神奈川県大和市のがけ条例——大和市建築基準条例 第3条

大和市で、がけの近くに家を建てる・土地を買う人へ——最初に答えから。

先にすることは、3つです。がけの規定がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁(ようへき=がけの土が崩れないよう支える壁)の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って大和市の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。

建築士に頼む前に、今日できることがあります——不動産会社(売主側)に、その土地の「現況測量図」「擁壁の設計図・構造計算書」「検査済証」が残っているかを聞いてください。残っていなければ、それ自体が費用の話になります。建築士に測ってもらうのは、買付や契約の条件を詰める段階です。擁壁の費用は、高さ・長さ・地盤で決まります。同じ敷地でも置く位置で変わるので、値段が決まる前に図面が要ります。

先に、この記事でいう「がけ」を書いておきます——高さが3メートルを超える斜面です。角度の線(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地)は、条例の本文ではなく市の逐条解説にあります。擁壁ひとつぶんの高さ、階段二十段ぶんの高低差でも当たり得ます。「うちのはがけというほどのものではない」という感覚は、条文の線引きとは別物です。まず測ってください。

  • その土地は大和市内ですか。はい=大和市建築基準条例 第3条です神奈川県建築基準条例は、大和市の区域内では適用されません(同条例第53条第1項)。2026年3月31日までは、県条例の第2条の2・第2条の3(災害危険区域)だけが例外として残っていましたが、この2条は2026年4月1日に削除されました——あとの節で書きます。大和市では「第3条」です(「第5条」ではありません)。
  • ②大和市の第3条は、がけの上に建てるならがけの下端(かたん=斜面の低いほうの足元)からがけの下に建てるならがけの上端(じょうたん=斜面の高いほうの肩)からの水平距離ががけの高さの2倍以内のときに、安全な擁壁を設けなければならないと定めています。
  • この「2倍以内」は、規定がかかるかどうかの線引きです——2倍を超えて離れていれば、第1項本文はかかりません。けれど2倍以内に入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です
  • ④安全な擁壁を設ければ、第3条第1項については原則として建てられます。第1項ただし書の2つの号、または第2項に当たれば、本文は適用されません。
  • ⑤ただし、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)・イエローゾーン(土砂災害警戒区域)・法第19条第4項は、別に残ります。(条例・逐条解説は2026年9月5日に原文を確認しました。神奈川県建築基準条例の2026年4月1日改正は、2026年9月6日に県公報・新旧対照表・県の解説で確認しました)。

大和市内なら、大和市建築基準条例 第3条です

「がけ条例」という名前の条例はありません。大和市では、建築基準法第40条などに基づく大和市建築基準条例(平成12年3月28日条例第11号。最終改正は令和7年3月28日条例第8号)の第2章(がけ付近の建築物及び大規模な建築物の敷地と道路との関係)第3条(がけ付近の建築物)が、がけに近い建築物の決まりです。神奈川県建築基準条例は、大和市の区域では適用されません——県条例第53条第1項が、法第4条第1項または第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条または法第43条第3項に基づく条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては適用しない、と定めています。2026年3月31日までは、この第1項に「(第2条の2及び第2条の3の規定を除く。)」という括弧書きがあり、災害危険区域のこの2条だけが残っていました——その2条も、括弧書きも、2026年4月1日に削除されています規制が無くなるのではなく、読む条例が入れ替わります。大和市は昭和61年4月から建築基準法における特定行政庁(=建築確認や是正命令を受け持つ立場)になっており、建築指導課が確認申請、認定、定期報告、違反建築物の是正指導などを行っています。

(適用の除外)
第53条 この条例は、法第4条第1項又は第2項の規定により建築主事を置く市町村が法第40条又は法第43条第3項の規定に基づき条例を定めたときは、その条例の効力が発生した時から、当該市町村の区域内においては、適用しない。

神奈川県建築基準条例 第53条第1項(2026年4月1日施行の現行)

