山口県で、がけの近くに家を建てる・買う人へ——最初に答えから。
先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って計画地を所管する建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。
①根拠は山口県建築基準条例(昭和47年10月20日山口県条例第42号)第7条。②高さが2メートルをこえるがけの上または下に建築物を建てる場合で、建築物ががけの上ではがけの下端(かたん)から、がけの下ではがけの上端(じょうたん)から、水平距離でそのがけの高さの1.5倍「以内」に入ることとなるときは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないように支える構造物。塀とは役割が違います)を設けなければなりません——山口の第7条は「1.5倍だけ離しなさい」ではなく、「1.5倍以内なら原則として擁壁を設けなさい」と書かれています。擁壁を設けず、ただし書の安全上支障がない旨の認定も受けないなら、結果として1.5倍の範囲の外に置くことになります(県の解説も第7条の趣旨を「がけから離す距離の最低基準」と書いています)——擁壁があれば1.5倍以内に建てられない、という意味ではありません。③山口県建築基準条例第7条は県内全域に適用されます。県の公表一覧に載る範囲では、市独自の同種の一般的ながけ条例は確かめられませんでした——ただし全市町の例規を個別に照合したものではなく、地区計画等による市独自の建築制限は別にあります。分かれるのは所管の窓口と、県の施行細則が及ぶ範囲です。
以下は、山口県土木建築部建築指導課が公開している条例のPDF(最終改正 令和6年3月19日)、「山口県建築基準条例及び建築基準法施行細則の解説」(令和6年3月29日)、建築基準法施行細則(昭和59年3月31日山口県規則第30号。最終改正 令和7年10月31日)、県のよくある質問、県砂防課のページから読んだ整理です(2026年8月29日に、いずれも県公開の原文で確認しました)。
「がけ条例」の実体は、山口県建築基準条例の第7条です

「がけ条例」という名前の条例はありません。山口県では、建築基準法の委任を受けた山口県建築基準条例の第7条(擁壁の設置)が、がけの上・下に建てる建築物の決まりです。県自身も、よくある質問のなかでこの通称を使っています。
10 計画する敷地が、「がけ条例」の適用対象となるのか教えてほしい。
【県FAQ】山口県 建築基準法に関するよくある質問 Q10(2025年4月1日更新)
山口県建築基準条例第7条に基づき、高さ2mをこえるがけの上又は下に建築物を建築する場合で、がけから一定の距離にある場合は、擁壁を設ける必要があります。
条例第1条(趣旨)が挙げる委任の根拠は、建築基準法第40条、第43条第3項、第56条の2第1項の3本です。このうち第43条第3項は敷地と道路との関係についての制限の付加、第56条の2第1項は日影による中高層の建築物の高さの制限に係る対象区域等の指定に関する委任で、擁壁の規定には関わりません。条例は条ごとの割り当てを書いていませんが、第7条が拠るのは、この3つのうち建築物の敷地・構造に関する制限を付加する法第40条と読めます。条例第1条には、法第39条(災害危険区域)が入っていません——ここは後の節で扱います。
そしてこの条例は県内全域に適用されます。県の解説は、冒頭でこう断っています。
なお、条例については県内全域で適用されておりますが、建築主事を置く市※においては、詳細は市にお問い合わせください。また、施行細則については、県が建築主事を置く市町のみの適用となります。
【県解説】山口県建築基準条例及び建築基準法施行細則の解説(令和6年3月29日)P1
※ 特定行政庁:下関市、宇部市、山口市、萩市、防府市、岩国市、周南市
限定特定行政庁:長門市、山陽小野田市
分かれるのは「施行細則」であって、「条例」ではありません。解説がいう「建築主事を置く市」は、この※で挙げられた9市を指しています。県のよくある質問は、その区分をさらに具体に書いています——特定行政庁(建築確認を担当する県または市町村)の7市(下関市、宇部市、山口市、萩市、防府市、岩国市、周南市)と、限定特定行政庁の2市(長門市及び山陽小野田市。法第6条第1項第三号の建築物、第二号の建築物の一部、および高さが2メートルを超え3メートル以下の擁壁などの工作物に限ります——法第97条の2第1項、建築基準法施行令第148条第1項第一号〜第三号(工作物は、第一号・第二号の建築物以外の建築物の敷地内に築造するものを除きます)。)、そしてそれ以外の市町は県の所管です。特定行政庁7市は市所管、長門市・山陽小野田市は法第6条第1項第三号建築物、第二号建築物の一部と、高さが2mを超え3m以下の擁壁などの工作物だけが市所管で、それ以外の建築物は県所管です——市所管に当たるなら各市の建築行政担当課へ、県所管なら所管の土木建築事務所へ——県は、それぞれの一覧をページで公開しています。
市が独自の建築基準条例を持っていないかも見ておきます。県が公開する「市町別条例等(建築基準法等関係)の一覧」(令和7年4月1日現在)には、各市の建築基準法施行細則・建築協定条例・地区計画の制限条例などが並びますが、「◯◯市建築基準条例」という条例は載っていません(この一覧に載る範囲での確認です。個別の市の例規そのものには当たっていません)。なお、県が公開する「山口県建築基準法取扱集」(令和7年3月14日更新)は、総則・防火避難・設備の3分野で構成されていて、がけを扱う項目はありません——この取扱集自体も、冒頭で「建築基準法における山口県(特定行政庁又は限定特定行政庁である市は除く)の考え方を示したものです。」と範囲を限っています。がけの運用について県の公表資料で見つけられたのは、解説PDFのP3〜P4です。
