危険区域(以下「災害危険区域」という。)は、次の各号に掲げる区域とする。
(1) 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域
(2) 前号に定める区域のほか、急傾斜地の崩壊、地すべり等による危険の著しい区域のうち知事が指定する区域
建築基準法第39条第1項は、地方公共団体が条例で津波・高潮・出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定できると定め、同法第39条第2項は、その区域内での住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、その条例で定めるとしています。沖縄県の条例が挙げているのは、急傾斜地の崩壊と地すべり等の2つだけです——津波・高潮・出水は、この条に書かれていません。「台風や高潮の危険がある土地なら災害危険区域になっているはず」とは読めません。
第1号は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項により指定された急傾斜地崩壊危険区域を、そのまま災害危険区域にしています。知事の告示による別の指定を待たずに、急傾斜地崩壊危険区域に指定された時点で、災害危険区域になります。県の解説は、「令和元年12月現在の沖縄県内における災害危険区域の指定状況は、急傾斜地崩壊危険区域のみとなっています」と書いています——第2号の知事指定は、この時点では無かったということです。
(災害危険区域内の建築制限)
建築基準法施行条例(沖縄県) 第4条
第4条 災害危険区域内においては、住居の用途に供する建築物を建築してはならない。ただし、災害防止上必要な措置を講ずることにより特定行政庁が建築物の安全上支障がないと認めた場合においては、この限りでない。
この第4条は、第5条より重い制限です。第5条は距離を保てば第1項に適合しますが、第4条は住居の用途に供する建築物そのものを禁じています。ただし書は、災害防止上必要な措置を講ずることにより特定行政庁が安全上支障がないと認めた場合は、この限りでないとしています。誰が認めるかが、条文に書いてあります——特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=建築確認や是正命令を受け持つ役所の長。あとの窓口の節で読みます)です。
手続きも決まっています。県の解説は、「災害防止上必要な措置を講じた上で建築物認定申請書(第16号様式)により特定行政庁あて申請し、特定行政庁が建築物の安全上支障がないと認めた場合のみ、区域内にて建築することができます」と書いています。申請の様式まで決まっている手続きです。ただし、認定申請の様式は申請先で異なります——この第16号様式は県の様式で、たとえば宜野湾市は、市の建築基準法施行細則第10条第2項で、県条例第4条ただし書の認定を様式第14号の建築物認定申請書によるとしています。5市では、その市の規則・取扱いを確かめてください。さらに県の細則第4条第2項は、確認申請書等に係る建築物が災害危険区域に建築するものである場合は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条の規定による知事の許可書を添付しなければならないとしています。建築の窓口と、砂防の窓口の、2つを回ることになります。
区域には、目印もあります。第3条の3は、知事は、規則で定めるところにより、災害危険区域内に災害危険区域である旨を表示する標識を設置しなければならないとしています。第3条の2は、第3条第1項第2号の災害危険区域(知事が個別に指定する区域)の指定または廃止に関する調査のために、知事等が他人の占有する土地や建築物に立ち入ることができるとし、住居に立ち入る場合は、あらかじめ居住者の承諾を得なければならないとしています。
区域を探す方法も、県の解説が書いています——検索エンジンで「沖縄県地図情報」を検索し、沖縄県地図情報システムから「防災」の中の「土砂災害危険箇所」を選び、地図上でエリアをクリックして凡例の「急傾斜地崩壊危険区域」を指定して検索する、という手順です。この記事では、県内の急傾斜地崩壊危険区域の指定箇所数を確かめられませんでした。
窓口は、5つの市と、県の5つの土木事務所に分かれます
