神奈川県横浜市のがけ条例——横浜市建築基準条例 第3条

横浜市で、崖の近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。崖の規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=崖の土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って横浜市建築局の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。

その土地は横浜市内ですか。はい=横浜市建築基準条例 第3条です神奈川県建築基準条例は適用されません(同条例第53条第1項)。②横浜市の第3条は、高さ3メートルを超える崖の下端(かたん=斜面の低いほうの足元)からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、または建築物の敷地を造成する場合に、安全上支障がない位置に、規則で定める規模及び構造を有する擁壁または防土堤(ぼうどてい=崩れてきた土を受け止める壁)設けなければならないと定めています。③この「2倍以内」は、規定がかかるかどうかの線引きです——建てる位置も、敷地を造成する範囲も2倍を超えて離れていれば、そもそも第1項本文はかかりません。けれどどちらかが2倍以内に入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です——「◯倍以上あければよい」という書き方にはなっていません。④規則(横浜市建築基準法施行細則第18条)の規模及び構造に適合する擁壁または防土堤を設ければ第3条第1項については原則として建てられます。第1項ただし書の7つの号のどれかに当たれば、その部分については本文が適用されません。⑤ただし、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・災害危険区域法第19条第4項は、別に残ります。(横浜市の条例・細則・解説は2026年9月5日、神奈川県条例の改正は2026年9月6日に原文を確認しました)。

横浜市内なら、横浜市建築基準条例 第3条です

「がけ条例」という名前の条例はありません。横浜市では、建築基準法第40条などに基づく横浜市建築基準条例(昭和35年10月10日条例第20号)の第3条(崖)が、崖に近い建築物の決まりです。神奈川県建築基準条例は、横浜市の区域では適用されません——県条例第53条第1項が、法第4条第1項または第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条または法第43条第3項に基づく条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては適用しない、と定めています。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。横浜市内の土地について調べるときは、横浜市の条文の数字で読んでください。

(適用の除外)
第53条 この条例は、法第4条第1項又は第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条又は法第43条第3項の規定に基づき条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては、適用しない。

神奈川県建築基準条例 第53条第1項(2026年4月1日施行の改正後)

この第53条第1項は、2026年4月1日に変わりました——ただし、横浜市内の土地について、読む条例は変わりません。改正の前も後も、横浜市の条例で読みます。改正前は「この条例(第2条の2及び第2条の3の規定を除く。)は…」という括弧書き付きで、その2条——急傾斜地崩壊危険区域を災害危険区域として指定する第2条の2と、区域内の建築物の構造を定める第2条の3——を外す条件は、第2項が別に定めていました。2026年4月1日の改正で、第2条の2・第2条の3は両方とも削除され、第1項の括弧書きも、その2条を外していた第2項も削除されました(第59条第1項の罰則の列挙からも「第2条の3、」が削られています)。いまは、第53条第1項だけで、県条例は横浜市の区域では全部が外れます。

いまの第53条にも第2項・第3項はあります——ただし中身が入れ替わりました。改正前の第3項・第4項が繰り上がったもので、自然公園の特別地域などの区域について一部の条を適用しない、という規定です。建築主事を置く市町村で県条例が外れる話とは、別の規定です。県の解説は、第2条の2を削除した理由を、土砂災害特別警戒区域の指定が令和3年度までに完了しており、法により制限を受ける区域が整理されたためと書き、第2条の3の削除はその区域解除に伴うものとしています。なお、2026年3月31日までにした行為の罰則は、改正前の条文で判断されます(改正条例の附則2「この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」)。

なお横浜市は、法第40条に基づく第3条(崖)に加えて、法第39条第1項に基づく第3条の2(災害危険区域)も自分の条例に持っています。崖のことも、災害危険区域のことも、横浜市の条例で読みます

(崖)
第3条 高さ3メートルを超える崖(一体性を有する1個の傾斜地で、その主要部分の勾配が30度を超えるものをいう。以下この条において同じ。)の下端からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合においては、崖の形状若しくは土質又は建築物の規模、構造、配置若しくは用途に応じて、安全上支障がない位置に、規則で定める規模及び構造を有する擁壁又は防土堤を設けなければならない。ただし、次のいずれかに該当する場合においては、当該部分については、この限りでない。