どこからが「がけ」か——勾配が30°を超える土地。高さ2メートルをこえるは、第7条本則の条件です

(擁壁の設置)
山口県建築基準条例 第7条
第七条 高さが二メートルをこえるがけの上又は下に建築物を建築する場合において、当該建築物が次に掲げる範囲内にあることとなるときは、擁壁を設けなければならない。ただし、建築物の規模若しくは構造又はがけの土質により安全上支障がないと認められるときは、この限りでない。
一 がけの上においては、そのがけの下端からの水平距離がそのがけの高さの一・五倍以内
二 がけの下においては、そのがけの上端からの水平距離がそのがけの高さの一・五倍以内
条文には「がけ」の定義がありません。定義を持っているのは県の解説です。
①:地表面が水平面に対し30°を超える角度をなす土地のことです(旧宅地造成等規制法(以下、宅造法)施行令第1条第2項を準用)。
【県解説】同 P3 第7条の用語説明①
押さえどころが2つあります。1つは勾配で、「30°を超える」——ちょうど30°は入りません。もう1つは高さで、「二メートルをこえる」——ちょうど2.0メートルは入りません。そして高さの条件は「がけ」の定義の側ではなく、第7条本則の適用条件として条文に置かれています。なお、解説がここで引くのは「旧」宅地造成等規制法の施行令で、現在の宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の施行令ではありません。解説の書き方をそのまま示しています——解説が準用する旧宅地造成等規制法施行令は昭和37年政令第16号で、この政令は同じ番号のまま「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令」としていまも生きています。現行の第1条第1項が同じ定義を置き(「崖」とは地表面が水平面に対し三十度を超える角度をなす土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のもの)、小段による一体化は現行の第1条第3項です。解説が挙げる「擁壁を要しない勾配」は、現行では同令第8条第1項第一号イと別表第一にあります——★条文は「切土をした土地の部分に生ずる崖」に限っており、自然の斜面や盛土の斜面に、そのまま当たる表ではありません。別表第一は擁壁を要しない角度と、要する角度の2欄で、その間の角度は上端から下方に垂直距離5m以内の部分に限って擁壁が要りません。県の解説が旧法名・旧条番号で書いている、というだけの違いです。
硬岩盤の扱いにも注意が要ります。解説の「がけ」の説明(用語説明①)には硬岩盤の除外が書かれておらず、硬岩盤はただし書(安全上支障がないと認められるとき)の例の側に、「宅造法施行令第1条第2項に規定する硬岩盤(風化の著しいものを除く)のがけのとき」として挙げられています(次の節に全文を引用します)。硬岩盤が「がけ」の定義から外れるのか、ただし書で受けるのかは、解説の記載だけからは読み分けられません——いずれの読み方でも、硬岩盤(風化の著しいものを除く)の場合は、解説がただし書の例として挙げている、という関係になります。準用元の条文(現行 第1条第1項)は「硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のもの」と、硬岩盤を「崖」の定義から外しています。県の解説は用語説明①でこの後半を落とし、硬岩盤を用語説明③(ただし書の例)に置いています。どちらで受けるかは県の解説の書きぶりからは決まらないので、地質調査の結果を持って、確認申請を出す先に当てはめを確かめてください。硬岩盤かどうかは調査で示すものですから、調査結果を持って、確認申請を出す先に当てはめを確かめてください。
小段で上下に分かれたがけを、1つと数えるか2つと数えるかも、解説が図で示しています。
<小段等によって上下に分離されたがけの考え方>
【県解説の図の注記】同 P3
下層のがけ面の下端を含み、かつ、水平面に対し30°の角度をなす面の上方に上層のがけ面の下端があるときは、その上下のがけを一体のものとみなす。ABCDEで囲まれる部分は一体のがけとみなす。ABCFGEで囲まれる部分のがけは、ABCHのがけとFGEIの別々のがけとみなされる。
下のがけの下端から30°で引いた面より上に、上のがけの下端があるならひとつのがけ——上下を足した高さで2メートルをこえるかどうかを見ることになります。これ以外の場面(複合斜面、擁壁のある斜面、地表面の取り方など)の高さ・勾配の測り方は、県の公表資料からは確認できませんでした。判断が分かれそうな地形は、確認申請を出す先に断面図を持って相談してください。
そして、第7条の「がけ」に当たらない斜面でも、1.5倍の範囲の外でも、安全の検討が要らなくなるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。この規定に、がけの高さの下限はありません。
1.5倍以内は原則として擁壁が必要——擁壁を設けないなら、その範囲の外へ

第7条が命じているのは擁壁の設置です。各号が定める「1.5倍以内」は、擁壁を設けなければならない範囲を画すもので、建築物をがけから離すべき最低距離ではありません。起点は上下で入れ替わります——がけの上に建てるならがけの下端から、がけの下に建てるならがけの上端からの水平距離です。たとえば高さ4メートルのがけなら、がけの上では下端から6メートル以内、がけの下では上端から6メートル以内が、擁壁の要る範囲になります。逆に、この範囲の外なら安全の検討が要らない、という意味ではありません——建築基準法第19条第4項の措置は別に問われます(前の節のとおり)。