言葉の意味は、条例の中では定義していません。第2条(定義)が「この条例において使用する用語は、法及び政令において使用する用語の例による」と定めており、市の逐条解説も「本条例は建築基準法及び建築基準法施行令を根拠としており、条例の用語は建築基準法及び建築基準法施行令に準拠する」と書いています。「居室」「主要構造部」といった言葉は、建築基準法の意味で読みます——この記事に出てくる2つは、こういう意味です。居室(きょしつ)=居住・執務・作業・集会・娯楽などのために継続的に使う室(法第2条第4号。物置や車庫でも、作業などに継続して使う室があれば居室に当たり得ます)。主要構造部(しゅようこうぞうぶ)=壁・柱・床・はり・屋根・階段(法第2条第5号。構造上重要でない間仕切壁、ひさし、屋外階段などは除かれます)。

(がけ付近の建築物)
第3条 高さ3メートルを超えるがけの下端(がけの下にあっては、がけの上端)からの水平距離が、がけの高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合には、がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて、安全な擁壁を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する部分については、この限りでない。
(1) がけの形状又は土質により安全上支障がない場合
(2) がけの上部の盛土の部分で、高さが2.5メートル以下、斜面のこう配が45度以下であり、かつ、その斜面を芝又はこれに類するもので覆ったもの

大和市建築基準条例 第3条第1項

どこからが「がけ」か——高さ3メートル超。角度の線は、条文ではなく市の逐条解説にあります

第3条の条文は、「高さ3メートルを超えるがけ」とだけ書いています。3.0メートルちょうどは、当たりません(条文は「超える」です)。

角度の線は、条例の本文には書かれていません。私たちが確かめた範囲では、大和市建築基準条例の条文にも、大和市建築基準法施行細則にも、「がけ」の角度の定義は見当たりませんでした。角度を書いているのは市の逐条解説です——第3条の【趣旨】に、「なお、『がけ』とは、地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地をいう。」と置かれています。つまり「30度超」は、条文ではなく市の解説による線です。実務ではこの解説に沿って運用されますが、境目の土地では、条文だけを見て自分で判定しないでください——建築指導課に当ててください。

大和市の条文には、硬岩盤(こうがんばん=かたい岩の地盤)など、土質を理由に「がけ」から除く定めがありません。土質は、がけに当たるかどうかではなく、第1項ただし書第1号のほうで効きます。「うちは岩だから外れる」とは読めません。土質の見分けと、こう配・高さの測定は、建築士に見てもらってください。

3メートルという線は、擁壁ひとつぶんの高さです。敷地の中の段差、隣地との高低差、道路との高低差——「がけ」という言葉から思い浮かべるものより、ずっと身近な高さで線が引かれています。とくに、造成で高さが変わる場合は注意が要ります。もともと3メートル以下だった斜面でも、上に土を盛れば3メートルを超え、条例がかかり始めることがあります。「いまは対象外だから大丈夫」ではなく、造成後の高さで見てください。

距離の起点は、がけの上に建てるか下に建てるかで入れ替わります

がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの上に建てるとき、距離をどこから測るか

ここが、大和市の第3条でいちばん間違えやすいところです。条文は「がけの下端(がけの下にあっては、がけの上端)からの水平距離」と書いています。

がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
がけの下に建てるとき、距離をどこから測るか
  • がけの上に建てるなら、起点は「下端」——足元の、遠いほうの点から測ります
  • がけの下に建てるなら、起点は「上端」——肩の、遠いほうの点から測ります

建てる場所によって、測り始める点が入れ替わります。どちらの場合もがけをはさんで向こう側の端が起点になるので、がけの斜面の幅のぶんだけ、対象の範囲は広くなります。市の逐条解説の「がけ付近の範囲」の図も、がけの上側と下側のそれぞれに「対象となる範囲(2H)」を取り、家の絵を2つ並べて示しています。たとえば高さ4メートルのがけなら、その起点から8メートルです。どちらの点から測るのかを最初に決めることが、山場になります。

そして対象は、建築物を建てる場合だけではありません。条文は「建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合」と書いています——造成の段階から、この規定はかかります。先に土地を平らにしてから家の計画を考える、という順番だと、造成の時点ですでに第3条の当てはめが始まっています。土を動かす前に、擁壁の位置と規模を含めた計画にしておいてください。

安全な擁壁を設ければ、第3条第1項については原則として建てられます

擁壁だけが道ではありません。条文は、がけと当該建築物との間に適当な流土止めを設けたときにも、この義務を適用しないと書いています(第3条第2項)。くわしくは、あとの節に書きました。擁壁で受けるか、あいだで受けるか、建物側で受けるか——どれが自分の敷地に合うかは、設計者に見積りを並べてもらって比べてください。

