北海道室蘭市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

室蘭市 第4条の2

室蘭市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。がけの規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、がけから離す配置や擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って室蘭市の建築指導課の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地が室蘭市内なら、室蘭市建築基準法施行条例 第4条の2(がけ付近の建築物)です。②かかるのは、高さが2メートルを超えるがけ(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地)に接し、または近接する敷地に建築物を建てるときです(延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類するものは除きます)。③そのとき条文が求めるのは、擁壁を設けることではなく、建築物の外壁面とがけとの間に、がけの高さの2倍以上の水平距離を保つことです。④どこから測るかは、がけの上に建てるか下に建てるかで入れ替わります——がけ上ならがけの下端から、がけ下ならがけの上端から。⑤2倍の距離が取れなくても、道は3つあります。条文が挙げるのは、第1号(がけの形状または土質により、建築物の安全上支障がないと認められる場合)第2号(がけにがけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁を設ける場合、またはこれに代わる措置を講ずる場合)第3号(がけ下のみ。鉄筋コンクリート造等にすることによって安全上支障がないと認められるとき、または適当な流土止めを設けるとき)です——擁壁や流土止めを設けさえすれば外れる、という書き方ではありません。どれかに該当すれば、第4条の2が求める水平距離の義務は外れ、この条については原則として建てられますただし、それだけで建築の可否が決まるわけではありません。これで終わりではありません。別に残るものがあります——建築基準法第19条第4項(がけ崩れ等のおそれがある場合の措置)と、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の構造規制。そしてがけを削る・土を盛る工事を伴うなら、盛土規制法の許可が別に要ることがあります。土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は構造の規制ではありませんが、指定の有無は、第4条の2に当たるかどうかとは関係しません。⑦条文は2026年9月5日に、室蘭市例規集の本文で確認しました。

室蘭市内なら、室蘭市建築基準法施行条例 第4条の2です

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室蘭市建築基準法施行条例 第4条の2。満たせるのはこの条まで。ほかの区域・法令は別に確認

「がけ条例」という題名の条例はありません。室蘭市では、室蘭市建築基準法施行条例(昭和43年12月23日 条例第40号)の第1節の2「崖付近の建築物」=第4条の2が、その中身です。市も自分のページで、この条を「がけ条例(室蘭市建築基準法施行条例第4条の2(がけ付近の建築物))」と呼び、室蘭市がけ条例運用方針というPDFを公開しています。根拠は建築基準法第40条——その地方の気候・風土の特殊性などにより、法第2章の規定などだけでは建築物の安全・防火・衛生の目的を十分に達しがたいと認める場合に、地方公共団体が条例で建築物の敷地・構造・建築設備の制限を付け加えられる、という規定です。条例第1条は、この第40条(法第88条第1項で準用する場合を含む)と、法第43条第3項・法第56条の2第1項・法第69条を根拠に挙げています。

(崖付近の建築物)
第4条の2 高さが2メートルを超える崖 (地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいう。以下この条において同じ。) に接し、又は近接する敷地に建築物 (延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類するものを除く。以下この条において同じ。) を建築する場合にあっては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該建築物の外壁面と崖との間に、崖上にあっては崖の下端から、崖下にあっては崖の上端から、崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。
(1) 崖の形状又は土質により建築物の安全上支障がないと認められる場合
(2) 崖に崖崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁を設ける場合又はこれに代わる措置を講ずる場合
(3) 崖下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造部の全部若しくは一部を鉄筋コンクリート造若しくはこれに類する構造にすることによって建築物の安全上支障がないと認められるとき又は崖と当該建築物との間に適当な流土止めを設けるとき。

室蘭市建築基準法施行条例 第4条の2

条例の本文は「」と漢字で書いています。市のページや運用方針は「がけ」とひらがなで書いていますが、同じものです。この記事では、条文の引用のとき以外は「がけ」と書きます。