横浜市建築基準条例 第3条第1項(本文)

どこからが「崖」か——高さ3メートル超・主要部分の勾配30度超。硬岩盤を除く定めはありません

横浜市の条文は、「崖」を「一体性を有する1個の傾斜地で、その主要部分の勾配(こうばい)が30度を超えるもの」と定義し、そのうえで高さ3メートルを超えるものを第3条第1項の対象にしています。30.0度ちょうど・3.0メートルちょうどは、当たりません(条文は「超える」です)。市の解説は、自然崖であるか否かは問わないと書いています——人が切ったり盛ったりしてできた斜面も、同じように見ます。崖の高さ(H)は、崖の角度が30度を超える部分の最も高い位置で算定します(市の解説の図2)。

横浜市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)を「崖」から除く定めがありません。土質は、崖に当たるかどうかではなく、第1項ただし書第1号(崖崩れのおそれがない状態)の表のほうで効きます——軟岩(なんがん/風化の著しいものを除く)、風化の著しい岩、砂利・真砂土(まさど)・硬質関東ローム・硬質粘土その他これらに類するもの、軟質関東ロームその他これに類するもの、の4区分です。「うちは岩だから外れる」とは読めません。土質の見分けと、勾配・高さの測定は、建築士に見てもらってください。

市の解説は、この規定の由来も書いています——横浜市域の60%が丘陵地といわれ、開港以来、崖の上や下に建築物が建てられ敷地が造成されてきたこと、関東ローム層は水を含むと崩壊しやすいこと、昭和29年に崖に関する規定が新設され、昭和33年の台風22号(狩野川台風)による多数の崖崩れを契機に同年、規制強化の改正がなされたこと。この条文は、横浜の地形と災害の記録の上に載っています。

距離の起点は「崖の下端」だけ。上に建てるか下に建てるかで入れ替わりません

上に建てても下に建てても、起点は下端です
上に建てても下に建てても、起点は下端です

図の赤い箱には「擁壁」とだけありますが、第3条第1項が求めているのは「擁壁又は防土堤」です。規則で定める規模及び構造を有するものであれば、防土堤でも、この義務は満たせます。

条文は、「崖の下端からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置」とだけ書いています。崖の上か下かで、起点を入れ替えていません。市の解説の図1(規制対象範囲)も、崖の下端を通る線から、崖の下側にも上側にも崖の高さの2倍の幅を「規制対象範囲内」として示しています。たとえば高さ4メートルの崖なら、下端から8メートルです。下端がどこかを図面で決めることが、最初の山場になります。

この読み方は、横浜市建築基準法施行細則の別表第1でも裏づけられます——条例第3条が適用される建築物の確認申請には、配置図に「敷地内外における建築物及び崖の位置並びに崖の下端から建築物までの水平距離」、2面以上の断面図に「崖の形状、勾配及び高さ」、そして「崖に関する調査説明書(土質)」を明示するよう求めています。建築士に頼む図面は、この3つが軸になります。あわせて、擁壁または防土堤の位置、雨水の集水方向、雨水及び汚水の排水施設の位置も、配置図に明示することとされています。

そして対象は、建築物を建てる場合だけではありません。条文は「建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合」と書いています——造成の段階から、この規定はかかります。

擁壁または防土堤を設ければ、第3条第1項については原則として建てられます——ほかの規制は別に確かめます

擁壁または防土堤を設ければ、道はあります。まず見るのは、2倍以内に入るかどうかです。建てる位置も、敷地を造成する範囲も2倍を超えて離れていれば、第1項本文はかかりません。どちらかが入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です。崖の形状もしくは土質、または建築物の規模・構造・配置もしくは用途に応じて、安全上支障がない位置に、規則で定める規模及び構造を有する擁壁または防土堤を設ける——これを満たせば、第3条第1項については、原則として建てられます「原則として」と書くのには、理由があります——これは第3条第1項の義務を満たすという意味で、建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。