特定行政庁は、役所ではなく人です——建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事をいいます(建築基準法第2条第35号)。同号にはただし書があり、法第97条の2第1項若しくは第2項または法第97条の3第1項若しくは第2項の規定により建築主事等を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については都道府県知事が特定行政庁です(法第97条の3は特別区に関する規定なので、沖縄県内では働きません)。沖縄県内なら、5市の市長か、沖縄県知事です。
県が公表している土木事務所の所管区域の一覧(更新日2024年1月11日)は、「那覇市、浦添市、宜野湾市、沖縄市、うるま市は特定行政庁となりますので、直接お問い合わせください」と注記しています。一覧に「限定特定行政庁」の記載はありません——県のページを読んだ範囲では、限定である旨の注記は見当たりませんでした。県の側の窓口は、次のとおりです。
| 県の窓口(知事が特定行政庁) | 所管する市町村 | 電話 |
|---|---|---|
| 北部土木事務所(名護市大南1-13-11-2F) | 名護市・国頭村・大宜味村・東村・本部町・今帰仁村・宜野座村・金武町・恩納村・伊江村・伊平屋村・伊是名村 | 0980-53-2010 |
| 中部土木事務所(沖縄市美原1-6-34-3F) | 読谷村・嘉手納町・北谷町・北中城村・中城村・西原町 | 098-894-6513 |
| 南部土木事務所(那覇市旭町116-37-7F) | 糸満市・豊見城市・南城市・南風原町・与那原町・八重瀬町・久米島町・渡嘉敷村・座間味村・粟国村・渡名喜村・南大東村・北大東村 | 098-866-1762 |
| 宮古土木事務所(宮古島市平良字西里1125-3F) | 宮古島市・多良間村 | 0980-72-1437 |
| 八重山土木事務所(石垣市字真栄里438-1-3F) | 石垣市・竹富町・与那国町 | 0980-82-3077 |
県全体のことは、沖縄県土木建築部建築指導課(那覇市泉崎1-2-2 行政棟10階北側、電話098-866-2413)が受けています。5市の窓口は、いずれも2026年9月4日に各市の課のページで確かめました——那覇市のまちなみ共創部建築指導課 指導グループ(電話098-951-3244)、浦添市 建築指導課(電話098-876-1252)、宜野湾市 建築指導課(電話098-893-4123)、沖縄市 建築指導課(電話098-939-1212)、うるま市 建築行政課(電話098-923-7601)です。
確認申請には、がけの断面図が要ります
(3) 建築物の敷地が高さ2メートル以上のがけに接し、又は近接する場合には、がけの高さ、がけの下端及び上端と当該建築物との距離並びにがけの形状を明示した断面図
沖縄県建築基準法施行細則 第4条第1項第3号
明示すべき事項はがけの高さ、がけの下端及び上端と建築物との距離、がけの形状です。那覇市の規則第3条第1項第4号も、同じ趣旨の断面図を求めています(こちらは「高さ2メートルを超えるがけ」)。この断面図が、建築士に用意してもらうものの中身です。条例の当てはめは、この断面図の上で決まります。だから、目測では決まりません。
売買契約の前に、専門家と確かめること
この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口です。個別の判断は、建築士と窓口にご確認ください。
- ①その土地の建築確認を扱うのは、5市のどれか、県か。県なら、どの土木事務所か。指定確認検査機関に出す予定なら、その機関へも
- ②敷地の中や隣に、高さ2メートルを超える崖があるか。目測ではなく、現況の測量図と断面図で。勾配の数値は条例にないので、当たるかどうかは窓口に
- ③建てる位置が、崖の高さの1.5倍の範囲に入るか。起点は、崖の上なら下端、崖の下なら上端。県の解説の図は、壁面または柱面まで測るとしています
- ④建てるのが崖の上の鉄筋コンクリート造等の重量建築物なら、1.5倍より広く取ることになります(第5条第2項)
- ⑤距離が取れないなら、第5条第3項に当てはめられるか。県の解説は、政令第142条に適合する擁壁を設置するか、「安全上支障がないことに関する報告書」の提出を求めることがあるとしています。設計に入る前に申請先へ
- ⑥すでに擁壁があるなら、いつ・どの許可(または確認)で造られたか。確認済証・検査済証・開発の検査済証が残っているか。設計者による安全性の判断が要ります
- ⑦売主に、擁壁の書類が残っているかを聞く。契約後でも確認はできますが、購入判断や価格交渉に反映するため、契約の前に聞いてください
