群馬でがけの近くに家を建てる・買う人へ——最初に答えから。
群馬県の「がけ条例」とは、群馬県建築基準法施行条例 第5条のことです。がけに接し、または近接して建てるときは、原則として構造上安全である擁壁を設けることが求められます。
先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないように支える構造物。塀とは役割が違います)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士等に現況の測量図・断面図・配置案と、がけの判定に使う資料を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って相談する——確認申請が必要かどうかも、建築士等に判定してもらいます。必要なら、予定している確認申請先へ。市・県に出すなら市役所または土木事務所の建築の窓口へ、指定確認検査機関に出すならその機関へ。不要なら、計画地を所管する市役所または土木事務所へ。この記事では、この2つをまとめて「確認先」と呼びます。市・県の窓口は、市町村と規模によって分かれます。必要に応じて、所管の市役所・土木事務所とも事前協議します。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。
①群馬の「がけ条例」は、群馬県建築基準法施行条例の第5条(昭和58年3月18日条例第15号。がけ付近の建築物)です。②この条は第1項だけで、ただし書の号が4つあります。③かかるのは、敷地ががけ(地表面の水平面に対する角度が30度を超え、高さが2メートルを超えるもの)に接し、又は近接する場所に建築物を建築する場合です。④そのとき条文が命じているのは離れることではなく、「構造上安全である擁壁を設けなければならない」——擁壁の設置です。⑤「がけの高さの2倍以上の水平距離」は、義務ではなく除外事由のほうです(第1号・第2号)。⑥そして距離の起点は、がけの上と下で入れ替わります——がけの上に建てるなら下端(かたん)から、がけの下に建てるなら上端(じょうたん)から。下端・上端は条例上の測定起点で、斜面全体の一番下・一番上とは限りません。⑦構造上安全である擁壁を設ければ、第5条の擁壁の設置義務は満たせます。第1号から第4号のどれかに当たれば、県条例第5条による擁壁の設置義務は外れます(当たるかどうかは、自分で決められません——資料を作るのは建築士等、当てはめを確かめるのは窓口です)。⑧外れるのは、第5条の義務だけです。建築基準法第19条第4項(がけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合の措置)、災害危険区域(条例第4条。居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有する建築物は原則として建築できません)、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)(居室を有する建築物の構造の規制)は、別に確認してください——第5条を満たしても、これらの規制で建てられないことがあります。条文は2026年9月1日に、群馬県法規集(令和8年9月1日時点。最終改正 令和6年12月20日条例第77号)で確認しました。
「がけ条例」の実体は、群馬県建築基準法施行条例の第5条です
「がけ条例」という名前の条例はありません。群馬県では、群馬県建築基準法施行条例の第5条(がけ付近の建築物)がその中身です。根拠は建築基準法第40条——地方公共団体が、条例で建築物の敷地・構造・建築設備に関する制限を附加できる、という規定です。
県自身が、建築行政のQ&Aでそう答えています。
Q1 がけ条例はありますか?
群馬県 建築行政関係のよくあるQ&A(建築基準法関係(がけ地・災害区域等))
群馬県建築基準法施行条例第5条の規定によりがけ付近の建築物に対する規定があります。
この条例は、昭和35年群馬県条例第72号を昭和58年に全部改正したもので、最終改正は令和6年12月20日条例第77号です。県法規集は、改正のあった条の末尾に「一部改正〔…〕」の注記を付けています。第5条には、その注記が付いていません。
条文が命じているのは擁壁です——距離は、擁壁を設けずに済む道のほうです
条文を、そのまま置きます。
(がけ付近の建築物)
群馬県建築基準法施行条例 第5条
第五条 敷地ががけ(地表面の水平面に対する角度が三十度を超え、高さが二メートルを超えるものをいう。以下この条において同じ。)に接し、又は近接する場所に建築物を建築する場合は、構造上安全である擁壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 がけの上に建築物を建築する場合は、がけの下端から当該がけの高さの二倍以上の水平距離を設けたとき。
二 がけの下に建築物を建築する場合は、がけの上端から当該がけの高さの二倍以上の水平距離を設けたとき。
三 がけの形状、土質等によりがけ崩れのおそれがないとき。
四 建築物の構造により被害を受けるおそれがないとき。
読む順番は、本則が先です。本則=「構造上安全である擁壁を設けなければならない」。そのあとに「ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない」が来て、4つの号が並びます。「2倍以上離しなさい」という義務は、どこにも書かれていません。2倍以上の水平距離は、第1号・第2号——擁壁を設けずに済む道のほうです。
ですから、敷地が「がけ」に接し、又は近接していれば、まず第5条がかかります。距離が近いか遠いかは、そのあとに見るところです。「離れているから、この条例は関係ない」ではなく、「離れているから、第1号・第2号で擁壁が要らない」という順番になります。
ここで、「近接」がどこまでかは、条例が定めていません。建物とがけの距離が条文に出てくるのは第1号・第2号で、そこは「高さの2倍以上を設けたときは擁壁が要らない」という書き方です。ですから読む側としては、がけの高さの2倍の中に建物が入るなら、まず窓口に確かめる——という当て方になります。2倍を超えて離れていれば「近接ではない」と決まる、とまでは条文に書かれていません。どこまでを「近接」とみるかは、所管の窓口の判断です。
擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(この条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。
どこからが「がけ」か——角度30度を「超える」、高さ2メートルを「超える」
第5条の括弧書きが定義です。押さえるところは3つあります。
- ①角度は「三十度を超え」——30.0度ちょうどは当たりません(「以上」ではありません)
- ②高さは「二メートルを超える」——2.0メートルちょうども当たりません
- ③この定義に「自然のがけに限る」という限定はありません。人が造った切土・盛土の斜面も、角度と高さが当たれば「がけ」です
ここで外れるのは、県条例第5条です。30度以下・2メートル以下でも、安心して終わりではありません——建物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合は、建築基準法第19条第4項の安全措置が別に必要です。
条例には、がけの上端・下端の定義がありません。ここは特定行政庁(原則として、建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事。ただし、法第97条の2により建築主事等を置く市町村——いわゆる限定特定行政庁——の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事です。法第2条第35号ただし書)の運用に委ねられています。群馬県では6市が限定特定行政庁で、同じ市の中でも、規模で市役所と土木事務所に分かれます(後述)。高崎市は、市のがけ条例のページで、判定の考え方をこう公表しています。
がけの判定の高さは、がけの下端からの 30 度勾配線を超える部分について、がけの下端よりその最高部までの高さとする。
高崎市「がけ条例(群馬県建築基準法施行条例第5条)について」
地表面が水平面になす角度が 30 度を超える部分のうち、最も低い位置をがけの下端とする。がけの下に30度以下の勾配がある場合は、地表面が水平面に対しなす角度が30度を超える部分のうち、最も低い地点をがけの下端とする。
2段以上のがけがある場合は、がけの一体性を考慮し判断を行う。(県例規5-004参照)
ここで測る「高さ」は、下端(かたん)から最高部までです。どこまでを1つのがけと数えるかで、高さが変わります。2段になっているがけを1つと見るか2つと見るかで、2メートルを超えるかどうかが入れ替わります。ここは目測では決まりません——現況の測量図と断面図が要ります。
二段になったがけや擁壁は、一つとして扱うかで高さが変わります。ここを分けるのに、県の例規・事例集の5-004(擁壁の高さの取り方)が使われます。5-004は、上部擁壁と下部擁壁が共にブロック工である例として、上部の擁壁と下部の擁壁を別々の擁壁とみるか、二段の擁壁とみて一体で設計するかを、背面の土質ごとの角度φと、上下の擁壁の水平距離で分けています。これは、断面図がないと当てられません——断面図を作るのは設計者等、当てはめを確かめるのは確認先です。なお、ここでいうφは、県条例第5条の「30度」とは別です——二段擁壁の図示例で使う判定角度です。
| 背面土質 | 角度(φ) |
|---|---|
| 軟岩(風化の著しいものを除く) | 60度 |
| 風化の著しい岩 | 40度 |
| 砂利、真砂土、関東ローム、硬質粘土その他これらに類するもの | 35度 |
| 盛土又は腐蝕土 | 25度 |
この表は、擁壁の事例のものです(関係法令等として法第88条第1項・令第138条第1項第5号・宅地防災マニュアルの解説が挙げられています)。第5条の条文そのものではありません。高崎市は、二段以上のがけの一体性を判断する際に、この5-004を参照するよう案内しています。ただし、5-004がこのφ角度と水平距離を示しているのは、「上部擁壁と下部擁壁が共にブロック工の例」という見出しの下です。ほかの構造を含む二段擁壁や、二段のがけそのものは、この表だけでは判定できません。
距離の起点は、がけの上と下で入れ替わります
第1号と第2号は、似た文に見えて起点が逆です。ここを取り違えると、必要な距離が丸ごと変わります。
| 建てる場所 | 号 | 起点 | 必要な水平距離 |
|---|---|---|---|
| がけの上に建てる | 第1号 | がけの下端から | がけの高さの2倍以上 |
| がけの下に建てる | 第2号 | がけの上端から | がけの高さの2倍以上 |
高さ3メートルのがけなら、どちらも6メートル以上です。ただし、測りはじめる点が違います。がけの上に建てるときは下端から、がけの下に建てるときは上端から。同じ土地でも、建てる位置が上か下かで、線を引く場所が変わります。ここでいう下端・上端は条例上の測定起点で、斜面全体の一番下・一番上と一致するとは限りません。高崎市は、30度を超える部分のうち最も低い位置を下端としています——がけの下に30度以下のゆるい斜面が続いていても、その一番下は下端になりません。上端の定めは、条例にも高崎市のページにもありません。
そしてこの距離は、擁壁を設けずに済むための条件です。2倍に届かなければ違反になる、という書き方ではありません。そして2倍の距離が取れなくても、道は残っています——第3号(がけの形状、土質等によりがけ崩れのおそれがないとき)と第4号(建築物の構造により被害を受けるおそれがないとき)が別にあります。まず第3号・第4号に当たるかを、建築士と確認先で確かめてください。いずれにも当たらないときに、本則に戻って構造上安全である擁壁を計画します。
第5条による擁壁の設置義務が外れる場合は、第1号から第4号までの4つです
- 第1号——がけの上に建てる場合に、がけの下端から高さの2倍以上の水平距離を設けたとき
- 第2号——がけの下に建てる場合に、がけの上端から高さの2倍以上の水平距離を設けたとき
- 第3号——がけの形状、土質等によりがけ崩れのおそれがないとき
- 第4号——建築物の構造により被害を受けるおそれがないとき
