三重で崖の近くに家を建てる・買う人へ——最初に答えから。
三重県の「がけ条例」とは、三重県建築基準条例 第6条のことです。崖の近くに建てるときは、原則として崖から一定の距離を保つことが求められます。
先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、崖から離す配置や擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。相談先は、土地のある市町で分かれます——桑名市・四日市市・鈴鹿市・津市・松阪市なら、その市の建築指導の担当課。伊賀市・名張市・亀山市は、建物の種類によって市と県に分かれます(この記事の窓口の節で読みます)。それ以外の市町は、県の建設事務所(建築開発室・建築開発課)です。指定確認検査機関(民間の確認検査機関)へ確認申請を出す予定なら、その機関にも相談できます。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。
擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(この条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。
①三重の「がけ条例」は、三重県建築基準条例(昭和46年三重県条例第35号)の第6条です。②かかるのは、建築物の敷地が、高さ2メートルを超える崖に近接する場合——崖とは勾配が30度を超える傾斜地で、県の解説は「擁壁、工作物を含む」と書いています。③そのとき条文が求めるのは擁壁ではなく、崖の高さの2倍以上の水平距離を保つこと。④どこから測るかは、敷地が崖の上か下かで入れ替わります——敷地が崖の上にあるなら崖の下端(かたん=斜面がふもとの地面と接するところ)から、崖の下にあるなら崖の上端(じょうたん=斜面が上の平らな地面と接するところ)から。⑤距離が取れなくても、道は2つあります。条文のただし書(=「ただし……この限りでない」で始まる、義務が外れる場合の定め)に当てはまれば、第6条の距離の義務は外れ、第6条については原則として建てられます。ひとつは、崖が、政令の技術的基準に適合する擁壁で覆われていること。もうひとつは、土質試験等に基づき、崖崩れ等による被害を受けるおそれがないこと——県の解説は、この確かめ方として、切土の勾配(岩は風化の程度で使う勾配が変わります)・硬岩盤(こうがんばん)・基礎を30度の面より下げる・地盤の安定計算・令第80条の3に適合する外壁等や門・塀・これらと同等の安全性が確かめられるもの、の6つを挙げています。どの道も、調べる費用と設計の手間は別に要ります(擁壁を新しく設けるなら、工事費も)。災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は別に確認してください。⑥市町が独自に定めた崖の条例は、特定行政庁(許可・認定や是正命令を受け持つ役所の長)である8市を当たった範囲では、見当たりません——このうち細則・規則の本文を読めた7市のものは、いずれも県条例の施行のために定められ、確認申請に崖の断面図を求めています(名張市は本文を読めていません)。条文は2026年9月4日に、三重県が公表している条例本文(PDF)と三重県法規集の2つを突き合わせて確認しました。
「がけ条例」の実体は、三重県建築基準条例の第6条です

「がけ条例」という題名の条例はありません。三重県では、三重県建築基準条例(昭和46年7月27日 三重県条例第35号)の第6条(崖に近接する建築物)がその中身です。県の解説も、この条を「通称『崖条例』といわれており」と紹介しています。根拠は建築基準法第40条——その地方の気候・風土の特殊性などにより、法第2章(建築物の敷地・構造・建築設備)の規定やこれに基づく命令の規定だけでは建築物の安全・防火・衛生の目的を十分に達しがたいと認める場合に、地方公共団体が条例で建築物の敷地・構造・建築設備の制限を付け加えられる、という規定です。条例第1条は、この第40条を含む4つ(ほかに法第39条・第43条第3項・第56条の2第1項)を根拠に挙げています。
探すときの目印を2つ。ひとつ、題名に「三重県」が付きます——「三重県建築基準条例」です。ふたつ、崖の条は第3章第1節「通則」の先頭にあります。第2章(第4条・第5条)は災害危険区域の章で、崖の条ではありません——こちらは、あとの節で読みます。
都市計画区域の外でも、第6条はかかります
(適用の除外)
三重県建築基準条例 第3条
第3条 建築主事を置く市町が、法第39条、第40条(第88条第1項において準用する場合を含む。)、第43条第3項又は第56条の2第1項の規定に基づき条例を定めたときは、当該市町の区域内においては、この条例の関係規定は、適用しない。
2 第7条、第10条及び第22条の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内の建築物の敷地については、適用しない。
第2項が区域を限っているのは第7条・第10条・第22条で、第6条はこの並びに入っていません。つまり都市計画区域の外でも、準都市計画区域の外でも、第6条は働きます。県の解説も、第2項を「道路」の定義がある区域に限るための規定だと説明しています。用途地域のない山あいの土地でも、崖と距離の条件に当たれば対象です。第1項は、建築主事を置く市町が自前の条例を定めたときの話です——三重県内の8市にどうかかるかは、8つの市の節で読みます。
どこからが「崖」か——高さ2メートル、勾配30度。どちらも「超える」です
三重の第6条は、崖の定義を条文の括弧書きに持っています——「勾配が30度を超える傾斜地」。高さは本文の「高さ2メートルを超える崖」です。押さえるところは3つ。①勾配は「30度を超える」——30.0度ちょうどは当たりません。②高さは「2メートルを超える」——2.0メートルちょうども当たりません(「以上」ではありません)。ただし、ここで外れるのは条例第6条だけです——崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、建築基準法第19条第4項の措置は別に残ります(あとの節で読みます)。③硬岩盤(こうがんばん。風化の程度を含め、該当するかどうかは地質資料・調査で確かめます)は、定義からは外れません。条文の括弧書きに、岩を除く旨は書かれていません。県の解説は「崖が硬岩盤で、安全上支障がない場合」をただし書の側の確かめ方のひとつとして挙げています。「岩だから条例の外」ではありません——「岩であることを確かめて、ただし書で外す」順番です。解説が切土の勾配に使う表も、岩を「軟岩(風化の著しいものを除く。)」と「風化の著しい岩」に分けています——同じ岩でも、風化していれば使える勾配が違います。
