第3回は「囲い」です。改正法の話が出てから、囲いを作り直さなければいけないのか、という相談が増えていると聞きます。
先に結論を書きます。有害使用済機器の現行制度では、囲いはすでに義務です。その他のスクラップヤードでも、所在地の条例によって囲いが義務となっている場合があります。新制度で全国的にどのような囲いが求められるかは、まだ決まっていません。問題は「囲いが要るかどうか」ではなく、「どんな囲いが要るのか」だということになります。
この記事は2026年8月18日時点で公表されている条文と資料をもとに書いています。

「囲い」の話は、3つの層に分かれています
いま出回っている数字は、出どころが3つあります。この3つを混ぜると、話が合わなくなります。
| 層 | 中身 | いまの効き方 |
|---|---|---|
| ① 国の現行基準 有害使用済機器 |
囲いを設けること。荷重が直接かかる構造なら構造耐力上安全であること。強風時等に飛散のおそれがあればフェンスを設けるなど | いま効いています ただし32品目にのみ |
| ② 検討会の案 2026年7月27日 資料3 |
囲いの設置を規定してはどうか。荷重が直接かかるおそれがある構造の場合は構造耐力上安全であることを求めてはどうか。例示は「構造耐力上安全な強度、網フェンス設置等」 | 案です 決定ではありません |
| ③ 自治体の条例 千葉市・千葉県・埼玉県・茨城県ほか |
4つとも囲いは必要。ただし求めるものが揃っていません(後述) | その区域でいま効いています |

順番に見ていきます。
① いま効いている国の基準

有害使用済機器の保管について、環境省の報告書はこう書いています。
「有害使用済機器の保管に当たっては、みだりに人が入り込まないよう、また、機器やその一部が周辺環境へ飛散・流出しないよう管理するため、囲いを設け、保管の位置を明らかにする必要がある」
荷重がかかる場合については、続けてこうあります。
「囲いに荷重がかかるように有害使用済機器が保管されている場合、囲いが倒れ又は壊れること等により、有害使用済機器が周辺に崩落しないように、当該荷重に対して構造耐力上の安全が必要である」
そして、ここが大事なところです。
「屋外で容器を用いずに保管する場合で、強風時等に有害使用済機器やその一部が飛散・流出するおそれのある場合は、フェンスを設けるなど保管の状況に応じた対策が必要である」
「フェンスを設けるなど」——現行の基準の説明に、すでにフェンスが出てきます。囲いの材質は指定されていません。
ただし、この基準が及ぶのは有害使用済機器として政令で定められた32品目(家電4品目と小型家電28品目)だけです。金属スクラップ一般や雑品スクラップ一般には及びません。だから今回、包括的に網をかける改正が行われた、という関係になります。

② 検討会で示された案

環境省が2026年7月27日に開いた検討会の資料3に、囲いの案が載っています。原文を引きます。
「1. 保管等の事業場所の範囲を明確化するとともに、みだりに立ち入ることを制限するため、囲いの設置を規定してはどうか。」
「2. 保管する物品の荷重が直接囲いにかかるおそれがある構造である場合には、さらに飛散・流出防止の観点から、構造耐力上安全であることを求めてはどうか。」
同じ資料の別のページには、基準のイメージとしてこう書かれています。
「みだりに人が入り込まないよう、また、保管物が周辺環境へ飛散・流出・崩落しないよう囲いを設置する措置(構造耐力上安全な強度、網フェンス設置等)」
ここから3つ、読み取れます。
- 文の終わりがすべて「〜としてはどうか」です。決定ではなく、問いかけの段階です
- 構造耐力が出てくるのは「荷重が直接囲いにかかるおそれがある構造である場合」という条件付きです
- 例示に網フェンスが入っています。材質は限定されていません
検討会の第1回では、環境省の担当参事官が「発言がなかった点についても、これで確定ということではない」と述べています。いま出ている数字は、どれも確定ではありません。
高さの決まり方は、囲いの作り方で変わります

