熊本で、がけの近くに家を建てる・買う人へ——最初に答えから。
先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って計画地を所管する建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。
①熊本のがけ条例は、高さ2メートルをこえるがけに接し、または近接して建築する場合、がけの上ならがけの下端(かたん)から、がけの下ならがけの上端(じょうたん)から、建築物との間にがけの高さの1.5倍以上の水平距離を求めます。②数字は県内どこでも同じですが、適用される条例そのものが区域で違います——熊本市・八代市・天草市では県条例は全部適用されず(県の施行細則第1条の2)、各市の条例が適用されます。特定行政庁(建築確認を担当する県または市町村)によって、例外の取扱いが異なる部分があります——県と熊本市の解説は、どちらも冒頭で「他の特定行政庁とは取扱いが異なる部分がある」と断っています。③土砂災害のレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)は別の法律の規制ですが、熊本県は区域内に建築する場合の取扱いを公開しています——自己居住用の住宅等か、宅地分譲等かで枝が分かれます(枝は選べません)。どちらの枝でも、土砂法の審査と工事完了の検査を経て、指定解除まで進む道があります——県の取扱いのうち、解除されないのは建物側の構造で受ける道だけです(建築物と一体の擁壁や、告示第383号の形式)。いずれも基準への適合が前提で、どの敷地でもできるという意味ではありません。擁壁(ようへき)は、がけの土が崩れないように支える構造物です。塀とは役割が違います。この記事は、その順に整理します(条例・解説は2026年8月29日に原文を確認しました)。
県所管区域では県条例第2条——熊本市・八代市・天草市では、各市の条例が適用されます

「がけ条例」という名前の条例はありません。熊本県では、建築基準法第40条に基づく熊本県建築基準条例(昭和46年条例第38号)の第2条が、がけに近接する建築物の決まりです。ただし、この県条例は県内全域にかかるわけではありません——条例第1条の3(適用除外)を受けた県の施行細則第1条の2が、熊本市・八代市・天草市の区域では県条例の全部を適用しないと定めています。この3市では、それぞれの市の建築基準条例(熊本市は第4条、八代市・天草市は第2条)が適用されます。条文の数字はほぼ同じですが、例外の取扱いが異なる部分があります。この記事は県所管区域の条例を軸に、3市の違いを添えて読みます。個別の計画は、建築地を所管する建築確認担当課(県所管区域は県庁建築課または計画地を所管する各広域本部土木部景観建築課——県央・県北・県南の3広域本部。ほかは熊本市建築指導課・八代市建築指導課・天草市建築住宅課)で確かめてください。

(がけに近接する建築物)
熊本県建築基準条例 第2条
第2条 建築物を高さ2メートルをこえるがけに接し、又は近接して建築しようとする場合は、がけの上にあってはがけの下端から、がけの下にあってはがけの上端から、その建築物との間に、そのがけの高さの1.5倍以上の水平距離を保たなければならない。
2 鉄筋コンクリート造等の重量建築物を、がけの上に建築しようとする場合は、前項の基準を安全上支障がない程度に増大しなければならない。
3 前2項の規定は、建築物の用途、規模若しくは構造、擁壁の設置又はがけの状況により建築物の安全上支障がないと認められる場合には、適用しない。
どこからが「がけ」か——勾配30度超・硬岩盤以外。高さ2メートル超は本則の条件です

県の解説は、「がけ」の意味を盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)施行令第1条の定義で読みます——地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地で、硬岩盤(風化の著しいものを除く)以外のもの。風化の著しい岩は「硬岩盤」から除かれるので、岩でも風化が著しければ「がけ」に当たり得ます。30.0度ちょうど・2.0メートルちょうどは、当たりません(条文は「超える」「こえる」です)。そして「高さ2メートルをこえる」は、がけの定義ではなく第2条本則の適用条件です(熊本市の条例は、同じ内容を条文の中に書き込んでいます)。距離は、県の解説ではがけの端から建築物の壁面または柱面までで測ります。

義務の形は「1.5倍以上、離す」。がけの上の重い建物は、さらに増やします

起点は上下で逆向きです——がけの上に建てるなら下端から、がけの下に建てるなら上端から、建築物との間にがけの高さの1.5倍以上の水平距離。たとえば高さ4メートルのがけなら6メートル以上です。第2項は鉄筋コンクリート造等の重量建築物をがけの上に建てる場合で、第1項の基準を「安全上支障がない程度に」増大します——一律の数字はなく、計画ごとの判断です。なお、距離が取れていても、建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合は、擁壁の設置その他安全上適当な措置が別に必要です(建築基準法第19条第4項。高さの下限はありません)。