もうひとつ、条文には書かれていない読み方が県の解説にあります。解説は、この条例の対象となる「崖」を「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地(擁壁、工作物を含む)で、その高さが2メートルを超えるもの」としています。擁壁そのものも「崖」に数えられる、という読み方です。だから、ただし書は「当該崖が……擁壁で覆われている場合」という形になっています——擁壁があれば崖ではなくなる、のではなく、擁壁で覆われた崖が基準に合っているかを見るのです。
③を、自分で判定しないでください。目の前の斜面が硬岩盤か、風化しているかは、見ただけでは決まりません。土質を調べて図にするのは地盤調査と建築士、条例の当てはめを判断するのは、あとに出てくる建築行政の窓口か、確認申請を出す先です。
段になった崖・勾配が一定でない崖——「当該崖の高さ」の数え方
県の解説は、数え方を2つ示しています(いずれも条例の条文にはありません)。ひとつ、崖の途中に小段(こだん=斜面の途中にある平らな段)や通路があって上下に分かれている場合——下の段の崖の下端から水平面に対して30度の面を想定し、上の段の崖の下端がその面より上にあるときは、一体の崖として高さを数えます。四日市市のガイドラインは、その場合の「当該崖の高さ」を上下の高さの合計と図示しています。ふたつ、勾配が一定でない崖——条文の「当該崖の高さ」は、30度を超える傾斜地部分の高さです。四日市市のガイドラインはさらに、崖の上や下にある30度以下の部分だけを高さから除け、一体の崖の途中にある30度以下の部分は除けないとしています。どこまでを1つの崖と数えるかで、必要な距離が変わります。ここは目測では決まりません——現況の測量図と断面図が要ります。一体と数えないときは、上下それぞれが別の崖になります。県の解説の図は、その場合にそれぞれの崖の高さが2メートルを超えなければ本条例は適用されないと注記しています(四日市市のガイドラインにも同じ注記があります)——ただし、一体と数えるか別々と数えるかを決めるのは、断面図をもとにした申請先の判断です。高さだけを見て、自分で外せるものではありません。そして、建築基準法第19条第4項は別に残ります。
崖の前面に側溝や水路がある場合も、数え方があります。四日市市のガイドラインは、崖の上の敷地で崖の前面に側溝がある場合の「当該崖の高さ」の取り方を図で示し、内法幅(うちのりはば=側溝の内側の幅)と深さが300ミリメートル×300ミリメートル以下程度のプレキャスト側溝のときだけ、別の取り方を認めています。水路や赤道(あかみち=登記されていない公共の道)を挟む場合の取り方も図にしています。これは四日市市の資料の取扱いです——ほかの申請先で同じかは、その申請先に確かめてください。
かかる範囲は「崖の高さの2倍」——起点が、敷地が崖の上か下かで入れ替わります
(崖に近接する建築物)
三重県建築基準条例 第6条
第6条 建築物の敷地が高さ2mを超える崖(勾配が30度を超える傾斜地をいう。以下この条において同じ。)に近接する場合には、当該敷地が崖の上にあるときにあつては崖の下端から、崖の下にあるときにあつては崖の上端から当該敷地に建築する建築物との間に、当該崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、当該崖が宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(昭和37年政令第16号)第8条第1項第二号及び第9条から第12条まで若しくは第17条の規定に適合する擁壁で覆われている場合又は土質試験等に基づき崖崩れ等による被害を受けるおそれのない場合は、この限りでない。
先に言葉を決めておきます。下端(かたん)は、崖の斜面がふもとで下の地面と接するところ。上端(じょうたん)は、崖の斜面が上の平らな地面と接するところです。断面図の上で、どこが下端でどこが上端かが決まります。
そのうえで、条文の主語に注意します。三重の第6条は「建築物の敷地が……崖に近接する場合」と書き、起点を「当該敷地が崖の上にあるとき」と「崖の下にあるとき」で分けています。敷地が崖の上にあるなら、起点は「崖の下端」。敷地が崖の下にあるなら、起点は「崖の上端」。言いかえると、起点は、いつも自分がいる側とは反対側の端です。距離を測る相手は「当該敷地に建築する建築物」——これから建てる建物です。
| 敷地の位置 | 距離の起点 | 保つ距離 |
|---|---|---|
| 敷地が崖の上にある | 崖の下端から | 崖の高さの2倍以上 |
| 敷地が崖の下にある | 崖の上端から | 崖の高さの2倍以上 |
がけの上に建てるとき、起点を取り違えると、必要な水平距離を長く見積もります。敷地が崖の上にあるなら、測り始めるのは手前の上端ではなく、向こう側の下端です——斜面の水平幅も、必要な水平距離に含めて数えます(斜面の水平幅=上端と下端の水平のへだたり)。手前の上端から2倍を取ると、斜面の水平幅のぶんだけ余計に離すことになり、土地に余裕があるのに、あきらめてしまいます。敷地が崖の下にあるときも同じです——起点は上端で、やはり斜面の水平幅が中に入ります。条例の崖は「勾配が30度を超える傾斜地」なので、段のない斜面なら、水平幅は高さの約1.7倍より小さくなります(30度ちょうどなら約1.73倍)——2倍の範囲には収まり、上端から先にも、まだ離す距離が要ります。ただし一体の崖の途中に30度以下の部分があるときは、別です——四日市市のガイドラインはその部分を高さから除かないとしており、水平幅は断面図の上で確かめることになります。高さ2メートルを少し超える崖なら、下端から4メートルあまり。高さ5メートルの崖なら、下端から10メートルです。上端から先に何メートル離すことになるかは、測量図と断面図の上で決まります。
「近接する」の測り方は、県の解説が決めています。崖の上端または下端から崖の高さの2倍未満の水平距離内に、建築物の外壁面が含まれるとき(壁が無い場合は、これに代わる柱の外面)、その建築物は崖に近接しているとみなし、規制の対象になります。逆に、建築物の基礎や庇(ひさし。ポーチ・ベランダを含む)だけが範囲に入っている場合は、対象になりません——ただし庇のような形でも、下部が床面積に算入される(用途がある)場合は対象です。そして解説は続けて、崖の上の建築物に限り、基礎だけが範囲に入っている場合は、あとに出る(3)の方法で安全性を確かめる必要があるとしています。
