石川のがけ条例——石川県建築基準条例第5条

石川は住所で条例が変わります

石川で、がけの近くに家を建てる・買う人へ——答えから。

先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありませんまず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って計画地を所管する建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。

石川では、適用される条例そのものが区域で違います。金沢市・七尾市・小松市・加賀市・白山市・野々市市の6市では、それぞれの市の条例が、残る13市町では石川県建築基準条例(昭和四十九年条例第六十七号)第五条が適用されます(県条例第二条第1項)。②数字は、県と金沢市・七尾市・小松市・加賀市・白山市の6本で同じ——勾配が30度を超え、高さが3メートルを超える傾斜地を「がけ(崖)」とし、建築物はそのがけの下端(かたん)から、がけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。起点は「がけの下端」で、条文に「がけの上端(じょうたん)から」という言葉はありません。③下端からがけの高さの2倍以上が取れれば、県条例第五条(同旨の条を置く5市も同じ形です)の関係では原則として建てられます。取れないときは、ただし書の3つの事由(がけの地盤が堅固/堅固な擁壁等で保護/当該建築物の構造)により安全上支障がないと認められれば、同じく第五条の関係では原則として建てられます(白山市は、同旨の市条例のただし書が市長の許可を求めています)。ただし、災害危険区域・土砂災害の区域・建築基準法第19条第4項は別に確認してください。④違うのは手続きと上乗せです——白山市はただし書が「市長が〔略〕認めて許可した場合」で、許可という別の行為を求めています。加賀市には、がけの上の敷地に排水施設等の措置を義務づける第2項があります。そして野々市市の建築基準条例には、がけの条が見当たりません——これは条文からの読みで、市には確認していません(指導要綱・開発の基準まで含めて市に確かめてください)。

県条例・県の施行細則・6市の条例・県の様式と記入例・加賀市の解説は、2026年8月29日に例規集と各自治体のページで原文を確認しました。版は条例ごとに違います——例規集の表示で、県条例・加賀市・白山市・野々市市は令和7年4月1日施行、金沢市は令和7年7月1日施行、小松市は令和3年4月1日施行、七尾市は平成30年4月1日施行の版です。

石川県のがけ規制は、県条例第五条と5市の同趣旨条項です

石川は住所で条例が変わります
「がけ条例」という名前の条例はありません。石川県では石川県建築基準条例(昭和四十九年条例第六十七号)第五条です。金沢市・七尾市・小松市・加賀市・白山市・野々市市の6市では、それぞれの市の条例が適用されます(県条例第二条第1項)——単に市が条例を作れば外れる、というものではありません。残る13市町の窓口は4つの土木事務所に分かれ、能美市は建築物の区分で市と県に分かれます

今回確かめた県条例と6市の建築基準条例には、「がけ条例」という正式な名前の条例はありません。石川県建築基準条例の第一条は、この条例が建築基準法第三十九条(災害危険区域)・第四十条(条例による制限の附加)・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項に基づくものだと定めています。そのうち、がけの決まりが第三章の第五条、災害危険区域の仕組みが第二章の第三条・第四条です。がけの第五条は、法第四十条(条例による制限の附加)によるものと読めます——県条例第一条が挙げる4つの法条のうち、第三十九条は第三条・第四条、第四十三条第三項は道路、第五十六条の二第一項は日影に当たるので、残るのが第四十条だからです(県がそう名指しした資料は見つかりませんでした)。なお加賀市の解説は、加賀市の条例について「法第40条を根拠に条例で制限を付加しております」と書いています。この対応が、次の適用除外に効いてきます。

この県条例は、石川県内のどこでも効くわけではありません。外れ方は、市の名前を書く形ではなく、条件を書く形です。

(適用の除外)
第二条 建築主事を置く市町が、法第四十条、第四十三条第三項及び第五十六条の二第一項の規定による条例を定めたときは、当該市町の区域内においては、この条例の関係規定は、適用しない。

石川県建築基準条例 第二条第1項

建築主事を置く市町が、法第40条、第43条第3項および第56条の2第1項に基づく条例を定めた場合に、その市町の区域では県条例の対応する関係規定が適用されない、という書き方です——単に市が条例を作れば外れる、というものではありません。実際に条例を持っているのが金沢市・七尾市・小松市・加賀市・白山市・野々市市の6市で、この6市の名前は、県の建築基準法施行細則第十五条(積雪荷重)の括弧書き——「多雪区域は県(金沢市、七尾市、小松市、加賀市、白山市及び野々市市の区域を除く。)の全区域とし」——にも、同じ顔ぶれで出てきます。県条例第五条が適用される区域は、この13市町です——輪島市・珠洲市・羽咋市・かほく市・能美市・川北町・津幡町・内灘町・志賀町・宝達志水町・中能登町・穴水町・能登町。窓口は4つの土木事務所に分かれます(県の相談窓口表)。ただし、条例が適用される区域と、確認審査の行政所管は別です——能美市は、建築物の区分によって能美市と石川県に審査窓口が分かれます。

能美市は、窓口が2つに割れています。県の相談窓口表では、建築基準法施行令第148条第1項第1号・第2号に掲げる建築物に限って能美市土木部まち整備課(0761-58-2251)が窓口で、それ以外の建築物は石川県南加賀土木総合事務所建築課(0761-21-3333)です。ただし窓口が分かれても、当たる条文は変わりません——能美市には建築基準条例がありません(能美市例規集の第10編建設・第1章通則に載っているのは能美市建築基準法施行規則で、建築基準条例は載っていません)。第二条第1項は「条例を定めたとき」に県条例を外す書き方なので、条文どおり読めば、能美市では県条例第五条が適用されます。ただし能美市建築基準法施行規則第20条は、「石川県建築基準条例に準じて行う」という書き方をしています——能美市では、県条例第五条が適用されるものとして市の公式資料でも扱われています——ただし、市規則第二十条の「準じて行う」が、市が所管する案件の必要図書や事前協議にどう及ぶかは、市に確認していません。確認申請に添える図書は、市規則第2条第1項第1号によります。これは条文からの読みで、県・市に文書で確認したものではありません。窓口が2つに割れる市なので、計画の規模を伝えて、どちらへ出すかを先に決めてください。そして、行政へ出す場合の話です——建築確認は、業務範囲に対応する指定確認検査機関(民間の確認検査機関)にも提出できます。条例の取扱いや事前協議先は、能美市または県に確かめてください。