第3項の例外——県と熊本市では、安全確認の例示と取扱いが異なります

第3項は、建築物の用途・規模若しくは構造・擁壁の設置・がけの状況により安全上支障がないと認められる場合に、第1項・第2項を適用しない定めです。県の解説の例は——用途はがけ下の居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)を有しない建築物(倉庫・車庫・便所・畜舎等。がけ上は状況により判断)。構造はがけの起点から1/1.5の勾配で引いた線(がけライン)より深く基礎を納める方法で、県は木造2階建て程度・がけ高さ5メートル以下・がけ上を適用範囲とする技術資料(直接基礎の立ち下げ・支持杭・地盤改良)まで公開しています。擁壁は、盛土規制法の基準・開発許可基準等に適合するもののほか、土砂法の基準に適合する待受擁壁等を挙げ、既設の間知ブロック積み・自然石積みで基準適合を確認できないものは「がけとみなす」としています。がけの状況について県の解説が挙げている例は、盛土規制法施行令第8条第1項第1号イの土質・勾配に当たる切土や、国・県・市町村等が築造・管理する道路法面・河川護岸等です——公共施設として管理されていることを確認し、建築士がその管理状態から安全上支障がないと判断した場合に、がけ下に近接して建築できる例として挙げられています。ここまでは条文ではなく、いずれも県の解説が示す例です。

熊本市の解説は同じ第3項(市条例第4条第3項)を、設計する建築士が安全上支障がないと判断できる場合という形で運用します——崖下のピロティ・物置化、崖下の高基礎RC造・開口部なし、崖上の深基礎・杭(崖ライン以深)、検査済証等のある擁壁、そして擁壁不要の切土のり面の勾配表(軟岩〔風化の著しいものを除く〕80度以下/風化の著しい岩50度以下/砂利・真砂土・硬質粘土等45度以下——崖の高さ5メートル超はそれぞれ60度・40度・35度以下)。同じ条文でも、認め方の道具が県と市で違う——計画地の所管がどこかを最初に確かめる理由です。
レッドゾーンとの関係——枝は「制限用途に当たるか」で分かれます

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の規制は土砂災害防止法と建築基準法施行令第80条の3による全国共通の仕組みで、この条例とは別です。熊本県内のレッドゾーンは24,230か所(国土交通省の集計・令和8年6月30日時点)。県の解説は重なりの扱いを表で示しています(土砂災害の種類が「急傾斜地の崩壊」の場合の整理で、土石流・地滑りは県の砂防の担当へ相談、とされています)——県条例第2条の区域がレッドゾーンと重なる場合は、がけ地の斜面の状況を確認し、特段の危険性がなければ平成13年告示第383号に適合させる。イエローゾーン(警戒区域)と重なる場合は、告示第332号第2に基づき「想定される土砂等の高さ」等を設計者が算出したうえで告示第383号に適合させる。どちらの区域にも入らない場合は、告示第383号を適用できず、がけ地の地質や転石の有無等の調査を行って個別に安全を確認する——という整理です。

そして県は、レッドゾーン内に建築する場合の取扱いを公開しています。まず、急傾斜地崩壊防止施設や砂防設備が県により施工済みなのに、レッドゾーンの解除が行われていない場合は、下の3つのルートとは別に、振興局の砂防担当課への相談とされています。そのうえで、県は3つのルートを示しています。どれかを選ぶ形ではありません——施工状況・特定開発行為の許可に当たるかどうか・設置する擁壁等の種類で、枝が決まります。【ルート1】と【ルート2】は「特定開発行為に該当しない(自己居住用の住宅等を建築する場合)」の枝を、さらに設置する擁壁等の種類で分けたもの、【ルート3】は「特定開発行為に該当(宅地分譲、社会福祉施設、学校及び医療機関等を建築する場合)」の枝です。番号は、県の別紙のものをそのまま使っています。
【ルート1】建築物と一体の擁壁や、告示第383号の独立壁形式・層形式・門又は塀形式で建てる——建築確認の中で令第80条の3への適合を審査します(建築主事等で実施)。★3つのうち、レッドゾーンが解除されないのはこのルートだけです。
【ルート2】土砂法に規定する基準に適合する待受擁壁等を、個人が築造する——土砂法第11条の特定開発行為の許可手続きに準じた審査と、第18条の工事完了の検査に準じた検査を経て、レッドゾーンの指定解除(検査後1〜2か月程度)まで進みます。解除され、建築物周辺のすべての法面等の安全性が確認された場合は、県条例第2条第3項により第2条のがけ規定も適用しないとされています。