崖が敷地の外にあっても、かかります。県の解説のQ&Aは、「敷地と崖の間に道路や別の敷地を挟む場合や、敷地と崖に相当の距離がある場合は適用されるのか」という問いに、道路等の土木工作物や別の敷地が介在している場合を含め、崖の高さの2倍未満の範囲であれば「近接する」ものとして適用されると答えています。「うちの土地の中に崖は無い」では、外れません。
義務の形は「離す」です——擁壁は、距離が要らなくなる道のひとつ
条文が命じているのは「水平距離を保たなければならない」です。「擁壁を設けなさい」とは書いていません。擁壁(ようへき=崖の土が崩れないように留めるコンクリートなどの壁)は、ただし書の2つの道のひとつとして現れます。県の解説も、「本条では、崖高さの2倍未満の水平距離部分には建築物を建てることを禁止していますが、ただし書きにより、崖に対する安全性が確保出来れば、建築物を建てることを許容しています」と書いています。
だから、読む順番はこうなります。①まず、2倍の距離を取れるか。取れれば第6条本文に適合します。②取れないなら、ただし書の2つの道のどちらかに当てはめる——道1は、崖が政令の技術的基準に適合する擁壁で覆われていること。道2は、土質試験等に基づき崖崩れ等による被害を受けるおそれがないこと。③どちらにも当てはまらないときは、その配置案では第6条に適合しません——配置を変える、擁壁を設ける、地盤を調べて安全を確かめる余地は残ります。三重の第6条には、特定行政庁の「認定」で外す道がありません——道2に当たるかどうかは、確認申請を出す先の審査で判断されます(県の解説のQ&Aは「具体的には申請される審査機関にご相談ください」としています)。
道1——政令の技術的基準に適合する擁壁で、崖が覆われているとき
ただし書が名指ししているのは、宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(昭和37年政令第16号)の第8条第1項第二号、第9条から第12条まで、そして第17条です。第8条第1項第二号は、擁壁を鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造・練積み造(間知石練積み造その他の練積み造)のものとすること。第9条は鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造の擁壁の構造計算(土圧等で破壊・転倒・滑り・沈下しないこと)。第10条は練積み造の擁壁の勾配・高さ・厚さ・根入れ(ねいれ=擁壁の底を地中に埋める深さ)。第11条は建築基準法施行令の準用。第12条は、壁面の面積3平方メートル以内ごとに内径7.5センチメートル以上の水抜穴を少なくとも1個設け、裏面に砂利その他の資材で透水層を設けること。第17条は、これらの規定によらない特殊の材料又は構法による擁壁で、国土交通大臣が同等以上の効力があると認めるものです。
基準に合うことを資料と現地の状況で示し、崖を覆う擁壁だと申請先が判断すれば、第6条の距離の義務は外れます——第6条については、原則として建てられます。既にある擁壁は、その資料と現地の状況を確かめるところからです。条件は、擁壁が上の基準に合っていること——その設計と確かめは建築士の仕事で、工事費も別に要ります。災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は別に確認してください。
「擁壁があるから大丈夫」とは読めません。県の解説は、安全上支障がないことの確認例として「崖上に重量物が存在する又は計画する場合は、上載荷重を考慮すること」を挙げています。上載荷重(じょうさいかじゅう)とは、その擁壁を設計したときに擁壁の上に載ると見込んでおいた重さのことです。擁壁の上に建物を載せると、前提が変わります。四日市市のガイドラインは、設計図書への記載例として、既存擁壁の検査済証や確認済証の写しを添え、築造当初から形状の変更がなく建物荷重も見込んだ構造であること、現地調査で有害なはらみやひび割れがなく水抜穴が機能していることを書く例を示しています。すでにある擁壁については、いつ・どの基準で造られたものかを、設計者に確かめてもらってください。
道2——土質試験等に基づき、崖崩れ等による被害を受けるおそれがないとき
条文はこれだけしか書いていません。具体の確かめ方を6つ示しているのは県の解説です(解説の「3.土質試験等に基づき崖崩れ等による被害を受けるおそれのない場合」)。どれも条例の条文ではなく、県が示している解説です——当てはめは、確認申請を出す先が判断します。
- (1)崖の全部または一部が切土(きりど=地面を削ってできた斜面。解説は「切土には自然崖を含みます」としています)で、土質と高さに応じた次の表の勾配以下で、安全上支障がない場合
- (2)崖が硬岩盤で、安全上支障がない場合(下の表のとおり、岩でも風化の著しいものは別に扱われます)
- (3)崖の上に建てる場合で、建築物の基礎が崖の下端から30度の面の下方に達し、かつ安全上支障がない場合(切土の崖は、土質により(1)の勾配を使えます)
- (4)土質試験等に基づき地盤の安定計算をした結果、崖の安全が確かめられたとき
- (5)土砂災害特別警戒区域の中で、崖の下に建てる場合に、建築物の外壁等または門・塀を、令第80条の3に適合する構造とした場合(区域の外でも、これと同等の安全性が確かめられた場合を含む)
- (6)その他、(1)〜(5)と同等の安全性が確保できるもの
| 土質 | 崖の高さ5メートル以下:勾配の上限 | 崖の高さ5メートル超:勾配の上限 |
|---|---|---|
| 軟岩(風化の著しいものを除く。) | 80度 | 60度 |
| 風化の著しい岩 | 50度 | 40度 |
| 砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの | 45度 | 35度 |
この表は県の解説の表です。数値は、宅地造成及び特定盛土等規制法施行令の別表第一(擁壁を要しない勾配の上限が軟岩(風化の著しいものを除く。)60度・風化の著しい岩40度・砂利や真砂土等35度、擁壁を要する勾配の下限が80度・50度・45度)と一致しています——別表第一の2つの欄は「擁壁が要るかどうか」で分かれており、別表第一そのものには、崖の高さの区分はありません。ただし、令第8条第1項第1号イ(2)は、中欄の角度を超え下欄の角度以下の崖面について「その上端から下方に垂直距離五メートル以内の部分に限る」と定めており、政令の側にも5メートルの条件があります。県の解説は、これを崖の高さHの表の形で示しています。土質がどれに当たるかを決めるのは読者ではありません——決めるのは地盤調査と設計者、当てはめを判断するのは申請先です。