もうひとつ、都市計画区域の外でも、第4条の2はかかります。この条例の第1章(総則)には第1条しかなく、都市計画区域の外を除くという定めは、条例の本文の中には見当たりませんでした(各節の中には、自動車車庫の節の第30条のような、その節だけの適用除外があります)。市街化調整区域や都市計画区域の外の土地でも、がけがあるなら、同じ順番で確かめてください

どこからが「がけ」か——高さ2メートルを「超える」、勾配(こうばい)30度を「超える」

条文は「がけ」を「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地」と定義し、そのうえで高さが2メートルを超えるものを第4条の2の対象にしています。押さえるところは3つです。①勾配は「30度を超える」——30.0度ちょうどは当たりません。②高さは「2メートルを超える」——2.0メートルちょうども当たりません(「以上」ではありません)。③自然のがけか、人が切ったり盛ったりしてできた斜面かを分ける言葉は、条文にありません

では、がけの高さはどこからどこまでを測るのか。市の運用方針が、そこを決めています。「がけの高さとは、がけの下端を通る30度の勾配を超える部分について、がけの下端から最も高い部分までの高さ(垂直距離)をいうものとする」。下端(かたん)=斜面がふもとの地面と接するところ上端(じょうたん)=斜面が上の平らな地面と接するところです。斜面の途中に緩いところがあっても、下端から引いた30度の線より上に出ている部分を、ひとつづきのがけとして見る、という考え方です。

段になっているがけについても、運用方針は決めています——「がけの途中で、小段、通路等により上下に分離されているがけについては、下層のがけ面の下端を通る30度の勾配面の上方に、上層のがけ面の下端があるときは、その上下のがけを一体のものとみなすものとする」。「途中に平らな道があるから、うちのがけは低いほうだけ」とは限りません。一体とみなされれば、高さは下の段の下端から上の段の上までになります。この判定は、現況を測量したうえで、断面図の上で確かめます——目測ではできません。

距離の起点は、がけの上と下で入れ替わります——ここが、いちばん間違えやすいところです

がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか

条文は「当該建築物の外壁面と崖との間に、崖上にあっては崖の下端から崖下にあっては崖の上端から、崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない」と書いています。

がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
  • がけの上に建てるなら、起点は「がけの下端」です。がけの上端ではありません
  • がけの下に建てるなら、起点は「がけの上端」です。がけの下端ではありません
  • どちらの場合も、建物から見て遠いほうの端が起点になります。近いほうの端から測るのではありません
  • 測る先は建築物の外壁面です。敷地の境界線でも、建物の中心でもありません
  • 2倍以上」なので、ちょうど2倍なら適合します

たとえば高さ3メートルのがけなら、6メートルです。がけの上に建てるなら、がけの下端から水平に6メートル。がけの下に建てるなら、がけの上端から水平に6メートル。起点をどちらか一方に決めてしまうと、必要な距離を取り違えます。

そして、条文は「がけに接し、又は近接する敷地」と書いています——がけが敷地の中になくても、隣の土地にあってもかかります。「うちの土地の中にがけは無い」は、この条が外れる理由になりません。反対に、この条文が対象にしているのは「建築物を建築する場合」で、敷地の造成そのものを対象にする言葉は、第4条の2の中にはありません(造成には、後で書く盛土規制法などが別に効きます)。

2倍の距離が取れなくても、道は3つあります

先に答えを書きます。第4条の2は「次の各号のいずれかに該当する場合を除き」と書いていて、3つの号のどれかに当たれば、距離の義務は外れ、この条については原則として建てられます「離せないから建てられない」ではありません。ただし——「原則として」と書くのには理由があります。外れるのは第4条の2の距離の義務だけで、建築基準法第19条第4項、土砂災害特別警戒区域の構造規制、盛土規制法の許可は、別に確認してください。役割は分かれます——どの号で通すかの案を作り、必要な図面と計算を示すのは設計者(建築士)です。その案が号に当てはまるかどうかは、市の建築指導課への事前相談と、確認申請の対象になる計画では建築主事等(けんちくしゅじとう=建築確認を行う市の職員)または指定確認検査機関(していかくにんけんさきかん=建築確認を行う民間の機関)の審査で確かめます——設計者だけで決まるものではありません。