【ルート3】宅地分譲や社会福祉施設・学校・医療機関等の建築が目的で、特定開発行為に当たる——土砂法第11条の許可手続き(第12条の許可基準の適合を審査)と、第18条の工事完了の検査を経て、【ルート2】と同じく指定解除まで進みます。住宅は「自己の居住の用に供するもの」——開発行為を行う人自身が住むもの——を除きます。社会福祉施設・学校・医療施設は政令で定めるものに限られます——社会福祉施設は老人福祉施設・有料老人ホーム・障害者支援施設・児童福祉施設などですが、老人介護支援センター・児童自立支援施設・医療保護施設・宿所提供施設のように除かれるものがあります。学校は特別支援学校及び幼稚園、医療施設は病院・診療所・助産所です(土砂災害防止法第10条第2項、同法施行令第6条)。なお非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為には、許可が要りません(同法第10条第1項ただし書、同法施行令第5条)。特定開発行為でなくなるわけではありません。
★指定解除まで進むのは【ルート2】と【ルート3】です。県の別紙では、指定解除手続きの箱は1つで、【ルート2】から・【ルート3】から・施工済みで未解除の場合から、3本の矢印が入っています。いずれのルートも基準への適合が前提の手続きで、どの敷地でもできるという意味ではありません——可否は計画・現地の条件によります。都市計画区域の外で通常は建築確認の対象にならない規模の建築物でも、居室を有する建築物がレッドゾーン内にあり、かつ敷地の過半がレッドゾーン内にある場合は、土砂災害防止法第25条により建築確認が必要になります(敷地の過半が区域内でなければ、この第25条による追加の確認対象にはなりません——建築基準法第6条による別の確認要件がある場合は別です)。第25条は、こういう仕組みです(条文そのものではなく、要点です)——特別警戒区域(建築基準法第6条第1項第3号に規定する区域を除く。)内における居室を有する建築物(同項第一号又は第二号に掲げるものを除く。)を、同項第3号の区域内の建築物とみなして、法第6条から第7条の5まで・第18条・第89条・第91条・第93条を適用します。「敷地の過半」は、第25条の条文には書かれていません——第25条が適用する法第91条が、敷地が区域の内外にわたる場合は敷地の過半の属する区域の規定によると定めています(ちょうど半分は「過半」ではありません)。県の資料も、レッドゾーン内では都市計画区域外でも建築確認申請が必要と整理しています。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。なお熊本市の解説は、レッドゾーン内で居室を有する建築物を建てる場合の基準は土砂災害防止法の体系に定めがあるため、市条例(崖の条文)は適用外としています——ここも所管で扱いが分かれる点です。
急傾斜地崩壊危険区域は「災害危険区域」——住居は原則、建てられません
(災害危険区域)
熊本県建築基準条例 第25条・第26条
第25条 法第39条第1項の規定により指定する災害危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域とする。
(建築の制限)
第26条 前条の災害危険区域内においては、住居の用に供する建築物は、建築してはならない。ただし、建築物の構造若しくは敷地の状況又は急傾斜地崩壊防止工事の施行等により被害をうけるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。
知事が指定する急傾斜地崩壊危険区域は、各建築基準条例により建築基準法第39条の災害危険区域に指定されており、住居の用に供する建築物は原則建築禁止です。例外は、構造・敷地の状況・急傾斜地崩壊防止工事の施行等で被害をうけるおそれがないと認められる場合だけ(第26条ただし書)。熊本市・八代市の条例も同旨で、天草市は「急傾斜地崩壊危険区域及び別に条例で定める区域」としています。県の解説の一覧(令和4年1月時点)では、県の指定961か所のほか、阿蘇市(出水160か所)・上天草市・天草市・産山村・芦北町・甲佐町・球磨村・美里町が、それぞれの災害危険区域条例で別の指定を持っています——区域かどうかは指定の告示・図面で確かめます。区域内の切土・盛土・工作物の設置などは、急傾斜地法第7条第1項の知事の許可が別に必要になる場合があります(砂防担当の窓口へ)。
既存の建物・用途変更・仮設——適用の分かれ目
①既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)——条例の規定の施行・改正のときに適法に存在し、または工事中で、その施行・改正によって適合しなくなった建築物等には、建築基準法第3条第2項により、その適合しなくなった規定が原則として適用されません(条例の全部が外れるという意味ではありません)。ただし増築・改築・移転・大規模の修繕・模様替をすると、法第3条第3項第3号・第4号により緩和が切れて条例が適用されるのが原則です。もっとも増築・改築の側では、法第86条の7第1項の法定緩和がこの条例には届きません——同項が列挙しているのは法第20条・第21条・第48条といった法自身の条で、法第39条・第40条に基づく条例の規定は入っていません(同条第2項・第3項も同じです)。