スクラップヤードに許可制が入る(4) 積み上げ高さは何mまでか

スクラップヤードに許可制が入る(4) 積み上げ高さは何mまでか

第4回は「積み上げ高さ」です。「5mまで」という数字をよく聞きます。ただ、この数字だけを見ていると、足をすくわれます。

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高さは二重の基準

ヤードの積み上げ高さには、どんな基準がかかりますか

先に結論を書きます。両方の制度の対象物・数量などの適用要件をともに満たす場合、廃棄物処理法の側の基準と、消防法の側の基準が重なります。しかも、数字は別々に決まっています。片方を守れば足りる、という関係ではありません。

この記事は2026年8月18日時点で公表されている条文と資料をもとに書いています。

5mまで守ればいい?
5mまで守ればいい?
高さの基準が2つ重なることも
高さの基準が2つ重なることも

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90時間燃えた火災

90時間燃えた火災で、何が起きていたか

90時間燃えた火災
90時間燃えた火災

2025年11月、茨城県坂東市の再生資源物屋外保管事業場で火災が起きました。茨城県が県議会に提出した資料に、経過が書かれています。

2025年11月23日(日)22時40分に出火し、鎮火したのは11月27日(木)17時。おおよそ90時間、燃え続けたことになります。

事業場の面積は7,334㎡。届出上の保管量はプラスチック6,097立方メートル、金属27立方メートル。プラスチックを有価物として仕入れて加工し、国内外に販売する事業場でした。

指導されたのは高さ・間隔・囲い
指導されたのは高さ・間隔・囲い

県の資料には、指導状況としてこう書かれています。

「保管状況などが不適であったことから、県が改善を指導していたが従わず、速やかに改善を図っていなかった。」

  • 高さ——保管物を届出の4メートルより高く保管している
  • 保管単位——保管物を200平方メートルごとに保管していない。保管物の間隔を2メートル以上としていない
  • 囲い——囲いのない部分があり、可視化が出来ていない

第3回で扱った項目が、そのまま並んでいます。高さ、200㎡、2mの間隔、囲い。

ただし、茨城県の2025年12月9日付けの資料では、火災の原因は「不明(現在、消防等関係機関で調査中)」とされていました。高さを超えていたことが出火の原因だと認定されたわけではありません。ここは分けて読む必要があります。その後の調査結果は、本稿執筆時点で確認できていません。

それでも、この資料から言えることがあります。基準を超えた状態は、行政に把握されていて、指導の対象になっているということです。

廃棄物処理法の高さ

廃棄物処理法の側の高さ

高さの決まり方は3通り
高さの決まり方は3通り

まず、有害使用済機器について、いま効いている国の基準です。第3回でも触れましたが、高さは囲いに荷重がかかっているかどうかで3つに分かれます。

表2 高さの決まり方(廃棄物処理法施行規則 第13条の6・現行) ※条文の枝分かれをそのまま並べています
号場合高さ
第1号 囲いに直接負荷部分がない場合
(第3号に掲げる場合を除く)
囲いの下端(下端が地盤面に接していないときは、下端を鉛直方向に延長した面と地盤面との交線)を通り、水平面に対し上方に50%の勾配を有する面との交点までの高さ
又は5m のうちいずれか低いもの
第2号 囲いに直接負荷部分がある場合
(第3号に掲げる場合を除く)
基準線(直接負荷部分の上端から下方に垂直距離50cmの線。囲いの高さが50cm未満のときはその下端)から保管の場所の側の任意の点ごとに——
イ 地盤面から、その点を通る鉛直線と、その鉛直線への水平距離が最も小さい基準線を通る水平面との交点までの高さ
ロ 第1号に規定する高さ
→ 直接負荷部分でない部分がある場合は、イとロのうち低いほう。それと5m のうちいずれか低いもの
第3号 三方の囲いに直接負荷部分がある場合 イ その三方以外の方向から、事業の用に供する施設(その保管の場所を除く)又は事業場の敷地の境界線への水平距離のうち最小のものの2分の1に相当する高さ
ロ その直接負荷部分の基準線の高さ
ハ 5m
→ イ〜ハのうちいずれか低いもの、又は第2号に規定する高さ

読み方に慣れが要ります。第1号は勾配と5mの低いほう。第2号は基準線による高さが軸で、囲いに荷重のかからない部分があればそこは第1号の勾配とも比べ、さらに5mとも比べます。第3号は、開放側から事業用施設または敷地境界までの最短距離の2分の1・基準線の高さ・5mの3つのうち低いもの、または第2号による高さです。どの号にも5mが出てきますが、5mが常に答えになるわけではありません。勾配や距離の計算によって、5mより低くなる場合があります。

県や市の条例にも、積み上げ高さを決めているものがあります。条例のある県や市なら、条例が決めている高さも確かめてください。当サイトで読んだ県・市の条例は、第3回に並べています。