第1号——がけの形状または土質により、安全上支障がないと認められる場合

条文は「安全上支障がないと認められる場合」とだけ書いています。何が「支障がない」かは、市の運用方針が具体的に決めています——次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合は、安全上支障のないものと認め緩和する、として。

  • (1) 硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)であるもの(風化の著しいものを除く)
  • (2) 次の表に該当するもの——「擁壁を要しない勾配」/「がけの上端から垂直距離5メートル以内は擁壁を要しない」の2列で、1 軟岩(風化の著しいものを除く。)=60度以下/60度をこえ80度以下(軟岩=なんがん。やわらかい岩)、2 風化の著しい岩=40度以下/40度をこえ50度以下3 砂利、真土砂、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの=35度以下/35度をこえ45度以下
  • (3) 運用方針が載せている急傾斜地崩壊危険区域危険度判定基準により危険度を判定してCランクと判定されたもので、建築物とがけの下端までの距離が、がけの高さの2分の1以上あるもの

「うちは岩だから大丈夫」とは読めません。(1)は「風化の著しいものを除く」と書いてあります。表の2行目も、風化の著しい岩は40度以下で、軟岩より厳しい角度です。硬い岩か、風化が著しいか、軟岩か——これは素人には判定できません。決めるのは、地盤の調査と建築士の判断で、当てはめを確かめるのは市の窓口です。また、(3)の判定基準は急傾斜地崩壊危険区域の危険度を測るための点数表で、高さ・傾斜度・オーバーハング(がけの上部がひさしのようにせり出した形)の有無・表土の厚さ・湧水等の有無・崩壊の有無などを点数にして合計します。自分で点をつけて「Cだった」と決めるための表ではありません。

第2号——がけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁を設けるか、これに代わる措置を講ずる場合

これが、がけの上でも下でも使える道です。条文には擁壁の規模や構造が書かれていませんが、運用方針が4つを挙げています——ア 建築基準法施行令第142条に規定する構造の擁壁(同条第3号に規定する水抜穴については、擁壁の壁面3平方メートル以内ごとに1個〈陶管などで内径7.5センチメートル以上〉以上を設けるようにする)、イ 宅地造成等規制法に定められた技術基準による擁壁、ウ 急傾斜地法に定められた技術基準による擁壁、エ 他法律によりがけ面保護のため造られた擁壁。そして「擁壁に代わる措置」とは、坑工、アンカー工、モルタル又はコンクリート吹付工等で、擁壁に代わる措置としてその安全性が認められるもの、としています。いずれも、がけを補強するための土木の工法の名前です。どれを選ぶかは、建築士と施工業者に相談し、当てはめは市の窓口で確かめてください。

アの令第142条は、法第88条第1項で確認の対象になる工作物(こうさくぶつ=建築物以外の、擁壁や煙突などの構築物)のうち擁壁についての技術的基準です。第1号「鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること」、第3号「擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること」、第5号「その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること」などです。ただし、この各号を一つずつ満たす道だけではありません。令第142条第1項は、各号に掲げる基準に適合する構造方法と、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法とを、「又は」でつないでいます——大臣が定めた構造方法による擁壁でも満たせます。どちらの道を採るかは、設計者が選びます。高さが2メートルを超える擁壁は、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区や、知事が指定する区域の中なら、令第138条第1項第5号により法第88条第1項の工作物の確認の対象になります(法第88条第1項は、擁壁について法第6条第1項を同項第3号の建築物に係る部分に限って準用しています——これらの区域の外なら、2メートルを超えても工作物の確認の対象ではありません)——擁壁そのものにも手続きがあります。なお、運用方針のイは「宅地造成等規制法」という旧い法律名で書かれています。この法律は宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)に改められていますので、いま何の基準で設計するかは、建築士と市の窓口で確かめてください