- ⑧その土地が急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか。入っていれば、この条例では災害危険区域で、住居の用途に供する建築物は原則として建築できません(第4条)——ただし書に当たれば、第4条については原則として建てられます。県が申請先なら建築物認定申請書(第16号様式)で特定行政庁へ申請しますが、様式は申請先で異なります(宜野湾市は市の細則の様式第14号)。あわせて、県の細則第4条第2項は、災害危険区域に建てる確認申請書等に急傾斜地法第7条の知事の許可書の添付を求めています
- ⑨その土地が土砂災害警戒区域(イエロー)・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に入っていないか。地図情報システムは最新でないことがあるので、指定図書を市町村か県土木事務所で
- ⑩レッドゾーンの中で居室のある建物を建てるなら、令第80条の3の構造規制。都市計画区域の外でも、原則として建築確認が要ります(敷地が区域の内外にまたがるときは、土砂災害防止法第25条があわせて適用する建築基準法第91条により、敷地の過半がどちらに属するかで決まります)
- ⑪盛土や切土を伴うなら、令和8年10月1日の規制区域の指定をまたがないか。またぐなら、届出や許可の要否が変わります——県の盛土対策班、那覇市なら市の建築指導課へ
- ⑫確認申請には、がけの断面図が要ります。県の細則は「高さ2メートル以上のがけ」——県が申請先なら、ちょうど2.0メートルでも断面図は求められます。ただし5市では、各市の規則・取扱いを確かめてください——宜野湾市の細則第5条第1項第3号と那覇市の規則第3条第1項第4号は「2メートルをこえる/超える」と書いています
- ⑬第5条第1項・第2項の義務が外れても、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、建築基準法第19条第4項の措置が別に要ります(おそれの有無を判断するのは建築士と窓口です)。高さ2.0メートルちょうどの崖も、第19条第4項からは外れません
確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、崖から離す配置や擁壁の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に。崖の高さと、崖からの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に、お尋ねください。どれくらい日数がかかるかは、崖の状態と計画で変わりますので、この記事では示せません。建築士と窓口に、最初に「いつごろ答えが出るか」を聞いてください——それが分かって初めて、売買契約の日取りを動かせます。
擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例の第5条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。
出典
- 建築基準法施行条例(沖縄県法規集。第12編 建設/第6章 建築・住宅/第1節 建築。昭和47年5月27日 沖縄県条例第83号、最終改正 令和6年12月27日条例第52号、内容現在 令和8年4月1日。第1条・第3条・第3条の2・第3条の3・第4条・第5条・第23条・第29条・第30条・第30条の2・第31条・第32条・附則)
- 建築基準法施行条例の解説(沖縄県土木建築部建築指導課 編・令和2年1月作成、令和3年2月改正、令和6年3月改正、令和7年3月改正・PDF。第3条・第3条の3・第4条・第5条・第23条・第29条・第30条の解説と「水平距離の考え方」の図)
- 沖縄県建築基準法施行細則(沖縄県法規集。昭和56年2月2日 沖縄県規則第1号、最終改正 令和8年3月31日規則第17号、内容現在 令和8年4月1日。第4条第1項第3号・第4条第2項)
- 沖縄県建築関係規則集(沖縄県。条例・解説・細則の入口)
- 建築基準法関係条例・様式について(宜野湾市。宜野湾市建築基準法施行細則・PDF。第5条第1項第3号「高さ2メートルをこえるがけ」、第10条第2項の建築物認定申請書〔様式第14号〕)
- 那覇市建築基準法の施行に関する規則(那覇市例規集。平成20年3月28日 規則第5号。第3条第1項第4号「高さ2メートルを超えるがけ」)
- 4市の建築の窓口——浦添市 建築指導課、宜野湾市 建築指導課、沖縄市 建築指導課、うるま市 建築行政課(いずれも各市。課の電話番号)
- 土木事務所の所管区域(建築基準法関係)(沖縄県・更新日2024年1月11日。5つの土木事務所と5市の注記)
