兵庫県す——「神戸市のがけ条例とレッドゾーン——崖の近くに建てられるか

神戸市で、がけの近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。がけの規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)や構造の費用を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って神戸市建築住宅局建築指導部 建築安全課の窓口(三宮国際ビル5階・10番窓口。市役所の本庁舎ではありません)へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。

その土地は神戸市内ですか。神戸市には、「建築基準条例」という名前の条例がありません。がけの決まりは神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例 第20条(斜面地建築物の安全措置)にあります。兵庫県建築基準条例は、神戸市の区域では適用されません(県条例第27条の12と、それに基づく規則)。②第20条は、「離しなさい」でも「擁壁を設けなさい」でもなく、「規則で定める基準に適合しなければならない」という書き方をしています。中身は同条例施行規則 第10条にあります。③距離の起点は「がけの地表面の中心線」です。上端でも下端でもありません。がけ下の建築物は、中心線からの水平距離ががけの高さの1.5倍未満なら対象。がけ上の建築物は、がけの下端を含む30度の面の上方にあれば対象です。④規則第10条の基準に適合させれば、第20条第1項の関係では原則として建てられます——がけ上なら基礎の根入れ(ねいれ=基礎を地中に埋め込む深さ)や擁壁の確認、がけ下なら鉄筋コンクリート造か擁壁の設置その他これに準ずる措置です。第1項の基準を満たしても、同じ第20条の第2項(実況に応じて考慮した構造設計)が、重ねて必要です。⑤ただし、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・災害危険区域建築基準法第19条第4項は、別に残ります。(条例・規則・市の逐条解説は2026年9月6日に、神戸市例規集の現行本文で確認しました)。

条例の名前が違います——「神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例」第20条です

「がけ条例」という名前の条例はありません。そして神戸市の場合、「建築基準条例」という名前の市条例もありません。がけに近い建築物の決まりは、神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例(平成20年4月1日 神戸市条例第1号)の第20条(斜面地建築物の安全措置)にあります。市の公式ページは、この規定を「がけ条例」と呼んで案内しています。市の例規集を「建築基準条例」で探しても、この条には行き当たりません。

兵庫県建築基準条例は、神戸市の区域では適用されません。県の解説は、「本条例が適用される区域は、神戸市を除く兵庫県内全域である」と書き、その根拠を県条例第27条の12(適用の除外)と、それに基づく「建築基準条例第27条の12の規定に基づく適用の除外に関する規則」(平成11年3月30日規則第13号)に置いています。規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。神戸市内の土地について調べるときは、神戸市の条文の数字で読んでください。

建築基準条例(昭和46年兵庫県条例第32号)第27条の12の規定により、神戸市の区域にあっては、同条例の規定は、適用しない。

建築基準条例第27条の12の規定に基づく適用の除外に関する規則(兵庫県「兵庫県建築基準条例及びその解説」に掲載)

市の逐条解説は、第20条の位置づけをこう書いています——建築基準法第19条第4項の規定を補完し、同法第40条の規定に基づき、斜面地が多い神戸市の市街地の特性に鑑み、建築物ががけ崩れ等による被害を未然に防止する目的で設けたものであり、建築物について構造耐力上の安全上の措置等を講じることにより、その安全性を確保するよう定めたもの。そして、対象となる建築物は条例で定め、安全性を確保するための基準は施行規則で定めている満たすべき基準は、条例ではなく規則に書いてあります。

(斜面地建築物の安全措置)
第20条 次の各号のいずれかに該当する建築物は、構造耐力上の安全性を確保するため、規則で定める基準に適合しなければならない。
(1) がけ(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいい、小段等によって上下に分離されたがけがある場合において、下層のがけの地表面の下端を含み、かつ、水平面に対し30度の角度をなす面の上方に上層のがけの地表面の下端があるときは、その上下のがけは一体のものとみなす。以下同じ。)の地表面の下端を含み、かつ、水平面に対し30度の角度をなす面の上方の土地に建築物の全部又は一部があるもの
(2) がけの地表面の中心線からがけ下の建築物までの水平距離が、当該がけの高さの1.5倍未満であるもの