第3号と第4号は、条文がそれ以上の中身を書いていません。何をもって「おそれがない」とするかは、条文からは読み取れません。だからこそ、当てはめは所管の窓口との相談になります。条文に「硬岩盤(こうがんばん。風化の程度を含め、該当するかどうかは地質資料・調査で確かめます)」という言葉はありません。岩かどうかは、第3号の「土質等」の中で扱われる話です。
第5条だけなら、擁壁を設けるか4つの例外のどれかで、制限を満たす道があります——土地として建てられるかは別です
第5条は、建築を禁止する条ではありません。本則が求めているのは擁壁を設けることで、それを満たせば、県条例第5条の制限は満たせます。第1号から第4号までのどれかに当たるなら、県条例第5条による擁壁の設置義務は外れます——がけの上なら下端から、がけの下なら上端から、高さの2倍以上を設ければ、擁壁の設置義務は外れます(第1号・第2号)。ただし、第5条を満たせることと、建てられることは違います。外れるのは県条例第5条による擁壁の設置義務だけで、建築基準法第19条第4項(がけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合の措置)や、区域による別の規制は残ります。
条件は、あとに続きます。擁壁は「構造上安全である」ものであること。そして、擁壁そのものにも手続があります。県の例規・事例集5-011は、建築物の敷地を造成する擁壁・位置指定道路を築造するための擁壁・準用工作物の敷地を造成する擁壁のうち高さ2メートルを超えるものは工作物確認を必要とするとしたうえで、法第88条第4項に定めるもののほか、他法令で安全が確認されているものについては工作物確認を不要とする、と整理しています(法第88条第1項、令第138条第1項第5号)。要るか要らないかは、窓口で確かめてください。
その工作物確認の対象になる擁壁——令第138条第1項第5号の「高さが二メートルを超える擁壁」——には、法第88条第1項において読み替えて準用する法第20条第1項の政令で定める技術的基準として、令第142条第1項がかかります。同項が求める構造方法は、①第1号から第5号までの基準に適合する構造方法と、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして②国土交通大臣が定めた構造方法——そのいずれかを用いることです。条文は「又は」で並べています——②を必ず使わなければならない規定ではありません。
①の第1号から第5号は、次の5つです。
- 第1号——鉄筋コンクリート造・石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること
- 第2号——石造の擁壁は、コンクリートで裏込めし、石と石とを十分に結合すること
- 第3号——裏面の排水を良くするため水抜穴を設け、その周辺に砂利その他これに類するものを詰めること
- 第4号——同条第2項が準用する規定(第7章の8(第136条の6を除く。)の規定を除く)に適合する構造方法を用いること
- 第5号——国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって安全性が確かめられること
すでに擁壁があるときの扱いを、高崎市はこう公表しています。これは高崎市の運用です。
既存擁壁等で建築基準法や宅地造成等規制法、都市計画法に基づく開発行為等による「検査済証」の交付を受けた既設の擁壁があり、設計者等が調査して経年変化や劣化等に対して安全上支障がないものは、構造上安全である擁壁に該当し、がけ条例の適用を受けるがけには該当しない。
高崎市「がけ条例(群馬県建築基準法施行条例第5条)について」
「擁壁がある」と「構造上安全である擁壁がある」は違います。検査済証の有無と、いまの傷み具合を、設計者が調べたうえでの判断になります。そして第5条を満たしても、建築の可否が全部決まるわけではありません——がけ崩れ等による被害を受けるおそれがあれば建築基準法第19条第4項の措置が別に要りますし、災害危険区域・土砂災害の区域・盛土規制法の規制区域は、それぞれ別に確かめる必要があります。
「硬岩盤なら外れる」は条例にはありません——高崎市が公表している運用です
「硬岩盤ならがけに当たらない」という言い方があります。これは条例の条文ではありません。高崎市が、第3号の当てはめとして公表しているものです。
「がけの形状、土質によりがけ崩れのおそれがない」とは、土質調査等により硬岩盤(風化の著しいものを除く。)であると確認された部分については、がけ条例の適用を受けるがけとはみなしません。
高崎市「がけ条例(群馬県建築基準法施行条例第5条)について」
大事なところが2つあります。①「風化の著しいものを除く。」——風化が進んだ岩は、この扱いから外れます。②「土質調査等により……確認された部分」——見た目で岩だから、では足りません。調べて確かめた部分に限られます。
そしてこれは高崎市の運用です。県全体の扱いではありません。高崎市のページも、がけに当たるかどうかの判定は「計画地周辺の状況調査の結果をもとに設計者等(建築士等)が」行うように書いています。硬岩盤かどうかを決めるのは、土地を買う人ではありません——土質調査をして図面にするのは建築士や地盤調査の会社、その結果を条例に当てはめて確かめるのは確認先です。
第4号(建築物の構造により被害を受けるおそれがないとき)についても、高崎市は扱いを公表しています。市は「がけが崩れたとしても、その建築物が被害を受ける恐れのない構造(仕様基準)を策定しました。また、設計者等の構造計算等により安全が確認される場合も同様に扱います」と書いています。第4号に当たるかを確かめる道は二つあります——仕様基準に合わせるか、構造計算等で安全を確かめるかです。
がけ下に建てる場合の仕様基準は、がけ崩れによる被害を受けるおそれのある範囲まで基礎を立ち上げるか、流土止めを設ける方法です。がけ上に建てる場合は、直接基礎・杭基礎・地盤改良(浅層混合処理工法・深層混合処理工法)により、がけの安定角度線より深いところまで基礎を立ち下げる方法が示されています。がけ上の資料は、この具体的な構造の対象を木造2階建程度の住宅とし、木造3階建・2階以上のRC造・S造等は対象外としています(軽量鉄骨2階建は、木造2階建と同程度の重量であれば同様の扱い)。がけ下の資料に、同じ限定は書かれていません。これは高崎市の扱いであり、県内共通の仕様ではありません。ほかの市や土木事務所の区域では、同じ資料があるとは限りません。
