擁壁の高さ、何mから構造計算が要るか——建築基準法の2m超と、盛土規制法の許可工事

擁壁の高さの何mから構造計算?

擁壁を造る人、古い擁壁を造り替える人へ。

擁壁(ようへき)は、土が崩れないように支える壁です。「擁壁の高さが何メートルを超えたら構造計算が要るのか」。答えは1つの数字ではなく、どの法律の下で造るかで3通りです。建築基準法なら、高さ2メートルを超えると工作物(建物以外の構造物)として確認申請(着工前に計画の審査を受ける手続)が要り、その中で構造計算が求められます(盛土規制法の許可や都市計画法の開発許可が要る工事の擁壁は、確認申請の代わりに許可の審査を受けます)。盛土規制法の許可を受ける工事で、盛土(もりど。土を盛ること)・切土(きりど。地面を削ること)でできた崖面を覆うために設ける擁壁なら、高さに関係なく、鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造は構造計算で4つを確かめます。どちらにも当たらない2メートル以下の擁壁には、この2つの法令の計算義務はありませんが、土圧は高さの2乗で大きくなるので、設計者は安定計算をします。

建築基準法では、何メートルを超えると「工作物」ですか

擁壁は何mから構造計算?
擁壁は何mから構造計算?
2m超は工作物。計算が要ります
2m超は工作物。計算が要ります

建築基準法は、建物だけでなく一部の工作物についても、確認申請の手続と構造の基準を定めています(法第88条第1項)。どの工作物かは政令が決めていて、擁壁はここに入ります。

第百三十八条 煙突、広告塔、高架水槽、擁壁その他これらに類する工作物で法第八十八条第一項の規定により政令で指定するものは、次に掲げるもの(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関するものその他他の法令の規定により法及びこれに基づく命令の規定による規制と同等の規制を受けるものとして国土交通大臣が指定するものを除く。)とする。

(一〜四 略)

五 高さが二メートルを超える擁壁

建築基準法施行令 第138条第1項第5号(e-Gov法令検索・現行条文、2026年9月21日確認)

「超える」なので、ちょうど2メートルは入りません。2メートルを超える擁壁を造るなら、着工の前に工作物の確認申請を出して確認を受け、工事が終わったら完了検査を受けます。高さの測り方は、盛土規制法の政令が、擁壁の前面の上端と下端の垂直距離、と決めています(宅地造成及び特定盛土等規制法施行令第1条第4項)。建築基準法の工作物として出すときの測り方は、確認を出す先で確かめてください。この2メートルの決まりは全国どこでも同じですが、確認申請のほうには例外があります。盛土規制法の許可(第12条第1項など)や都市計画法の開発許可を受けなければならない工事の擁壁には、確認申請と完了検査の規定は適用されません(建築基準法第88条第4項)。その擁壁は、許可の審査の中で見られます。構造の基準(次の政令第142条)は、どちらの擁壁にもかかります。

2メートルを超える擁壁には、どんな構造の基準がありますか

工作物になった擁壁には、構造の技術的基準がかかります。原文はこうです。

第百四十二条 第百三十八条第一項に規定する工作物のうち同項第五号に掲げる擁壁(以下この条において単に「擁壁」という。)に関する法第八十八条第一項において読み替えて準用する法第二十条第一項の政令で定める技術的基準は、次に掲げる基準に適合する構造方法又はこれと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いることとする。
一 鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること。
二 石造の擁壁にあつては、コンクリートを用いて裏込めし、石と石とを十分に結合すること。
三 擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること。
四 次項において準用する規定(第七章の八(第百三十六条の六を除く。)の規定を除く。)に適合する構造方法を用いること。
五 その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること。

建築基準法施行令 第142条第1項(e-Gov法令検索・現行条文、2026年9月21日確認)

第1号から第5号の基準に合う構造方法をとるなら、第5号の「国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算」が要ります。基準は平成12年建設省告示第1449号の第3で、擁壁の構造計算の基準は「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令第9条に定めるとおり」とされています(現行の文言は鹿児島県「擁壁構造審査基準」に載る告示の抜粋で確認、2026年9月21日。出典の欄に確かめ方を書いています)。建築基準法でも、盛土規制法と同じ4つの計算(破壊・転倒・滑動・沈下)をします。第142条の冒頭(第1号より前の文)には、これと同等以上に破壊と転倒を防げるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を使う道も書かれています。この条は、腐食しない材料を用いた構造(第1号)や、水抜穴とその周りに詰める砂利(第3号)も定めています。擁壁の種類ごとの違いは擁壁の選び方に書いています。コンクリートブロックを積んだ塀は、この擁壁の基準には入りません——塀の話はコンクリート塀の案内へ。

確認申請には、付近見取図・配置図・断面図・構造詳細図(配筋図)などの図書と、この構造計算書を付けます(建築基準法施行規則第3条)。工場で造る鉄筋コンクリートの擁壁なら、製品ごとの構造計算書と図面を申請の書類に使えます。

当社の製品

2メートルを超える擁壁の計算書も、当社でご準備できます。「土のねっこ」は高さ500〜3,000mmの鉄筋コンクリート造。政令第142条の材料・水抜穴・構造計算に対応した図面と計算書を製品ごとに用意しています。使えるかどうかは、現地の地盤と荷重の条件で決まるので、申請の前に設計者と窓口で確かめます。

盛土規制法の許可工事では、高さの区切りはありますか

盛土の許可工事の擁壁は?
盛土の許可工事の擁壁は?
高さに関係なく4つの計算
高さに関係なく4つの計算

宅地造成等工事規制区域(盛土規制法で都道府県が指定する区域)で盛土・切土の許可を受ける工事では、盛土・切土でできた崖面を擁壁で覆うのが原則です(宅地造成及び特定盛土等規制法施行令第8条第1項第1号。特定盛土等の工事には第18条で準用)。その擁壁は鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造・練積み造のどれかで(同項第2号)、鉄筋コンクリート造と無筋コンクリート造には次の条文がかかります。ここには「2メートル」という区切りがありません。