そして、第五条は都市計画区域の外でも効きます。県条例には都市計画区域外を外す定めがありますが、そこに第五条は入っていません。

2 第六条から第八条まで、第十四条、第十六条及び第十八条の規定は、都市計画区域以外の区域については、適用しない。

石川県建築基準条例 第二条第2項

列挙されているのは第六条以降で、第五条は列挙の外です。同じ形は市の条例にもあり、金沢市は第11条の「この章の規定は、都市計画区域内に限り適用する」が第3章にかかるところ、崖の第2条は第2章にあります。加賀市も第3条(適用区域)が挙げるのは第7条から第9条まで・第15条・第17条・第19条で、がけの第6条は入っていません。都市計画区域の外だから確認申請が要らない、という理由でこの条文が外れるわけではありません。

どこからが「がけ」か——勾配30度を超え、高さ3メートルを超える傾斜地

「がけ」は30度超・3m超の傾斜地
定義は第五条の括弧書き「がけ(勾配が三十度を超える傾斜地で、その高さが三メートルを超えるものをいう。以下同じ)」——条件は2つです。30度ちょうど・3メートルちょうどは「超える」に当たりません。岩盤であることは、次のただし書(がけの地盤が堅固)のほうで扱われます(県の記入例2がその形です)。加賀市の条例だけは「傾斜度」と書き、高さの測り方(がけの上端と下端との垂直距離)を条文の中に書き込んでいます。

(がけ付近の建築物)
第五条 建築物は、がけ(勾配が三十度を超える傾斜地で、その高さが三メートルを超えるものをいう。以下同じ)の下端からがけの高さの二倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、がけの地盤が堅固であり、若しくはがけが堅固な擁壁等で保護されており、又は当該建築物の構造により、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。

石川県建築基準条例 第五条

「がけ」の意味は、この条文の括弧書きの中にあります。条件は2つ——①勾配が30度を「超える」傾斜地で、②その高さが3メートルを「超える」もの。30度ちょうど、3メートルちょうどは、条文の言葉では「超える」に当たりません。石川県の条文は、勾配と高さの2つで決めていて、土か岩かによる除外を書いていません。人が造ったのり面か自然の斜面かの書き分けもありません(加賀市の解説は、同旨の市条例第6条について「自然がけであるか否かは問いません」と書いています)。

条文を探すときは、字の違いに注意してください。見出しと本文で「がけ」を使うのが県・七尾市・小松市・加賀市、「崖」を使うのが金沢市と白山市です(見出しは「崖付近の建築物」)。市の例規集を「がけ」で検索すると、金沢市と白山市では見つかりません。勾配の字も揃っていません——県と小松市は「勾配」で、正文では「勾」に「こう」のルビが振ってあり、白山市は「こう配」とひらがなです。

がけの条を置いている6本(県と5市)のうち、定義の組み立てが違うのは加賀市の1本です。ほかの5本が勾配と高さの2つで書くのに対し、加賀市の条例は「地表面が水平面に対し30度を超える傾斜度をなす土地で、その高さ(がけの上端と下端との垂直距離)が3メートルを超えるもの」——「勾配」ではなく「傾斜度」と書き、高さの測り方(がけの上端と下端との垂直距離)を条文の中に書き込んでいます。数字は同じですが、現地でどう測るかを条文が指定している点が違います。

義務の形は「がけの下端から、がけの高さの2倍以上、離す」——擁壁を設ける義務ではありません

下端から2倍以上離せば原則建てられます
条文が求めているのは距離を保つことです——「建築物は、がけ〔略〕の下端からがけの高さの二倍以上の水平距離を保たなければならない」。起点は「がけの下端」で、条文に「がけの上端から」という言葉はありません。対象は用途で絞られておらず、倉庫でも車庫でも当たります(新築だけでなく増築・改築・移転も)。測る先(外壁の外面か柱外面か)は所管の窓口に確かめてください——加賀市の解説の図1はそう描いていますが、同解説は他の特定行政庁とは取扱いが異なる部分があると断っています。2倍が取れていても、法第19条第4項の措置の検討は別に残ります「建てられます」は、第五条本文の義務を満たすという意味です——法第19条第4項・災害危険区域・土砂災害の区域は、別に確認してください。

条文が求めているのは、距離を保つことです——「建築物は、がけ〔略〕の下端からがけの高さの二倍以上の水平距離を保たなければならない」。一定の範囲の中なら擁壁を設けよ、という形ではありません。擁壁(ようへき)は、がけの土が崩れないように支える構造物です。塀とは役割が違います。離れる義務です。擁壁は、あとで出てくるただし書のほうに、離れなくてよいと認められるための事由の1つとして現れます。

起点は「がけの下端」です。条文には「がけの上端から」という言葉がありません。がけの上に建てる場合も、がけの下に建てる場合も、測る起点は下端の1点で、そこから水平距離で2H(Hはがけの高さ)。高さ4メートルのがけなら8メートル以上、高さ6メートルなら12メートル以上です。この距離が取れれば、第五条の関係では原則として建てられます

加賀市が公開する『加賀市建築基準条例と同解説』の図1も、この形で描かれています——がけの下端に「起点」の1点が置かれ、その左右それぞれに「規制範囲 2H」が伸び、低い側と高い側に建築物が1棟ずつ、どちらも2Hの端に外壁が来るように描かれている図です(斜面の下に立つ建物と、斜面の上に立つ建物が、同じ1つの起点から測られています)。そして図の吹き出しが、測る先を指定しています——「建築物の外壁の外面(壁が無い場合はこれに代わる柱外面)までの距離」。ただし、この解説は加賀市の解説で、冒頭に断りがあります。