神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例 第20条第1項

どこからが「がけ」か——30度超。条文に、高さの下限がありません

第20条第1項第1号の括弧書きは、がけを「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地」とだけ定義しています。「高さ何メートルを超えるもの」という線が、この定義には入っていません。市の逐条解説は、がけの高さとは、がけの上端と下端の垂直距離をいうと補っています。「30度を超える」です——ちょうど30.0度は、この定義には当たりません(「以上」ではありません)。ちょうどかどうかは、目測では決まりません——現況の測量図と断面図で確かめてください。

では実際にどこから検討するのか。市の公式ページは、こう案内しています——「神戸市内で、敷地内および周囲に1メートルを超える高低差がある敷地で建築物を計画される際は、用途・規模に関わらず、がけ条例の検討が必要です」。判断の手順も、市のページに2段階で示されています。手順1(がけの形状)——がけの角度が30度を超え、かつ高低差が1メートルを超える場合は手順2へ。それ以外は対象外。手順2(がけと建築物の位置関係)——がけ上なら、がけの下端から30度の角度をなす面の上方に建築物があるとき対象。がけ下なら、がけの中心から建築物までの水平距離が高低差の1.5倍未満のとき対象。角度も高低差も、目測では決まりません。現況の断面図で確かめてください。

ひとつ、この記事では決められなかったことがあります。手順1の「それ以外は対象外」が、条例・規則の上の適用除外なのか、市が相談の入口として引いている目安なのかです。条例第20条の「がけ」の定義には、高さの下限が書かれていません(30度を超える角度をなす土地、とだけ)。一方、市のページは高低差1メートル以下を対象外として案内しています。市のページは、この手順と規則第10条の関係を書いていません。高低差が1メートルに近い敷地では、「対象外」と自分で決めずに、建築安全課に確かめてください。

この「1メートル」は、施行規則の中の数字に対応しています。規則第10条第1号は、がけ上の建築物についてがけの安全性が外見上確保されているものであることを求めたうえで、「ただし、その高さが1メートル以下のがけについては、この限りでない。」としています。がけ下の側も、規則第10条第3号ただし書イが「その高さが2メートル以下のがけ下に建築物の部分があるとき」を適用除外にしています。数字は、がけ上と がけ下で違います。「1メートル」と「2メートル」を取り違えないでください。

段になったがけは、一体で見ることがあります。条文の括弧書きは、小段等によって上下に分離されたがけがある場合に、下層のがけの地表面の下端を含み、かつ水平面に対し30度の角度をなす面の上方に上層のがけの地表面の下端があるときは、その上下のがけを一体のものとみなす、と定めています。市の公式ページも、留意事項として同じことを書いています。一体とみなされれば、高さも、1.5倍の距離も大きくなります。

距離の起点は「がけの地表面の中心線」。上端でも下端でもありません

ここが、神戸市のいちばん間違えやすいところです。第20条第1項第2号は、「がけの地表面の中心線からがけ下の建築物までの水平距離が、当該がけの高さの1.5倍未満であるもの」と書いています。起点は、がけの上端でも下端でもなく、がけの面の中心です。市の逐条解説の図も、「がけの中心」から「がけ下方向にがけの高さの1.5倍の範囲」を対象建築物の範囲として描いています。

たとえば高さ4メートルのがけなら、中心線から6メートル未満にがけ下の建築物があれば対象です。「がけの下端から測って離れているから外れる」とは読めません——中心線は下端より上(がけの面の途中)にあるので、水平位置も下端とは違います。どこが中心線かを図面で決めることが、最初の山場になります。

がけ上の側は、距離ではなく「角度の面」で決まります。第1号は、「がけの地表面の下端を含み、かつ、水平面に対し30度の角度をなす面の上方の土地に建築物の全部又は一部があるもの」です。下端から30度で線を引いて、その上に建物が乗るかどうか。市の逐条解説の図も、そのとおりに描かれています。「全部又は一部」——建物の一部でも面の上方に入れば対象です。

