大分のがけ条例——大分県建築基準法施行条例第2条

がけの高さの2倍以上、離します

大分県では、居室のある建物を「がけ」(高さ2メートル超・勾配30度超で、硬岩盤(風化の著しいものを除く)以外)に近接して建てるとき、がけの上なら下端から、がけの下なら上端から、水平距離で「がけの高さの2倍以上」を保たなければなりません。鉄筋コンクリート造など重い建物をがけの上に建てるなら、この距離をさらに増やす決まりもあります。そして、擁壁の設置などにより安全上支障がない場合には、距離の規定を適用しない定めがあります(第3項)。

この記事は、いわゆる大分県の「がけ条例」——正式には大分県建築基準法施行条例(昭和46年条例第27号)第2条と、これとは別に知事が指定した区域に適用される第25条・第26条(災害危険区域)——を、県が現行の条例として公開しているPDFと、県建築住宅課編集の解説から読んだ整理です(対象を居室のある建物に限る現在の形は、県の解説によれば平成13年4月1日の改正から。解説内の条文と現行PDFの第2条が同文であることを確認しています)。

がけの高さの2倍以上、離します
がけの高さの2倍以上、離します

「がけ条例」の実体は、建築基準法施行条例の第2条です

「がけ条例」は通称です。建築基準法第39条(災害危険区域)・第40条(条例による制限の附加)などの委任を受けた大分県建築基準法施行条例が実体で(第1条)、がけの規制は第2条に、災害危険区域の仕組みは第25条・第26条にあります。建築確認の対象となる計画では、この条例への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例の適用は、建築物・設計者の区分に応じて建築基準法第6条の4・施行令第10条で決まり、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定が審査省略の対象になり得ます。条例への適合義務は、審査の範囲とは別に生じます。また、大分市の案内では、第2条のがけ規制は、当たる区域があらかじめ地図で定められているのではなく、現地に該当するがけがあり、そのがけに近接して建築する場合に適用されるとされています——第2条は現地のがけで決まり、第25条・第26条の災害危険区域は、知事が指定した区域で決まる、という区分です。

どこからが「がけ」か——高さ2メートル超・勾配30度超・硬岩盤(風化の著しいものを除く)以外

どこからが「がけ」?——3つの条件です
どこからが「がけ」?——3つの条件です

第2条 建築物(居室を有する建築物に限る。以下この条において同じ。)をがけ(高さが2メートルを超え、かつ、地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地で、硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のものをいう。以下この条において同じ。)に近接して建築しようとする場合において、がけの上に建築しようとするときはそのがけの下端からの水平距離を、がけの下に建築しようとするときはそのがけの上端からの水平距離をそれぞれそのがけの高さの2倍以上保たなければならない。

大分県建築基準法施行条例 第2条第1項

この条例の「がけ」は、①高さが2メートルを超え、②地表面が水平面に対して30度を超える角度をなす土地で、③硬岩盤ではない(ただし、風化の著しい硬岩盤は「硬岩盤」から除かれる=がけに含まれ得ます)の3つがそろった土地です。県の解説には、30度以下の部分を挟む地形や2段のがけなど、「がけ」に当たる形・当たらない形の図が示されています。

ただし、第2条の「がけ」に当たらない斜面や、距離が取れている場合でも、安全の検討が不要になるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがあると判断される場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。個別の計画がその「おそれのある場合」に当たるかは、がけの状態・距離・地盤・建物の計画などによって判断されます。第2条の数字は「条例の離隔義務の入口」であって、「安全検討の入口」ではありません。

義務の形は「2倍以上、離す」。がけの上の重量建築物なら、さらに離します

対象は居室を有する建築物です。「居室」とは、居住・執務・作業・集会・娯楽などの目的のために継続的に使用する室をいいます(建築基準法第2条第4号)。住宅に限らず、事務所や店舗の部屋も当たり得ます。ここでいう「建築」には新築だけでなく、増築・改築・移転も含まれます(同条第13号)。工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、第39条第2項・第40条に基づく条例の規定が準用されます。法第3条第2項により法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)の適用を受けない建築物の用途変更については、同項により原則としてこれらの規定が準用されます。増築・改築・大規模の修繕・模様替をする場合や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件(同項第2号)を満たす場合はこの準用から除かれます——ただし、それは同項による準用が外れるという意味で、条例規定が当然に適用されなくなる意味ではありません(同項第3号は法第48条関係だけの除外で、がけの条例規定には関わりません。増築等をする場合の適用関係は、法第3条第3項などから別に判断されます)。居室のない建物を居室のある用途に変える場合や、既存不適格建築物の増築・改築などでは、適用関係を窓口で確認してください。

保つ距離は、がけの上に建てるなら「下端からの水平距離」、がけの下に建てるなら「上端からの水平距離」で、それぞれ「がけの高さの2倍以上」。たとえば高さ4メートルのがけなら8メートル以上です。県の解説では、この距離は建物の外壁の外側で測るものとされています。

2 鉄筋コンクリート造等の重量建築物をがけの上に建築しようとする場合は、前項の基準を安全上支障がない程度に増大しなければならない。
3 前2項の規定は、建築物の規模若しくは構造、擁壁の設置又はがけの状況により建築物の安全上支障がない場合には、適用しない。