(1) 本解説は、加賀市建築基準条例の内容について一般的な解説を行ったものです。他の特定行政庁とは取扱いが異なる部分がありますのでご注意下さい。

加賀市建築基準条例と同解説(平成30年4月・加賀市建築課)はじめに

県のページを探した範囲では、条例の逐条解説は見つかりませんでした(探したのは kijyuhou/kijyunnhoukijyunkitei/kijyunhoutetsuzuki/建築確認についての4ページ)。県のページから辿れるのは、あとで触れる調書の様式と記入例で、距離をどこまで測るか(壁面か、柱面か、軒先か)を県が示した文書は見つかりませんでした。加賀市以外の所管区域では、加賀市の図をそのまま持ち込まず、所管の窓口に測り方を確かめてください。

がけの上に建てるときが、間違えやすいところです。敷地から見えているのは上端の際で、下端は斜面の下——敷地の外や、他人の土地にあることもあります。それでも条文が測れと言っているのは下端からの水平距離です。上端から2H取ったから足りている、という測り方にはなりません。図面では、断面を描いてがけの下端を平面に落としてから測ってください。県の確認申請でも、添付図書として求められるのは下端からの距離です。金沢市では、市の規則で「崖の上下端から」の水平距離を示す図書が求められます(金沢市建築基準法施行規則第2条第1号)。県と金沢市は規則まで確かめています。小松市・七尾市・加賀市・野々市市については、確認申請の図書の規定をこの記事では確かめきれていません。

一 がけ(勾配が三十度を超える傾斜地で、その高さが三メートルを超えるものをいう。以下同じ。)に近接して建築するものである場合 建築物からがけの下端までの水平距離並びに当該がけの形状及び土質等を表示する図書

石川県建築基準法施行細則 第三条第一項第一号

対象の建築物は、用途で絞られていません。条文は「建築物は、」で始まります——居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)があるかどうか、住宅かどうかを問わない書き方です。倉庫でも車庫でも、建築物であれば当たります。ここでいう「建築」には、新築だけでなく増築・改築・移転も含まれます(建築基準法第2条第13号)。

そして2倍の距離が取れていても、それで安全の検討が終わるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。第五条の数字は条例の離隔義務の入口であって、安全検討の入口ではありません。

ただし書——3つの事由と、県が公開する「調書」

2倍以上が取れないときただし書の3つ
ただし書の事由は3つ——①がけの地盤が堅固であること/②がけが堅固な擁壁等で保護されていること/③当該建築物の構造によること。このいずれかにより「安全上支障がないと認められる場合」に、距離の規定が外れます。県は別記様式第15号「石川県建築基準条例第5条に基づく調書」を公開しています——項目は建築場所/建築物概要/がけの形状(角度・高さ)/がけの土質/擁壁等防護施設/安全性に関する所見の6つ。調書1枚で足りるとも、裏づけの資料が要らないとも書かれていません

2倍の距離が取れないとき、頼るのは第五条のただし書です。事由は3つ——①がけの地盤が堅固であること、②がけが堅固な擁壁等で保護されていること、③当該建築物の構造によること。このいずれかにより「安全上支障がないと認められる場合」に、距離の規定が外れます3つのどれかにより「安全上支障がないと認められる」なら、2倍が取れなくても第五条の関係では原則として建てられます——事由に当たるだけでは足りません白山市は、同旨の市条例のただし書が市長の許可を求めています(県条例第五条が適用されるのは13市町で、白山市は市条例のほうです)。災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は別に確認してください。

県は、確認申請に必要に応じて添える書類として、この調書を公開しています——調書1枚で足りるとも、裏づけの資料が要らないとも書かれていません。石川県の別記様式第15号「石川県建築基準条例第5条に基づく調書」です。書き出しは「下記建築物の計画に係る石川県建築基準条例第5条の規定については、安全上支障がないことを調査したので報告します。」。項目は6つ——1.建築場所/2.建築物概要(構造・用途・工事種別)/3.がけの形状(角度・高さ)/4.がけの土質/5.擁壁等防護施設(有・無、種類)/6.安全性に関する所見。署名欄は建築主調査した者の2つで、後者には「(土木技術者や建築士など)」と添え書きがあります——誰が調べたかが問われる書式です。

県が出している記入例は2つで、どちらも木造の一戸建ての住宅です。記入例1は角度90度・高さ3.5メートル・砂質土・擁壁「有」(鉄筋コンクリートL型擁壁)で、所見は「擁壁は都市計画法第29条の規定に基づき、○○年○月○日付○○土第○○号にて許可を受けた開発行為により築造された擁壁である。現状において、排水状況も問題なく、著しい傾斜やクラック等も発生していないことから安全であると判断する。」——許可の年月日と文書番号を書かせる形です。記入例2角度40度・高さ4メートル・礫質土(岩盤)・擁壁「無」で、所見は「がけは天然のものであり、岩盤で強固である。現状において、排水状況も問題なく、がけ面にクラック等の発生もなく安定していることから安全であると判断する。」。条文には岩盤による除外がありませんが、岩盤であることはこのただし書(地盤が堅固)の中で扱われている、というのが記入例の示す扱いです。

既にある擁壁でこのただし書に乗るなら、何をもって安全性を示すかを先に決めます。記入例1は、開発許可を受けて築造されたRC擁壁について、許可の年月日・文書番号と、いまの排水・傾斜・クラック等を書いた一例です——築造者や検査済証の記入欄があるわけではなく、すべての既存擁壁に同じ資料を求める根拠にもなりません。許可の資料が残っていない既存擁壁について、どの調査・計算・資料で安全性を示すかは、所管と個別に協議することになります。擁壁を新しく設ける場合の技術基準を、県が示した文書は見つかりませんでした。加賀市の解説は市条例第6条の解説として技術基準に触れていますが、平成30年4月版で、そこが古くなっています——解説が引く「宅地造成等規制法施行令」は、その後宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)に変わっており、読み替えが必要です(読み替え後の条番号は確かめていません)。同じ解説の条文枠が引く「法第43条第2項」も、現行の加賀市条例第1条では「法第43条第3項」になっています。この解説を根拠に使うときは、必ず現行の条番号と現行法に当て直してください。なお、高さ2メートルを超える擁壁は、建築基準法第88条第1項により工作物としての確認の対象になり得ます——擁壁そのものの手続きが別に立ちます。