「昔から石積みがあるから安心」ではありません。運用方針は、法的な基準によらない既存の土留めがある場合について別に項を立て、「その土留め及びがけが充分安全であると判断される場合」に緩和するとして、図で土留めの高さ・厚さ・建築物までの距離の関係を示しています。判断するのは、書類と現況を見た設計者と窓口です。

第3号——がけの下に建てる場合だけの道です(鉄筋コンクリート造等、または流土止め)

第3号は「崖下に建築物を建築する場合において」と書かれています——がけの上に建てる場合には使えません。中身は2つで、①当該建築物の主要構造部(しゅようこうぞうぶ=壁・柱・床・はり・屋根・階段)の全部もしくは一部を鉄筋コンクリート造もしくはこれに類する構造にすることによって安全上支障がないと認められるとき、②がけと当該建築物との間に適当な流土止め(りゅうどどめ=崩れた土砂を建物の手前で受け止める構造物)を設けるとき、です。

運用方針は、①について、がけ崩れにより被害を受けるおそれのある建築物部分鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または柱・はりを鉄筋コンクリート造とした補強コンクリートブロック造としたもので安全上支障がない場合に緩和する、としています。鉄筋コンクリート造等にする範囲は、運用方針の図で示されています。文章で書かれているのは、「がけの下端からがけの高さの2倍の位置(図のA)」と「がけの高さのがけの上から3分の1の位置(図のB)」を結ぶ範囲——そしてその部分に該当する外壁の高さが1.5メートル以下のときは1.5メートルとする、というところまでです。AとBの位置は、文章に書かれています——A=がけの下端からがけの高さの2倍の位置、B=がけの高さのがけの上から3分の1の位置です。文章だけでは決まらないのは、その2点を結ぶ線が、建てる建築物のどの部分にかかるかのほうです——運用方針のPDF(末尾にリンクがあります)の図を、建築士と一緒に見てください。運用方針は別の図で、流土止めをする場合の範囲外壁に措置する場合の範囲も分けて示しています。②については、流土止めの構造はコンクリート造(土質によっては、上部を鉄骨とし鉄網張りとする場合もある)とし、位置及び高さは、がけの形状、土質等により予想される崩壊土砂量相当の空間容積が得られるようにする——さらに図に「流土止めなどは最低がけの下端から 1.5m はなす」と書かれています。塀を立てれば済む、という話ではありません。

運用方針が「適用しない」と書いている3つ——これから建てる家は、入りません

運用方針は「第2 適用範囲」で、次の3つに該当する建築物以外のものに適用されると書いています——(1) 条例施行日に現に存する建築物(建築基準法第3条第3項の規定により、適用の除外を受けない建築物は除く)、(2) 条例施行日前において、現に工事中の建築物、(3) 延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類する建築物

(1)と(2)は、条例ができる前からあった建物の話です。これから土地を買って家を建てる方は、ここには入りません。そして(1)には括弧書きが付いています——法第3条第3項により適用の除外を受けない建築物は、除く建築基準法第3条第2項は、法令や条例の施行・適用の際に現に存する建築物などがその規定に適合しない場合、その規定を適用しないと定めています(これが既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物を、そのまま使える扱い)です)。そのうえで法第3条第3項第3号が、条例の施行または適用の後に工事に着手した増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替に係る建築物には、その第2項を適用しないと定めています。つまり、古い建物でも、増築や改築をすれば、原則として第4条の2はかかってきます。ただし、どの部分に、どこまでかかるかは、工事の内容によって変わります——増築・改築・移転・用途変更を考えているなら、適用の範囲を建築指導課で確かめてください。

条例の側にも、第4条の2を軽くする特例は見当たりませんでした。第6章(雑則)の緩和・特例の条——第59条(仮設興行場等)、第59条の2(耐火設計された建築物)、第59条の3から第59条の5まで(避難上の安全の検証)、第59条の6(用途を変更して一時的に興行場等とする場合)、第60条(一の敷地とみなすこと等)、第60条の2(敷地の形態及び敷地と道路との関係等の特例)——が挙げている条の並びに、第4条の2はありません。第58条の9(既存の建築物に対する制限の緩和)も、対象は第58条の3から第58条の7まで(特別の配慮を要する特殊建築物)だけです。用途を変更する場合も、建築基準法第87条第2項により法第40条に基づく条例の規定が準用されます。準用されるのは、同項の対象になる用途変更です。個別の当てはめは、建築指導課で確かめてください。