検討会の案

検討会の案では、素材によって分かれています

案では素材で分ける
案では素材で分ける

2026年7月27日の検討会資料には、高さについての案が出ています。原文を引きます。

「金属スクラップとプラスチックスクラップが混在し、電池等の発火のおそれがある物品の混入が排除できない場合には、自らの荷重による自然発火のおそれがあるため、保管高さの上限、例えば最大5mとしてはどうか」

「金属スクラップのみ/プラスチックスクラップのみの単一素材の物品を保管する場合には保管高さの上限を設ける必要はないのではないか」

ここも文の終わりが「〜としてはどうか」です。決定ではありません。

注目すべきは、規制が緩む側の案も出ていることです。単一素材なら高さの上限を設けなくてよいのではないか、という方向です。

これに対して、検討会では消防庁の担当者から異論が出ています。「全く制限がないと、500平米、1,000平米、1万平米といった規模でプラスチック素材が置かれることになり得るため、どこかに一定の面積制限があってもよいのではないか」。

消防庁からは異論
消防庁からは異論

高く積むと燃える

なぜ、高く積むと燃えるのか

高く積むと燃える2つのわけ
高く積むと燃える2つのわけ

「高く積むと危ない」と言われますが、理由は2つあって、性質が違います。

1つめは、熱が逃げないことです。消防庁の消防研究センターは、木材チップやRDF(ごみ固形燃料)、自動車シュレッダーダストなどについて、自然発火の仕組みをこう説明しています。酸化反応や水分との反応、微生物の発酵などで少しずつ熱が出る。堆積量が多いと内部の熱が外へ逃げにくい。内部の温度が上がる。温度が上がると反応が速くなり、さらに発熱する。この循環が続くと発火に至る、という流れです。

ここでいう自然発火は「原因がないのに突然燃える」という意味ではありません。小さな発熱が長時間かけて積み重なる現象です。

2つめは、山の重さで電池が壊れることです。環境省の報告書は、重機で扱ったときに混入していたリチウムイオン電池を損傷させ、時間がたってから内部で短絡が起きる経路を挙げています。そのうえで「再生資源物の山の大きさによっては、蓄熱や、重量による電池の破損・圧縮等も考えられる」と書いています。

高く積むことには、熱が逃げない危険と、自重で電池を壊す危険の2つがある、ということになります。

5mの意味

「5m」は、発火する境界の数字ではありません

5mは発火の境目ではない
5mは発火の境目ではない

ここは正確に書きます。環境省の報告書は、火災発生源になり得る乾電池やリチウムイオン電池などを分けたうえで、保管高さを一定程度(5m以下)に制限する等の対策が必要であるとしています。

ただし、この5mは次のいずれでもありません。

  • 5mを超えた瞬間に自然発火する、という境界値
  • 5mを超えると火災の確率が何倍になる、という統計値
  • あらゆる再生資源物に共通する、科学的な発火の限界

火災の予防、延焼の抑制、消火活動のしやすさを考えた、管理上の目安として読むのが正確です。積上げ高さ別に火災の発生率を比較した全国統計は、本稿執筆時点で確認できませんでした。

消防法の高さ

もう一つの基準——消防法がかかります

一定量のプラは指定可燃物
一定量のプラは指定可燃物

ここからが、この回でいちばんお伝えしたい部分です。

プラスチックやゴムは、消防法の「指定可燃物」に当たることがあります。危険物の規制に関する政令の別表第四は、合成樹脂類を掲げていて、数量はこうです。

  • 不燃性又は難燃性でない固体の合成樹脂製品・半製品・原料・くず(ゴム類を含む)——3,000kg以上
  • 発泡させたもの——20立方メートル以上

ただし、合成樹脂の繊維、布、紙及び糸と、それらのぼろ・くずは、政令上の「合成樹脂類」から除かれます。すべてのプラスチックのくずが、一律にこの数量で判定されるわけではありません。

小規模なヤードや、対象となる合成樹脂類の量が少ないヤードもあります。実際の最大保管量を、重量または容積で確認する必要があります。

そして、この指定可燃物の貯蔵・取扱いの技術上の基準を定めるのは、国ではなく市町村条例です。消防法第9条の4が、そう定めています。場所の位置・構造・設備の基準も市町村条例に委ねられています。

消防の基準は市町村の条例
消防の基準は市町村の条例

積む高さや、置き場の区分と間隔は、事業場のある市町村の火災予防条例で決まります。数字は、所在地の条例で確かめてください。所轄の消防署に聞くのが早道です。届出が要るかも、あわせて聞いてください。