白山市だけ、ただし書が「市長の許可」です

白山市はただし書に市長の許可が要ります
県・金沢市・七尾市・小松市・加賀市の条文には別個の許可手続が明記されていませんが、白山市だけ、ただし書が「市長が〔略〕安全上支障がないと認めて許可した場合」——許可という別の行為です。窓口は白山市建設部建築住宅課(076-274-9561)。加賀市には、がけの上の敷地に排水施設等の措置を義務づける第6条第2項があります(解説の言い方は「配慮して下さい」でも、条例は「講じなければならない」)。野々市市の建築基準条例には、がけの条がありません——これは条文からの読みで、市には確認していません。計画があるなら野々市市土木部建築住宅課(076-227-6136)へ。

県と6市の7つの条例を読んだ範囲で、ただし書の手続きが違う市が1つあります

(崖付近の建築物)
第5条 建築物は、崖(こう配が30度を超える傾斜地で、その高さが3メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の下端から崖の高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。ただし、市長が崖の地盤が堅固であり、若しくは崖が堅固な擁壁等で保護されており、又は当該建築物の構造により、安全上支障がないと認めて許可した場合は、この限りでない。

白山市建築基準条例 第5条

県・金沢市・七尾市・小松市・加賀市の条文には、白山市のような別個の許可手続が明記されていません——確認申請の対象となる計画では、原則として審査の中で適合性が確かめられます。ただし、確認申請の対象外でも適合の義務は残るので、ただし書を使う計画は着工前に所管へ確かめてください。白山市は「市長が〔略〕安全上支障がないと認めて許可した場合」——許可という別の行為を求めています。白山市では災害危険区域の第4条ただし書も「市長が〔略〕安全上及び避難上支障がないと認めて許可したとき」で、同じ書き方が並びます。市長の許可を受ければ、白山市の条例の関係では原則として建てられます——災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項は、別に確認してください。白山市に計画があるなら、確認申請の前に、許可の申請先・必要書類・期間を白山市建設部建築住宅課(076-274-9561)に確かめてください。

県と6市の7本を読んだ範囲で、がけの条に第2項を置いているのは加賀市の1本です。

2 がけの上にある建築物の敷地には、排水施設を設ける等、地盤の保全及びがけ面への流水又は浸水を防止するための措置を講じなければならない。

加賀市建築基準条例 第6条第2項

距離の話ではなく、がけの上の敷地に、排水施設を設ける等の措置を義務づける条項です。加賀市の解説は、これについて「雨水、汚水の排水ががけ面を流下し、擁壁の裏側又はがけに浸透しないように排水施設を設けることで地盤の保全に努めるように配慮して下さい。」と書いています——ただし解説の言い方が「配慮して下さい」でも、条例の第2項は「講じなければならない」です。県と他の5市の条例には、これに当たる項が見当たりませんでした。

そして、野々市市の建築基準条例には、がけの条がありません。野々市市建築基準条例(平成23年12月19日条例第31号/最終改正 令和7年3月19日条例第11号・令和7年4月1日施行)の第1条が引くのは法第40条・第43条第3項・第56条の2第1項で、条の並びは趣旨・路地状部分の幅員・長屋及び共同住宅の出入口・興行場等・百貨店等・自動車車庫等・日影・罰則と続き、がけ(崖)の条は置かれていません(例規集のページを検索して「がけ」「崖」のヒットは0件でした)。県条例第二条第1項は、市が法第40条等の条例を定めたときに県条例の関係規定を外す書き方なので、条文どおり読めば、野々市市では県条例第五条は適用されません——がけからの距離の条例規制が無い市ということになります。ただし、これは条文からの読みで、市に確認していません。野々市市で、がけに近い敷地の計画があるなら、計画地の住所と現況写真・断面のわかる図面を持って、野々市市土木部建築住宅課(076-227-6136)に「がけからの離隔を求める市の規定はあるか、指導要綱・開発の基準を含めてあるか」を聞いてください。条例が無くても、建築基準法第19条第4項の措置の義務と、次に述べる土砂災害防止法の規制は、そのままかかります。

土砂災害のレッドゾーンは、この条例とは別の決まりです

レッドゾーンでも2倍以上は外れません
石川の条例には、レッドゾーンを理由に、がけの規定を外す定めが見当たりません——県条例・県の施行細則・6市の条例の8本を機械で検索して「土砂災害」「特別警戒」「第80条の3」はいずれも0件でした。条例の2倍以上の規制は居室の有無を問わず建築物について判定し、レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら建築基準法施行令第80条の3の構造規制を別に確かめます。レッド指定を理由に第五条の扱いを変える運用があるかは、県に確認していません。指定は石川県土砂災害情報システム(SABOアイ)で確認し、境界と数値は県が公表する指定の図書へ。

石川の条例には、レッドゾーンを理由に、がけの規定を外す定めが見当たりません。県条例・県の施行細則・6市の条例の8本の全文を機械で検索したところ、「土砂災害」「特別警戒」「第80条の3」のいずれも0件でした。つまりレッドゾーンの中でも外でも、がけの条文(県条例第五条、または条文を置いている5市の条文)は同じようにかかり、レッドゾーンの中なら、その上に土砂災害防止法の規制が重なります。条例の2H規制は居室の有無を問わず建築物について判定しますが、レッドゾーン内に居室を有する建築物を建築する場合は、これとは別に建築基準法施行令第80条の3の構造規制を確かめます。片方が片方を外す関係ではありません(条例の本文の上では、です)。条例本文にレッド指定を理由とする適用除外は見当たりませんが、レッド指定を理由に第五条の扱いを変える運用があるかは、県に確認していません。レッド・イエローについて県が言っているのも、条例の話ではなく法令の側の話です。

土砂災害特別警戒区域内に居室を有する建築物の新築等を行う際は、建築基準法施行令第80条の3の構造規制を受けます。
また、都市計画区域外であっても原則、確認申請が必要です。

石川県「建築基準法の施行(基準・規定)に関すること」(更新日2025年12月5日)

石川県内の指定は、県の石川県土砂災害情報システム(通称SABOアイ)で確認できます。国土交通省の集計(令和8年3月末時点の値として公表、2026年6月30日時点の資料)では、石川県の土砂災害警戒区域は4,697か所、うち土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は3,578か所。内訳は土石流2,119(うちレッド1,707)、急傾斜地の崩壊1,917(うちレッド1,871)、地滑り661(うちレッド0)です。急傾斜地の崩壊は、1,917か所のうち1,871か所がレッドです。市町村のハザードマップは避難の確認には有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります——境界と数値は、県が公表する指定の図書で確かめてください。