安全な擁壁を設ければ、道はあります。2倍以内に入るなら、義務の形は「離しなさい」ではなく「設けなさい」です。がけの形状もしくは土質、または建築物の位置・規模もしくは構造に応じて、安全な擁壁を設ける——これを満たせば、第3条第1項については、原則として建てられます「原則として」と書くのには、理由があります——これは第3条第1項の義務を満たすという意味で、土砂災害の区域、建築基準法第19条第4項は、別に確認してください。

市の逐条解説は、第1項の趣旨を「がけ付近に建築又は敷地の造成を行う場合、当該がけ部分に、原則として安全な擁壁の設置を義務付けるものである」と説明しています。原則は「設ける」側です。そのうえで、がけの性質に基づき安全上支障がない場合には擁壁を設置することを要しない、と続きます。

高さ2メートルを超える擁壁は、建築基準法施行令第138条第1項第5号により法第88条第1項の工作物に指定されており、建築主事等(=市で建築確認を受け持つ職員)または指定確認検査機関(=国や県の指定を受けて確認・検査を行う民間の機関)の確認を受ける必要があります——擁壁そのものにも手続きがあります。条例の「がけ」は3メートル超ですが、擁壁の確認の線は2メートル超です——数字が違うので、混ぜないでください。擁壁を「設ければ終わり」ではなく、その擁壁の手続きと検査まで含めて計画に入れてください。

ただし書は2つ。「当該部分については」と書かれています

第3条第1項ただし書は、2つの号のどれかに当たる場合に、当該部分については本文を適用しないと定めています。がけ全体でひとまとめに判定するのではなく、部分ごとに見る書き方です。当たった部分については本文が外れますが、当たらない部分には残ります。

ここは、必ず建築指導課に当ててください。ただし書の書き出しは「該当する部分については」ですが、第1号の末尾は「安全上支障がない場合」と、言葉がそろっていません。この号が、がけの一部にだけ効くのか、それとも敷地全体に効くのか——どちらに読むかで、必要な擁壁の量(=費用)が変わります。設計に入る前に、建築士を通じて窓口の判断を取っておいてください。

  • 第1号(安全上支障がない場合)——「がけの形状又は土質により安全上支障がない場合」。市の逐条解説は、その判断の仕方をはっきり書いています——「安全上支障がないと判断する場合には、土質試験及び斜面の安定計算を行う等、工学的な検討方法により安全性を確認することとする」。条文の「安全上支障がない」は、工学的な検討で示すものだ、ということです。見た目や経験で「支障がない」と言える号ではありません
  • 第2号(がけの上部の盛土の部分)——がけの上部の盛土の部分で、高さが2.5メートル以下斜面のこう配が45度以下であり、かつその斜面を芝またはこれに類するもので覆ったもの。市の逐条解説は、この号に該当する場合の図に3つの条件(盛土の高さは2.5メートル以下/盛土の勾配は45度以下/盛土の斜面の表面を芝等で保護)を書き添え、その隣に「既存のがけ部分には、原則、擁壁の設置が必要」と明記しています。外れるのは、上に載せた盛土の部分だけです

第2項に当たれば、第1項は適用されません

2 前項の規定は、がけの上に建築物を建築する場合において、当該建築物の基礎ががけに影響を及ぼさないとき、又はがけの下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造部(がけ崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く。)を鉄筋コンクリート造とし、若しくはがけと当該建築物との間に適当な流土止めを設けたときは適用しない。

大和市建築基準条例 第3条第2項

市の逐条解説は、この第2項を「第1項の緩和規定を定めたもの」と位置づけています。「家じゅうをコンクリートで固めなさい」という意味ではありません——鉄筋コンクリート造にするのは主要構造部のうち、がけ崩れによる被害を受けるおそれのある範囲で、その範囲は下に見るとおり決められています。擁壁を設ける代わりに、がけ崩れが起きても建築物が壊れない造りにするという道です。「安いほうを選ぶための逃げ道」ではありません——どちらも、構造の検討と図面が要ります。そして第2項は、がけ崩れそのものを止める規定ではありません。止めるのが第1項(擁壁)、崩れても建物が持つようにするのが第2項、という分かれ方です。