流土止めについては、高崎市の「がけ下に建築する場合」が令和7年5月1日に改正され、流土止めを重力式コンクリート造とする記載が削除されました。市は理由を「根拠や参考文献が定かでないため削除した。ただし、本改正は重力式コンクリート造の流土止めを否定するものではない。」と書いています。流土止めの構造は、決め打ちできません——設計者と、確認先に個別に確かめてください。
都市計画区域の外でも、第5条は働きます(第30条第1項)
(適用の除外)
群馬県建築基準法施行条例 第30条第1項
第三十条 都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内又は法第四十三条第二項の規定により同条第一項の規定の適用を受けない建築物、法第八十六条の適用を受ける場合若しくは法第八十六条の二の適用を受ける場合においては、第六条、第七条、第九条の二、第十条、第十九条、第二十一条から第二十三条まで及び第二十六条の規定は、適用しない。
ここで挙がっているのは、第6条・第7条・第9条の2・第10条・第19条・第21条から第23条まで・第26条です。第5条は、この列挙に入っていません。つまり都市計画区域の外でも、第5条はそのまま働きます。準都市計画区域の外でも同じです。「用途地域がないから、条例はかからない」とは読めません。
ここで、確認申請が要るかどうかは、別の話です。都市計画区域・準都市計画区域の外では、階数が1で、延べ面積が200平方メートル以下の建築物は、原則として建築確認が要りません(法第6条第1項第3号。別表第一(い)欄の特殊建築物でその用途部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの、景観法第74条第1項の準景観地区の中、知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域の中は、別です)。それでも、県条例第5条はかかります。確認申請が要らないことと、条文を守らなくてよいことは、別です。そして、確認が要らないとも限りません——居室を有する建築物がレッドゾーン内にある場合は、都市計画区域外の法第6条第1項第3号の建築物でも、土砂災害防止法第25条により建築確認が必要です(法第6条第1項第1号・第2号の建築物は、もともと区域に関係なく確認の対象なので、第25条が追加する対象からは除かれます)。レッドゾーンが敷地にどうかかるかでも、扱いが変わります——レッドゾーンが敷地の過半でない場合は、同条が適用する建築基準法第91条により、第25条による追加の確認は要りません。ここは自分で判定しないでください——区域図と、建物の用途・階数・延べ面積を持って、下に書いた確認先で確かめてください。ほかの規定で確認が必要になる場合も、別にあります。確認申請が不要なときの相談先は、計画地を所管する市役所または土木事務所です。
第30条第2項で外れるのは、市町村が条例で定めた事項に係るものです
2 法第四十条、第四十三条第三項又は第五十六条の二第一項の規定により条例を定めた市町村の区域内においては、この条例の規定のうち当該市町村が条例で定めた事項に係るものについては、この条例の規定は、適用しない。
群馬県建築基準法施行条例 第30条第2項
読み方に、注意が要る項です。外れるのは条例まるごとではなく、「当該市町村が条例で定めた事項に係るもの」に限られます。実例を挙げると、前橋市は法第56条の2第1項(日影)に基づいて前橋市中高層建築物日影規制条例(平成15年12月11日条例第47号)を定めています。この場合に外れるのは、県条例のうち日影に係る規定であって、第5条ではありません。
逆にいえば、市町村が法第40条に基づいてがけの制限を条例で定めていれば、その事項については県条例第5条が適用されません。ただし、9市の例規集を索引から見た範囲では、そうした市条例は見当たりませんでした(見たのは桐生・伊勢崎・館林・沼田・渋川・藤岡・富岡・安中・みどりの9市です。あとに出てくる「県と12市」=建築確認を扱う特定行政庁の数とは、別の数え方です)。町村の条例は読んでいません——お住まいの市町村の定めは、建築指導の窓口で確かめてください。
法第85条第6項・第7項等の許可を受ける場合は条例全体が外れます(第31条)/既存不適格建築物等は第32条の認定で緩和される場合があります
第31条第1項は、法第85条第6項または第7項により知事が仮設建築物・仮設興行場等の建築を許可する場合には、この条例の規定は適用しない、と定めています。第2項は、法第87条の3第6項・第7項により知事が興行場等・特別興行場等の使用を許可する場合について同じことを定めています。この2つは、条例まるごとが外れます——第5条も含みます。なお、法第85条には別の区分もあります——第1項の応急仮設建築物と、第2項の工事現場の事務所等です。この第1項・第2項は法自体が適用の除外を定めているので、第31条の出番ではありません。第31条が外すのは、第6項・第7項の許可を受ける場合です。
第32条は、既存の建物についての緩和です。
(既存建築物に対する制限の緩和)
群馬県建築基準法施行条例 第32条
第三十二条 法第三条第三項第三号又は第四号の規定により同条第二項の規定の適用を受けない建築物若しくはその敷地又は建築物若しくはその敷地の部分について、知事が安全上若しくは防火上支障がないと認める場合又は特別の事情によりやむを得ないと認める場合には、第二章から第六章までの規定の制限を緩和することができる。
前提を短く。既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)は、建築基準法第3条第2項により、あとからできた規定が適用されません。ところが同条第3項第3号は、規定の施行・適用のあとに増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替の工事に着手すると、その第2項が外れると定めています。増築等のときに、既存不適格としての適用除外が外れるのは、この仕組みによるものです。外れたままとは限りません——外れたあとの緩和が、次の第32条です。