中心線を出すには、まず上端と下端を決めなければなりません。市の逐条解説は「がけの高さとは、がけの上端と下端の垂直距離をいう」としており、図でも「がけの範囲」「がけの上端」「がけの下端」「がけの高さ」を示しています。高さが決まらないと1.5倍も決まらず、上端と下端が決まらないと中心線も決まりません。だから、いちばん先に要るのは現況の断面図です。目測やハザードマップでは出せません。

そして第20条には、第2項もあります。柱書は「前項各号及び次の各号のいずれかに該当する建築物は、構造耐力上の安全性について規則で定める事項を実況に応じて考慮した構造設計としなければならない」です。「前項各号」は第1項第1号・第2号のことなので、がけ上・がけ下で第1項に当たった建築物は、第2項にも当たります。そのうえで第2項が独自に挙げるのが、(1)片側土圧を受ける面の高さの合計が2メートルを超えるもの(2)周囲の地面と接する位置の高低差が10メートルを超えるもの(3)がけの地表面の中心線からがけ上の建築物までの水平距離が、当該がけの高さの1.5倍未満であるものです。第2項第3号は「がけ上」の1.5倍です。第1項第2号の「がけ下」の1.5倍と、条も号も違います。

規則第10条の基準に適合させれば、第20条第1項の関係では原則として建てられます

道はあります。第20条の義務は「離しなさい」ではなく「基準に適合しなさい」なので、設計で満たせます。中身は施行規則第10条にあり、がけ上がけ下で分かれています。これを満たせば、第20条第1項の関係では、原則として建てられますただし、規則第10条は「条例第20条第1項に規定する規則で定める基準」です。第1項の基準を満たしても、同じ第20条の第2項(規則第11条の10項目を実況に応じて考慮した構造設計)が、重ねて必要です。「原則として」と書くのには、ほかにも理由があります。建築基準法第19条第4項、災害危険区域、土砂災害の区域は、別に確認してください。そして、がけの規定を満たしても、建築基準法の一般の制限は別に残ります。用途地域による用途や建ぺい率・容積率の制限、高さの制限(斜線制限など)、接道の義務です。「がけの条例が通った=その計画が建てられる」というわけではありません。また市の公式ページは、「条例の内容は最低限度の基準を示していますので、敷地の状況に応じて、安全性の確保のために必要な検討をしてください」と付け加えています。

がけ上に建てるとき

規則第10条第1号と第2号の両方を満たす必要があります。市の逐条解説も「第1号の基準に適合するとともに、第2号のいずれかに該当する基準に適合することを要する」と書いています。