ここは誤解が多いところなので、丁寧に書きます。
現行の施行規則(第13条の6)は、容器を用いずに屋外で保管する場合の高さを、囲いに荷重がかかっているかどうかで3つに分けています。
- 囲いに荷重がかかる部分がない場合——囲いの下端から水平面に対し上方に50%の勾配を有する面まで、または5mのうち低いほう
- 囲いに荷重がかかる部分がある場合——その部分の上端から下に50cmの線(基準線)を基準にした高さ、または5mのうち低いほう
- 三方の囲いに荷重がかかる部分がある場合——敷地の境界線までの水平距離のうち最小のものの2分の1、基準線の高さ、5m のうち最も低いもの
読み方に注意がいります。これは「囲いを強くすれば高く積んでよい」という規定ではありません。囲いに荷重をかける積み方をするなら、その荷重に耐えられる囲いでなければならない、という順番です。強度は目的ではなく、その積み方を選んだことの結果です。
検討会の案も、この3分岐をほぼそのまま引き継いでいます。現時点の案は現行基準を下敷きにしている部分が多いのですが、対象範囲と最終的な基準は、まだ確定していません。対象は、現行の32品目から、法律上の「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」へ広がることになります(第1回で扱いました)。すべての金属・プラスチックが無条件に対象になるわけではありません。
「囲い」と「仕切り」は、条文上の役割が違います

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
現行の施行規則には、第13条の8「有害使用済機器の保管に係る火災の発生又は延焼防止のための措置」という条文があります。中身はこうです。
- 一 有害使用済機器がその他の物と混合するおそれのないように他の物と区分して保管すること
- 二 電池、潤滑油その他の火災の発生又は延焼のおそれがあるものが含まれる場合は、技術的に可能な範囲でこれらを適正に回収し、処理すること
- 三 一の保管の単位の面積を200㎡以下とすること
- 四 隣接する保管の単位の間隔は2m以上とすること(当該保管の単位の間に仕切りが設けられている場合を除く)

見出しのとおり、この条文の目的は火災の発生と延焼の防止です。電池と潤滑油が名指しされています。
そして第4号——2m空けるか、仕切りを設けるか、という選択になっています。仕切りがあれば間隔は要りません。
| 囲い | 仕切り | |
|---|---|---|
| どこにあるか | 事業場や保管の場所の周囲 | 保管の単位と単位のあいだ |
| 何のためか | みだりに人が入り込まないように。飛散・流出・崩落を防ぐため | 火災の発生又は延焼を防ぐため |
| 条文 | 施行令第16条の3、施行規則第13条の6 | 施行規則第13条の8第4号 |
| 効き方 | 設けること(義務) | 仕切りがあれば、2mの間隔が不要になる |
囲いは事業場や保管の場所の周囲にあるもので、目的は立入りの制限と飛散・流出の防止です。仕切りは保管の単位と単位のあいだにあるもので、目的は延焼の防止です。条文の上では、置かれる場所も、求められる働きも違います。もっとも、一つの構造物が置かれ方や性能によって両方の役割を果たすことはあり得ます。
この区別は、まだ十分に整理されていません。第1回の検討会では、委員から「囲いと壁の区別が十分でないと感じる」「壁は寄りかかってもよい構造物、囲いは敷地境界を示すものといった区別をした方がよい」という意見が出ています。国の側でも、これからの論点です。

なお、現行の条文は仕切りの材質を定めていません。ただし、置かれている条文の見出しが「火災の発生又は延焼防止のための措置」であることは、読んでおいてよい事実だと思います。
③ 自治体の条例は、求めるものが割れています
先に条例を作った自治体があります。4つ調べたところ、4つとも囲いは必要でした。ただし、囲いに何を求めるかが揃っていません。
| 自治体 | 許可の対象 | 囲いに求めるもの | 高さの上限 |
|---|---|---|---|
| 千葉市 令和3年条例第36号 |
敷地面積100㎡超(隣接する事業場は合計) | 雑品スクラップを扱う場合は不燃材料(建築基準法第2条第9号)。さらに保管の単位ごとに三方を不燃材料の囲いで囲う | 最大5m |
| 千葉県 令和5年条例第30号 |
面積の下限なし。油圧ショベル・フォークリフト・クレーンを使う事業 | 材質の指定なし。荷重が直接かかるなら構造耐力上安全 | 金属・プラは計算値 雑品は最大5m |
| 埼玉県 令和6年条例第34号 |
敷地面積100㎡超(隣接する事業場は合計) | 材質の指定なし。荷重が直接かかるなら構造耐力上安全 | 金属・プラは計算値 雑品は最大5m |
| 茨城県 令和5年条例第41号 |
敷地面積100㎡超 | 外部から保管の状況が確認できる構造。県の構造基準で高さ1.8m以上、道路側の総延長の20%程度を見通せる素材(網状・格子状フェンス、透明アクリル板等) | 最大5m |