(3)の「30度の面」について、解説は安全上支障がないことの確認例を3つ添えています——目視等により法面(のりめん=斜面の表面)に有害なふくれ・出水・亀裂等が生じていないこと、崖上に重量物があるか計画する場合は上載荷重を考慮すること、平成12年建設省告示第1347号の根入れ深さを確保する場合などは、有効な根入れ部分が必要な勾配面より下方に達すること。Q&Aは、杭や地盤改良(ラップルコンクリートを含む)を行った場合の扱いを「統一的な取り扱いは定めていません」とし、工種・工法ごとに安全性を検討するよう求めています。なお同じQ&Aは、基礎の底面だけが擁壁不要な勾配面の下方に達している場合でも、平成12年建設省告示第1347号の根入れ深さを確保する必要がない場合(基礎の底部が雨水等の影響を受けるおそれのない密実で良好な地盤であるとき)や、基礎の地耐力に根入れ効果を見込んでいない場合は認められる、と答えています。四日市市のガイドラインは、杭基礎や浅層・深層混合処理工法の例を図で示しています。
(6)の例も、Q&Aにあります。急傾斜地崩壊対策事業で設置された法枠工等は、管理者との協議のうえ支障がないもの、または設計者等により計画敷地の安全が確認できたものに限り、(6)として同等の安全性が確保できるものとして、ただし書を適用できる——という答えです。崖の下で、崖崩れの被害を受けるおそれのある部分を十分な強度の鉄筋コンクリート造等にした場合は、(5)により令第80条の3に適合する場合は認められ、そのほかは(6)により技術的に検証し証明できれば認められる、とも答えています。四日市市のガイドラインは、この(6)に当たる枠(同市の資料では(5))の事例として、地方公共団体等が管理する道路擁壁で覆われている場合を挙げ、道路の築造で生じた崖は「道路土工・擁壁工指針」により安全性が確保されていると考えられるが、計画について管理者と協議を行う必要があるとしています。
この6つのどれかに当たると確かめられれば、第6条については原則として建てられます。条件は、確かめるのが読者ではないことです——土質試験や設計の裏づけを添えて、申請先が判断します。災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は別に確認してください。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——令第80条の3の構造規制は、第6条とは別に残ります
名前のよく似た2つを分けておきます。土砂災害警戒区域(イエロー)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、「特別」の2字しか違いませんが、別のものです。この記事で「レッドゾーン」と書くのは、「特別」が付くほうだけです。県は2026年5月12日現在で、警戒区域17,111区域・特別警戒区域15,414区域を指定しています(急傾斜地の崩壊が警戒区域11,376・特別警戒区域11,114、土石流が5,647・4,300、地すべりが88・0)。
レッドゾーンの中で居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋。住宅なら、ふつう当てはまります)を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3が、外壁及び構造耐力上主要な部分(土石等の高さ等以下で、衝撃が作用すると想定される部分。条文は「外壁等」と呼びます)を、知事が定めた最大の力の大きさ等と土石等の高さ等に応じて、想定される衝撃が作用しても破壊を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法にするよう求めています。ただし書は、土石等の高さ等以上の高さの門または塀(外壁等と同等以上の耐力を有するものとして大臣が定めた構造方法によるものに限る)を、衝撃を遮るように設ければ、この限りでないとしています。この構造規制は、条例第6条とは別の規定です——2倍の距離を取って第6条に適合していても、レッドゾーン内の居室のある建物には残ります。逆に、県の解説の(5)は、崖の下でこの構造にすることを、第6条の距離の義務を外す道のひとつに数えています。土砂災害防止法第25条により、レッドゾーン(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除きます。都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区・知事が指定する区域のことで、そこはもともと同号で確認の対象です)内の居室を有する建築物は、都市計画区域の外でも建築確認の対象になります(法第6条第1項第1号・第2号に当たるものは、もともと対象です)。敷地が区域の内外にまたがるときの扱いは、この第25条があわせて適用している建築基準法第91条(敷地の過半がどちらに属するかで決める規定)によりますので、窓口で確かめてください——これは、令第80条の3の構造の規定まで敷地の過半で外れる、という意味ではありません。
自分の土地がどちらかは、目で見ても分かりません。どちらでもないこともあります。三重県土砂災害情報提供システムの土砂災害マップで、指定された区域を地図の上で見られます。ただし県は、新たに指定された区域がマップに反映されるまでに一定の期間を要すると断り、区域図(公示図書)は地域を所管する建設事務所で縦覧(じゅうらん=窓口に置かれた書類を見ること)している、区域の詳細は各建設事務所で確認するように、と書いています。土地を買う前なら、不動産会社にも「この区域に入るか」を確かめてください。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さの門・塀を衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。
レッドゾーンでどんな構造が求められるかは、土砂災害特別警戒区域で求められる構造にまとめています(区域に入るかどうかの判定と、この条例の当てはめは、上の窓口で確かめてください)。
許可を受けた工事でできた崖を第6条の外に置く定めは、ありません