「規則で定める規模及び構造」は、横浜市建築基準法施行細則 第18条にあります。

(擁壁又は防土堤の規模及び構造)
第18条 条例第3条第1項の規定による規則で定める擁壁又は防土堤の規模及び構造は、擁壁にあっては第1号に、防土堤にあっては第2号に定めるところによる。ただし、周囲の地形、土質及び当該擁壁又は防土堤の規模等により安全上支障がない場合においては、この限りでない。
(1) 擁壁については、法及び政令で定めるところによるほか、宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(昭和37年政令第16号)第8条第1項第2号及び第9条から第12条まで並びに宅地造成等規制法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(令和4年政令第393号)第1条の規定による改正前の宅地造成等規制法施行令(昭和37年政令第16号)第6条第1項第2号及び第7条から第10条までの規定を準用する。
(2) 防土堤の構造は鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造とし、その高さは2メートル以上とする。

横浜市建築基準法施行細則 第18条

擁壁は、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)施行令の技術基準を準用します。防土堤(ぼうどてい)は、崩れてきた土を受け止めるための壁で、鉄筋コンクリート造または無筋コンクリート造・高さ2メートル以上と決められています。第18条ただし書の「安全上支障がない場合」について、市の解説は「擁壁などの構造根拠となる法令や基準等、管理状況、構造計算書などにより安全性が確認できる場合」と書いています——古い石積みがあるから安心、ではありません。また、高さ2メートルを超える擁壁は、建築基準法施行令第138条第1項第5号により法第88条第1項の工作物に指定されており、建築主事等(市などで建築確認を審査する立場)または指定確認検査機関(民間の確認検査機関)の確認を受ける必要があります(ただし、盛土規制法・都市計画法などの、法第88条第4項が挙げる許可を受けなければならない場合の擁壁には、確認・検査に関する部分が適用されません——手続きが無くなるのではなく、許可のほうへ移ります)——擁壁そのものにも手続きがあります。

ただし書は7つ。「当該部分については」と書かれています

第3条第1項ただし書は、7つの号のどれかに当たる場合に、当該部分については本文を適用しないと定めています。崖全体でひとまとめに判定するのではなく、部分ごとに見る書き方です。当たった部分については第1項本文が外れますが、当たらない部分には残ります。

  • 第1号(崖崩れのおそれがない状態)——号の本文は「崖の全部又は一部が次のいずれかに該当し、崖崩れのおそれがない状態にあるとき」です。ア・イに当たるだけでは足りません。ア・イは——土質が表の(あ)欄に当たり、勾配が(い)欄の角度以下のもの(ア)。または、勾配が(い)欄を超え(う)欄の角度以下で、その部分の垂直距離の合計が5メートル以内のもの(イ)。表は、軟岩(風化の著しいものを除く)70度/80度、風化の著しい岩50度/60度、砂利・真砂土・硬質関東ローム・硬質粘土その他これらに類するもの45度/55度、軟質関東ロームその他これに類するもの35度/45度です
  • 第2号(盛土の部分)——崖の全部または一部が盛土である場合で、その部分の高さが1メートル以下・斜面の勾配が45度以下であり、かつその部分の斜面を芝またはこれに類するもので覆ったとき。市の解説は、崖の一部が盛土のときは、既存の崖の部分が第1号ア・イのいずれかを満たす必要があるとしています
  • 第3号(基礎・構造で受ける)——崖の上に建てる場合で、その建築物の基礎の応力が崖に影響を及ぼさないとき。または崖の下に建てる場合で、その建築物の主要構造部のうち崖崩れによる被害を受けるおそれのある部分を鉄筋コンクリート造としたとき。市の解説は、崖上では基礎の根入れ(ねいれ=基礎を地中に埋め込む深さ)を安息角線(あんそくかくせん=土が自然に安定する角度で引いた線)より深くすること、崖下では基礎の立上げの高さを原則として3メートルを限度とし、それを超える場合は鉄筋コンクリート造等の堅固なものとすること、基礎立上げ部分等には原則として開口部を設けることができないことを示しています。詳細は横浜市がけ関係小規模建築物技術指針-がけ上編-が参考になる、としています
  • 第4号(20メートル以上離す)——崖の下端からの水平距離が20メートル以上のところに建築物を建築する場合において、崖崩れによる被害を受けるおそれのないとき。距離だけでは足りず、「おそれのないとき」が付いています
  • 第5号(安定計算)——土質試験等に基づき地盤の安定計算をした結果、崖の安全が確かめられたとき。市の解説は、斜面地の安定計算には横浜市斜面建築物技術指針が参考になるとしています
  • 第6号(防止工事で整備済み)——崖の下に建築する場合で、その崖の全部が、急傾斜地法第12条第1項もしくは第13条の急傾斜地崩壊防止工事(ア)、または土砂災害防止法第12条の対策工事等で同法第18条第2項の検査済証の交付を受けたものその他これに類する土砂災害の防止に関する工事(イ)により整備されているとき。市の解説は、この工事で整備された場合でも、崖の上の建築物には該当しないと書いています
  • 第7号(居室を有しない)——崖の下に建築する場合において、その建築物が居室(きょしつ)を有しないとき。居室とは、居住・執務・作業などに継続して使う部屋のことです。市の解説は、これは建築物の全てが駐車場や倉庫などの建築物のことで、建築物の一部に居室を有する場合は該当しないと書いています