第32条は、その場面に用意された緩和です。緩和できる範囲は第2章から第6章まで——第3章のがけ付近の建築物(第5条)は、この範囲に入っています。条文は「知事が」と書いていますが、これを「県条例第32条に規定する認定」として、前橋市・高崎市の規則は市長への申請と定めています(前橋市建築基準法等施行規則第3条第1項第2号、高崎市建築基準法施行細則第2条第1項第2号)。緩和されると決まっているわけではありません——認めるかどうかの判断が要ります。
なお、移転には、別の道があります。法第86条の7第4項は、法第3条第2項により建築基準法令の規定の適用を受けない建築物を、令第137条の16の範囲内で移転する場合は、法第3条第3項にかかわらず建築基準法令の規定は適用しないと定めています。その範囲は、①同一敷地内の移転か、②交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上および市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁が認める移転です。ここでいう「建築基準法令の規定」は法とこれに基づく命令および条例の規定(法第6条第1項)ですから、県条例第5条も入ります。ただし、増築等(第1項から第3項)が並べているのは、法の条だけです——条例に効くのは、第4項の移転のほうです。既存の建物の扱いは、建築士と確認先に確かめてください。
災害危険区域は、急傾斜地崩壊危険区域がそのまま指定されています(第3条・第4条)
(災害危険区域の指定)
群馬県建築基準法施行条例 第3条・第4条
第三条 法第三十九条第一項の規定による災害危険区域として、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第三条第一項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域を指定する。
(災害危険区域内の建築物)
第四条 災害危険区域内においては、居室を有する建築物を建築してはならない。ただし、建築物の構造若しくは敷地の状況又は崩壊防止工事の施工により急傾斜地の崩壊による被害を受けるおそれがないと認められるときは、この限りでない。
急傾斜地崩壊危険区域が、そのまま災害危険区域になります。その中では、居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有する建築物は建築してはならない——第5条より重い規定です。ただし書は①建築物の構造 ②敷地の状況 ③崩壊防止工事の施工のいずれかにより、被害を受けるおそれがないと認められるときです。
このうち②の判断について、県の例規・事例集の6-026は「災害危険区域担当課(群馬県県土整備部砂防課及び各土木事務所)と協議のうえ判断する。」と定めています。建築の窓口だけでは決まりません。
区域そのものについても、別の手続が要ります。急傾斜地崩壊危険区域の中で切土・盛土・工作物の設置などをするには、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の第7条第1項により知事の許可が要ります。窓口は行為地を管轄する土木事務所(施設管理係)で、県の案内では手数料は無料、標準処理期間は30日です(「標準」の期間なので、計画の内容によって前後します。最新は窓口で確かめてください)。県が特定行政庁となる区域では、確認申請の添付書類として、この許可書の写しが原則とされています(県の例規・事例集6-007。「特定行政庁群馬県のみの扱い」と注記されています)。なお、同項ただし書により、非常災害のための応急措置として行う行為、区域の指定の際すでに着手している行為、政令で定めるその他の行為は、許可の対象から外れます。ただし、許可が要らないことと、届出が要らないことは違います——区域が指定されたとき、すでにその行為に着手していた人は、指定の日から起算して14日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければなりません(同条第3項。非常災害のために必要な応急措置として行う行為と、第1項ただし書の政令で定めるその他の行為を除きます)。国または地方公共団体は、同条第4項により許可ではなく協議によります。
「指定の日」がいつで、14日をどう数えるか——ここでいう「指定の日」は、区域の指定が公示によって効力を生じた日です。知事は指定をするとき国土交通省令で定めるところにより区域を公示し(同法第3条第3項)、指定は、その公示によって効力を生じます(同条第4項)。数え方の目印は、条文の「その指定の日から起算して」という書き方です。民法第140条は期間の初日は算入しないと定めていますが、法令が「から起算して」と書くのは、その原則を明文で外し、その日を1日目として数える書き方です。ただし、この届出について、国や県が数え方を示した資料は見つかりませんでした。日にちが際どいときは、区域を所管する県の窓口(急傾斜地法の許可の窓口)に、指定の公示日と提出期限を確かめてください。なお、この届出をしなかったり、うその届出をしたりすると、同法第29条第2号により1万円以下の罰金です。
土砂災害特別警戒区域の構造規制は、この条例とは別に働きます
第5条の条文に、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を適用から外す括弧書きはありません。区域の中でも、がけの条件に当たれば第5条はそのまま働きます。