- 土砂災害警戒区域等の確認方法(沖縄県・更新日2024年1月11日。公報による公示、指定図書の閲覧、地図情報システムの注意、5つの土木事務所の担当班と電話)
- 全国における土砂災害警戒区域等の指定状況(国土交通省・令和8年6月30日時点・PDF。沖縄県の行=土砂災害警戒区域 計1,555、うち土砂災害特別警戒区域1,346)
- 盛土規制法の運用開始に伴う開発許可の取扱い(沖縄県土木建築部建築指導課・更新日2026年7月6日。令和8年10月1日からの規制区域の指定、みなし許可、既着手の届出)
- 那覇市では令和8年10月1日から「盛土規制法」の運用を開始する予定です(那覇市まちなみ共創部建築指導課・更新日 令和8年8月25日)
- 那覇市建築基準法の施行に関する規則(那覇市例規集・平成20年3月28日 規則第5号、最終改正 令和8年6月25日規則第30号。第1条・第3条第1項第4号)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条第35号・第6条第1項・第9条第1項・第19条第4項・第39条・第40条・第43条第3項・第56条の2第1項・第68条の2・第85条・第87条の3・第97条の2・第97条の3・第98条)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第80条の3・第142条)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(e-Gov法令検索・第15条・第21条・第34条・第40条)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第7条第4項・第9条第4項・第25条)
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(e-Gov法令検索・第3条第1項・第7条)
- 沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(e-Gov法令検索・第4条。条例附則第2項の根拠)
確かめきれなかったこと
条文は2026年9月4日に、沖縄県法規集の条例本文と、県の「建築基準法施行条例の解説」(PDF)に掲げられた条文の2つを突き合わせて確認しました。第5条の文言は両者で一致しています(送り仮名が、条例本文は「あつては」、解説は「あっては」です。この記事は条例本文の表記を引用に使いました)。法律・政令は同じ日にe-Gov法令検索で、県の細則・土木事務所の所管区域・土砂災害の確認方法・盛土規制法のページ、那覇市の規則と盛土規制法のページ、宜野湾市の細則、4市の建築の窓口のページは、同じ日にそれぞれの公表元で読みました。そのうえで、確かめきれていないことが8つあります。
- ひとつ、県内の急傾斜地崩壊危険区域の指定箇所数は、県の公表物では確かめられませんでした(土木事務所ごとの公表です)。土砂災害警戒区域・特別警戒区域の県全体の箇所数も県の公表物では確かめられず、本文には国土交通省の全国集計の数を載せています
- ふたつ、県の解説がいう「令和元年12月現在」より後に、第3条第1項第2号の知事指定があったかは、県の告示までは当たっていません
- みっつ、浦添市・沖縄市・うるま市の例規は読んでいません(読んだのは県の条例・解説・細則と、那覇市の規則、宜野湾市の細則です)。市独自の定めや取扱いが無いとは言い切れません
- よっつ、沖縄市 建築指導課の電話は、市の課のページに載っている098-939-1212を書きました。市の別のページには098-934-3846という番号もあり、どちらが直通かは確かめきれませんでした
- いつつ、5市それぞれの認定申請の様式と、がけの断面図を求める規定は、那覇市と宜野湾市までしか当たっていません。浦添市・沖縄市・うるま市は、その市に確かめてください
- むっつ、沖縄県の「がけ地近接等危険住宅移転事業」に当たる制度は、県のページを探した範囲では見当たりませんでした。「無い」ではなく「見つけられなかった」です——ただし県の建築指導課のページには、指導班の所掌事務として「がけ地近接、危険住宅移転事業に関すること。」が載っています。市町村の住宅の担当課と、県の建築指導課にお尋ねください
- ななつ、市町村が法第39条に基づく独自の災害危険区域の条例を持っているかは当たっていません
- やっつ、令和8年10月1日に指定される規制区域の「一部の地域を除く」がどこかは、県のページの文言だけでは分かりませんでした。県の建築指導課 盛土対策班にご確認ください