  • がけの上に建てる場合——「当該建築物の基礎ががけに影響を及ぼさないとき」。市の逐条解説は、深基礎等により建築する場合で、建築物の基礎下面が、がけ下端からの角度θの範囲内に入っている場合、または杭基礎によって杭先端をがけ面の下端からの安息角(あんそくかく=土が自然に安定する角度、θ)以深の層に支持させたときで、がけが安定している場合が該当する、としています。角度θは表で示され、背面土質が関東ローム・硬質粘性土等なら35度盛土、腐食土、その他不明な場合なら25度です。「不明な場合」がいちばん厳しい25度になっていることに注意してください——調べていない土地は、いちばん不利な数字で見られます
  • がけの下に建てる場合——主要構造部(がけ崩れによる被害を受けるおそれのない部分を除く)を鉄筋コンクリート造とするか、がけと建築物とのあいだに適当な流土止めを設ける。市の逐条解説は、これを「がけが崩れた場合に、当該建築物が直ちに倒壊しないよう危険を防止する構造とした場合」と説明し、図ではがけの高さの2倍(2H)の範囲とがけの高さの3分の1(H/3)を示しています。鉄筋コンクリート造とする場合は「がけ崩れの際、直接影響を受ける部分として、網がけした範囲の外壁について、擁壁と同等の構造とした鉄筋コンクリート造とする」、流土止めの場合は「がけ崩れの際の危険を防止する目的として、擁壁と同等の構造とした鉄筋コンクリート造の流土止めを設置する」としています。どちらも「擁壁と同等の構造」が求められています

市の逐条解説は、第2項を使う場合にひとつ釘を刺しています——「なお、基礎の応力が、がけに影響を及ぼさない場合でも、敷地内の既存擁壁や法面(のりめん)は土地所有者の管理によるため、安全性については設計者の責任において検討する必要がある」。建物が安全でも、擁壁や斜面そのものの安全は別の話です。そしてその擁壁と斜面は、あなたが買う土地の一部になります——維持と、いずれ来る造り直しの費用も、土地の値段の一部として考えてください。

第2項が外すのは第1項です。次に見る第3項(排水)は、別に残ります。

がけの上に建てるなら、排水の措置も要ります(第3条第3項)

3 高さ3メートルを超えるがけの上にある建築物の敷地には、がけの上部に沿って排水溝を設ける等がけへの流水又は浸水を防止するため適当な措置を講じなければならない。

大和市建築基準条例 第3条第3項

第3項はがけの上の話です。市の逐条解説は「がけの上にある敷地の場合には、雨水等によるがけの浸食を防止するため、排水設備等の設置を義務付けるもの」と説明し、「がけ表面へ雨水等が流出しないよう、がけの上部に沿って排水溝等を設置する(排水溝以外でも雨水等の浸食を防止する適当な措置を講じればよい。)」としています。

第3項にただし書はありません。第1項ただし書に当たって擁壁が要らない場合でも、第2項に当たって第1項が適用されない場合でも、第3項は別の義務として残ります——そして後で見るとおり、第3項も罰則の対象です。また第3項の条件は「高さ3メートルを超えるがけの上にある建築物の敷地」で、2倍以内かどうかを問うていません。

災害危険区域——この条例に規定はありません。危険が無いという意味ではなく、県が指定する区域で見ます

大和市建築基準条例の第1条(趣旨)が根拠として挙げているのは、法第40条(法第88条第1項において準用する場合を含む)法第43条第3項法第52条第5項法第56条の2第1項政令第144条の4第2項、その他法の施行について必要な事項です。災害危険区域の根拠である法第39条は入っていません。この条例には、災害危険区域を指定する規定も、区域内の建築物を規制する規定も置かれていません。ただし、それは「がけ崩れの危険が無い」という意味ではありません——次に見るとおり、県条例にあった災害危険区域の2条も2026年4月1日に削除され、いまは土砂災害防止法の区域と急傾斜地崩壊危険区域で見ます。