レッドゾーンでは、居室を有する建築物の構造規制(令第80条の3)のほか、特定開発行為——住宅(自己の居住の用に供するものを除く)や、高齢者・障害者・乳幼児など特に防災上の配慮を要する人が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるもの)を建てるための土地の区画形質の変更——の許可(土砂災害防止法第10条第1項。申請は第11条、許可基準は第12条、完了検査は第18条)が問題になります。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為には、許可が要りません(同項ただし書、同法施行令第5条)。特定開発行為でなくなるわけではありません。予定建築物の用途がまだ確定しておらず、これら以外の用途であることが確定していないものも、制限用途に含まれます。また、土砂災害防止法第25条は、建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く特別警戒区域で、居室を有する建築物のうち同項第1号・第2号の建築物を除くものに、同項第3号の確認規定を適用する仕組みです——敷地が区域の内外にまたがる場合は、同法第25条により適用される建築基準法第91条に基づき、敷地の過半で判定します。これに当たれば、都市計画区域外でも建築確認が必要になります(敷地の過半が区域外なら、この第25条による追加の対象にはなりません——建築基準法第6条による別の確認要件がある場合は別です)。県のページの「都市計画区域外であっても原則、確認申請が必要です」は、この同法第25条の仕組みを指していると読めます(県のページに根拠条文は書かれていません)。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。擁壁の選び方も合わせてどうぞ。

災害危険区域は第三条・第四条——「居室のある建築物」は原則、建てられません

災害危険区域は原則、居室があると不可
第三条・第四条です。禁止されるのは「居室のある建築物」——「住宅」ではありません。例外は2つの号だけで、しかも号に当たるだけでは足りず、「安全上及び避難上支障がないと認められるとき」が重なります。告示の写しは旧市町村名で書かれているので、自分で読み解かず、窓口で区域図に当ててもらってください。6市では、市条例による指定だけでなく、県条例による指定・適用の有無も確かめてください——二重になるのか、県が6市では指定しないのかは、条文からは決められませんでした。

石川県は、急傾斜地崩壊危険区域及びこれに準ずる地域のうち、知事が指定する区域を、建築基準法第39条第1項の災害危険区域としています(第三条第1項)。指定は告示によって効力を生じ、指定・解除・変更のいずれも告示によります(同条第3項〜第5項)。区域内の制限は第四条です。

(建築の制限)
第四条 災害危険区域内においては、居室のある建築物は、建築してはならない。ただし、次の各号の一に該当する場合で安全上及び避難上支障がないと認められるときは、この限りでない。
一 当該建築物の基礎及び主要構造部の構造が鉄筋コンクリート造又はこれに類するものであるとき。
二 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第二条第三項に規定する急傾斜地崩壊防止工事の施工により、当該建築物が被害を受けるおそれがないとき。

石川県建築基準条例 第四条

禁止されるのは「居室のある建築物」です。「住宅」ではありません——事務所でも店舗でも、居室があれば当たります。同じ条文を持つ加賀市の解説は、市条例第5条について「本条の対象になる建築物は、用途、規模にかかわらず居室を有するものすべてです。なお、建築物が区域の内外にわたる場合は、区域内の建築物の部分が本条の適用対象となります。」と書いています。例外は2つの号だけで、①基礎及び主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段。建物の構造上重要な部分)が鉄筋コンクリート造又はこれに類する構造であること、②急傾斜地崩壊防止工事の施工により被害を受けるおそれがないこと。しかも号に当たるだけでは足りず、「安全上及び避難上支障がないと認められるとき」という条件が重なります。

区域の実物は、県が告示の写しをPDFで公開しています。1頁目の見出しは「○災害危険区域の指定(昭五二・一・一四 石川県告示一九)」で、「石川県建築基準条例(昭和四十九年石川県条例第六十七号)第三条第一項の規定により、次の区域を災害危険区域に指定する。」と続きます。中身は県例規集の頁の写しで、区域は「姫二号災害危険区域」のように号で呼び、地番と標柱の番号で特定されます。1本の告示ではなく、後年の告示が重ねられています(25頁目に平成年代の別の告示が始まっているところまで確認しました。全部で何本か、何区域あるかは数えていません)。そして地名が旧市町村名のままです——鳳至郡能都町・門前町、珠洲郡内浦町といった合併前の名前で書かれているので、今の住所と突き合わせるには読み替えが要ります。自分の土地が入っているかどうかは、この写しを目で追うより、所管の窓口で区域図に当ててもらうほうが確実です。

6市では、指定の仕組みが市ごとに違います。加賀市は第4条で「市長が指定する区域は、〔略〕石川県知事が急傾斜地崩壊危険区域及びこれに準ずる地域のうち指定して告示した区域とする」——知事の告示区域を市長が受ける書き方。小松市(第3条)・七尾市(第3条)は市長が指定する書き方。白山市(第3条)は「石川県知事が本市の区域内において指定した急傾斜地崩壊危険区域」で、「これに準ずる地域」が入っていません。金沢市の建築基準条例には災害危険区域の章がなく(第1条が引くのは法第40条・第50条・第43条第3項・第56条の2で、法第39条を引いていません)、野々市市も市のページで「現在、野々市市には建築基準法第39条の規定による条例によって定められた災害危険区域はありません。」と書いています。

ここに、条文だけでは決められない点が1つ残ります。県条例第二条第1項が県条例を外す条件として挙げているのは法第四十条・第四十三条第三項・第五十六条の二第一項の3つで、法第三十九条(災害危険区域)は入っていません。条文どおり読めば、6市でも県条例第三条・第四条は外れないように読めます。一方で加賀市・小松市・七尾市・白山市は自分の条例で指定の仕組みを持っています。二重になるのか、県が6市では指定しないのかを、条文からは決められませんでした。6市で災害危険区域の該当が疑われる敷地なら、市の建築指導の窓口と、県土木部建築住宅課(076-225-1778)の両方に、区域図と計画図を示して「この場所について、県条例による指定・適用と、市条例による指定の両方があるか」を確かめてください——どちらか片方だけを確かめれば足りる、とは言えません。該当する告示・区域図・適用条例を、市と県の双方に確かめてください。