この7つは、素人が自分で判定するための一覧ではありません。どれに当たるかを確認するのは設計者(建築士)で、確認申請の対象となる計画では建築主事等または指定確認検査機関の審査で見られます。ただし、後述の確認特例で審査が省略されることがあり、その場合も条例に適合させる義務は残ります。条例の当てはめの相談先は、横浜市建築局建築指導部 建築指導課です。

崖の上に建てるなら、排水の措置も要ります(第3条第2項)

2 高さ3メートルを超える崖の上に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合においては、雨水及び汚水の排水が、崖の斜面を流下し、又は擁壁の裏側若しくは崖に浸透しないように、排水施設を設ける等適当な措置を講じなければならない。

横浜市建築基準条例 第3条第2項

第2項は崖の上の話です。市の解説は、崖崩れを誘発しないよう、雨水・汚水の排水が崖面を流下したり、擁壁の裏側または崖に浸透しないように排水施設を設ける必要がある、と書いています。第1項ただし書に当たって擁壁が要らない場合でも、第2項は別の義務です——第2項には、ただし書がありません。

災害危険区域(第3条の2)——市の解説は「指定している区域はありません」。代わりにレッドゾーンでは、居室のある建築物に構造規制がかかります

横浜市建築基準条例 第3条の2 は、建築基準法第39条第1項の災害危険区域について、①神奈川県知事が急傾斜地崩壊危険区域として指定して告示した区域と同じ区域、②そのほか市長が指定して告示した区域、を挙げています。ただし、土砂災害防止法第4条第1項の基礎調査が実施された区域であって、市長が告示したものを除きます(第1項本文の括弧書き)。

市の解説(令和8年5月版)は、この第1項について「※現時点で第1号及び第2号による指定している区域はありません。」と書き、その理由として「市内の急傾斜地崩壊危険区域のすべてを第1項本文括弧書きによる市長の告示により災害危険区域から除外しています」と説明しています(除外日は平成30年9月11日から令和3年5月14日までの7回に分かれ、市内の18区が挙げられています)。

これは「危険がない」という意味ではありません。市の解説は同じ場所に、「災害危険区域から除外されていても、土砂災害防止法に基づき、神奈川県知事が『土砂災害特別警戒区域』に指定した区域については、令第80条の3の規定が適用されます」と注記しています。令第80条の3は居室を有する建築物の構造の規制です。つまり、災害危険区域の指定が外れた代わりに、レッドゾーンの構造規制がかかっている、という関係です。指定の状況は変わり得ます——計画の時点で、市の窓口と、後述の告示図書で確かめてください。