施行令第137条の2以下も、それぞれ法の個別の条に対応するものです。つまり、増築・改築をするなら、がけの第2条は原則としてかかってきます。ただし、ここで終わりではありません——特定行政庁がやむを得ないと認めるものについて、緩和して適用できる定めがあります(県条例第27条)。認めるかどうかは所管の判断なので、計画を決める前に相談してください。この定めが対象にするのは第2章・第3章です。ここは章で切れます——がけの第2条は第2章(建築物の敷地及び構造)なので、第27条は届きます。災害危険区域の第26条は第5章なので、届きません。熊本市第31条・八代市第29条・天草市第29条も同じ形の定めです。章の番号は条例ごとに違いますが、結論は4庁とも同じです——がけ(崖)の条には届き、災害危険区域の条には届きません。熊本市第31条は第3章及び第4章で、崖の第4条(第3章)には届き、災害危険区域の第2条・第3条(第2章)には届きません。八代市第29条・天草市第29条は第2章及び第3章で、がけの第2条(第2章)には届き、災害危険区域の第27条・第28条(第6章)には届きません。条例に届くのは移転です。法第86条の7第4項が対象にする「建築基準法令の規定」には条例が含まれます(法第6条第1項の定義)——同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。すべての移転が対象になるわけではありません。
②用途変更——工事を伴わない用途変更でも、建築基準法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更に準用されます。がけの第2条だけでなく、災害危険区域内の住居を制限する第26条も対象です(区域内の建物を住居用途に変える場合に問題になります)。既存不適格の建物の用途変更は、法第3条第2項により法第87条第3項が列挙する規定(またはそれらに基づく条例規定)の適用を受けない建築物について、同項により原則としてこれらの規定が準用されます。増築・改築・大規模の修繕・模様替をする場合や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件(同項第2号)を満たす場合はこの準用から除かれます。号ごとに結論が違います——第1号(増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を伴う場合)は、用途変更の側ではなく法第3条第3項で判断します。第2号(政令で指定する類似の用途相互間で、修繕・模様替をしないか、それが大規模でない場合)は、その用途変更だけを理由に条例が遡って適用されることはありません。第3号は法第48条(用途地域)に関する例外で、がけの規定には関わりません。
③仮設・災害時——特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、法第85条第1項により、災害により破損した部分の応急の修繕は工事の着手時期にかかわらず(国土交通省の通知)、国・地方公共団体・日本赤十字社の災害救助用と、被災者が自ら使用する延べ面積30㎡以内の応急仮設建築物は災害発生の日から1か月以内に工事に着手する場合に、建築基準法令の規定を適用しない特例があります(防火地域内の除外は応急仮設建築物の建築に掛かります)。第1項・第2項の応急仮設建築物を工事完了後3か月を超えて存続させるには、その日前に特定行政庁の許可が必要です(同条第3項。期限前に申請し、期限までに処分がされないときは、処分がされるまで存続できます——同項ただし書)。このほか県条例第28条は、法第85条第6項・第7項に規定する仮設興行場等、法第87条の3第6項に規定する興行場等・同条第7項に規定する特別興行場等について、安全上・防火上支障がないと認められる場合に第2章・第3章を適用しない特例です。
罰則は県第29条・第30条——原則は設計者、条件により施工者・建築主・法人等も。市で違いがあります
第29条 第2条第1項若しくは第2項、第3条、第5条から第11条まで、第13条から第15条まで、第18条から第20条第2項まで、第21条第1項若しくは第2項、第22条、第23条第1項若しくは第2項(第24条において準用する場合を含む。)又は第26条の規定に違反した場合における当該建築物の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、又は設計図書に従わないで工事を施工した場合は、当該建築物の工事施工者)は、20万円以下の罰金に処する。
熊本県建築基準条例 第29条第1項