県条例の災害危険区域の条は、2026年4月1日に削除されました

2026年3月31日までは、県条例に2つだけ外れない条がありました。第53条第1項に「(第2条の2及び第2条の3の規定を除く。)」という括弧書きがあり、同条第2項が「第2条の2及び第2条の3の規定は、…法第39条第1項又は第2項の規定に基づき条例を定めたときは…適用しない」と定めていました。2026年4月1日の改正で、第2条の2・第2条の3は両方とも削除されました。同じ改正で、第53条第1項の括弧書きも、当時の同条第2項も、罰則の第59条第1項にあった「第2条の3、」も削られています(神奈川県公報 令和7年12月23日 号外第70号・神奈川県条例第84号/県の新旧対照表)。

改正前の2条が何だったか——第2条の2は、知事が急傾斜地法第3条第1項により指定した急傾斜地崩壊危険区域(土砂災害特別警戒区域を除く)を、法第39条第1項の災害危険区域として指定するものでした。第2条の3は、その区域内で居室を有する建築物を建てるとき、基礎及び主要構造部を鉄筋コンクリート造またはこれに類する構造とし、かつその居室が「がけ」(こう配が30度をこえる傾斜地)に直接面していないことを求めるものでした。いまは、どちらも条例にありません。

県の解説は理由をこう書いています——土砂災害防止法の施行から土砂災害特別警戒区域の指定までの間、がけ崩れによる被害を防止するため急傾斜地崩壊危険区域を災害危険区域としてきたが、特別警戒区域の指定が令和3年度までに完了し、法により制限を受ける区域が整理されたため。

そのため、いまは第53条第1項だけで、県条例は大和市の区域内では丸ごと適用されません。読むのは大和市建築基準条例です。県が所管する区域でも、「急傾斜地崩壊危険区域=災害危険区域」ではなくなりました。大和市が建築基準法第39条にもとづく条例で災害危険区域を指定しているかは、市の例規集を「災害危険区域」「法第39条」で調べても見つかりませんでした(例規集の内容現在=令和8年6月29日)——市の窓口には確かめていませんので、大和市の建築指導課でも確かめてください。

急傾斜地崩壊危険区域そのものは残っています。区域内での切土・盛土・工作物の設置などには、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項により知事の許可が要ることがあります。窓口は建築の窓口とは別で、所在地を所管する県の土木事務所・治水事務所です(担当課の名前は事務所によって違います——県の「【急傾斜・砂防・土砂など】許認可案内」のページで確かめてください)。同項ただし書により、非常災害のために必要な応急措置として行う行為、区域の指定の際すでに着手している行為、政令で定めるその他の行為は許可の対象から外れます。ただし、手続が無くなるとは限りません——区域の指定の際すでに着手していた行為は、指定の日から起算して14日以内に知事へ届け出なければなりません(同条第3項)。

2026年3月31日までの行為は、別です。改正条例の附則は、「この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」と定めています。「削除されたから、過去のぶんも問われない」とは読めません。

これは「大和市にはがけの危険がない」という意味ではありません。この記事が確かめたのは大和市建築基準条例の中身だけです。土砂災害防止法によるレッドゾーン・イエローゾーンは神奈川県知事が指定しており、市の防災のページによれば、令和3年5月25日に指定されました。市は「大和市における土砂災害警戒区域等は、38区域となっています。そのうち土砂災害特別警戒区域が含まれているのは26区域です。」と書いています。「特別警戒区域が26か所ある」という意味ではありません——38の警戒区域のうち、26に特別警戒区域が含まれているという書き方です。また市は、大和市で対象となるのは「急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)」のみ(土石流・地すべりは対象外)としています。指定は変わり得ます——計画の時点で確かめてください。

レッドゾーン・イエローゾーンと、法第19条第4項は、別に残ります

第3条の擁壁を設けても、次の3つは別に残ります。

  • 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)——指定するのは神奈川県知事です。区域内で居室を有する建築物(居室=居住・執務・作業・集会・娯楽などのために継続的に使う室。建築基準法第2条第4号)を建てる場合、建築基準法施行令第80条の3の構造規制がかかります(土砂災害防止法と法施行令による全国共通の仕組みで、この条例とは別です)
  • 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)——こちらは構造規制ではなく、警戒避難体制の区域です。ただし、第3条のがけに当たるかどうかは、区域の内外とは関係なく決まります——イエローゾーンに入っていないことは、第3条が外れる理由になりません
  • 建築基準法第19条第4項——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です。この規定に、がけの高さの下限はありません——高さ3メートル以下でも、かかり得ます。大和市の条例の「がけ」は3メートル超ですが、法第19条第4項に同じ線はありません