第6条には、盛土規制法や都市計画法の許可を受けた工事として造られた崖を、第6条の外に置く定めがありません。第6条が見るのは、いま目の前にある崖が、基準に合う擁壁で覆われているか、または被害を受けるおそれがないと確かめられるかです。許可を受けて造成された宅地の擁壁でも、それだけで外れるのではなく、その擁壁が政令の技術的基準に適合しているかを確かめることになります。四日市市のガイドラインは、記載例のひとつとして、開発検査済証の番号を書いて写しを添え、「既存擁壁は宅地造成に伴い設けられた擁壁で、築造当初からの形状の変更はなく、建物荷重も見込んだ構造となっている」と書く例を示しています——書類が残っているかどうかが、ここで効きます。
三重県は、盛土規制法について「県内全域を規制区域(宅地造成等工事規制区域又は特定盛土等規制区域のいずれか)に設定しています」と公表しています(県のページの更新日は2026年6月2日。造成宅地防災区域は指定していません)。崖の工事そのものに盛土規制法などの許可が要るかどうかは、条例第6条とは別の話です(建築確認とは別の手続です)——県の建築開発課(開発審査班、電話059-224-3087)か、建設事務所に確かめてください。
罰金の名宛人は原則、設計者。違反建築物には、建築主・所有者らへ除却等の是正命令が出ることがあります
第27条 第5条から第24条までの規定(第7条の2、第17条の2及び第17条の3の規定を除く。)に違反した場合における当該建築物、工作物又は建築設備の設計者(設計図書に記載された認定建築材料等の全部又は一部として当該認定建築材料等の全部又は一部と異なる建築材料又は建築物の部分を引き渡した場合においては当該建築材料又は建築物の部分を引き渡した者、設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合(設計図書に記載された認定建築材料等と異なる建築材料又は建築物の部分を引き渡された場合において、当該建築材料又は建築物の部分を使用して工事を施工した場合を除く。)においては、その建築物、工作物又は建築設備の工事施工者をいう。)は、20万円以下の罰金に処する。
三重県建築基準条例 第27条第1項
第6条は「第5条から第24条まで」の中にあり、除かれている第7条の2・第17条の2・第17条の3には入っていません。つまり第6条違反は、この罰則の対象です。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則、設計者——設計図書を用いずに、または設計図書に従わずに工事を施工した場合は工事施工者です(上の引用の括弧の中には、認定建築材料等と異なる建築材料等を引き渡した場合の「引き渡した者」も挙がっています)。刑は20万円以下の罰金です。
第27条第2項は、その違反が建築主・工作物の築造主・建築設備の設置者の故意によるものであるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑を科すると定めています。第28条は両罰規定です——法人の代表者、または法人・人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第27条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人にも第27条の刑を科します。ただし第28条にはただし書があり、違反行為を防止するため、相当の注意及び監督が尽くされたことの証明があったときは、その法人又は人については、この限りでないとしています。
仮設建築物について、県の解説のQ&Aが1つ答えています——法第85条第1項・第2項の仮設建築物(非常災害のときの応急仮設建築物や、工事現場に設ける事務所など)にはこの条例は適用されないが、同条第6項・第7項の仮設建築物(仮設興行場・博覧会建築物など、特定行政庁の許可を受けるもの)には条例第7条・第7条の2・第10条以外の規定が適用される、と。第6条は「以外の規定」に入ります。
是正命令は、建築主・所有者などが相手方になり得ます(法第9条第1項)
罰金の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、建築主、工事の請負人(下請人を含みます)、現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して、工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・使用禁止その他の是正に必要な措置を命ずることができる、と定めています。故意は要件ではありません。設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます。命令に違反した場合は、法第98条第1項第一号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
この記事が扱っているのは、これから建てる場合です(新築・増築・改築・移転)。条文も「当該敷地に建築する建築物との間に」と書いており、四日市市のガイドラインは、規制の対象は「建築する建築物」だが、敷地内に崖に近接する既存の建築物がある場合は法第19条により敷地の安全性を確認する必要があるとしています。すでに建っている家を崖から離す・建て替えることについては、県が「がけ地近接等危険住宅移転事業」を案内しています——対象区域や補助の中身は市町によって実施状況が異なるので、お住まいの市町の窓口にお尋ねください(県のページの更新日は2009年6月19日と古いので、いまの制度は市町で確かめてください)。
第6条の距離の義務が外れても、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば建築基準法第19条第4項の措置が要ります
4 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。
建築基準法 第19条第4項