名宛人(なあてにん=命令や罰則を受ける人)は原則設計者で、設計図書を用いない・従わない施工では工事施工者に替わります。違反が建築主の故意によるときは建築主にも科され(第29条第2項)、法人等には両罰規定(第30条。相当の注意・監督を尽くしたことの証明があれば免責のただし書つき)。がけの第2条と、災害危険区域の第26条は、どちらも罰則の対象です。八代市・天草市の条例にも同型の罰則(第33条・第34条)がありますが、熊本市建築基準条例にも、罰則の章(第8章)があります——ただし市の解説は、本文(34ページ)に「第8章 罰則」という見出しを置いて、そこに「法35条、36条(罰則)、附則は省略」と書くだけで、条文を載せていません(解説の目次に第8章はありません)。条文が解説に載っていないので、刑の重さと名宛人は確かめていません——市建築指導課で確かめてください。市の区域でも、違反の内容に応じて、建築基準法第9条による是正命令(除却(じょきゃく=取り壊し)・使用禁止などの措置を含みます)等の対象になり得ます。そして、確認申請が要らない計画でも、条例の適用要件を満たせば適合義務は残ります——確認特例(法第6条の4・施行令第10条)による審査省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まり、審査が省略される場合でも適合義務は別に生じます。
是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)
罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていません。命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。条例の罰則は罰金だけですが、こちらは拘禁刑もあります。
売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に確かめてください。どこを上端・下端とみるかも、窓口に確かめてください。
- ① 計画地はどの区域か。熊本市・八代市・天草市では県条例は全部適用されず(県の施行細則第1条の2)、各市の条例が適用されます。条文の数字はほぼ同じでも、特定行政庁によって例外の取扱いが異なる部分があります。最初に所管を確かめます
- ② 現地に「勾配30度超・硬岩盤以外」で高さ2メートルをこえるがけがあるか。敷地の中・隣地に限りません。風化の著しい岩は、がけに当たり得ます
- ③ がけの上は下端から、下は上端から、1.5倍以上の水平距離が取れているか。県所管区域では、県の解説により建築物の壁面又は柱面までで測ります(3市では各市の取扱いを確認)。がけの上の鉄筋コンクリート造等は、さらに増やします(第2項)
- ④ 距離が取れないなら、第3項のどの道で「安全上支障がない」を示すか。県所管なら、がけライン以深の基礎(技術資料あり)・適合擁壁・待受擁壁等・土質と勾配など。熊本市なら市の解説の道具(高基礎RC・崖ライン・土質の表など)。既設の石積み等で基準適合を確認できないものは「がけとみなす」(県解説)
- ⑤ 急傾斜地崩壊危険区域(各建築基準条例により災害危険区域に指定)に入っていないか。入っているなら住居は原則建てられません(県は第26条。3市はそれぞれの市の条例の該当条)——ただし、構造・敷地の状況・急傾斜地崩壊防止工事の施行等により被害をうけるおそれがないと認められる場合は、この限りではありません(第26条ただし書)。自分の土地で防止工事が済んでいるかどうかは、県の砂防担当(096-333-2553)で確かめられます。県・八代市・天草市では罰則の対象です——熊本市の罰則の条文は確かめていません。市町村独自の災害危険区域条例(阿蘇市の出水など)も別にあります
- ⑥ レッドゾーンか、イエローゾーンかを区別して確認。レッドゾーンなら令第80条の3の構造規制と、県の取扱いを確認——自己居住用の住宅等か、宅地分譲等かで枝が分かれます(指定解除まで進むのは【ルート2】と【ルート3】——どちらも審査と工事完了の検査を経る道です。建築物と一体の擁壁や告示第383号の形式で受ける【ルート1】では解除されません。枝は選べません)——数字(土石等の高さ等・最大の力の大きさ等)は県の公示図書で。イエローゾーンでは、県条例第2条にも該当する場合に、県解説の表に従って告示第332号第2による算定と告示第383号への適合を確認します
- ⑦ 既存の擁壁があるなら、検査済証等の資料と現況の確認から。県所管区域では、基準適合を確認できない間知ブロック積み・自然石積みは、県の解説上「がけとみなす」取扱いです(3市では各市の取扱いを確認)
- ⑧ 既存不適格の建物の増築・改築・移転・用途変更は、適用関係を所管窓口で。緩和の定め(県第27条・熊本市第31条・八代市第29条・天草市第29条。章の番号は条例ごとに違いますが、結論は4庁とも同じで、がけ(崖)の条には届き、災害危険区域の条には届きません)や、移転の法第86条の7第4項など、根拠のある道を確かめます
- ⑨ 建築確認が不要なことだけを理由に、条例が適用外になるわけではありません。違反すれば是正命令(建築基準法第9条)や、罰則の対象になり得ます——県・八代市・天草市は条例の罰則の条文を確認しました。熊本市の条例にも罰則の章(第8章)がありますが、市の解説が条文を省略しているため、内容は市に確かめてください