どこまでを「範囲内」と測るかは、がけの上と下で違います。解説P3の図には、次の注記が入っています。
- がけ下は、外壁の外面までの範囲
- がけ上は、基礎底盤の外面までの範囲
- 規制範囲 1.5H(H>2m)
(山口県建築基準条例及び建築基準法施行細則の解説 P3・第7条の図中の注記。図には「※「開発許可ハンドブック」より」と添えられています)
図中の「1.5H」の H は、がけの高さです。がけの下に建てるときは建築物の外壁の外面まで、がけの上に建てるときは基礎底盤の外面まで——同じ「1.5倍以内」でも、当たる先が違います。がけの上では、外壁より外に張り出した基礎の底盤が範囲に入るかどうかで結論が変わり得ます。基礎伏図と断面図をそろえて確かめてください(この図には出典として「開発許可ハンドブック」が添えられていますが、その原典そのものには当たっていません。ここは解説の記載として示します)。
もうひとつ、読み分けが要る箇所があります。解説の●趣旨は、第7条をこう説明しています。
がけ崩れによる災害を防止するため、がけ上あるいはがけ下に設ける建築物をがけから離す距離の最低基準を規定したものです。
【県解説】同 P3 第7条の●趣旨
条文が定めているのは「擁壁を設けなければならない」で、離隔距離の下限を定める書き方にはなっていません。この記事は条文の文言に沿って書いています。解説の趣旨文とどう読み分けるかが実際の計画で問題になる場面では、確認申請を出す先(行政庁または指定確認検査機関(民間の確認検査機関))で確認してください。
ここでいう「擁壁」も、解説が定義しています。
②:法第88条第4項に規定する各法令の許可を受ける擁壁又は令第142条の規定による技術的基準及び準用規定を満たす擁壁です。
【県解説】同 P4 第7条の用語説明②
建築基準法第88条第4項は、盛土規制法・都市計画法・特定都市河川浸水被害対策法・津波防災地域づくりに関する法律の各許可を受けなければならない場合の擁壁について、工作物の確認等の規定を適用しない旨を定めた項です。施行令第142条は、擁壁について、次の基準に適合する構造方法か、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法のいずれかを用いることを求めています——鉄筋コンクリート造・石造等の腐食しない材料、石造なら裏込めと石相互の結合、裏面の排水のための水抜穴と周辺の砂利等、準用規定への適合、構造計算による安全性です。斜面にコンクリートが打ってあれば足りる、という規定ではありません——既にある擁壁でいけるかどうかは、確認済証・検査済証や許可・完了検査の書類と、現況の確認から始まります。
条文の書きぶりで、もう2つ。第7条に、第2項はありません——鉄筋コンクリート造等の重量建築物について範囲を割り増す規定は、この条に置かれていません(次に続く第7条の2は劇場等の客席の定員の規定で、がけとは関わりません)。そして対象は「建築物」で、用途でも居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)の有無でも規模でも絞られていません。「建築」には新築だけでなく、増築・改築・移転が含まれます(建築基準法第2条第13号)。工事を伴わない用途変更でも、同法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は準用されます。
ただし書——「建築物の規模」「建築物の構造」「がけの土質」の3つです

第7条のただし書は、建築物の規模若しくは構造又はがけの土質により安全上支障がないと認められるときに、擁壁の設置義務を外します。条文に明記された判断の要素は、この3つです——「がけの状況」でも「擁壁の設置」でも「建築物の用途」でもありません。ただし解説は、安全上支障がない例として、急傾斜地崩壊防止工事が施行済みの場合なども挙げており、限定列挙とはしていません——最後は個別に、安全上支障がないと認められるかどうかです。
③:建築物の規模や構造、がけの土質により、安全上支障がないと認められる例を以下に示します。
【県解説】同 P4 第7条の用語説明③
■がけ下の場合の例
・宅造法施行令第1条第2項に規定する硬岩盤(風化の著しいものを除く)のがけのとき
・宅造法施行令第6条第1項第一号に規定する土質に応じた擁壁を要しない勾配のがけのとき
・急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条第3項に規定する急傾斜地崩壊防止工事が施行済みであるがけのとき
■がけ上の場合の例
基礎をがけの下端(起点)から1/1.5の角度をなす線(以下「がけライン」という。)よりも深い支持層に定着させるとき
読むときに落としてはいけないところが3つあります。
- 解説は「例を以下に示します」と書いています——限定列挙とは書かれていません。ここに挙がった4つ以外は認められない、とは書けませんし、逆に、挙がっていれば当然に認められる、とも書かれていません(本則の要件は「安全上支障がないと認められるとき」です)
- 「急傾斜地崩壊防止工事」は、区域と結びついた言葉です——急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条第3項は、これを「急傾斜地崩壊防止施設の設置又は改造その他次条第一項の規定により指定される急傾斜地崩壊危険区域内における急傾斜地の崩壊を防止するための工事」と定義しています。斜面に工事の跡があるだけでは足りず、急傾斜地崩壊危険区域の指定と、その区域内の工事であることが前提になります