いちばん分かりやすいのが、千葉市と茨城県の違いです。
千葉市の施行規則(第13条)は、雑品スクラップを扱う場合に「不燃材料で造られた囲い」を求めています。さらに「雑品スクラップの屋外保管の場所は、保管の単位ごとに三方を不燃材料で造られた囲いで囲うこと」とあります。「不燃材料」は建築基準法第2条第9号の定義です。燃えないことが求められています。
一方、茨城県の条例は「外部から再生資源物の保管の状況が確認できる構造の囲い」と定め、県の構造基準では道路側の総延長の20%程度について見通すことができる素材(網状・格子状のフェンス、透明なアクリル板など)を配置するよう求めています。中が見えることが求められています。
燃えないことと、透けること。この2つは、同じ囲いに同時に求めると設計が難しくなります。国の基準が、不燃性や外部からの視認性をどこまで求めるのかは、本稿執筆時点では分かりません。両方を求めることも、場所や用途によって分けることも考えられます。
千葉市の規則には、間隔についても国より細かい規定があります。雑品スクラップ以外は2m以上(火災の延焼を防ぐに足りる仕切りがあれば不要)、雑品スクラップは3m以上です。

実際に起きているのは、火災だけではありません

環境省の実態調査(令和6年9月30日時点)によると、再生資源物の保管等事業場は3,260件把握されています。ただし報告書には「129自治体のうち、47の自治体が事業場数を把握していないとして報告をしていないことから、実際は更に多くの事業場が存在している可能性がある」という注記がついています。
そのうち165の事業場で、211件の生活環境保全上の支障が確認されています。内訳はこうです。
- 騒音・振動 87件
- 飛散・流出 44件
- 火災 27件
- 水質汚濁 19件/悪臭 16件/土壌・地下水汚染 3件/崩落 3件/その他 12件
囲いや高さの規制は火災と崩落の話として語られがちですが、件数でいちばん多いのは騒音・振動、次いで飛散・流出です。囲いは、この飛散・流出にも効く設備だということになります。
いま、確かめておくこと

- 自分の事業場に、いま条例がかかっているか——4つの自治体を見ただけでも、対象の決め方が違います。千葉県は面積の下限がなく、使っている機械(油圧ショベル、フォークリフト、クレーン)で決まります
- 囲いに荷重をかけて積んでいるか——ここが高さの計算の分かれ目です。かけているなら、その荷重に耐えられる囲いかどうかを見ておく必要があります
- 有害使用済機器を扱っている場合は、保管の単位が200㎡を超えていないか、2m空いているか——現行の国の基準です。仕切りがあれば間隔は不要です
- 有害使用済機器を扱っている場合は、電池や潤滑油が混ざる置き方になっていないか——条文が名指ししているのはここです
- 囲いの高さと、外から見えるかどうか——自治体によって求めるものが逆になります。所在地の条例を確認してください
いま慌てて囲いを作り直す段階ではありません。ただし、自分がどの分岐に入るかは、いまの時点でも確かめられます。
次に何が出てくるか

環境省は令和8年9月2日(水)15時から17時に、スクラップヤード環境対策技術検討会の第2回を開きます。議題は「再生原料」及び「完成品の製造工程」の考え方、関連する環境・安全関係法令と規制の適用範囲、自治体へのヒアリングの3つです。
この検討会はYouTubeでライブ配信されます。申込みは要りません。基準がどう固まっていくのかを、直接見ることができます。

この記事は公表されている条文と資料を読んだ整理であって、個別の判断ではありません。自分の事業場に何が求められるかは、所在地の都道府県または市の担当窓口に確認してください。
出典
- 環境省 ヤード環境対策検討会 報告書(令和7年3月・PDF)
- 環境省 令和8年度スクラップヤード環境対策技術検討会(第1回)資料3(PDF)
- 環境省 令和8年度スクラップヤード環境対策技術検討会(第2回)の開催について
- e-Gov法令検索 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第13条の5〜第13条の8)
- 環境省 令和8年度スクラップヤード環境対策技術検討会(第1回)議事概要(PDF)
- 千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例(PDF)
- 千葉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例(PDF)
- 埼玉県特定再生資源屋外保管業の規制に関する条例
- 千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例施行規則(PDF)
- 千葉県条例施行規則(PDF)
- 茨城県再生資源物の屋外保管の適正化に関する条例
- 茨城県 屋外保管事業場の構造に関する基準(PDF)
次回(4)は「積み上げ高さは何mまでか」を扱います。50%の勾配、5m、単一素材なら上限を設けないという案を、順番に読みます。