第九条 前条第一項第二号の鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造の擁壁の構造は、構造計算によつて次の各号のいずれにも該当することを確かめたものでなければならない。
一 土圧、水圧及び自重(以下この条及び第十四条第二号ロにおいて「土圧等」という。)によつて擁壁が破壊されないこと。
二 土圧等によつて擁壁が転倒しないこと。
三 土圧等によつて擁壁の基礎が滑らないこと。
四 土圧等によつて擁壁が沈下しないこと。

宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第9条第1項(e-Gov法令検索・現行条文、2026年9月21日確認)

「前条第一項第二号の擁壁」とは、第8条第1項で崖面を覆うために設ける擁壁のことです。高さ1メートルでも、許可の工事で崖面を覆うために設けるなら、この4つを計算で確かめます(間知石などを積んだ練積み造は、計算ではなく同じ政令の第10条の仕様によります)。さらに、許可の工事で設ける高さ2メートル超の擁壁のうち、義務で設けるもの以外には、建築基準法施行令第142条が準用されます。

第十三条 法第十二条第一項又は第十六条第一項の許可を受けなければならない宅地造成に関する工事により設置する擁壁で高さが二メートルを超えるもの(第八条第一項第一号の規定により設置されるものを除く。)については、建築基準法施行令第百四十二条(同令第七章の八の規定の準用に係る部分を除く。)の規定を準用する。

宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第13条(e-Gov法令検索・現行条文、2026年9月21日確認)

高さ2メートルを超える擁壁に地震時の検討まで求めるかは、政令第9条には書かれていません。都道府県の規則・手引で決まるので、土地の県の窓口で確かめてください。どの工事に許可が要るか、区域はどこかは、盛土規制法の全国共通ページに47都道府県ぶんをまとめました。

2メートル以下なら、計算は要らないのですか

2m以下なら計算は要らない?
2m以下なら計算は要らない?
許可工事でなければ不要
許可工事でなければ不要

建築基準法の工作物には当たらず、盛土規制法の許可工事でもない——たとえば区域の外で、高さ1.8メートルの擁壁を造る場合。建築基準法にも盛土規制法にも、構造計算を義務づける条文はありません。ただし3つ、確かめてください。

  1. がけ条例。都道府県・市の建築基準条例が、崖の近くに家を建てるときの擁壁の要件を別に決めています。高さの決まりも擁壁の基準も条例ごとに違うので、がけ条例の一覧から、土地の県・市を読んでください。
  2. 土圧は高さの2乗で効く。高さが1.5倍になると、土圧はおよそ2.25倍。2メートル以下でも、背面に車が乗る・地盤が軟らかい・水がたまる条件なら、設計者は安定計算をします。義務が無いことと、安全なことは別です。
  3. 上に塀を載せるなら、塀の荷重を足す。擁壁と塀を別々に考えると、足りません。
土圧は高さの2乗で増える
土圧は高さの2乗で増える

当社の擁壁は、全ての高さで構造計算書をご準備できます。1メートル以下の「土地分け丸」も同じです。計算書があれば、がけ条例の窓口でも、盛土規制法の窓口でも、話が進めやすくなります。

古い擁壁を造り替えるとき、どんな手続を確かめますか

造り替えの前に、いまの擁壁の位置・高さ・上下の地盤高が変わるかを図にしてください。それで「盛土規制法の許可が要るか」「建築基準法の工作物の確認が要るか」が分かれます。その図を設計者に見てもらい、盛土規制法の窓口と建築確認の窓口で、手続の要否と届出先・期限を確かめてから、壊す日を決めてください。宅地造成等工事規制区域の中で高さ2メートルを超える擁壁を壊すときは、着手の14日前までの届出が別にあります。

3 宅地造成等工事規制区域内の土地(公共施設用地を除く。以下この章において同じ。)において、擁壁等に関する工事その他の工事で政令で定めるものを行おうとする者(第十二条第一項若しくは第十六条第一項の許可を受け、又は同条第二項の規定による届出をした者を除く。)は、その工事に着手する日の十四日前までに、主務省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

宅地造成及び特定盛土等規制法 第21条第3項(e-Gov法令検索・現行条文、2026年9月21日確認)

届出の対象になる工事は、政令が決めています。

第二十六条 法第二十一条第三項の政令で定める工事は、擁壁若しくは崖面崩壊防止施設で高さが二メートルを超えるもの、地表水等を排除するための排水施設又は地滑り抑止ぐい等の全部又は一部の除却の工事とする。

宅地造成及び特定盛土等規制法施行令 第26条第1項(e-Gov法令検索・現行条文、2026年9月21日確認)

当社の製品

窓口に行く前に、擁壁の配置案と構造計算書を手に入れておく

高さ・長さ・地盤・背面の荷重が分かれば、工場製の擁壁「土のねっこ」「土地分け丸」で配置案と概算を返します。申請に要る図面と構造計算書も、当社でご準備できます。全国対応。大臣認定擁壁も手配できます。

  1. 敷地の図面か現場の写真を、住所と一緒に送る(図面が無ければ写真だけで)
  2. 当社が、使える製品と擁壁の配置案、概算を返す
  3. 当社が、製品の図面と構造計算書を作る
  4. 設計者が申請を出す。許可・確認が下りてから、根切り(基礎のために地面を掘る作業)も据え付けも始める

お急ぎの方は電話でも大丈夫です。☎ 0120-1181-46(平日9:00〜18:00)。

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