県の解説は、条例第6条を、法第19条第4項の「建築物が崖崩れ等による被害を受けるおそれのある場合」に「擁壁の設置その他安全上適当な措置」について具体的な制限を規定したもの、と位置づけています。この規定は、県内のどこでも働きます(法第85条の応急仮設建築物など、法が適用されない場合を除きます)。条例の第6条に当たらない土地でも、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあるなら、擁壁の設置その他安全上適当な措置が要ります。求められているのは擁壁だけではなく、「その他安全上適当な措置」を含みます。「2メートルを超えないから何もしなくてよい」とは読めません。おそれの有無も、どの措置で足りるかも、あなたが決めるものではありません——崖と地盤を調べて図にするのは建築士等、条例と法の当てはめを判断するのは所管の建築行政の窓口と申請先です。四日市市のガイドラインが引いている構造関係技術基準の解説書は、宅地造成の技術基準で「擁壁の設置の必要ないがけ面」と判定されるものは法第19条第4項の「おそれ」のないものと考えてよい、としつつ、そのようながけ面でも工作物として擁壁を設けるときは令第142条の仕様規定を受けると書いています。
その令第142条第1項は、道を2つ書いています。ひとつは、同項各号に掲げる基準に適合する構造方法——鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること、擁壁の裏面に水抜穴を設けること、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算で安全性を確かめること、などです。もうひとつは、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法。条文はこの2つを「又は」でつないでいます——大臣が定めた構造方法でなければならない、ではありません。どちらの道を使うかは、擁壁の設計を頼む建築士に確かめてください。
8つの市も、県の条例の第6条です——市の独自の崖の条例は、当たった範囲で見当たりません
条例第3条第1項は、建築主事を置く市町が法第40条などに基づいて条例を定めたときは、その市町の区域では県条例の関係規定を適用しないと定めています。三重県で建築主事を置き、特定行政庁になっているのは、県が公表している一覧(2025年4月1日更新)では桑名市・四日市市・鈴鹿市・津市・松阪市・伊賀市・名張市・亀山市の8市です。この8市に、崖について自前の条例があるかを、市の例規で当たりました。
読めた資料の範囲では、8市とも県条例第6条を前提とした案内をしています——ただし、細則・規則の本文まで読めたのは7市で、名張市は市の説明ページだけです。8市すべてに市独自のがけの条例が無いことまでは、確かめていません——市が法第39条・第40条等に基づく条例を定めていれば、その市の区域では県条例の関係規定は適用されません(県条例第3条第1項)。敷地のある市で、どちらの条例かを確かめてください。四日市市・鈴鹿市・桑名市・松阪市・亀山市の建築基準法施行細則、津市の建築基準法施行取扱規則、伊賀市の建築基準法施行細則は、いずれも第1条で三重県建築基準条例の施行に関し必要な事項を定めると書き、確認申請書に高さ2メートルを超える崖の断面図(崖の上端・下端から建築物までの水平距離、崖の形状、土質等)を添えるよう求めています。名張市は、市のページで、建築基準法・同施行令・同施行規則および三重県建築基準条例の施行に関し必要な事項を市の細則で定めていると説明しています(細則の本文は読んでいません)。津市・伊賀市の例規集の五十音索引「け」の欄に、市の建築基準条例はありませんでした。鈴鹿市のページは「がけ条例などについては三重県建築基準条例をご覧ください」と案内しています。
四日市市は、条例ではなく「崖と擁壁(ガイドライン)」を公表しています(2013年4月1日発刊、市のページの更新日は2025年4月1日)。市は、これを「県条例解説に上乗せする規定ではなく、相談事例などを反映して、より詳細に図等を用いて解説したもの」と位置づけ、県条例第6条と法第88条の擁壁の窓口相談用資料としています。この記事で四日市市の扱いとして引いたのは、この資料です。
災害危険区域——県の解説は「知事の指定は無い」と説明、紀宝町には条例があります
(建築制限)
三重県建築基準条例 第5条
第5条 第一種災害危険区域においては、住居の用に供する建築物は、建築してはならない。
2 第二種災害危険区域においては、住居の用に供する建築物は、鉄筋コンクリート造、補強コンクリートブロック造等の堅固な構造で建築しなければならない。
3 前2項の規定は、地盤のかさ上げ、擁壁の設置等災害防止上有効な措置を講ずる場合には、適用しない。
建築基準法第39条は、地方公共団体が条例で津波・高潮・出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定できると定めています。三重県建築基準条例は第4条で、関係市町長の意見を聴いて知事が指定するとし、第一種・第二種に分けています。ただし、県の解説(2016年版)は「本条に基づき知事が指定した災害危険区域はない」と書いています——これは2016年版の時点の記述です。第4条では、知事が指定・廃止をするときは公示し、指定・廃止は公示によって効力を生じます(同条第3項・第4項)。その後の指定・廃止の告示までは、この記事では当たっていません——いまの指定の有無は、県の建築開発課で確かめてください。
(災害危険区域の指定)
紀宝町災害危険区域に関する条例 第2条
第2条 1級河川相野谷川流域の紀宝町鮒田、高岡及び大里の区域内にある標高9.4メートル未満の区域を災害危険区域に指定する。
県の解説は、法第39条により紀宝町が「紀宝町災害危険区域に関する条例」(平成18年1月10日 条例第17号)を制定していると紹介しています。指定されているのは一級河川相野谷川流域の鮒田・高岡・大里の標高9.4メートル未満の区域で、理由は出水——崖崩れではありません。区域内では住居の用に供する建築物を建築してはならず、ただし書で、地盤面の高さを標高9.4メートル以上として建築するもの、主要構造部(屋根・階段を除く)が鉄筋コンクリート造または鉄骨造その他これらに準ずる構造で標高9.9メートル以下の部分を住居の用に供しないもの、町長が適当と認めた季節的な仮設建築物は除かれています。崖のがけ条例とは別の制度です。区域の中身は紀宝町役場(電話0735-33-0333)で確かめてください。ほかの市町に法第39条の条例があるかは、この記事では当たっていません。
窓口は、8市の担当課と、県の8つの建設事務所に分かれます
特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)は、役所ではなく人です——建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事をいいます(建築基準法第2条第35号)。同号にはただし書があり、法第97条の2第1項・第2項などにより建築主事等を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については都道府県知事が特定行政庁です。三重県内なら、8市の市長か、三重県知事です。