そのうえで、レッドゾーンでは建築基準法施行令第80条の3が別に働きます。この規定は、特別警戒区域内における居室を有する建築物の外壁及び構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で衝撃が作用すると想定される部分の構造を、国土交通大臣が定めた構造方法によることを求めるものです。条例と法の、両方を見る必要があります。なお、同条ただし書により、土石等の高さ等以上の高さの門または塀(外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものに限ります)が、その衝撃を遮るように設けられている場合は、この限りではありません。なお、レッドゾーンでは特定開発行為の許可も別に要ります(土砂災害防止法第10条第1項)。ただし許可が要るのは、自己の居住用でない住宅(分譲・賃貸)や、高齢者・障害者・乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるものに限ります)を建てるための開発行為です(同条第2項の「制限用途」)。ここで要らないといっているのは、この特定開発行為の許可だけです——自分が住む住宅を建てるだけなら、この許可は要りません。また、同条第1項ただし書と同法施行令第5条により、非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為にも、この許可は要りません——ただし、上の令第80条の3による構造の規制は残ります。建築確認や、ほかの規制は、別に確かめます。令第80条の3への2つの対応(建物側で受ける/門・塀で遮る)の中身と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。擁壁の形や寸法の一般的な考え方は擁壁の選び方にまとめています(群馬県条例第5条の当てはめは、この記事に書いた確認先で確かめてください)。
群馬県内の土砂災害警戒区域等の指定は、平成26年10月に完了しています。区域は「マッピングぐんま」で地図から確認できます。指定は適宜見直されているので、最新の情報は、所管の土木事務所で確かめてください。
盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)も別の規制です。県は令和7年5月26日に宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域を指定しました。中核市である前橋市・高崎市は、各市が区域を指定します。
レッドゾーンでどんな構造が求められるかは、土砂災害特別警戒区域で求められる構造にまとめています(区域に入るかどうかの判定と、この条例の当てはめは、上の窓口で確かめてください)。
罰則は第33条——50万円以下の罰金。まず設計者、故意なら建築主も
第三十三条 第四条から第八条まで、第九条の二から第十三条まで又は第十五条から第二十八条までの規定に違反した場合における当該建築物又は工作物の設計者(設計図書に従わないで工事を施工し、又は設計図書を用いないで工事を施工した場合においては、その建築物又は工作物の工事施工者)は、五十万円以下の罰金に処する。
群馬県建築基準法施行条例 第33条
2 前項に規定する違反があつた場合において、その違反が建築主又は工作物の築造主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主又は工作物の築造主に対しても前項の罰金刑を科する。
列挙されている「第四条から第八条まで」に、第4条と第5条が入っています(災害危険区域内の建築物と、がけ付近の建築物)。罰金を科される人(名宛人〈なあてにん〉=罰則を受ける人)は、まず設計者。設計図書に従わないで、または設計図書を用いないで工事を施工した場合は工事施工者(工事を実際に行う施工会社など)です。第2項により、建築主または工作物の築造主の故意によるときは、建築主等にも罰金刑が科されます。第34条は、法人・人の業務に関して違反行為があった場合の両罰規定です。
是正命令は、建築主・所有者なども対象になり得ます(法第9条第1項)
罰金の名宛人と、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、建築基準法令の規定に違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(請負工事の下請人を含みます)もしくは現場管理者、または当該建築物・敷地の所有者、管理者、占有者に対して、工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他の是正に必要な措置を命ずることができる、と定めています。
ここに「故意」の要件はありません。そして、名宛人にはいま住んでいる人(占有者)や、あとから買った所有者も入り得ます。設計者だけの話ではありません。命令に違反した場合は、法第98条第1項第一号により3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
条例が外れても、がけ崩れ等による被害を受けるおそれがあれば建築基準法第19条第4項の措置が要ります
4 建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。
建築基準法 第19条第4項
これは、がけ崩れ等への安全措置を定めた国の法律の規定です——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合に、擁壁の設置その他安全上適当な措置を求めるものです。(ただし、この規定にも、適用されない場合と、条例で緩和される場合があります——くわしくは、すぐ下の「この規定が働かない場合」をご覧ください。)第5条の4つの号のどれかに当たって条例の擁壁の義務が外れても、がけ崩れ等による被害を受けるおそれがあるなら、擁壁の設置その他安全上適当な措置が要ります。求められているのは擁壁だけではなく「その他安全上適当な措置」を含みます。「2メートルを超えないから何もしなくてよい」とは読めません。おそれの有無も、どの措置で足りるかも、あなたが決めるものではありません——がけと地盤を調べて図にするのは建築士等、条例と法の当てはめを判断するのは所管の建築行政の窓口と申請先です。
この規定が働かない場合——法第19条第4項にも、次の例外があります。法第3条第1項の文化財等の建築物。法第3条第2項の、その規定の施行・適用の際にすでに存在していた建築物や敷地(いわゆる既存不適格。ただし同条第3項各号に当たるものは除かれ、第一号は、改正後の規定の適用の際に、これに相当する従前の規定に違反していたものです)。法第85条第1項の、非常災害区域等で災害の発生した日から1か月以内に工事に着手する応急の修繕・応急仮設建築物(防火地域内は除きます。応急仮設建築物は、国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建てるものと、被災者が自ら使う延べ面積30平方メートル以内のものです)。法第85条第2項の、災害時の公益上必要な応急仮設建築物と、工事現場の事務所・下小屋・材料置場などの仮設建築物。第85条は、第1項と第2項で対象も要件も違います——「応急仮設建築物なら外れる」とは読めません。