なお、急傾斜地崩壊危険区域内での切土・盛土・工作物の設置などは、条例とは別に急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります。加賀市の解説も、区域内で建築物を建築する場合は別途知事の許可が必要になる旨を書いています。

既存の建物・用途変更・仮設——条例の側に緩和の定めがありません

条例の側に緩和の定めがありません
県条例・県の施行細則・6市の条例の8本を検索して「既存不適格」「仮設」「第八十五条(85条)」「用途変更」は8本とも0件——県条例には雑則の章がありません。使えるのは法の側の仕組みです。法第86条の7第1項の法定緩和は、法第39条・第40条に基づく条例の規定には届きません(届くのは移転の第4項と施行令第137条の16)。仮設は法第85条第1項・第2項の適用除外で、第2項は「第三十九条及び第四十条の規定並びに第三章の規定は、適用しない」と書いていて「同条に基づく条例の規定」とは書いていません——所管の窓口で確かめてください。

県条例・県の施行細則・6市の条例の8本の全文を検索したところ、「既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)」「仮設」「第八十五条(85条)」「用途変更」の語は、8本ともいずれも0件でした。石川県建築基準条例の章立ては第一章 総則(1・2条)/第二章 災害危険区域(3・4条)/第三章 建築物の敷地及び構造(5〜7条)/第四章 特殊建築物(8〜17条)/第五章 日影規制(18条)/第六章 罰則(19・20条)で、雑則の章がありません。「条例に緩和の規定があるはずだ」という前提で探しても、石川では出てきません。条例の側に定めが無い以上、使えるのは建築基準法の側の仕組みです。

①既存不適格——条例の規定の施行・改正のときに適法に存在し、または工事中で、その施行・改正によって適合しなくなった建築物等には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません(条例の全部が外れるという意味ではありません)。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。もっとも増築・改築の側では、法第86条の7第1項の法定緩和がこの条例には届きません——同項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません(同条第2項・第3項も同じです)。施行令第137条の2以下も、それぞれ法の個別の条に対応するものです。法第86条の7の中で、法第39条・第40条に基づく条例規定を対象にできるのは、第4項の移転です——これとは別に、二以上の工事に分けて増築等を行う場合には法第86条の8、用途変更に伴う工事を段階的に行う場合には法第87条の2の全体計画認定を使える場合があります(いずれも、全工事の完了後の建築物が建築基準法令に適合する計画であることが前提です)。法第86条の7第4項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)。この第4項による別の緩和があります(同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁(原則として、建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事。ただし、法第97条の2により建築主事または建築副主事を置く市町村(限定特定行政庁)の区域内では、政令で定める建築物の特定行政庁は都道府県知事です——法第2条第35号ただし書)が認める移転。施行令第137条の16)。石川県の施行細則第三条第一項第三号は、法第八十六条の七の緩和の適用を受ける場合に別記第二号様式による書面を添付させています——これは法の緩和を使うときの様式であって、条例の緩和ではありません。

②用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。がけの第五条だけでなく、災害危険区域内の第四条も対象です(居室のない倉庫を、居室のある用途に変える場合などに問題になります)。法第3条第2項により法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)の適用を受けない建築物の用途変更については、同項により原則としてこれらの規定が準用されます。増築・改築・大規模の修繕・模様替をする場合や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件(同項第2号)を満たす場合はこの準用から除かれます号ごとに結論が違います——第1号(増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を伴う場合)は、用途変更の側ではなく法第3条第3項で判断します。第2号(政令で指定する類似の用途相互間で、修繕・模様替をしないか、それが大規模でない場合)は、その用途変更だけを理由に条例が遡って適用されることはありません第3号は法第48条(用途地域)に関する例外で、がけの規定には関わりません。

③仮設・災害時——特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、法第85条第1項により、災害により破損した部分の応急の修繕は工事の着手時期にかかわらず(国土交通省の通知)、国・地方公共団体・日本赤十字社の災害救助用と、被災者が自ら使用する延べ面積30平方メートル以内の応急仮設建築物は災害発生の日から1か月以内に工事に着手する場合に、建築基準法令の規定を適用しない特例があります。第1項・第2項の応急仮設建築物を工事完了後3か月を超えて存続させるには、その日前に特定行政庁の許可が必要です(同条第3項。期限前に申請し、期限までに処分がされないときは、処分がされるまで存続できます——同項ただし書)。なお第85条第1項には「ただし、防火地域内に建築する場合については、この限りでない」というただし書があります。また同条第2項は、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場その他これらに類する仮設建築物などについて、「第三十九条及び第四十条の規定並びに第三章の規定は、適用しない」と定めています——ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積50平方メートルを超えるものについては、法第62条が適用されます(同項ただし書)。第五条は法第四十条による付加制限なので、これに当たる仮設建築物には及ばないと読めますが、条文は「第四十条の規定」とだけ書いていて「同条に基づく条例の規定」とは書いていません——所管の窓口で確かめてください。石川県と6市の条例には、仮設建築物についての独自の定めがありません——使えるのは、この法の側の特例です。

罰則は第十九条・第二十条——50万円以下の罰金。名宛人は原則、設計者です

県条例違反は原則、設計者に50万円以下
第十九条・第二十条です。対象は「第四条から第十七条まで」——がけの第五条も、災害危険区域の第四条も入ります。第二十条は両罰で、法人・人にも同じ刑が科されます(ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意及び監督を尽くしたことの証明があった場合の、法人・人への刑に限られます——行為者への刑は残ります)。建築確認が要らない計画でも、適合の義務は残ります——是正命令(建築基準法第9条)の対象にもなり得ます。野々市市を除く5市の条例は対象条の並びが県と違いますが、いずれもがけの条を含み、額は50万円で同じです(金沢市の正文は「500,000円以下」)。罰金が建築主に科されるのは故意のとき。是正命令(法第9条第1項)の相手方は建築主・工事の請負人・現場管理者・所有者・管理者・占有者で、故意は要件ではありません——命令違反は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法第98条第1項第一号)。