  • 第1号(がけの安全性が外見上確保されていること)——ただし、その高さが1メートル以下のがけについては、この限りでない。ここで免除されるのは、第1号の「外見上の安全性の確認」だけです。規則の条文だけを読むと、高さ1メートル以下でも第2号(根入れ・擁壁・構造計算のいずれか)は残る形になっています。「1メートル以下だから何も要らない」と、条文からは読めません。ただし、市の公式ページの手順1は、高低差1メートル以下を「対象外」として案内しています。この食い違いは、上の「どこからが『がけ』か」の節に書いたとおりです。建築安全課に確かめてください。市の逐条解説は、「安全性が外見上確保されている」とは擁壁に割れ・歪み・傾斜等の外観上の異常が見られないことをいうとし、判断にあたっては国土交通省「宅地擁壁の健全度評価・予防保全マニュアル」等が参考になるとしています。市の公式ページは、この判断は設計者によりますと明記し、確保されていない場合は擁壁のやり替えや補修が必要としています
  • 第2号ア(土質に応じた根入れ)——がけの地表面の下端を含み、土質に応じた角度をなす面より、建築物の基礎その他これに類するものの底面が下方になること。角度は、神戸層群の岩・花崗(こう)岩その他これらに類する岩(風化の著しいものを除く)=55度同じ岩で風化の著しいもの=35度それ以外=30度。市の解説は「基礎その他これに類するもの」を杭、ラップルコンクリート、地盤改良等としています。神戸層群の岩は、条文自身が「泥岩、砂岩及び礫(れき)岩の互層を大部分とした厚い凝灰岩を多数挟んでいるのを特徴としている漸新世から中新世にかけて形成された神戸市の西部から北部に分布している地層の岩」と定義しています
  • 第2号イ(許可等を受けたがけの上)——建築物が、(ア)建築基準法施行令第142条第1項各号に定める構造の擁壁で覆われたがけここで引かれているのは同項の「各号」です——同項には、これらの基準に適合する構造方法のほかに「これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法」の道もありますが、規則が引いているのは各号のほうです)、(イ)盛土規制法第12条第1項の許可を受けた宅地造成等に関する工事の対象となるがけ(ウ)都市計画法第29条の許可を受けた開発行為の対象となるがけ——のいずれかの上にあるもので、建築物の安全上支障がないものであること。市の逐条解説は「安全上支障がない」の例として、がけが擁壁で覆われており、建築物が木造・軽量鉄骨造等で階数が2以下である場合を挙げ、宅地擁壁は一般に10kN/平方メートル(練石積み擁壁は5kN/平方メートル)程度の上載荷重(じょうさいかじゅう=擁壁の上に載る重さ。建物や地面の重さです)を見込んでいるので木造2階建て住宅程度なら支障がないとしつつ、「近年、省エネ性能が高い建築物をはじめ建築物の重量が増加する傾向にあり、2階建てであっても擁壁が計画建築物の荷重等に対して安全性があるか注意が必要」と書いています。また、盛土規制法施行令第6条の崖面崩壊防止施設は、地盤の変動が許容されない利用をする土地には設置できないため、安全上支障がないものには該当しないとしています
  • 第2号ウ(計算または実験)——地盤及びがけの状況並びに建築物の構造及び形態を考慮した構造計算又は実験によって、構造耐力上安全であることが確認されたものであること

市の逐条解説は、がけが公共施設管理者の所管する擁壁(道路施設、公園施設、港湾護岸施設等)である場合には、公共施設管理者に擁壁の設計荷重(上載荷重)を確認し、安全性を判断することとしています。「市や県の擁壁だから大丈夫」ではありません。

がけ下に建てるとき

規則第10条第3号は、建築物の構造を鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造とするか、または擁壁の設置その他これに準ずる措置を講ずることにより、がけ崩れに対して構造耐力上の安全性を確保することができるものとすることを求めています。市の逐条解説は、「擁壁の設置に準ずる措置としては、待ち受け擁壁、からぼりの設置等による」としています。

ただし、次のいずれかに当たる場合は、その部分については第3号の基準から外れます(条文の言い方は「当該部分については、この限りでない」)——ア がけの上端からの垂直距離が2メートルの範囲内に建築物の部分があるときイ その高さが2メートル以下のがけ下に建築物の部分があるときウ 第2号イに規定するがけ(令第142条の擁壁・盛土規制法の許可・開発許可)の下に建築物の部分があるときエ 第2号イに規定するがけと同等以上の安全性が確保できると認められるがけ下に建築物の部分があるとき。市の逐条解説は、エに該当するものとして公共施設管理者が所管する擁壁急傾斜地法に基づく急傾斜地崩壊防止施設土質試験その他の調査又は試験に基づき地盤の安定計算をした結果、がけの安定を保つために擁壁の設置が必要でないことが確かめられたがけを挙げています。

また、用途が納屋、器具庫その他の居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有しないものでがけの下にあるものは、そもそも第3号の対象から外れます。ただしその場合も、高さが1メートルを超えるがけの下にあるときは、がけの安全性が外見上確保されているものに限るとされています。市の公式ページは、これら適用除外のどの場合についても、「がけの安全性が外見上確保されていることを確認してください」と念を押しています。