- 「がけ上の場合の例」は、基礎の深さの話です——がけの下端(起点)から1/1.5の角度をなす線(がけライン)より深い支持層に基礎を定着させること。地盤調査で支持層の位置を確かめ、その支持層ががけラインより深いこと、基礎がその支持層に定着していることを断面図等で示す形になります——基礎の底が線より下にあれば足りる、というものではありません
ただし書に当たると言い分だけで決まるわけではありません。土質・勾配・支持層は、調査と図面で示すものです。裏返せば、ただし書による安全上支障がない旨の認定を受けられない場合は、1.5倍以内に建てる限り擁壁が要る——それが第7条の書きぶりです。
レッドゾーン・イエローゾーンは別の法律——条例第7条と、重ねてかかります

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)に基づいて知事が指定する区域で、この条例とは入口も基準も別です。
条例の側に、区域指定を理由とする適用除外はありません。条例の全文にも、解説の第7条の項にも、土砂災害防止法や特別警戒区域への言及がありません(条例・解説の全文を機械で検索して「土砂」0件)。レッドゾーンに指定されていること、あるいは指定が解除されたことを理由に、条例第7条の適用が動くという取扱いは、県の公表資料からは確認できませんでした——「無い」と言い切るのではなく、公表資料では見つけられなかった、というところまでです。現時点で読める形は、土砂災害防止法の規制と条例第7条が、別々に、重ねてかかるというものです。ただし書の例に載っているのも、急傾斜地法の急傾斜地崩壊防止工事であって、土砂災害防止法の話ではありません。
県内の指定数は、県砂防課が市町別の表で公表しています(2026年6月5日時点)。
- 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)県内合計 25,725箇所(急傾斜15,524/土石流9,871/地すべり330)
- 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)県内合計 23,842箇所(急傾斜15,123/土石流8,719/地すべり0)
- 県内合計は、市町をまたいで指定された区域の重複を除いた数です(県の表の注記)。県は平成18年11月から指定を進め、平成28年12月に県内全域で指定を完了、以後も随時、指定や変更を行っています
数字を混ぜないでください。指定の要件に出てくる数字(急傾斜地の崩壊なら、傾斜度30度以上で高さ5m以上の区域、上端から水平距離10m以内、下端から高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内)と、条例第7条の数字(30°を超える/2mをこえる/1.5倍以内)は、別の制度の別の数字です。レッドゾーンでない斜面でも条例第7条は当たり得ますし、レッドゾーンでも条例第7条は別に当たります——条例の側に区域指定を理由とする除外が見当たらないことは、前に見たとおりです。
レッドゾーンの側では、県砂防課が次の4つを案内しています。①特定開発行為の許可制(土砂災害防止法第10条。非常災害の応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為は除かれます——同条第1項ただし書、同法施行令第5条)——住宅・宅地分譲等や、社会福祉施設・学校・医療施設といった特に防災上の配慮を要する者が利用する施設の建築のための開発行為は、対策工事の計画が技術的基準に従っていると知事が判断した場合に限って許可されます。条文の側で見ると、制限用途は住宅(自己の居住の用に供するものを除く。)並びに高齢者、障害者、乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設(政令で定めるものに限る。)で、予定建築物の用途がこれら「以外の用途でないもの」という書き方です(同法第10条第2項)——用途が確定しておらず、これら以外の用途であることが確定していない予定建築物も含まれます。②建築物の構造の規制(同法第24条・第25条)——第24条は、居室を有する建築物の構造耐力に関する基準を建築基準法第20条第1項に基づく政令(=施行令第80条の3)で定めるものとする規定です。区域内の建築物の建築等に着手する前に、建築物の構造が土砂災害を防止・軽減するための基準を満たすかについて、確認の申請書を提出して建築主事又は指定確認検査機関の確認を受けることが必要になる、と県は案内しています。第25条は、特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第三号に規定する区域を除く)内における居室を有する建築物(同項第一号又は第二号に掲げるものを除く=特殊建築物や大規模建築物など、区域にかかわらずもともと確認の対象になるものは、ここから除かれています)を、同項第三号の規定に基づき知事が指定する区域内の建築物とみなす規定です——都市計画区域の外で、通常なら建築確認が要らない規模の建築物でも、確認が必要になり得ます。同条は建築基準法第91条も適用しているので、敷地が区域の内外にまたがるときは、敷地の過半がどちらに属するかで扱いが決まります(過半が区域外なら、この第25条による追加の確認対象にはなりません。建築基準法第6条による別の確認の要件がある場合は別です)。なお県のよくある質問(2025年4月1日更新)は、建築基準法第6条第1項第三号に基づく「確認不要区域」「確認必要区域」は今現在、山口県内にありませんと書いています。③移転等の勧告と支援措置(同法第26条)——知事による移転勧告のほか、住宅金融支援機構の融資、住宅・建築物安全ストック形成事業による補助が案内されており、県のページは「特別警戒区域内の既存建築物の土砂災害に対する建築物の安全性の向上を目的とした改修への補助制度を実施している自治体もあります」とも書いています。④宅地建物取引における措置——特定開発行為に係る宅地については、許可の前の広告と売買契約が制限されます。また、宅地・建物の売買等では、特定開発行為の制限に関する事項の概要が重要事項説明の対象になります。
レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。区域の境界と、区域ごとの数字(土石等の高さ等・最大の力の大きさ等)は、県が公表する指定の図書で確認してください。市町村のハザードマップは避難の確認に有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります。
山口県建築基準条例には、災害危険区域の定めがありません

建築基準法第39条は、地方公共団体が条例で災害危険区域を指定し、区域内の住居の用に供する建築物の建築の禁止その他の制限を定められる、という規定です。山口県建築基準条例には、この仕組みがありません。根拠は2つ——条例第1条が挙げる委任の根拠に法第39条が入っていないこと、そして条例の全文に「災害危険区域」「急傾斜」「崖」の語が1つも出てこないこと(条例PDF全文を機械で検索。「がけ」は第7条の8か所だけです)。
ここで書けるのは「山口県建築基準条例には災害危険区域の定めが無い」までです——県内の市町が、それぞれ別の条例で災害危険区域を持っていないかどうかは、この記事では全市町の例規に当たっていません。計画地が急傾斜地の近くなら、市町の建築担当窓口に「災害危険区域の指定があるか」を確かめてください。
なお、急傾斜地崩壊危険区域そのものは、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項により知事が指定する区域として、山口県でも別に存在し得ます。区域内での切土・盛土・工作物の設置などには、同法第7条第1項により知事の許可が必要になる場合があります(砂防担当の窓口へ)。条例第7条のただし書の例に出てくる「急傾斜地崩壊防止工事が施行済みであるがけ」も、この区域の話です。
既存の建物・仮設・用途変更——第22条と、施行細則の「50平方メートル」

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)——条例の規定の施行・改正のときに適法に存在し、または工事中で、その施行・改正によって適合しなくなった建築物等には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません(外れるのはその規定であって、条例の全部ではありません)。ところが増築・改築・移転・大規模の修繕・模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により、この緩和は切れるのが原則です。その場面を受けているのが条例第22条です。
(適用除外)
山口県建築基準条例 第22条
第二十二条 法第三条第二項の規定によりこの条例の規定の適用を受けない建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分について知事が定める範囲内において増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合においては、同条第三項第三号及び第四号の規定にかかわらず、この条例の規定(第二十一条の二の規定を除く。)は、適用しない。
「知事が定める範囲」を受けているのが、建築基準法施行細則の第26条です。ここに数字が出てきます。
(既存の建築物に対する制限の緩和)
建築基準法施行細則(昭和59年3月31日山口県規則第30号)第26条
第二十六条 条例第二十二条の知事が定める範囲は、増築又は改築にあつてはその増築又は改築に係る部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えないものとし、大規模の修繕又は大規模の模様替にあつてはそのすべてとする。
読める形はこうです——既存不適格のがけ地で、増築または改築に係る部分の床面積の合計が50平方メートルを超えないなら、条例の規定(第21条の2を除く)は適用されず、第7条の擁壁もかかりません。大規模の修繕・大規模の模様替は、そのすべてが範囲に入ります。条例が「知事が定める範囲」と投げ、細則が50平方メートルという数字で受けている——増築の相談で最初に当たる数字です。
ただし、そのまま当てはめる前に、2つ確かめてください。①細則第26条が範囲を定めているのは、「増築又は改築」と「大規模の修繕又は大規模の模様替」です——条例第22条は移転も挙げていますが、細則第26条に移転についての定めはありません(移転については、次の段落の別の道があります)。②施行細則は「県が建築主事を置く市町のみの適用」とされています(解説P1)。特定行政庁の7市・限定特定行政庁の2市で、この50平方メートルがそのまま当てはまるかは、県の公表資料からは読み取れません——計画地が9市にあるなら、各市の建築行政担当課へ。