第十九条 第四条から第十七条までの規定のいずれかに違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工した場合においては、当該建築物の工事施工者)は、五十万円以下の罰金に処する。
2 前項に規定する違反があつた場合において、その違反が建築主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主に対して同項の刑を科する。

石川県建築基準条例 第十九条

対象は「第四条から第十七条まで」——がけの第五条も、災害危険区域の第四条も、どちらも入ります。名宛人(なあてにん=命令や罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いないで工事を施工した場合工事施工者に替わります。建築主に刑が科されるのは、違反が建築主の故意によるときに限られます。第二十条は両罰規定で、法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたとき、行為者を罰するほか法人・人にも同じ刑を科します——ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意及び監督を尽くしたことの証明があった場合の、法人・人への刑に限られます(行為者への刑は残ります)。

市の罰則には、県と違うところが3つあります。1つめ——金沢市と加賀市は、名宛人が施工者に替わる場面が県より1つ広い。県は「設計図書を用いないで工事を施工した場合」だけですが、この2市は「設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合」と書いています。2つめ——金沢市は両罰が第19条第3項にあり、そこに免責のただし書がありません(県・七尾市・小松市・加賀市・白山市には、相当の注意及び監督を尽くしたことの証明があったときの免責のただし書があります)。3つめ——金沢市の額は正文で「500,000円以下」と算用数字で書かれています(他は「50万円以下」。金額は同じです)。対象条は、金沢市が第19条で第2条から第10条まで及び第12条から第18条まで、七尾市・小松市が第19条・第20条で第4条から第17条まで、加賀市が第20条・第21条で第5条から第18条まで、白山市が第20条・第21条で第4条から第17条まで及び第19条——いずれもがけの条を含みます。野々市市は第15条・第16条に同型の罰則を置いていますが、対象は第2条から第13条までで、そもそも条例にがけの条がありません

そして、適合の義務は審査の有無にかかわらず残ります。建築確認の対象となる計画では、この条例への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例(建築基準法第6条の4・施行令第10条)による審査省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まります——審査が省略される場合でも、適合義務は別に生じます(石川県と6市がこの規則で何を定めているかは、確かめていません——省略されるかどうかは所管の窓口へ)。違反すれば是正命令(建築基準法第9条。除却(じょきゃく=取り壊し)・使用禁止などの措置を含みます)や罰則の対象になり得ます。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていません命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。条例の罰則は罰金だけですが、こちらは拘禁刑もあります。

条件に当たる古い住宅は、移転補助の対象になり得ます

条件に当たれば移転補助の対象になり得ます
石川県にはがけ地近接等危険住宅移転事業があります。以下は、県のページ(更新日2023年8月21日)に載っている当時の内容です——補助対象の危険住宅は①勾配が30度を超え、高さが3mを超えるがけの近接地(昭和36年4月1日以前に建築された住宅)/②災害危険区域内/③土砂災害特別警戒区域内(②③は区域に指定された日以前に建築された住宅)。「近接地」がどこまでを指すかを、県のページは書いていません。除却等は一戸あたり97万5千円が上限、借入金の利子相当額は令和2年度の額として325万円(土地の購入も要する場合は421万円)。事業主体は市町——いまの実施の有無・対象費目・上限額は市町へ。

石川県にはがけ地近接等危険住宅移転事業があります。以下は、県のページ(更新日2023年8月21日)に載っている当時の内容です——現在の対象区域・除却費・引越費用等・借入金利子補助額と、事業を実施しているかどうかは、市町ごとに確かめてください。同ページが挙げる補助対象の危険住宅は3つで、①勾配が30度を超え、高さが3mを超えるがけの近接地(昭和36年4月1日以前に建築された住宅であること)/②災害危険区域内(区域に指定された日以前に建築された住宅であること)/③土砂災害特別警戒区域内(区域に指定された日以前に建築された住宅であること)。①の数字(30度超・3m超)は、条例第五条の「がけ」の定義と同じです。ただし「近接地」がどこまでを指すかを、県のページは書いていません——条例の2倍の範囲と同じとは限らないので、そこは市町の担当課に確かめてください。

補助は危険住宅の除却等(撤去・動産移転・仮住居・跡地整備)に一戸あたり97万5千円が上限と、危険住宅に代わる住宅の建設等の借入金利子相当額(利率年8.5%を限度)の2本立てです。県のページは後者の補助限度額を「令和2年度の一戸当たり補助限度額は、住宅のみを購入の場合、325万円です。ただし、土地の購入も要する場合の補助限度額は、421万円です。」と書いていますが、これは令和2年度の額として書かれたもので、ページの更新日は2023年8月21日です——今の額として使わず、市町に確かめてください。注意事項も2つあります——この事業と同じ目的の急傾斜地崩壊防止工事が行われている区域は対象になりません。そして事業主体は市町ですから、相談先は県ではなく市町の担当課です。工事着手は交付決定の後、工事は年度内に完了、危険住宅は原則として完全撤去、という条件も付いています。

売買契約の前に、専門家と確かめること

売買契約の前に、専門家と確かめること
測量・断面図は建築士へ条例・区域は所管の建築窓口へ移転補助は市町へ——聞く先が分かれます。★この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士条例の当てはめは所管の建築行政の窓口です。個別の判断は建築士と、建築地を所管する建築確認担当課へ。能美市は、施行令第148条第1項第1号・第2号の建築物だけ市(0761-58-2251)、それ以外は県南加賀土木総合事務所(0761-21-3333)です。建築確認は、業務範囲に対応する指定確認検査機関にも提出できます(法第6条の2)——その場合の相談先は、まずその機関へ。小松市・七尾市・加賀市・野々市市については、確認申請の図書の規定をこの記事では確かめきれていません。

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に確かめてください。どこを上端・下端とみるかも、窓口に確かめてください。