なお、第3条の2は指定された区域があれば効く条文として条例に残っています。区域内に居室を有する建築物を建築する場合は、基礎及び主要構造部を鉄筋コンクリート造またはこれに類する構造とすること(第2項)、急傾斜地の上端の高さより低い部分に居室の窓その他の開口部を設けないこと(第4項)が原則で、第2項各号(高さ5メートル未満の急傾斜地、急傾斜地崩壊防止工事や開発工事等で整備されている急傾斜地、検査済証の交付を受けた擁壁が設置されている急傾斜地、下端から高さの2倍以上離れていて被害を及ぼすおそれのないものなど8つ)に当たる場合の適用除外と、市長が安全上支障がないと認めて許可した場合の適用除外(第5項)が置かれています。急傾斜地の上に建てる場合などの緩和(第3項)もありますが、市の解説は、その場合も基礎は鉄筋コンクリート造等とする必要があるとしています。第5項の許可の窓口は、建築局建築指導部 市街地建築課 市街地担当(045-671-4525)です。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第3条の擁壁または防土堤を設けても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは神奈川県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第3条の崖に当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第3条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、崖の高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます

レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。

区域に入っているかどうかは、横浜市の土砂災害ハザードマップわいわい防災マップで当たりを付けられます。ただし市は、わいわい防災マップについて「最新の指定告示された区域を搭載出来ていないことがあります」と、土砂災害ハザードマップについて「現在の指定状況と異なる場合があります」と注意しています。最終確認は、神奈川県の告示図書(法定図書)で行ってください。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

既存の建物の増築・改築・用途変更——第3条は、条例の緩和の列挙に入っていません

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。

横浜市建築基準条例には、既存建築物のための緩和が3つ置かれています——第56条(増築又は改築)・第56条の2(大規模の修繕又は大規模の模様替)・第56条の3(用途の変更)。いずれも、緩和する条を号ごとに列挙する形です。その列挙に、第3条(崖)はありません(第3条の2もありません)。つまり、増築・改築などをするなら、崖の第3条は原則としてかかってきます。ただし第3条の義務は「擁壁または防土堤を設ける」ことなので、既にあるものが規則の規模及び構造に適合していれば足りる場合もあり得ます——個別の当てはめは、建築指導課で確かめてください。

建築基準法の側にも、既存不適格の緩和があります。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません(同条第2項・第3項も同じです)。法第86条の7のほうで、この条例に届くのは第4項(移転)です——同項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(=許可・認定や是正命令を受け持つ行政庁。横浜市の区域では横浜市長です)が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。どの移転でも扱いが続く、という意味ではありません。

用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。既存不適格の建物の用途変更については、法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。

是正命令は、建築主・所有者にも来ます。罰金の名宛人は原則、設計者です

第58条 第3条、第3条の2第2項若しくは第4項、第4条第1項、(中略)の規定に違反した場合における当該建築物、工作物又は建築設備の設計者(設計図書に記載された認定建築材料等の全部又は一部として当該認定建築材料等の全部又は一部と異なる建築材料又は建築物の部分を引き渡した場合においては当該建築材料又は建築物の部分を引き渡した者、設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合(中略)においては当該建築物、工作物又は建築設備の工事施工者)は、500,000円以下の罰金に処する。

横浜市建築基準条例 第58条第1項(中略は引用者)

第3条は、罰則の対象です。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いない・従わない施工では工事施工者に替わります。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑が科されます(第58条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも罰金が科されます(第58条第3項の両罰規定)。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適用要件を満たせば適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます。

窓口——横浜市建築局です

  • 建築・宅地に関する一般相談、不動産調査資料(重要事項説明等)——建築局建築指導部 情報相談課 045-671-2953(来庁は市庁舎2階「よこはま建築情報センター」)。土地を買う前に、まずここです
  • 条例第3条の当てはめ・確認申請の相談——建築局建築指導部 建築指導課。規模で担当が分かれます。一戸建ての住宅なら指導担当です——指導担当 045-671-4531(4階以下かつ3,000平方メートル以下)/意匠担当 045-671-4552(5階以上または3,000平方メートル超)/構造担当 045-671-4536(構造の審査)。窓口の受付時間は午前8時45分から午前11時30分、午後1時00分から午後4時30分です
  • 第3条の2第5項(災害危険区域)の許可——建築局建築指導部 市街地建築課 市街地担当 045-671-4525
  • 条例・解説そのものについて——建築局建築指導部 建築企画課 045-671-2933
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定(告示図書)——神奈川県。区域を指定するのは県知事です