同 第2条第2項・第3項

第2項では——鉄筋コンクリート造などの重い建物をがけの上に建てるときは、第1項の距離を「安全上支障がない程度に」さらに増やさなければなりません。増やす量の一律の数値は条文にありません。

第3項——「擁壁の設置」などで安全上支障がなければ、距離の規定は適用されません

距離が取れない——6つの型があります
距離が取れない——6つの型があります

第3項により、①建築物の規模若しくは構造、②擁壁の設置、③がけの状況のいずれかにより建築物の安全上支障がない場合は、第1項・第2項の距離の規定は適用されません。「安全上支障がない」に当たるかは言い分だけでは決まらず、設計側が資料で根拠を示します。当該事項が確認審査の対象となる計画では、その適合が審査されます。県はこの第3項の運用について、「がけに近接する建築物の運用基準」(平成13年10月12日付け建築住宅第1456号通知)を定めており、県が公開する条例の解説に、基準の本文・参考図・解説と「がけに近接する建築物の報告書」の様式が収録されています。基準が挙げる「安全上支障のない場合」は6つの類型です——①擁壁・杭・グランドアンカー・のり面保護等の措置で支障がない場合。②「地質調査等に関する資格者」による地質調査で崩壊のおそれがない場合。③がけの上では、基礎の底部(地盤改良をした場合はその部分を含み、杭なら先端)が、下端を通る30度の面——地質調査で崩壊のおそれがない地層を確認できる場合はその地層——より下方に達する場合(解説では、玄関ポーチ等の部分的な柱基礎は対象外です)。④盛土によるがけ面以外で、土質別の表の勾配条件を満たす場合(表の中欄の勾配を超えるときは、右欄の勾配以下で、かつそのがけ面の下端からの垂直高さが5メートル以内であることが条件です)。⑤がけの上端(がけ上のとき)・下端(がけ下のとき)から水平距離10メートル以上離れている場合。⑥がけの崩壊に伴う敷地への土砂の流入に対して、構造計算等により建築物の安全性が確保されている場合——その方法として、土留施設を設けるか、がけに面する外壁のうち基準が指定する部分(下端から水平距離10メートルの地点を含む30度面以下の部分、または建物の1階部分)を開口部のない壁とし、鉄筋コンクリート造または土砂の衝突で破壊されるおそれのない構造とすることが示されています(解説では、外壁をRC造とする場合、衝突破壊のおそれがないことの構造計算は不要とされています)。——同一棟の増築では、その建築物の既存部分に基準を適用しない附則もあります。なお、県の解説では、①の工法・施工範囲は設計者(建築士に限る)または「地質等に関する資格者」の調査により決定し、④のがけ面の土質・勾配の調査者も、設計者または同資格者とされています。まず基準と報告書様式を確認したうえで、個別の計画への当てはめは窓口で確認してください。規制の範囲に既に擁壁がある場合も、その擁壁で「安全上支障がない」といえるか(検査済証等の資料と現況)の確認からです。

急傾斜地崩壊危険区域は「災害危険区域」。住居の用に供する建築物は原則、建てられません

急傾斜地崩壊危険区域——住居は原則禁止
急傾斜地崩壊危険区域——住居は原則禁止

第26条 前条の災害危険区域内においては、住居の用に供する建築物は、建築してはならない。ただし、建築物の構造若しくは敷地の状況又は急傾斜地崩壊防止工事等の施工により建築物の安全上支障がない場合は、この限りでない。

同 第26条

大分県は、急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法に基づき知事が指定する区域)を、建築基準法第39条の「災害危険区域」としています(第25条)。区域内で住居の用に供する建築物を計画する場合、建築は原則禁止で(敷地や建物が区域の境界にかかるときは、建物の位置だけでは決められず、建築基準法第91条の取扱いも問題になります——区域図と計画図を示して窓口で確認してください)、例外は建築物の構造、敷地の状況、または急傾斜地崩壊防止工事等の施工により、安全上支障がない場合です。条例の例外は、建築物の構造・敷地の状況・急傾斜地崩壊防止工事等の施工のいずれかにより安全上支障がない場合です。県の解説は、その例として主要構造部を鉄筋コンクリート造かこれに準ずる構造とした場合や、防止工事の施工により支障がない場合を挙げており、設計者が安全上支障がない旨を確認したうえで、建築できるかどうかを急傾斜の担当部署と事前に協議することとされています。また、区域内での切土・盛土や工作物の設置などは、条例とは別に急傾斜地法第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります。第2条のがけ規制とは別の決まりとして、重なってかかることがあります。

罰則は第29条、両罰は第30条。適合の義務は、審査の有無にかかわらず残ります

第29条第1項は、第2条第1項・第2項や第26条を含む列挙規定への違反について、当該建築物の設計者(設計図書を用いずに施工した場合、または設計図書に従わずに施工した場合は工事の施工者)を20万円以下の罰金に処すると定めています。違反が建築主の故意によるときは、その建築主にも同じ刑が科されることがあります(同条第2項)。法人の代表者や、法人又は人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をした場合は、行為者を罰するほか、その法人又は人にも罰金刑が科されます(第30条)——ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意・監督を尽くしたと証明できた場合の法人・人への刑だけです。