レッドゾーンでは、ふだんなら建築確認の要らない小さな建物でも、確認が必要になることがあります。土砂災害防止法第25条が、特別警戒区域内の居室を有する建築物を建築基準法第6条第1項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用するからです(同項第1号・第2号に掲げるものと、同項第3号の区域は除かれます)。自分の計画に確認が要るかどうかは、窓口で確かめてください。なお、敷地が区域の内外にわたるときは、第25条が適用する法第91条により敷地の過半の属する区域の規定によります(ちょうど半分は「過半」ではありません)。

区域に入っているかどうかは、大和市の防災マップ(ハザードマップ)神奈川県土砂災害情報ポータルで当たりを付けられます。ただし、指定するのは県知事です——地図サービスの表示と告示が食い違うことがあるので、最終確認は神奈川県の告示図書(法定図書)で行ってください。市は、指定に関することは神奈川県厚木土木事務所東部センターに問い合わせるよう案内しています。レッドゾーン内で建てる場合の構造の考え方と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

既存の建物の増築・改築は第3条がかかり、用途変更は列挙に入っています

既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。

大和市建築基準条例 第55条(既存建築物に対する制限の緩和)は、緩和を第1項から第11項まで置いていますが、いずれも緩和する条を、項ごとに列挙する形です。増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をするなら、がけの第3条は原則としてかかってきます——緩和されません。50平方メートル以下の増築・改築を緩和する第1項の列挙にも、大規模の修繕・大規模の模様替を緩和する第9項の列挙にも、第3条が入っていないからです。

ただし、用途変更だけは扱いが違います。第55条第11項は、法第3条第2項の建築物の用途を変更する場合には、第3条、第4条、第6条から第8条まで、第12条から第14条まで、第19条、第20条、第23条第2項から第25条まで、第36条から第38条まで及び第42条から第45条までの規定は適用しない、と定めています。第3条が、この列挙に入っています。ただしこれは「法第3条第2項の建築物」=既存不適格の建物が前提で、いま建てようとしている新築には関係しません。また、用途変更にあわせて増築・改築や大規模の修繕・大規模の模様替をするなら、そちらの適用関係で判断することになります。自分の計画がどちらに当たるかは、建築指導課で確かめてください。

ここから先は、いまある建物を動かす・変える人向けです。新しく建てる人は読み飛ばして構いません。法第86条の7第1項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません(同条第2項・第3項も同じです)。この条例に届くのは第4項(移転)だけです——同一敷地内の移転か、支障がないと特定行政庁が認める移転では、既存不適格の扱いが続きます(施行令第137条の16)。どの移転でも続く、という意味ではありません。

罰金は原則、設計者に。ただし是正命令は、建築主・所有者も対象になり得ます

第3条第1項・第3項は、罰則の対象です。大和市建築基準条例 第58条第1項は、これらの規定に違反した建築物・工作物・建築設備の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、または設計図書に従わないで工事を施工した場合は工事施工者)を、500,000円以下の罰金——50万円以下の罰金に処すると定めています。名宛人(なあてにん=この罰則を受ける人)は原則として設計者です。違反が建築主等の故意によるときは、設計者または工事施工者を罰するほか、建築主・工作物の築造主・建築設備の設置者にも同じ刑が科されます(第58条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、法人または人にも罰金が科されます(第58条第3項)。これは両罰規定——行為をした人だけでなく、その法人や雇い主も罰する定めです。第3条第2項そのものに違反、ということはありません(罰則の対象は第1項と第3項です)——第2項は義務を課す規定ではなく、第1項を適用しない場合を定めた規定だからです。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていませんが、設計者が現場管理者を兼ねていれば名宛人になり得ます命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第1号)。

そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査の省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、適合の義務は審査の有無にかかわらず残ります