もうひとつ、条例で外したり緩めたりできる仕組みがあります。法第41条は、法第6条第1項第三号の区域の外(都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区・知事が指定する区域の、いずれにも入らない土地)で、市町村が国土交通大臣の承認を得て条例を定め、区域を限って法第19条を適用しない、または制限を緩和することを認めています(法第6条第1項第一号の建築物と、同項第二号の建築物のうち木造以外のものには使えません)。自分の土地がどれに当たるかは、窓口で確かめてください。
窓口は、県と12市です
群馬県で建築確認を扱う特定行政庁は、県と12市です。県のQ&Aは、がけ条例の問い合わせ先をこう案内しています。
がけ条例に関するお問い合わせは、建築場所が6市内(前橋市、高崎市、桐生市、伊勢崎市、太田市、館林市)の場合は各市建築指導担当窓口、6市内(沼田市、渋川市、藤岡市、富岡市、安中市、みどり市)で小規模な建築物の場合は各市建築指導担当窓口、その他の場合は各土木事務所建築係にお問い合わせください。
群馬県 建築行政関係のよくあるQ&A
後ろの6市(沼田市・渋川市・藤岡市・富岡市・安中市・みどり市)は限定特定行政庁で、県は「小規模な建築物等に関しては各市役所、大規模な建築物等に関しては各土木事務所建築係」と案内しています。市の中でも、規模によって窓口が変わります。
| 窓口 | 電話 |
|---|---|
| 群馬県 県土整備部 建築課 審査指導係 | 027-226-3702 |
| 前橋市 都市計画部 建築指導課(代表) | 027-898-6752 |
| 高崎市 建設部 建築指導課 | 027-321-1271 |
| 太田市 都市政策部 建築指導課 審査係 | 0276-47-1862 |
ほかの市と土木事務所の連絡先は、県の建築行政関係手続窓口・相談窓口から確かめられます。建築確認そのものは、指定確認検査機関(民間の確認検査機関)にも申請できます——県も「建築確認検査は、民間の指定確認検査機関に提出することもできます」と案内しています。条例の当てはめの相談先は、確認申請をどこに出すかで変わります。県のQ&Aは、指定確認検査機関に確認申請を予定していて土木事務所(特定行政庁)での事前協議が必要かという問いに、「確認申請のご相談は指定確認検査機関に行ってください。特定行政庁への事前協議は必須ではありませんので、必要に応じて事前協議を行ってください。」と答えています。市や土木事務所に確認申請を出すなら、上の窓口です。いずれの場合も、現況調査と判定資料を作るのは設計者等(建築士等)です。
窓口が分かれていても、当てはめる条文は同じ群馬県建築基準法施行条例第5条です。県の例規・事例集は、その前書きで「本県特定行政庁(県及び12市)並びに建築主事及び指定確認検査機関が許認可、確認審査又は検査を行う際に、適切かつ統一的な解釈又は運用を図り、行政手続法第5条に規定する審査基準として公に示すことを目的としています」と書いています。
市の規則も、県条例第5条を名指しで引いています。前橋市建築基準法等施行規則の第4条第2号は、確認申請書に添付する図書として「崖の上端又は下端から当該建築物までの水平距離並びに崖の形状及び土質を示す図書」を挙げ、その対象を「県条例第4条に規定する災害危険区域又は県条例第5条に規定する崖に接し、若しくは近接する場所に建築物を建築する場合に限る。」としています。高崎市建築基準法施行細則の第3条第1項第2号も、同じ内容を「がけ」の表記で定めています。これが「何を出すか」の答えです——水平距離と、がけの形状と、土質の3つを示す図書です。
同じ型の規定は、本文を確かめた12市の施行細則(規則)に、そろって置かれています。条番号は市によって違います(桐生市・伊勢崎市・沼田市・みどり市・太田市は第3条、渋川市・藤岡市・富岡市・安中市は第4条、館林市は第6条)。
そして、9市の例規集を五十音の索引から見た範囲では、市が独自に定めた「がけ条例」は見当たりませんでした。県内の全市町村に無いことを確かめたものではありません。見たのは、桐生・伊勢崎・館林・沼田・渋川・藤岡・富岡・安中・みどりの9市です。「がけ」を名前に含む市の例規は、がけ地近接等危険住宅移転事業の補助金の要綱・規則で、これは建築の制限ではなく補助の制度です。
県の例規・事例集は、令和8年4月1日から適用の版が全9分冊で公表されています。その目次に、第5条を扱った事例は1件もありません。逐条解説にあたる県の公表文書も、この記事で探した範囲では見つかりませんでした。だから、県の公表資料だけで一律には決まりません——設計者等が現況を調査して判定資料を作り、その当てはめを確認先で確かめます(高崎市も、がけの判定は「計画地周辺の状況調査の結果をもとに設計者等(建築士等)が」行うと書いています)。
売買契約の前に、専門家と確かめること
この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめを確かめるのは確認先(確認申請が必要なら予定している申請先、不要なら計画地を所管する市役所または土木事務所)です。個別の判断は、建築士と窓口にご確認ください。
- ①敷地の中や隣に、角度30度を超え、高さ2メートルを超える斜面があるか。目測ではなく、現況の測量図と断面図で
- ②敷地がそのがけに接しているか、近接しているか。接し・近接していれば、まず第5条がかかります
- ③建てる位置は、がけの上か、下か。上なら下端から、下なら上端から——起点が入れ替わります
- ④その起点から、がけの高さの2倍以上の水平距離が取れるか(第1号・第2号)。取れないなら、第3号(がけ崩れのおそれがない)・第4号(構造により被害を受けるおそれがない)に当たるかを確認し、いずれにも当たらなければ構造上安全である擁壁の計画へ
- ⑤すでに擁壁があるなら、検査済証の交付を受けたものか、いまの傷み具合はどうか。設計者の調査が要ります