第2項——構造設計で考えるべき10のこと

ここから先は、構造設計者が検討する項目です。読む方にお願いしたいのは、「自分の計画が第20条第2項に当たるかどうか」を、建築士に確かめてもらうことだけです——この10項目を、ご自身で判定する必要はありません。規則第11条は、第20条第2項の「規則で定める事項」として、次の10項目を挙げています——①土質定数、土圧、設計用荷重及び外力の適切な評価 ②地下水位の変動を考慮した水圧 ③地中及び地表面の排水 ④滑動及び転倒に対する建築物の安全性の確保 ⑤斜面の安定性の確保 ⑥斜面の影響による地盤の鉛直支持力及び水平支持力の低減 ⑦地盤の沈下 ⑧壁の剛性の適切な評価及び建築物の剛性の確保 ⑨基礎に段差がある場合の建築物の剛性の確保及び基礎と架構との水平力の分担 ⑩斜面の劣化及び風化。市の逐条解説は、構造耐力上の安全性を検討する場合には原則として「神戸市斜面地建築物技術指針」を活用することとし、この10項目に定められていない事項についても検討することとしています。

手続——届出は要りません。ただし、確認申請の前に当てはめを確かめておく必要があります

市の公式ページは、「がけ条例は確認申請で審査を行うため、市に届出などをする必要はありません」と書いています。これは「手続がないから軽い」という意味ではありません。確認申請の審査で見られるということは、基準に適合しない計画は、確認済証が出ないということです。設計の初めから織り込んでおかないと、申請の段階で配置や構造をやり直すことになります。そして、確認申請の出し先は市だけではありません——建築基準法第6条の2により、指定確認検査機関に出すこともできます。その場合も審査されるのは同じ条例です。「民間に出せば通る」ということはありません。当てはめに迷いがあるなら、出す前に建築安全課に相談してください。

過去の造成の履歴は、自分で調べることになります。市の公式ページは、調べ方を具体的に案内しています——盛土規制法第12条第1項による許可は、造成事業者や土地所有者などが持つ宅地造成許可証・許可図面・検査済証で確認する。建設局森林・防災部防災課(神戸市役所4号館・危機管理センター6階)が許可および検査済の番号・日付・事業者名・地番を台帳管理しているが、図面などはないので、該当擁壁が宅造擁壁と必ずしも断定できるものではない都市計画法第29条の許可(開発許可)は、都市局都市計画課(三宮国際ビル6階)が開発登録簿を管理している。工作物としての確認申請は、建築住宅局建築指導部 建築調整課 1窓口(三宮国際ビル5階)で調べられる。どの場合も市は「設計者は十分に現地調査などのうえ、ご判断ください」としています。

既存の建物——「用途変更だけ」に当たるかを、まず窓口で切り分けます

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。

神戸市の条例には、既存建築物のための緩和が置かれています——第49条の5(既存の建築物に対する制限の緩和)は、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替について、緩和する条を号ごとに列挙する形をとっています。その列挙に、第20条はありません。つまり、増築・改築などをするなら、第20条は原則としてかかってきます。

(用途の変更に対するこの条例の準用)
第49条の6 法第3条第2項の規定により第20条、第21条、第47条又は第48条の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、これらの規定は、適用しない。

神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例 第49条の6第1項

まず、自分の計画が「用途変更だけ」なのかを切り分けてください。「用途を変えるだけ」と「工事を伴う」は、まったく別の話で、どちらに当たるかの判断は、建築安全課の窓口で確かめてください。

そのうえで、法第3条第2項により第20条の適用を受けない建築物(=第20条について既存不適格の建物)について、用途の変更だけをする場合は、第49条の6第1項により第20条は適用されません。条文には「法第3条第2項の規定により第20条〔略〕の規定の適用を受けない建築物」という条件が付いています。既存の建物ならどれでも外れる、という規定ではありません。そして、増築・改築を伴うなら話は別です。上に書いたとおり、第49条の5の列挙に第20条はありません。