なお運用方針は、「がけ地近接危険住宅移転事業」により除去の対象となる建築物をやむを得ず残存させる場合の過渡的な扱いも(参考)として書いています——除去する部分の床面積が延べ面積の3分の2以上であること残存部分は住宅の用途とせず、かつ、居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有しないこと、の2つに該当すれば認める、と。すでにがけの近くに住んでいて移転を考えている方は、この事業のことも窓口で聞いてください。

排水の扱いは、運用方針の《参考》に書かれています

条例の第4条の2には、排水についての項はありません。そのかわり、運用方針が《参考》として「建築物及び敷地の排水処理は、がけの附近に影響を及ぼさないよう、次のとおり行う」と書いています——①がけの上の排水処理は、がけ肩にコンクリート打等の保護を図るとともに、がけよりできるだけ離して処理する。②がけ面に排水処理を設ける場合、浸透等を防止するための構造や設置方法は適切なものとする。③がけの下の排水処理は、がけ尻にコンクリート打等で保護されたU字溝などを設けるとともに、がけに影響を及ぼさないように処理する。水は、がけを崩す側にまわります。配置を決めるときに、雨水と汚水をどこへ流すかも一緒に決めてください。

確認申請には、がけの形状・土質を記載した断面図が要ります

(確認申請書等の添付書類)
第7条 条例第4条の2 の規定の適用を受ける建築物に係る確認申請書又は計画通知書には、その計画に係る建築物の敷地と崖 (高さ2メートルを超えるものに限る。) との状況を示す断面図 (当該崖の形状又は土質についても記載してあるもの) を添付しなければならない。

室蘭市建築基準法施行細則 第7条第1項

室蘭市建築基準法施行細則(昭和48年4月26日 規則第16号)は、第4条の2の適用を受ける建築物の確認申請書に、敷地とがけとの状況を示す断面図——がけの形状または土質も記載したもの——を添えるよう定めています。これが、建築士に用意してもらうものの中身です。がけの高さも、勾配も、外壁面までの水平距離も、この断面図の上で決まります。目測では決まりません。

建築士が設計した一戸建ての住宅でも、この条は「審査を省ける規定」には挙げられていません。建築基準法第6条の4(建築物の建築に関する確認の特例)と施行令第10条は、建築主事等の審査を要しない規定を定める仕組みで、法第39条から第41条までに基づく条例の規定については特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=許可・認定や是正命令を受け持つ行政庁。建築主事を置く市の区域では、その市の長です。法第2条第35号。ただし、限定特定行政庁(法第97条の2により、政令で定める事務に限って建築主事等を置く市町村)の区域内では、政令で定める建築物について都道府県知事です(法第2条第35号ただし書))が規則で定めるものが対象です。室蘭市の細則第13条がその「規則で定める規定」として挙げているのは条例第9条・第10条・第14条・第16条・第33条第2項及び第3項並びに第34条(および別の区分で条例第9条・第10条・第14条第1項・第16条・第33条第3項〈第3号を除く〉及び第45条)で、第4条の2は挙げられていませんいずれにせよ、条例に適合させる義務は、審査の有無にかかわらず残ります。

市は、確認申請・完了検査のページでもこう案内しています——建築基準法関係法令のほか、「室蘭市建築基準法施行条例」及び「室蘭市建築基準法施行細則」に基づく規制がかかる場合がありますので、事前にご確認下さい。あわせて、条例・細則の本文へのリンクと、室蘭市がけ条例運用方針のPDFを載せています。どの図書をどの様式で出すかは、市の窓口と、確認を出す先(市または指定確認検査機関)で確かめてください

あわせて、事前相談の案内も市のページにあります。図面ができてから相談に行くのではなく、配置を決める前に相談してください——2倍の距離が取れるかどうかで、建物の位置も、間取りも、擁壁の要否も変わります。

レッドゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第4条の2の距離を取っても、あるいは3つの号のどれかに当たっても、次のものは別に残ります。はじめの2つは、建築物にかかる別の規定です。3つ目のイエローゾーンは、建築物の構造の規制ではありません——ただし、第4条の2に当たるかどうかとは無関係だという意味で、ここに並べていますこのほか、がけを削る・土を盛る工事を伴うなら、盛土規制法の許可が別に要ることがあります(次の節に書きます)。

  • 建築基準法第19条第4項——「建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない」。この規定に、がけの高さや角度の下限はありません——高さ2メートル以下でも、30度以下でも、かかり得ます
  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは北海道知事です。区域内で居室(住宅ならふつう当てはまります)を有する建築物を建てるときは、建築基準法施行令第80条の3の構造の規定が別にかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造の規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第4条の2に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第4条の2が外れる理由になりません

「特別」の2字しか違いませんが、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)とイエローゾーン(土砂災害警戒区域)は別のものです。自分の土地がどちらかは、目で見ても分かりません。どちらでもないこともあります。北海道は、指定した区域を北海道土砂災害警戒情報システムで公開しています。最終確認は、市の窓口で縦覧できる図書で行ってください。土地を買う前なら、不動産会社にも「この区域に入るか」を確かめてください。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

がけを削る・土を盛る工事を伴うなら、盛土規制法は別に効きます

第4条の2は「建築物を建築する場合」の規定です。造成そのものには、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)が別に効きます。北海道は、市町村ごとに規制区域(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)を指定して、道の都市計画課のページで公表しています。室蘭市も、確認申請のページで、造成工事を行うときは造成面積や切盛土の規模により都市計画法や宅地造成等の規制の法律に基づく許可が必要になる場合がある、と案内し、開発行為のページへ導いています(担当は都市建設部建築指導課 開発保全係 0143-25-2667)。

ひとつ気をつけたいのは、擁壁の確認の扱いです。建築基準法第88条第4項により、盛土規制法第12条第1項などの許可を受けなければならない場合の擁壁については、法第88条第1項のうち確認・検査に関する部分が適用されません。外れるのは、擁壁についての工作物の確認です——建築物そのものが確認を要する計画であれば、その確認申請は別に要ります(建築物について確認が要るかどうかは、別の判定です)。

違反すると、設計者だけでなく建築主・所有者にも及び得ます

第61条 第2条第1項若しくは第3項 (第3条第2項において準用する場合を含む。) 、第3条第1項、第4条、第4条の2、第5条、(中略)又は第58条の3から第58条の7までの規定に違反した場合における当該建築物又は建築設備の設計者 (設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該建築物又は建築設備の工事施工者) は、50万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があった場合において、その違反が建築物の建築主又は建築設備の設置者の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築物の建築主又は建築設備の設置者に対して同項の刑を科する。

室蘭市建築基準法施行条例 第61条(強調・中略は引用者)

第4条の2は、罰則の対象です。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いない・従わない施工では工事施工者に替わります。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑が科されます(第61条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人、使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも同じ刑が科されます(第62条)。これを両罰規定(りょうばつきてい=行為をした人だけでなく、その法人や雇い主にも同じ罰金を科す定め)といいます。

是正命令は、建築主・所有者なども対象になり得ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含みます)もしくは現場管理者、または当該建築物もしくは建築物の敷地の所有者、管理者もしくは占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります。審査が省略される場合でも、条例に適合させる義務は別に生じます。用途を変更する場合も、建築基準法第87条第2項により、法第40条に基づく条例の規定は準用されます

窓口——室蘭市 都市建設部 建築指導課です

  • 条例第4条の2の当てはめ・確認申請・事前相談——都市建設部/建築指導課/建築指導係 0143-25-2664(ファクス 0143-24-2091)。〒051-8511 室蘭市幸町1番2号。土地を買う前に、まずここです
  • 宅地の造成・開発行為——都市建設部 建築指導課 開発保全係 0143-25-2667
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定——指定するのは北海道知事です。区域の図書は、市の窓口で縦覧できます