移転には、条例とは別に、建築基準法自体の緩和があります。法第86条の7第4項は、法第3条第2項により建築基準法令の規定(=この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定。法第6条第1項の定義)の適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で移転をする場合に、法第3条第3項にかかわらずこれらの規定を適用しない、と定めています。その「政令で定める範囲」は施行令第137条の16で、移転が同一敷地内におけるものであること、または移転が交通上、安全上、防火上、避難上、衛生上及び市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁が認めるものであることのいずれかです。どの移転でも対象になるわけではありません。
増築・改築の側では、法第86条の7第1項の法定緩和がこの条例には届きません。同項が緩和の対象として列挙しているのは、法第20条・第21条・第48条といった法自身の条文で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は、この列挙に入っていません(同項の列挙に「条例」の語はありません。同条第2項・第3項も同じです)。がけの第7条について増築・改築の場面を受けているのは、条例第22条と施行細則第26条の50平方メートルです。これとは別に、既存の一の建築物について二以上の工事に分けて増築等を含む工事を行う場合には、法第86条の8第1項の全体計画の認定という道があります——こちらは「この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定」を対象にしていて、条例の規定も入ります(特定行政庁が全体計画を認定したときに、法第3条第2項・第3項の適用が読み替えられる仕組みです)。
仮設と用途変更の許可については、条例第23条が特例を置いています。
第二十三条 特定行政庁が法第八十五条第六項又は第七項の規定により仮設建築物の建築を許可する場合及び法第八十七条の三第六項又は第七項の規定により建築物の用途を変更して使用することを許可する場合においては、この条例の規定は、適用しない。
山口県建築基準条例 第23条
これとは別に、建築基準法自体の特例があります。法第85条第1項により、特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、災害により破損した部分の応急の修繕は工事の着手時期にかかわらず(国土交通省の通知)、国・地方公共団体・日本赤十字社の災害救助用と、被災者が自ら使用する延べ面積30平方メートル以内の応急仮設建築物は、災害発生の日から1か月以内に工事に着手する場合に、建築基準法令の規定が適用されません(ただし書により、防火地域内に建築する場合は除かれます)。第1項・第2項の応急仮設建築物を工事完了後3か月を超えて存続させるには、その日前に特定行政庁の許可が必要です(同条第3項。期限前に申請し、期限までに処分がされないときは、同項ただし書により、処分がされるまで存続できます)。また、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場その他これらに類する仮設建築物と、災害があつた場合において建築する停車場、官公署その他これらに類する公益上必要な用途に供する応急仮設建築物には、同条第2項が適用しないものとして列挙する規定のなかに、第39条及び第40条が入っています——第7条の委任の根拠である法第40条が、ここに含まれます(同項ただし書により、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が50平方メートルを超えるものには、法第62条の適用があります)。
用途変更は、工事を伴わなくても、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定が準用されます。既存不適格の建物の用途変更は法第87条第3項が別に定めており、原則としてこれらの規定が準用されます。準用から除かれるのは各号の場合——増築・改築・大規模の修繕・模様替をする場合(第1号)、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)、法第48条関係で政令の範囲内の場合(第3号)です。ただし第1号は「規制が外れる」意味ではありません——増築等をすれば、上に書いたとおり法第3条第3項により緩和自体が切れ、条例が適用されるのが原則で、その場面を受けるのが条例第22条と細則第26条です。
罰則は第24条・第25条——処罰の対象は原則、設計者。20万円以下の罰金です

第二十四条 第五条、第七条から第十三条まで、第十五条、第十六条、第十七条第一項若しくは第二項(第十九条において準用する場合を含む。)、第十八条、第二十条又は第二十一条の規定に違反した場合における当該建築物又は工作物の設計者(設計図書を用いないで工事を施行し、又は設計図書に従わないで工事を施行した場合においては、当該建築物又は工作物の工事施工者)は、二十万円以下の罰金に処する。
山口県建築基準条例 第24条・第25条
2 前項に規定する違反があつた場合において、その違反が建築主又は工作物の築造主の故意によるものであるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、当該建築主又は工作物の築造主に対して同項の刑を科する。
第二十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の罰金刑を科する。
第7条は「第七条から第十三条まで」に含まれています——がけの違反は罰則の対象です。名宛人(なあてにん=命令や罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いないで工事を施行した場合、または設計図書に従わないで工事を施行した場合は工事施工者に替わります。違反が建築主又は工作物の築造主の故意によるときは、設計者・工事施工者を罰するほか、その建築主等にも同じ刑が科されます(第24条第2項)。第25条は両罰規定で、法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人・人にも罰金刑が科されます——この条には、相当の注意・監督を尽くしたときに法人・人を免責するただし書は置かれていません。
そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります。確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、法第6条の4第2項がいう建築士及び建築物の区分と、法第39条から第41条までの規定に基づく条例の規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まります。山口県の施行細則は、この「規則で定める規定」をこう定めています。
(建築物の建築に関する確認の特例)
建築基準法施行細則(昭和59年3月31日山口県規則第30号)第7条
第七条 政令第十条第三号ハ又は第四号ハの規則で定める規定は、条例第五条の規定とする。
挙がっているのは条例第5条(木造建築物等の防腐及び防蟻)だけで、条例第7条は挙げられていません。ただし、この細則が及ぶのは県が建築主事を置く市町とされており(解説P1)、市所管となる建築物については各市の規則によります(長門市・山陽小野田市は建築物の区分で市と県に分かれます)。確認・審査の対象範囲は令和7年4月1日施行の建築基準法改正で動いています——現行の取扱いは、確認申請を出す先(行政庁または指定確認検査機関)、あるいは県建築指導課審査班(083-933-3839)で確認してください。県のよくある質問は、民間機関では法令解釈等について判断しにくい事項が生じた際に、設計者からではなく指定確認検査機関から県へ照会する運用だ、とも書いています。いずれにせよ、審査で見られたかどうかと、条例に適合する義務があるかどうかは別です。違反すれば是正命令(建築基準法第9条。除却(じょきゃく=取り壊し)・使用禁止などの措置を含みます)や、上の罰則の対象になり得ます。
手続きの入口として、もう1つ。県の施行細則第2条第1項第一号は、確認申請書に「建築物の敷地の地盤面と前面道路及び隣地の地盤面との高低差を明示した断面図」を添えることを求めています(建築物の用途を変更する場合は、この書類は除かれます)。この断面図は、敷地周辺の高低差をつかむ入口になります——ただし第7条の判定には、敷地の外を含む関係するがけの上端・下端、高さH、1.5Hの範囲、建築物の外壁または基礎底盤、擁壁等を示した追加の断面図が要ることがあります。設計の早い段階で、隣地との高低差を測っておいてください。この細則も、及ぶ範囲は県が建築主事を置く市町です——9市では各市の細則を確認してください。
是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)
罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていません。命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。条例の罰則は罰金だけですが、こちらは拘禁刑もあります。
売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に確かめてください。どこを上端・下端とみるかも、窓口に確かめてください。
- ① 計画地の所管はどこか。特定行政庁の7市(下関市・宇部市・山口市・萩市・防府市・岩国市・周南市)、限定特定行政庁の2市(長門市・山陽小野田市。法第6条第1項第三号建築物、第二号建築物の一部と、高さが2mを超え3m以下の擁壁などの工作物に限る)、それ以外は県所管の市町です。条例そのものは県内全域に1本ですが、施行細則は県が建築主事を置く市町のみの適用とされています(解説P1)——後の⑦⑨⑩は、ここで答えが変わり得ます
- ② 敷地の周りに、地表面が水平面に対し30°を「超える」土地があり、その高さが2メートルを「こえる」か。敷地の中・隣地に限りません。ちょうど30°・ちょうど2.0メートルは入りません。小段で上下に分かれた斜面は、下のがけの下端から30°で引いた面より上に上のがけの下端があるなら一体のがけとして数えます(解説P3)
- ③ 建築物が「1.5倍以内」に入るか。がけの上なら下端から、がけの下なら上端からの水平距離です。測る先は上下で違い、がけ下は外壁の外面まで、がけ上は基礎底盤の外面まで(解説P3の図の注記)。入るなら擁壁を設けます——離す距離の規定ではありません(第7条各号)
- ④ 擁壁を設けないなら、ただし書のどれで説明するか。条文に明記された判断の要素は建築物の規模/建築物の構造/がけの土質の3つです(解説はこれを限定列挙とはしていません)。解説の例は、がけ下なら硬岩盤(風化の著しいものを除く)・擁壁を要しない勾配・急傾斜地崩壊防止工事が施行済み、がけ上ならがけライン(下端から1/1.5の角度をなす線)より深い支持層への基礎の定着。解説は「例を以下に示します」と書いており、限定列挙とは書かれていません——個別の当てはめは、調査結果と図面を持って窓口へ
- ⑤ 既にある擁壁で足りるか。解説がいう「擁壁」は、法第88条第4項に規定する各法令の許可を受ける擁壁か、令第142条の技術的基準及び準用規定を満たす擁壁です。確認済証・検査済証、許可と完了検査の書類、そして現況の確認から始めてください