窓口——大和市まちづくり部 建築指導課です

  • 条例第3条の当てはめ・確認申請の相談——大和市まちづくり部 建築指導課 建築審査係 046-260-5434(大和市下鶴間1-1-1 本庁舎4階)。土地を買う前に、まずここです
  • 建築指導課のほかの係——建築指導係 046-260-5425建築住宅係 046-260-5422(本庁舎4階)
  • 条例と逐条解説——市は「大和市建築基準条例」「大和市建築基準条例逐条解説」「大和市建築基準法施行細則」をPDFで公開しています。相談の前に、第3条の節を建築士に読んでもらってください
  • 土砂災害警戒区域等の指定——市は、指定に関することは神奈川県厚木土木事務所東部センターに問い合わせるよう案内しています。告示図書は神奈川県です
  • 確認申請そのものの提出先——建築主事等(大和市)のほか、指定確認検査機関にも出せます。どちらに出しても、条例の適合義務は同じです

売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用と配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。この一覧は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士、条例の当てはめは大和市建築指導課です。

  • ① その土地は大和市内か。大和市内なら、読むのは大和市建築基準条例 第3条です(神奈川県建築基準条例は適用されません。県条例第53条第1項。かつて例外だった第2条の2・第2条の3は、2026年4月1日に削除されました
  • ② 敷地の中や周りに、高さが3メートルを超える斜面があるか。角度の線(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地)は条例の本文ではなく市の逐条解説にあります——境目の土地では、自分で判定しないでください高さが足りなくても、終わりではありません。建築基準法第19条第4項には高さの下限がありません——がけ崩れ等による被害を受けるおそれがあれば、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に要ります。「うちは3メートル以下だから対象外」で止めないでください
  • ③ 建てる場所は、起点から2倍以内か。起点は、がけの上に建てるなら下端、下に建てるなら上端です。2倍を超えて離れていれば、第3条第1項本文はかかりません。敷地の造成も対象です
  • ④ かかるなら——安全な擁壁を設ければ第3条第1項については原則として建てられます高さ2メートルを超える擁壁は、令第138条第1項第5号・法第88条第1項の確認が別に要ります(提出先は建築主事等または指定確認検査機関)
  • ⑤ 第1項ただし書の2つの号のどれかに当たるか。第1号は工学的な検討(土質試験や斜面の安定計算など)が前提で、どこまでに効くかは建築指導課に確かめます。第2号で外れるのは盛土の部分だけで、市の逐条解説は「既存のがけ部分には、原則、擁壁の設置が必要」と明記しています
  • ⑥ 第2項に当たるか。がけの上なら基礎ががけに影響を及ぼさないこと(角度θは関東ローム・硬質粘性土等で35度、盛土・腐食土・その他不明な場合で25度)、がけの下なら主要構造部を鉄筋コンクリート造とするか流土止めを設けること(いずれも擁壁と同等の構造)。第2項が外すのは第1項だけです
  • ⑦ 高さ3メートルを超えるがけの上にある建築物の敷地なら、第3項の排水の措置が計画に入っているか。第3項にただし書はありません。第3項は、2倍以内かどうかを問いません
  • ⑧ 既存の擁壁や法面があるなら、その安全性も別に確かめる。市の逐条解説は、基礎の応力ががけに影響を及ぼさない場合でも、敷地内の既存擁壁や法面は土地所有者の管理によるため、安全性については設計者の責任において検討する必要があるとしています
  • ⑨ レッドゾーン・イエローゾーンに入っていないか。レッドゾーンでは居室を有する建築物に令第80条の3の構造規制がかかります。区域の内外にわたる敷地の建築確認は、第25条が適用する法第91条により敷地の過半で扱いが分かれます。最終確認は神奈川県の告示図書
  • ⑩ 既存の建物の増築・改築・用途変更は、適用関係を窓口で。条例第55条第1項・第9項の列挙に第3条はありませんが、第11項(用途変更)には第3条が入っています——ただし既存不適格の建物であることが前提です
  • ⑪ 建築確認が不要でも、条例の適合義務は残ります。違反すれば、条例第58条の罰則(50万円以下の罰金)や、建築基準法第9条の是正命令の対象になり得ます

参考にした資料(2026年9月5日に原文を確認)

  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第4条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第43条・第52条・第56条の2・第86条の7・第87条・第88条・第91条・第98条)
  • 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第10条・第80条の3・第137条の16・第138条・第144条の4)

擁壁の形や寸法の一般的な考え方は、擁壁の選び方にまとめています(条例第3条の当てはめは、この記事に書いた窓口で確かめてください)。

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