県が公表している特定行政庁の一覧(2025年4月1日更新)は、次のとおりです。伊賀市・名張市・亀山市の3市は「限定特定行政庁」で、県は「建築基準法第6条第1項第2号に該当する建築物のうち、木造建築物(地階を除く階数が3以上、延べ面積が300㎡を超えるもの、高さが16mを超えるもの及び知事の許可を必要とするものを除く)及び同項第3号に該当する建築物(知事の許可を必要とするものを除く)の場合は、当該市が特定行政庁となり、その他の場合については、県が特定行政庁となります」と注記しています。木造2階建ての住宅でも、規模・用途・知事の許可の要否で、市と県に分かれます——どちらに当たるかは、最初に、設計を頼む建築士に確かめてください。
| 市(市長が特定行政庁) | 窓口 | 電話 |
|---|---|---|
| 桑名市 | 都市整備部建築開発課 | 0594-24-1218 |
| 四日市市 | 都市整備部建築指導課 | 059-354-8206 |
| 鈴鹿市 | 都市整備部建築指導課 | 059-382-7651 |
| 津市 | 都市計画部建築指導課 | 059-229-3186 |
| 松阪市 | 建設部建築開発課 | 0598-53-4156 |
| 伊賀市(限定) | 建設部建築課 | 0595-22-9732 |
| 名張市(限定) | 都市整備部都市計画室 | 0595-63-7698 |
| 亀山市(限定) | 建設部建築住宅課 | 0595-96-9028 |
| 県の窓口(知事が特定行政庁) | 所管する市町 | 電話 |
|---|---|---|
| 県土整備部建築開発課 | (本庁。津市広明町13番地) | 059-224-2709 |
| 桑名建設事務所建築開発室 | いなべ市・木曽岬町・東員町 | 0594-24-3667 |
| 四日市建設事務所建築開発室 | 亀山市・菰野町・朝日町・川越町 | 059-352-0684 |
| 松阪建設事務所建築開発課 | 多気町・明和町・大台町 | 0598-50-0587 |
| 伊勢建設事務所建築開発室 | 伊勢市・玉城町・度会町・南伊勢町・大紀町 | 0596-27-5210 |
| 志摩建設事務所建築開発課 | 鳥羽市・志摩市 | 0599-43-9651 |
| 伊賀建設事務所建築開発室 | 名張市・伊賀市 | 0595-24-8239 |
| 尾鷲建設事務所建築開発課 | 尾鷲市・紀北町 | 0597-23-3546 |
| 熊野建設事務所建築開発課 | 熊野市・御浜町・紀宝町 | 0597-89-6148 |
県の一覧では、四日市建設事務所の所管に亀山市が、伊賀建設事務所の所管に名張市・伊賀市が入っています——限定特定行政庁の3市で、県知事が特定行政庁となる建築物を受け持つためです。一覧は三重県の特定行政庁一覧のページにあります。
出す順番に、ひとつ確かめておくことがあります。県の建築基準法施行細則第3条は、知事に提出する申請書・届書は、敷地の所在地を管轄する市町の長に提出し、建設事務所の長を経由すると定めています(仮使用認定申請書や、指定確認検査機関から提出される申請書・届書などは除かれます)。県知事が特定行政庁となる区域では、市町の窓口を通る、ということです。指定確認検査機関(民間の確認検査機関)へ出す場合は、その機関へ提出・相談します。
崖に近接するときは、確認申請に崖の断面図が要ります
高さが二メートルを超える崖に近接する場所を敷地とする建築物/崖の断面図/縮尺、崖の形状、土質並びに崖の上端及び下端から当該建築物までの水平距離
三重県 建築基準法施行細則 第4条第1項第2号の表(抜粋。建築物等の区分/図書の種類/明示すべき事項)
県の細則第4条は、法第6条第1項の確認申請書に、建築物の区分に応じて図書を添えるよう定め、その表に崖の断面図を置いています。明示すべき事項は縮尺、崖の形状、土質、崖の上端及び下端から建築物までの水平距離。本文を読めた7市の細則・規則も、同じ趣旨の断面図を求めています(四日市市の細則は「崖に接する敷地」と書き、市のガイドラインは、この「接する」を県条例第6条の「近接する」と同義語として取り扱うと注記しています)。この断面図が、建築士に用意してもらうものの中身です。四日市市のガイドラインは、設計図書に「どのような調査・検討をして安全であると判断したか」を設計者の責任において表記する取扱いを示し、記載例を並べています。条例の当てはめは、この断面図の上で決まります。だから、目測では決まりません。
売買契約の前に、専門家と確かめること
この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口です。個別の判断は、建築士と窓口にご確認ください。
- ①その土地の建築確認を扱うのは、8市のどれか、県か。伊賀市・名張市・亀山市は、建物の種類で市と県に分かれます。指定確認検査機関に出す予定なら、その機関へ
- ②敷地の中や隣に、勾配30度を超え、高さ2メートルを超える崖があるか。目測ではなく、現況の測量図と断面図で。県の解説では、擁壁も「崖」に数えられます
- ③建てる位置が、崖の高さの2倍の範囲に入るか。起点は、敷地が崖の上なら下端、崖の下なら上端。測るのは建物の外壁面まで。段になった崖は一体に数えることがあります
- ④崖が隣の土地や道路の向こうにあってもかかります。2倍未満の範囲に入れば同じです
- ⑤距離が取れないなら、ただし書の道1(基準に合う擁壁)か道2(土質試験等)か。道2は、県の解説の(1)〜(6)のどれで確かめるか。認定申請という道は無く、申請先の審査で決まります
- ⑥すでに擁壁があるなら、どの基準で造られ、上載荷重はいくつか。設計者による安全性の判断が要ります
- ⑦売主に、擁壁の書類が残っているかを聞く——いつ・どの許可(または確認)で造られたか、確認済証・検査済証・開発検査済証はあるか。契約後でも確認はできますが、購入判断や価格交渉に反映するため、契約の前に聞いてください
- ⑧その土地が土砂災害警戒区域(イエロー)・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に入っていないか。土砂災害マップと、建設事務所で縦覧している区域図(公示図書)で