- ⑥ ②で「がけ」に当たらない場合や、③の範囲の外でも、がけ崩れ等の被害を受けるおそれがないかは別に確認。おそれのある場合は、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません(高さの下限はありません)
- ⑦ 既存不適格の建物を増築・改築するなら、床面積の合計が50平方メートルを超えないか。超えなければ、条例第22条と施行細則第26条により条例の規定(第21条の2を除く)は適用されません。大規模の修繕・模様替はそのすべてが範囲です。移転は細則第26条に定めがありませんし、細則の及ぶ範囲は①のとおり——どちらも窓口で確かめてください。移転には、法第86条の7第4項と施行令第137条の16(同一敷地内の移転か、特定行政庁が支障がないと認める移転)という別の道があります。増築・改築の側では、法第86条の7第1項は法自身の条文を列挙するもので、法第40条に基づく条例の規定は入っていません——使えるのは条例第22条と細則第26条です(二以上の工事に分けるなら、法第86条の8第1項の全体計画の認定という別の道もあります)
- ⑧ 敷地が土砂災害警戒区域・特別警戒区域に入らないか。こちらは土砂災害防止法で、条例第7条とは重ねてかかります。レッドゾーン内の居室を有する建築物は、令第80条の3の構造基準を確かめます。さらに、法第6条第1項第一号・第二号に当たらず、同項第三号に規定する区域の外にある建築物は、第25条により追加で建築確認の対象になり得ます(敷地が区域の内外にまたがる場合の過半の判定は、この第25条による追加の確認についてのものです)。特定開発行為に当たるなら第10条の許可も。最新の指定と境界は、県が公表する指定の図書で(ハザードマップは作成時点の指定のことがあります)
- ⑨ 建築確認が要らないことだけを理由に、第7条が適用外になるわけではありません。確認特例で審査が省略される条例の規定は、特定行政庁が規則で定めたものに限られ、県の施行細則第7条が挙げているのは条例第5条だけです。違反すれば是正命令(建築基準法第9条)や、設計者を名宛人とする20万円以下の罰金(条例第24条)の対象になり得ます
- ⑩ 確認申請には、敷地の地盤面と前面道路・隣地の地盤面との高低差を明示した断面図が要ります(県の施行細則第2条第1項第一号。用途変更の場合は除かれます)。土地を買う前に、隣地との高低差を測っておいてください——ここで初めてがけに気づくと、計画のやり直しになります
- 確認申請の提出先は、行政庁だけではありません。建築確認は、業務区域・業務範囲に対応する指定確認検査機関にも申請できます(建築基準法第6条の2)。どこへ相談するかは申請先によって変わります——指定確認検査機関へ申請するなら、まずその機関へ。
- 土砂災害防止法第25条による追加の建築確認は、建築物が区域内にあり、かつ敷地の過半が区域内にあるときです。敷地の過半が区域外なら、この第25条による追加の対象にはなりません(建築基準法第6条による別の確認要件がある場合は別です)。
個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、建築地を所管する建築行政の窓口にご確認ください。県所管なら所管の土木建築事務所、市所管なら各市の建築行政担当課で、県はどちらの一覧もページで公開しています(長門市・山陽小野田市は建築物の区分で分かれます)。条例と解説の全文も県のページで公開されているので、条文(第7条)と解説のP3〜P4を並べて読むのがいちばん早い道です。擁壁の選び方も合わせてどうぞ。
出典
- 山口県建築基準条例(県公式PDF・最終改正 令和6年3月19日。第1条・第7条・第22条・第23条・第24条・第25条)
- 山口県建築基準条例及び建築基準法施行細則の解説(県土木建築部建築指導課・令和6年3月29日。P1の適用範囲、P3〜P4の第7条の趣旨・用語説明・図)
- 建築基準法施行細則(昭和59年3月31日山口県規則第30号・県公式PDF・最終改正 令和7年10月31日。第2条第1項第一号・第7条・第26条)
- 山口県建築基準条例(県公式・条例PDFの掲載ページ)
- 建築基準法に関するよくある質問(県公式・2025年4月1日更新。Q1の相談先、Q3の確認不要区域、Q10のがけ条例、所管の区分)
- 市町別条例等(建築基準法等関係)の一覧(県公式・令和7年4月1日現在)
- 市町の建築行政担当窓口の一覧(県公式)
- 建築基準法に係る所管土木建築事務所の一覧(県公式)
- 山口県建築基準法取扱集(県公式PDF・令和7年3月14日更新)
- 土砂災害・土砂災害警戒区域等の指定状況について(県砂防課・2026年6月5日時点の市町別指定箇所数)
- 土砂災害防止法・土砂災害特別警戒区域では(県砂防課)
- 土砂災害防止法・警戒区域等の指定要件(県砂防課)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第43条・第56条の2・第85条・第86条の7・第86条の8・第87条・第87条の3・第88条・第91条)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第10条・第80条の3・第137条の16・第142条)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第10条・第24条・第25条・第26条)
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第7条)
- 災害により破損した建築物の応急の修繕に係る建築基準法の取扱いについて(国住指第27号・国土交通省通知PDF)
擁壁の形や種類については、擁壁の選び方にまとめています。条例に当てはまるかどうかは、この記事に書いた窓口で確かめてください。