  • ① 計画地がどの所管かを最初に決める。金沢市・七尾市・小松市・加賀市・白山市・野々市市の6市は各市の条例、残りの13市町は県条例(窓口は4つの土木事務所)。能美市は、施行令第148条第1項第1号・第2号の建築物だけ市(0761-58-2251)、それ以外は県南加賀土木総合事務所(0761-21-3333)——規模を伝えて先に決めます
  • ② 現地に「勾配30度を超え、高さ3メートルを超える」傾斜地があるか。敷地の中とは限りません。石川の条文は土質や自然・人工による除外を書いていないので、岩でも造成のり面でも、この2つの数字に当たれば「がけ」です(岩盤であることは、次の④のただし書のほうで扱われます——県の記入例2がその形です)。30度ちょうど・3メートルちょうどは「超える」に当たりません
  • ③ 図面に「がけの下端」を落とし、そこから水平に2H取れているかを測る。上に建てるときも下に建てるときも起点は下端です。高さ4メートルなら8メートル以上。測る先(外壁の外面か柱外面か)は所管の窓口に確認——加賀市の解説の図1は外壁の外面(壁が無い場合は柱外面)までとしていますが、同解説は他の特定行政庁とは取扱いが異なる部分があると断っています
  • ④ 2Hが取れないなら、ただし書の3つの事由のどれで示すか。県の所管区域なら別記様式第15号「石川県建築基準条例第5条に基づく調書」を県のページから先に落とし、6項目(建築場所/建築物概要/がけの形状〔角度・高さ〕/がけの土質/擁壁等防護施設/安全性に関する所見)を誰が埋められるかを見ます。署名は建築主調査した者(土木技術者や建築士など)の2つ。安全上支障がないと認められれば、2Hが取れなくても第五条の関係では原則として建てられます(白山市は、同旨の市条例のただし書が市長の許可を求めています。災害危険区域・土砂災害の区域・法第19条第4項も別に確認してください)
  • ⑤ 既にある擁壁で通すなら、何をもって安全性を示すかを所管と協議する。県の記入例1は、開発許可を受けて築造されたRC擁壁について、許可の年月日・文書番号と、いまの排水・傾斜・クラック等を書いた一例です。許可の資料が残っていない既存の擁壁については、どの現況調査・計算書その他の資料で安全性を示すかを、所管と協議します。高さ2メートルを超える擁壁を新たに設けるなら、建築基準法第88条第1項による工作物の確認が別に立ち得ます
  • ⑥ 白山市なら、ただし書は「市長の許可」。確認申請の前に、許可の申請先・必要書類・期間を白山市建設部建築住宅課(076-274-9561)へ。加賀市なら、がけの上の敷地に排水施設等の措置の義務(第6条第2項)が別にかかります
  • ⑦ 野々市市で、がけに近い敷地の計画があるなら、市に直接聞く。条例にがけの条が無いという読みは条文からのもので、市に確認していません。計画地の住所・現況写真・断面のわかる図面を持って、野々市市土木部建築住宅課(076-227-6136)に「がけからの離隔を求める規定は、指導要綱・開発の基準も含めてあるか」を確かめてください
  • ⑧ 災害危険区域に入っていないか。入っていれば居室のある建築物は原則、建築できません(住宅に限りません)。例外は2つの号(RC等の構造/急傾斜地崩壊防止工事の施工)に当たり、かつ安全上及び避難上支障がないと認められるときだけ。告示の写しは旧市町村名で書かれているので、自分で読み解かず、窓口で区域図に当ててもらう——6市では、市条例による指定だけでなく、県条例による指定・適用の有無も確かめ、県・市の双方の告示・区域図・適用条例を照らし合わせます
  • ⑨ 土砂災害警戒区域・特別警戒区域は、条例とは別にかかる。石川の条例にはレッドゾーンを理由とする適用除外がないので、条例の2倍の規定は居室の有無を問わずかかり、令第80条の3は居室を有する建築物にかかります——レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てるなら、両方を通します。指定はSABOアイで確認し、境界と数値は県が公表する指定の図書へ。居室を有する建築物(建築基準法第6条第1項第1号又は第2号に掲げるものを除きます)が区域内で、かつ敷地の過半が区域内なら、都市計画区域外でも土砂災害防止法第25条により建築確認が必要です(第25条は、法第6条第1項第3号に規定する区域と、同項第1号・第2号の建築物を対象から除いています。「敷地の過半」は第25条ではなく、第25条が適用する法第91条から)
  • ⑩ 建築確認が不要なことだけを理由に、条例が外れるわけではありません。都市計画区域外でも第五条は効きます(県条例第二条第2項の列挙に第五条は入っていません)。違反すれば是正命令(建築基準法第9条)や、50万円以下の罰金(原則、設計者)の対象になり得ます
  • ⑪ 今の家が古く、がけの近く・災害危険区域・レッドゾーンにあるなら、移転の補助を市町に聞く。がけ地近接等危険住宅移転事業は事業主体が市町で、建築年(がけの近接地なら昭和36年4月1日以前、区域内なら指定日以前)が条件です。県のページは2023年8月21日更新です。借入金の利子補助の325万円・421万円は、令和2年度の額として載っています——除却等の97万5千円を含め、いまの事業の実施の有無・対象費目・上限額は市町に確かめてください
  • 確認申請の提出先は、行政庁だけではありません。建築確認は、業務区域・業務範囲に対応する指定確認検査機関にも申請できます(建築基準法第6条の2)。どこへ相談するかは申請先によって変わります——指定確認検査機関へ申請するなら、まずその機関へ。

個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、建築地を所管する建築確認担当課にご確認ください。石川県の逐条解説は上のとおり見つけられなかったので、県の所管区域では条文と、別記様式第15号の記入例2つが、実務の手がかりになります。

出典

  • 石川県建築基準条例(県例規集・第一条・第二条・第三条・第四条・第五条・第十九条・第二十条)
  • 石川県 建築基準法の施行(基準・規定)に関すること(相談窓口表・災害危険区域・土砂災害特別警戒区域。更新日2025年12月5日)
  • 別記様式第15号「石川県建築基準条例第5条に基づく調書」(石川県・様式)
  • 同 記入例1・記入例2(石川県・PDF)
  • 野々市市 建築に係る法規制等(災害危険区域の有無)
  • 能美市例規集 第10編 建設・第1章 通則(建築基準条例の有無)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第88条)
  • 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第10条・第80条の3・第137条の2以下・第137条の16・第148条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例の第五条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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