まぎらわしいものが、もうひとつあります。横浜市には「横浜市斜面地における地下室建築物の建築及び開発の制限等に関する条例」(平成16年3月5日条例第4号。通称「地下室マンション条例」)もありますが、こちらは建築基準法第50条に基づく地下室建築物の階数の制限と、斜面地開発行為における盛土の制限・緑化等の義務を定めるもので、この記事の崖の規定とは別の条例です。斜面地の土地を調べるときは、どちらの話をしているのかを窓口で確かめてください。

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁や防土堤の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは横浜市建築局の窓口です。

  • ① その土地は横浜市内か。横浜市内なら、読むのは横浜市建築基準条例 第3条です(神奈川県建築基準条例は適用されません。県条例第53条第1項)
  • ② 敷地の中や周りに、主要部分の勾配が30度を超える傾斜地で、高さが3メートルを超えるものがあるか。自然崖かどうかは問いません。高さは、30度を超える部分の最も高い位置で測ります
  • ③ 建てる位置と、敷地を造成する範囲は、崖の下端から崖の高さの2倍以内か。どちらも2倍を超えて離れていれば、第1項本文はかかりません。起点は下端だけで、崖の上に建てるか下に建てるかで入れ替わりません(市の解説の図1は、下端を通る線から上側にも下側にも2倍を規制対象範囲としています)
  • ④ かかるなら——細則第18条の規模及び構造に適合する擁壁または防土堤を設ければ第3条第1項については原則として建てられます。安全上支障がない位置に設ける計画になっているかを、確かめてください。防土堤は鉄筋コンクリート造または無筋コンクリート造・高さ2メートル以上です。高さ2メートルを超える擁壁は、確認が別に要ります(令第138条第1項第5号・法第88条第1項。ただし盛土規制法などの許可を受けなければならない場合の擁壁は、確認・検査に関する部分が適用されません——法第88条第4項)
  • ⑤ 第1項ただし書の7つの号のどれかに当たるか。第1号は、表のア・イに当たるだけでなく「崖崩れのおそれがない状態にあるとき」が前提です。「当該部分については」なので、崖の部分ごとに見ます。第6号(防止工事で整備済み)と第7号(居室を有しない)は崖の下に建てる場合だけで、市の解説は第6号について崖上の建築物には該当しない、第7号について一部に居室があれば該当しないと書いています
  • ⑥ 崖の上に建てる・造成するなら、第2項の排水の措置が計画に入っているか。第2項にただし書はありません
  • ⑦ 既存の擁壁があるなら、検査済証等の資料と現況の確認から。細則第18条ただし書の「安全上支障がない場合」について、市の解説は法令や基準等、管理状況、構造計算書などにより安全性が確認できる場合としています
  • ⑧ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。市のハザードマップやわいわい防災マップで当たりを付け、最終確認は神奈川県の告示図書で。市は、どちらの地図も現在の指定状況と違うことがあると注意しています
  • ⑨ 災害危険区域の指定があるか。市の解説(令和8年5月版)は「現時点で第1号及び第2号による指定している区域はありません」と書いていますが、指定は変わり得ます——計画の時点で窓口に確かめてください
  • ⑩ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例第56条・第56条の2・第56条の3の緩和の列挙に、第3条はありません
  • ⑪ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第58条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認。神奈川県条例の改正(第2条の2・第2条の3の削除と第53条の改正)は、2026年9月6日に県公報で確認しました

  • 横浜市建築基準条例(横浜市公式・「横浜市建築基準条例及び同解説」令和8年5月版のPDF。第3条・第3条の2・第56条・第56条の2・第56条の3・第58条)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第4条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第50条・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第3条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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