- ⑥高さ2メートルを超える擁壁(令第138条第1項第5号)を新たに造るなら、工作物の確認申請が要るかどうかを窓口で確かめる。県の例規5-011は、他法令で安全が確認されているものは不要としています(法第88条第1項・第4項)
- ⑦その土地が急傾斜地崩壊危険区域(=条例の災害危険区域)や土砂災害警戒区域(イエロー)・特別警戒区域(レッドゾーン)に入っていないか。マッピングぐんまと、所管の土木事務所で。建築物の構造の規制がかかるのは特別警戒区域のほうで、警戒区域の指定だけでは、建築物の構造の規制はかかりません。区域の指定は同法第7条・第9条、特別警戒区域内の居室を有する建築物の構造の規制は、同法第24条を受けて定められた建築基準法施行令第80条の3、都市計画区域外での追加の建築確認は同法第25条です
- ⑧条例が外れても、がけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合は、建築基準法第19条第4項の安全措置が別に要ります
確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは確認先(確認申請が必要なら予定している申請先、不要なら計画地を所管する市役所または土木事務所)に、お尋ねください。
出典
- 群馬県建築基準法施行条例(群馬県法規集・昭和58年3月18日条例第15号、最終改正 令和6年12月20日条例第77号。第3条・第4条・第5条・第30条・第31条・第32条・第33条・第34条)
- 各種法令、条例等へのリンク集(群馬県建築課・条例と細則の入口)
- 建築行政関係のよくあるQ&A(群馬県建築課・「がけ条例はありますか?」「災害危険区域の指定はありますか?」)
- 群馬県建築基準法例規・事例集(令和8年4月1日から適用。5-004・5-011・6-001・6-007・6-026)
- がけ条例(群馬県建築基準法施行条例第5条)について(高崎市建築指導課・がけの判定、硬岩盤、既存擁壁、がけ上/がけ下の仕様基準)
- がけ上に建築物を建築する場合の取扱い(高崎市建築指導課・平成27年10月1日施行。第5条第1項第4号の仕様基準)
- がけ下に建築物を建築する場合の取扱い(高崎市建築指導課・平成27年10月1日施行、令和7年5月1日改正)
- 前橋市建築基準法等施行規則(第3条第1項第2号の認定申請、第4条第2号の添付図書)
- 高崎市建築基準法施行細則(第2条第1項第2号の認定申請、第3条第1項第2号の添付図書)
- 前橋市中高層建築物日影規制条例(平成15年12月11日条例第47号・法第56条の2第1項に基づく条例の実例)
- ほか10市の建築基準法施行細則(いずれも県条例第5条のがけの図書を定めた号)——太田市第3条第2号(太田市例規集。内容現在 令和8年6月30日)/桐生市第3条第2号/伊勢崎市第3条第2号/館林市第6条第2号/沼田市第3条第2号/渋川市第4条第2号/藤岡市第4条第2号/富岡市第4条第2号/安中市第4条第2号/みどり市第3条第2号
- 建築基準法の主な制限(太田市建築指導課・「がけ付近の建築物(群馬県建築基準法施行条例5条)」)
- 建築行政関係手続窓口・相談窓口(群馬県建築課・12市の特定行政庁と土木事務所の所管)
- 建築指導課(前橋市都市計画部。このページに代表の電話番号 027-898-6752 が載っています。記事の表に書いた前橋市の番号の出どころ)
- 土砂災害警戒区域等の指定について(群馬県砂防課・指定は平成26年10月に完了)
- マッピングぐんま(土砂災害警戒区域等を地図で確認)
- 急傾斜地法 急傾斜地崩壊危険区域内の行為の許可(群馬県砂防課・土木事務所施設管理係)
- 宅地造成等工事規制区域及び特定盛土等規制区域の指定について(群馬県建築課・令和7年5月26日指定)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条第35号・第3条・第6条第1項・第9条第1項・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7第4項・第88条・第98条)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第80条の3・第137条の16・第138条・第142条・第148条第1項)
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(e-Gov法令検索・第3条・第7条・第29条)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第7条・第9条・第10条・第24条・第25条)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(e-Gov法令検索)
条文は2026年9月1日に、群馬県法規集(令和8年9月1日時点。最終改正 令和6年12月20日条例第77号)と、e-Gov法令検索で確認しました。法第2条第35号・第6条第1項・第86条の7第4項、令第137条の16・第142条・第148条第1項、土砂災害防止法第7条・第9条・第10条・第24条・第25条は、2026年9月3日にe-Gov法令検索で本文を確認しました。市の細則は12市の本文を確認しました(太田市の細則は、2026年9月6日に同市が案内する例規集で本文を読みました。内容現在 令和8年6月30日)。読んでいない範囲を書いておきます。①高崎市以外の11市が公表しているがけ条例の運用資料(判定基準・仕様基準など)は読んでいません。②市に独自のがけ条例がないことは、9市の例規集の五十音索引を見た範囲の話です。町村の条例は読んでいません。③県の例規・事例集は、目次(全9分冊)と第5分冊・第6分冊を読み、ほかの分冊は目次までです。④土砂災害警戒区域等の指定図書と、急傾斜地崩壊危険区域の区域図は読んでいません。⑤高崎市の「がけ上に建築する場合」「がけ下に建築する場合」のPDFは、2026年9月2日に本文を読みました。図そのものは目で見ていません(読んだのは本文のテキストです)。⑥県のQ&Aで確かめたのは、指定確認検査機関に出す場合の事前協議についての答え(土木事務所を念頭に置いた問い)までです。12市それぞれの事前協議の扱いは、確かめていません。