そして建築確認の対象となる計画では、第2条・第26条への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例(法第6条の4・令第10条)による審査省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まります——適合義務は、審査の範囲とは別に生じます。この条例のがけの規定に、都市計画区域内に限る旨の定めはありません。建築確認が不要なことだけを理由に、第2条が適用外になるわけでもありません——ただし、建築基準法第3条第2項によりこの条例の適用を受けない建築物について増築・改築・大規模の修繕・模様替を行う場合に、知事が建築物・敷地の状況からやむを得ないと認めたときに条例の適用を緩和できる特例(第27条)や、法第85条第6項・第7項または第87条の3第6項・第7項の許可を受けた建築物に第二章・第三章を適用しない特例(第28条)は別です。このほか、法第3条第1項(文化財建築物等)や、法第85条第1項・第2項の要件を満たす応急仮設建築物・工事現場の仮設事務所等への国法上の適用除外もあります。違反すれば是正命令(建築基準法第9条。除却・使用禁止などの措置を含みます)や罰則の対象になり得ます。

土砂災害の区域の話は、別の法律です

がけの近くの土地は、この条例とは別に、土砂災害防止法の土砂災害警戒区域(イエローゾーン)または土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されていることがあります。警戒区域では警戒避難体制の整備などが行われ、特別警戒区域では、住宅(自己居住用を除く)や、高齢者・障害者・乳幼児など特に防災上の配慮を要する人が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるもの)を建てるための土地の区画形質の変更(特定開発行為)の許可や、居室を有する建築物の構造規制などが問題になります。入口も基準もこの条例とは別物です。最新の指定状況と区域の境界は、県が公表する指定の図書で確認してください。市町村のハザードマップは避難の確認に有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。擁壁の選び方も合わせてどうぞ。

いま、確かめておくこと

いま、確かめておくこと
いま、確かめておくこと
  • ① 計画地の周辺に、「高さ2メートル超・勾配30度超」のがけがあるか(第2条第1項。硬岩盤は除く——ただし風化の著しいものは除かれない。2段のがけ等の形は県の解説の図へ)
  • ② 居室のある建物の外壁(の外側)から、がけの上なら下端まで・がけの下なら上端までの水平距離が、がけの高さの2倍以上あるか(同項。条文は水平距離だけで定めており、敷地の境界による限定はありません)
  • ③ ①で第2条の「がけ」に当たらない場合や、②の距離が取れている場合でも、がけ崩れ等の被害を受けるおそれがないかは別に確認。おそれがあると判断される場合は、建築基準法第19条第4項の安全上適当な措置が必要です
  • ④ 鉄筋コンクリート造など重い建物をがけの上に建てるなら、距離をさらに増やす(第2条第2項。増やす量は条文に一律の数値がなく、設計側で安全の根拠を示します。確認申請で当該事項が審査対象となる場合は、その適合が審査されます)
  • ⑤ 距離が取れないなら、第3項——建物の規模・構造/擁壁の設置/がけの状況のいずれかで「安全上支障がない」といえるか。県が公開する運用基準(建築住宅第1456号。崩壊防止の措置・地質調査等に関する資格者の地質調査・基礎の位置・土質と勾配の基準・10メートル離隔・構造計算等による土砂流入への安全性確保〔土留施設または防護外壁〕の6類型)と報告書様式を確認したうえで、個別の計画への適用は窓口へ。既にある擁壁は、資料(検査済証等)と現況の確認から
  • ⑥ 敷地や、住居の用に供する建築物が、急傾斜地崩壊危険区域(=災害危険区域)の内外にまたがらないか。区域内に建てるなら原則建築禁止——境界にかかる場合は、建物の位置だけで判断せず、建築基準法第91条を含む適用関係を窓口で確認します。構造・敷地の状況・防止工事等で安全上支障がない場合が例外です。設計者の確認と、急傾斜の担当部署との事前協議を(第25条・第26条)
  • ⑦ 建築確認が不要なことだけを理由に、第2条が適用外になるわけではありません(ただし、法第3条第1項の文化財建築物等や法第85条第1項・第2項の国法上の適用除外、第27条の緩和〔法第3条第2項の建築物の対象の増築等で、知事がやむを得ないと認めたとき〕、第28条の特例〔法第85条第6項・第7項または第87条の3第6項・第7項の許可建築物〕は別です)。違反すれば是正命令(除却・使用禁止などを含む建築基準法第9条の措置)や罰則の対象になり得ます
  • ⑧ 土砂災害警戒区域・特別警戒区域に入っていないか。こちらは別の法律です。最新の指定は、県が公表する指定の図書で確認(ハザードマップは作成時点の指定のことがあります)

個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、県・市の建築指導の窓口にご確認ください。大分県は、条例の全文と解説(建築住宅課編)を県のページで公開しています——条文と併せて読むと、県の運用がわかりやすくなります。


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