窓口へ持って行くものは、3つです。現況の測量図(がけの位置と敷地の関係が分かるもの)、②敷地とがけとの状況を示す断面図(がけの形状・勾配・高さ、そして土質を書き込んだもの。必要な方向と枚数は、提出先に確かめてください)、③建物の配置案(外壁面からがけまでの水平距離が書き込んであるもの)。「がけがあるみたいなんですが」だけでは、答えは返ってきません——条例の当てはめは、図の上でしか決まらないからです。まず建築士に相談してください——必要に応じて、測量や地盤調査の専門家と組んで資料を整えることになります。不動産会社に測量図があるかを、まず聞いてください。

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、がけから離す配置や擁壁の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは室蘭市建築指導課の窓口です。

  • ① その土地は室蘭市内か。室蘭市内なら、読むのは室蘭市建築基準法施行条例 第4条の2です
  • ② 敷地の中や隣に、勾配が30度を超え、高さが2メートルを超える土地があるか。目測ではなく、現況の測量図と断面図で。高さは、下端を通る30度の勾配を超える部分について、下端から最も高い部分まで(市の運用方針)。小段や通路で分かれていても、一体とみなされることがあります
  • ③ 建てる位置は、がけの高さの2倍の水平距離を取れるか。起点はがけの上なら下端、がけの下なら上端——建物から遠いほうの端です。測る先は外壁面ちょうど2倍なら適合します
  • ④ がけが隣の土地にあってもかかります。「接し、又は近接する敷地」だからです
  • ⑤ 距離が取れないなら、3つの号のどれに当てはめるか——第1号(形状・土質により安全上支障がないと認められること)、第2号(がけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁、またはこれに代わる措置)、第3号(がけの下だけ。鉄筋コンクリート造等により安全上支障がないと認められるとき、または適当な流土止め)。どれかに当たれば、第4条の2については原則として建てられます——擁壁や流土止めを設けさえすればよい、という書き方ではありません
  • ⑥ 第1号をあてにする前に、土質の判定を誰がするかを決める。運用方針は硬岩盤(風化の著しいものを除く)や角度の表を挙げていますが、判定は地盤の調査と建築士の仕事です
  • ⑦ すでに擁壁や土留めがあるなら、いつ・どの基準で造られたかを調べる。売主に、「擁壁や造成についての確認済証・検査済証・許可の書類が残っていますか。あれば写しをください」と、契約の前に頼んでください確認済証=着工前に計画が法令に合っていると確かめた書類、検査済証=完成後の検査に合格した書類です)
  • ⑧ 高さが2メートルを超える擁壁を新たに造るなら、工作物の確認(法第88条第1項・令第138条第1項第5号)が別に要ります——ただし、都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区や知事が指定する区域の中に限ります(法第6条第1項第3号)。ただし盛土規制法などの許可を受けなければならない場合の擁壁は、確認の部分が適用されません(法第88条第4項)
  • ⑨ 雨水と汚水をどこへ流すか。運用方針の《参考》は、がけの上はがけ肩を保護してがけからできるだけ離す、がけの下はがけ尻にU字溝などを設ける、としています
  • ⑩ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。北海道土砂災害警戒情報システムで当たりを付け、最終確認は市の窓口の図書で。レッドゾーンで居室のある建物なら、令第80条の3の構造が別に要ります
  • ⑪ がけを削る・土を盛る工事を伴うなら、盛土規制法や都市計画法の許可が要るかを、開発保全係(0143-25-2667)
  • ⑫ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第61条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます
  • ⑬ 第4条の2の距離の義務が外れても、法第19条第4項の措置は別に要ります。「条例をクリアした=安全」ではありません

どれくらい日数がかかるかは、がけの状態と計画で変わりますので、この記事では示せません。建築士と窓口に、最初に「いつごろ答えが出るか」を聞いてください——それが分かって初めて、売買契約の日取りを動かせます。擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(第4条の2の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

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