両方がかかる

両方が、同時にかかります

環境省の通知は「加えて」
環境省の通知は「加えて」

「どちらか厳しいほうを守ればよいのか」と思われるかもしれません。環境省の通知が、この点をはっきり書いています。

令和元年5月20日付けの「廃プラスチック類等に係る処理の円滑化等について(通知)」には、こうあります。

「廃プラスチック類は、消防法第9条の4の指定可燃物として、危険物の規制に関する政令別表第4に掲げられる合成樹脂類に該当する可能性が高いものである。したがって、廃棄物処理法第12条の産業廃棄物処理基準に従って適正に処理することに加えて、消防法に基づき市町村条例において定められる物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準に従い、火災防止に努めるよう、処理業者に対して指導されたいこと。」

「加えて」と書かれています。一方の基準を満たせば他方が不要になる、という関係ではありません。

表1 同じヤードに、性質の違う2つの基準がかかります
廃棄物処理法の側消防法の側
何にかかるか 有害使用済機器(32品目)
改正後は法律上の「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」が対象。ただし高さ・面積・間隔の基準は政令等で未確定
指定可燃物(合成樹脂類など)
3,000kg以上/発泡させたものは20㎥以上
誰が基準を決めるか 国(政令・環境省令) 市町村条例(消防法第9条の4)
高さ 5mと勾配等のうち低いほう 市町村の火災予防条例による
一つの単位の面積 200㎡以下
単位と単位の間隔 2m以上(仕切りがあれば不要)
届出 有害使用済機器の届出(改正で廃止予定)

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火災の件数

火災は、実際にどれくらい起きているのか

ヤードの火災は1年で27件
ヤードの火災は1年で27件

数字を2つ挙げます。調査の主体も対象も期間も違うので、合算はできません。

1つめ。消防庁が全国の消防機関から集めた、廃棄されたリチウムイオン電池等を回収中の塵芥車・ごみ処理関連施設から出火した火災です。

表3 廃棄されたリチウムイオン電池等を回収中の塵芥車・ごみ処理関連施設から出火した火災
年ごみ処理関連施設塵芥車
2022年79件82件
2023年71件100件
2024年96件84件
2025年106件107件
消防庁「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果の公表(令和7年)」(令和8年3月26日)。全国の消防機関が覚知した火災の件数です。

ごみ処理関連施設では、2023年の71件から、2025年は106件に増えています。ただし4年分ですので、これで長期の傾向を断定することはできません。

2つめ。環境省がヤードの実態調査(2023年10月1日〜2024年9月30日)で把握した、再生資源物保管場所の火災は27件です。内訳は、雑品・混合スクラップ11件、プラスチック10件、金属5件、詳細不明1件。このうちリチウムイオン電池に関係するとされたものが6件でした。

なお、今回確認した消防庁等の公表統計では、「金属スクラップヤード」だけを切り出した全国の年次件数は確認できませんでした。消防庁の統計では「その他火災」などの広い区分に含まれます。

確かめること

いま、確かめておくこと

いま確かめておくこと
いま確かめておくこと
  1. いま何メートルで積んでいるか——届出や許可の申請に書いた高さと、実際が合っているか。坂東市の事業場は、届出の4mを超えていました
  2. 囲いに荷重をかけているか——かけているなら高さの計算が変わります(第3回)
  3. 有害使用済機器を扱っているなら、保管の単位が200㎡以下か、隣接する単位の間隔が2m以上か(仕切りがあれば例外)——これは有害使用済機器保管等業者にかかる現行の基準で、金属・プラスチックのスクラップ全体に直ちに及ぶものではありません。新制度の面積・間隔は未確定です
  4. まず、危険物の規制に関する政令 別表第四の「合成樹脂類」の定義に当たるか——不燃性又は難燃性でない固体の合成樹脂製品・半製品・原料・くず等で、合成樹脂の繊維・布・紙・糸とそのぼろ・くずは除かれます。当たるなら、3,000kg以上(発泡させたものは20立方メートル以上)で消防法上の指定可燃物です——重さだけでは決まりません
  5. 所在地の市町村の火災予防条例——高さ・面積・距離・届出が別に決まっています。消防署に一度確認してください
  6. 電池が混ざる置き方になっていないか——蓄熱と、自重による電池の破損。両方の入口になります

この記事は公表されている条文と資料を読んだ整理であって、個別の判断ではありません。廃棄物処理法の側は都道府県または市の担当窓口へ、消防法の側は所轄の消防署へ、それぞれ確認してください。

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出典


次回(5)は「『使用済金属・プラスチック物品』とは何か」を扱います。廃棄物でない有価物を、品目ではなく性質で決める仕組みを読みます。

▶ 第3回 囲いは本当に義務になるのか

▶ 第1回 うちのヤードは許可が必要になるのか

ヤードンで区画したストックヤード

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ストックヤード用プレキャスト擁壁「ヤードン」

ヤードの区画・仕切りに使うコンクリート製品です。最大壁高3m、平置きで設置でき、レイアウト変更のときは動かせます。

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