建築基準法の側も見ておきます。法第87条は、建物を2つに分けています。第3項の建築物(=既存不適格の建物)以外の用途を変更する場合は、第2項により、法第39条第2項・第40条などに基づく条例の規定が準用されます(第2項は「建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては」と書いています)。②既存不適格の建物の用途変更については、第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)が原則として準用され、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合(第1号)や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合(第2号)は、この準用から除かれます。第1号に当たるときは、法第3条第3項で判断します。神戸市の条例第49条の6第1項は、この枠組みの上に置かれた市独自の扱いです。

罰則——条例第71条の列挙に、第20条は入っていません

神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例第71条は、第21条、第22条第1項若しくは第2項、第23条第1項、第24条から第27条まで、第28条、第30条第1項、第31条、第32条第1項、第33条、第38条、第39条、第41条第1項、第43条、第43条の2、第44条、第45条第1項、第45条の2から第45条の7まで、第47条又は第48条の規定に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、または設計図書に従わないで工事を施工した場合においては、当該工事施工者)を、50万円以下の罰金に処すると定めています。この列挙に、第20条はありません。

だからといって、守らなくてよいという話ではありません。第20条が審査の対象になる確認申請では、適合しないまま確認済証は出ません。ただし、あとに書く確認特例などで条例の審査が省略される場合もあります。確認済証があることが、第20条に適合していることを常に保証するわけではありません。適合の義務は、審査の有無とは別に残ります。そして建築基準法第9条第1項の是正命令は、条例違反にも及びます。違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して、工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他の措置を命ずることができます。故意かどうかは、この条の要件ではありません。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです。設計者は、設計者であることだけでは名宛人(なあてにん=命令の相手方)に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適用要件を満たせば適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁(とくていぎょうせいちょう=許可・認定や是正命令を受け持つ行政庁。神戸市の区域では神戸市長です)が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは兵庫県知事です。区域内で居室を有する建築物を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第20条のがけに当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第20条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、がけの高さの下限はありません。市の逐条解説も、第20条を法第19条第4項を補完するものと位置づけています
  • 災害危険区域(法第39条)——神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例には、災害危険区域の章がありません。また、兵庫県「災害危険区域について」のページが挙げている県内の指定市町(相生市、たつの市、養父市、丹波篠山市、淡路市、赤穂市、新温泉町、朝来市、洲本市、多可町、香美町、豊岡市、丹波市)に、神戸市は挙げられていません。ただし指定は変わり得ます——計画の時点で窓口に確かめてください

レッドゾーンでは、確認申請そのものが増えることがあります。土砂災害防止法第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物同項第1号又は第2号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。つまり、都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模でも、確認が必要になり得ます「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

窓口——建築安全課(三宮国際ビル5階)です

市役所の本庁舎ではありません。神戸市建築住宅局建築指導部は、三宮国際ビル5階(中央区浜辺通2-1-30)にあります。市の公式ページも「市役所の本庁舎ではありませんのでご注意ください」と書いています。

  • がけ条例に関する相談・確認申請の構造審査——建築住宅局建築指導部 建築安全課10番窓口(市の「建築指導部 窓口のご案内」による)。がけ条例のページにも、業務窓口のご案内のページにも、電話番号は載っていません(載っているのはお問い合わせフォームと窓口案内図です)。番号は別のページの各種問い合わせ先一覧表(2026年4月1日現在)にあり、建築安全課として078-595-6553・6554・6556・6561・6562を挙げ、その担当内容に「がけ条例」を含めています。かける前に、最新かどうかを市のページで確かめてください
  • 宅地造成許可・検査済の台帳——建設局森林・防災部 防災課(神戸市役所4号館・危機管理センター6階)。番号・日付・事業者名・地番の台帳はありますが、図面はありません
  • 開発登録簿(都市計画法第29条の許可)——都市局 都市計画課(三宮国際ビル6階)
  • 工作物(擁壁)の確認申請・完了検査の記録、建築計画概要書の閲覧——建築住宅局建築指導部 建築調整課 1番窓口(三宮国際ビル5階)
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定——兵庫県。区域を指定するのは県知事です。兵庫県土木部 砂防課 078-362-3565(ファックス 078-362-4281)。県は、区域が市役所・町役場、県庁砂防課および各土木事務所で確認できるとし、兵庫県CGハザードマップでも見られるとしています