- ⑨急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか、崩壊防止工事は済んでいるか。区域内の切土・盛土などには知事の許可が要ります——県の防災砂防課(電話059-224-2705)または建設事務所で
- ⑩紀宝町の相野谷川流域なら、災害危険区域に入っていないか——紀宝町役場で
- ⑪県知事が特定行政庁となる区域では、申請書は市町の長に提出し、建設事務所を経由します
- ⑫第6条の距離の義務が外れても、崖崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、建築基準法第19条第4項の措置が別に要ります(おそれの有無を判断するのは建築士と窓口です)。レッドゾーン内の居室のある建物は、令第80条の3の構造規制も別に残ります
確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、崖から離す配置や擁壁の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に。崖の高さと、崖からの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に、お尋ねください。どれくらい日数がかかるかは、崖の状態と計画で変わりますので、この記事では示せません。建築士と窓口に、最初に「いつごろ答えが出るか」を聞いてください——それが分かって初めて、売買契約の日取りを動かせます。
出典
- 三重県建築基準条例(三重県公表の条例本文・PDF。昭和46年7月27日 三重県条例第35号。第3条・第4条・第5条・第6条・第27条・第28条・附則)
- 三重県建築基準条例(三重県法規集)(最終改正 令和6年3月25日 三重県条例第18号。令和8年9月4日時点の表示で確認)
- 三重県建築基準条例解説(2016年版)(三重県建築行政会議建築主事部会 作成、三重県県土整備部建築開発課 監修。改正経過は令和6年3月29日の条文改正まで。第6条の解説とQ&A)
- 建築基準法施行細則(三重県・昭和46年三重県規則第64号。令和8年2月20日改正版。第3条・第4条第1項第2号の表)
- 建築・開発・住宅等関係法令・申請手続(条例・規則等)(三重県・条例/解説/細則の入口)
- 特定行政庁一覧(三重県・令和7年4月1日更新。8市と県の窓口、限定特定行政庁の注記)
- 建築(三重県県土整備部建築開発課のページ)
- 三重県建築基準法取扱集(三重県・令和8年1月改訂版の入口)
- 土砂災害(特別)警戒区域の指定状況(三重県県土整備部防災砂防課・令和8年5月12日現在)
- 三重県土砂災害情報提供システム(土砂災害マップ)
- 急傾斜地法に関すること(三重県・急傾斜地崩壊危険区域内の行為の許可と窓口)
- 盛土規制法に基づく規制区域の指定について(三重県・令和8年6月2日更新)
- がけ地近接等危険住宅移転事業(三重県住宅政策課・平成21年6月19日更新)
- 崖と擁壁(ガイドライン)の公表について(四日市市都市整備部建築指導課。ガイドライン本文・PDF)
- 四日市市建築基準法施行細則(第1条・第2条第1項第6号)
- 鈴鹿市建築基準法施行細則(第1条・第2条第1項第2号)と建築基準法に関連する例規及び各種数値など(鈴鹿市)
- 桑名市建築基準法施行細則(第1条・第2条第3項)
- 松阪市建築基準法施行細則(第1条・第2条第2号。PDF)と松阪市の建築関係条例・要綱等
- 亀山市建築基準法施行細則(第1条・第3条第1項第2号)
- 津市建築基準法施行取扱規則(津市条規類集・第1条・第2条第1号)
- 伊賀市建築基準法施行細則(伊賀市例規類集・第1条・第3条第2号)
- 名張市建築基準法施行細則について(名張市)
- 紀宝町災害危険区域に関する条例(紀宝町例規集・平成18年1月10日 条例第17号)と紀宝町(役場の連絡先)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条第35号・第6条第1項・第9条第1項・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第97条の2・第98条)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第80条の3・第142条)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(e-Gov法令検索・第1条・第8条・第9条〜第12条・第17条・別表第一)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第9条・第25条)
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第7条)
条文は2026年9月4日に、三重県が公表している条例本文(PDF)と、三重県法規集の本文(「令和8年9月4日時点」と表示され、最終改正が令和6年3月25日 三重県条例第18号のもの)の2つを突き合わせて確認しました。第6条の文言は両者で一致しています(数字の表記だけが、PDFは「2m」「30度」、法規集は「二メートル」「三十度」です)。法律・政令は同じ日にe-Gov法令検索で、県の解説(2016年版)・県の細則・特定行政庁一覧・土砂災害の指定状況・盛土規制法の区域・四日市市のガイドライン・名張市を除く7市の細則や規則・紀宝町の条例は、同じ日にそれぞれの公表元で読みました。確かめきれていないことが6つあります。ひとつ、名張市建築基準法施行細則の本文は、市のページの説明を読んだだけで、条文そのものは読んでいません。ふたつ、県の解説が2016年版のまま最新かどうか——解説の奥付は令和6年3月29日の条文改正までを載せていますが、県の条例・規則等のページ(2026年2月20日更新)にこの版しか無いことをもって現行と扱いました。三重県建築基準法取扱集(令和8年1月改訂版)の本文の文字を検索した範囲では、崖の項目は見当たりませんでした。みっつ、知事が指定した災害危険区域が2016年以後にも無いかは、県の解説の記述だけで、県の告示までは当たっていません。よっつ、紀宝町以外の市町に法第39条の条例があるかは当たっていません。いつつ、急傾斜地崩壊危険区域の県全体の指定箇所数は、県のページで確かめられませんでした(建設事務所ごとの一覧が公表されています)。むっつ、四日市市のガイドラインの側溝の図(図1-11)でいう「H」と「H′」がそれぞれ崖のどこまでを指すかは、図を読んだ限りでは決めきれませんでした——側溝や水路に面する崖の高さは、申請先で確かめてください。