- ⑩ まず熊本県土砂災害情報マップで当たりを付け、最終確認は指定に係る公示図書で。公示図書は各広域本部土木部・各地域振興局土木部・熊本県庁砂防課・各市町村役場で縦覧できます(熊本県 砂防課 096-333-2553。県内の土砂災害警戒区域等指定状況・2026年8月3日更新)。マップは作成時点のもので、後の指定が入っていないことがあります——だから当たりを付けるまでに使い、最後は公示図書で確かめます
- 土砂災害防止法第25条による追加の建築確認は、居室を有する建築物が区域内にあり、かつ敷地の過半が区域内にあるときです。敷地の過半が区域外なら、この第25条による追加の対象にはなりません(建築基準法第6条による別の確認要件がある場合は別です)。
個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、建築地を所管する建築確認担当課にご確認ください。行き先は、土地のある市町村で決まります。
| 土地のある場所 | 建てる相談の行き先 |
|---|---|
| 熊本市 | 熊本市建築指導課(建築審査室) 096-328-2516 |
| 八代市 | 八代市建築指導課 0965-33-4750 |
| 天草市 | 天草市建築住宅課 0969-32-6797 |
| それ以外(県所管) | 計画地を所管する広域本部土木部 景観建築課——県央(熊本土木事務所)・県北(菊池地域振興局)・県南(八代地域振興局)。迷ったら熊本県 建築課 建築指導班 096-333-2534 |
レッドゾーンの区域・数字の確認と、特定開発行為の相談は、熊本県 砂防課 096-333-2553、または計画地を所管する広域本部土木部・地域振興局土木部の砂防担当です。相談に行く前に、その窓口へ「事前相談に何が要るか」を電話で聞いてください——必要な図書は計画によって変わるので、この記事では書けません。相談する時期は、計画を決める前です。
窓口の名前は資料によって違います(県のレッドゾーンの資料は「地域振興局砂防担当課」、県の建築確認の窓口案内は「広域本部土木部 景観建築課」)。いずれも実在します。★県の窓口一覧(2025年4月1日更新)は天草市を「建築課」と書いていますが、天草市の現行ページ(2026年4月2日更新)は「建築住宅課」です(電話番号は同じ)。上の表は2026年8月31日に各公式ページで確かめたものです。移り変わるので、行く前にリンク先でお確かめください。
出典
- 熊本県建築基準条例(県例規集・章立て〔第2章 建築物の敷地及び構造=第2条〜第5条/第5章 災害危険区域=第25条・第26条/第6章 雑則=第27条〜第28条の3/第7章 罰則=第29条・第30条〕・第1条の3・第2条・第25条〜第30条)
- 熊本県建築基準法施行細則(県例規集・第1条の2=熊本市・八代市・天草市の区域で県条例の全部を適用しない)
- 熊本県建築基準条例の解説(県公式PDF・令和6年4月改正版。がけライン・別表1・別表2・レッドゾーン内の取扱い別紙を含む)
- 熊本市建築基準条例(市例規集)——2026年8月30日の取得ではログイン画面に転送されました。条文と章立ては、次の市公式PDFで確認しています
- 熊本市建築基準条例と同解説(市公式PDF・令和8年3月。条例の全文・章立てと解説。第8章 罰則の条文は省略されています)
- 八代市建築基準条例(市例規集・第2条・第27条・第28条・第33条・第34条)
- 天草市建築基準条例(市例規集・第2条・第27条・第28条・第33条・第34条)
- がけ条例による建築制限(天草市公式)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第3条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第87条の3)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第10条・第80条の3・第137条の2以下・第137条の16)
- 宅地造成及び特定盛土等規制法施行令(e-Gov法令検索・第1条・第8条)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第9条〜第12条・第18条・第24条・第25条)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行令(e-Gov法令検索・第5条・第6条)
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(e-Gov法令検索・第3条・第7条)
- 災害により破損した建築物の応急の修繕に係る建築基準法の取扱いについて(国住指第27号・国土交通省通知PDF)
- 全国における土砂災害警戒区域等の指定状況(国土交通省・令和8年6月30日時点PDF)
擁壁の形や種類については、擁壁の選び方にまとめています。条例に当てはまるかどうかは、この記事に書いた窓口で確かめてください。