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。すでに契約を進めている方、もう土地をお持ちの方も、手遅れではありません——設計を始める前に、同じことを確かめてください。早いほど、間取りと費用の選べる幅が残ります。買ったあとでは、擁壁や構造の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは神戸市建築安全課の窓口です。

  • ① その土地は神戸市内か。神戸市内なら、読むのは神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例 第20条同条例施行規則 第10条・第11条です(兵庫県建築基準条例は適用されません)
  • ② 敷地の中や周りに、1メートルを超える高低差があるか。市は、用途・規模に関わらず、この段階でがけ条例の検討が必要としています。次に、その斜面の角度が30度を超えるか
  • ③ 建てる場所は、がけの上か、下か。がけ上は「下端から30度の面の上方にあるか」、がけ下は「中心線から高さの1.5倍未満か」。起点も測り方も違います。建物の一部でも入れば対象です
  • ④ かかるなら——がけ上は、①がけの安全性が外見上確保されていること(高さ1メートル以下のがけは除く)+②土質に応じた根入れ(55度/35度/30度)か、許可等を受けたがけで安全上支障がないか、構造計算・実験。がけ下は、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造とするか、擁壁の設置その他これに準ずる措置(待ち受け擁壁・からぼり等)。これを満たせば、第20条第1項の関係では原則として建てられますこれを満たしても、第20条第2項の構造設計は重ねて必要です(⑧へ)
  • ⑤ 既存の擁壁があるなら、許可・検査済の記録と現況の確認から。宅造許可は建設局防災課の台帳、開発許可は都市局都市計画課の開発登録簿、工作物の確認は建築調整課1窓口。台帳に図面はなく、市は「宅造擁壁と必ずしも断定できるものではない」としています。判断は設計者の現地調査を経て
  • ⑥ 擁壁の上に建てるなら、建物の重さに注意。市の逐条解説は、宅地擁壁が見込む上載荷重は一般に10kN/平方メートル(練石積みは5kN/平方メートル)程度で、省エネ性能が高い建築物など、建築物の重量が増加する傾向にあるため、2階建てであっても擁壁の安全性の確認が必要としています
  • ⑦ 公共施設の擁壁なら、管理者に設計荷重を確認。道路施設・公園施設・港湾護岸施設等の擁壁は、管理者に上載荷重を確認して安全性を判断することとされています
  • ⑧ 第20条第2項に当たらないか。柱書は「前項各号及び次の各号のいずれかに該当する建築物」なので、③で第1項に当たったなら、第2項にも当たります。そのほかに、片側土圧を受ける面の高さの合計が2メートル超、周囲の地面と接する位置の高低差が10メートル超、がけの中心線からがけ上の建築物までが高さの1.5倍未満。当たれば、規則第11条の10項目を実況に応じて考慮した構造設計が要ります
  • ⑨ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。指定するのは兵庫県知事です。市役所・町役場、県庁砂防課、各土木事務所で確認できます
  • ⑩ 既存の建物なら——法第3条第2項により第20条の適用を受けない建物(第20条について既存不適格の建物)の用途を変更するだけなら、第20条は適用されません(条例第49条の6第1項。既存の建物ならどれでも外れる、という意味ではありません)。増築・改築などは、第49条の5の緩和の列挙に第20条がないので、原則としてかかります「用途変更だけ」に当たるかの切り分けは、窓口で
  • ⑪ 届出は要りませんが、確認申請の審査で見られます。第20条が審査の対象になる申請では、適合しないまま確認済証は出ません。ただし確認特例などで審査が省略される場合もあり、その場合でも適合の義務は残ります。違反すれば建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月6日に原文を確認)

  • がけ条例(神戸市公式・対象判断の手順、必要な措置、留意事項、根拠法令)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第91条・第98条)/建築基準法施行令(同・第10条・第80条の3・第142条)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第20条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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