静岡のがけ条例——静岡県建築基準条例第10条

がけの決まりは第10条です

静岡県では、「がけの高さ2メートル超」のがけの下端(かたん)から水平距離で「がけの高さの2倍以内」に建物を建てるとき、がけの形状・土質や、建物の位置・規模・構造に応じて「安全な擁壁」を設けなければなりません。

先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありませんまず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って計画地を所管する建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。

擁壁(ようへき)は、がけの土が崩れないように支える構造物です。塀とは役割が違います。対象は居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)の有無を問わず、原則として建築物全般です。ただし建築基準法第85条第6項・第7項または第87条の3第6項・第7項の許可を受けた仮設建築物は、条例第49条により条例全体が適用除外です。これとは別に、建築基準法第85条第1項・第2項の要件を満たす一定の応急仮設建築物・工事現場の事務所等や、第87条の3第1項・第2項の要件を満たす一定の一時的な用途変更には、同法による適用除外があります。第1項と第2項は、形がまるで違います。第1項は、特定行政庁(建築確認を担当する県または市町村)が指定する非常災害区域等の中で、災害により破損した建築物の応急の修繕、または災害が発生した日から1か月以内に工事に着手する応急仮設建築物——国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建築するものか、被災者が自ら使用するもので延べ面積30平方メートル以内のもの——について、建築基準法令の規定を広く適用しないものです。ただし、防火地域内に建築する場合は、この適用除外はありません。第2項は全部を外すのではなく、列挙された規定だけを外す形で、対象は災害があった場合に建築する停車場・官公署その他これらに類する公益上必要な用途の応急仮設建築物と、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場等です(防火地域・準防火地域内で延べ面積50平方メートルを超えるものには、法第62条の適用があります)。第10条ただし書の例外は2つです。そして、がけ規制とは別に、隣の第10条の2には対象となる構造計算で地震地域係数Zを1.2倍にする県独自の耐震基準が置かれています——地震に備える県の、がけ条例です。

この記事は、いわゆる静岡県の「がけ条例」——正式には静岡県建築基準条例(昭和48年条例第17号)第10条と、関連する第3条・第4条(災害危険区域)、そして、がけ付近に限らず適用される第10条の2(構造耐力)——を、県が公開している条例・同解説の一体版〔令和8年4月版〕から読んだ整理です。

「がけ条例」の実体は、建築基準条例の第10条です

がけの決まりは第10条です
「がけ条例」は通称です。実体は静岡県建築基準条例(昭和48年条例第17号)第10条。第3条・第4条は災害危険区域、第10条の2はがけ付近に限らない県独自の耐震基準です。県の資料では対象は都市計画区域の内外によらず県内全域。市町が独自の条例を定めていれば、県条例と同時に作用します

「がけ条例」は通称です。建築基準法第39条(災害危険区域)・第40条(条例による制限の付加)などの委任を受けた静岡県建築基準条例が実体で、がけの規制は第10条に、災害危険区域の仕組みは第3条・第4条にあります。県の資料では、がけ条例の対象は都市計画区域の内外によらず県内全域と整理されています。なお、市町が独自の条例を定めている場合は、県条例と市町の条例が同時に作用すると解説は説明しています——計画地の市町の例規も確認してください。建築確認の対象となる計画では、この条例への適合も原則として確認審査の対象になります(一部、確認申請図書の添付が省略され、審査で直接確認されない場合があります——後述)。

どこからが対象か——30度の斜線で「がけ」を判定します

30度の斜線で「がけ」を判定します
30度の斜線は、こえる部分があるかを判定するために引くもので、斜線より下の高さを差し引く意味ではありません。県の解説の図では、2段のがけは下の段の下端からの30度線(AE線)の内外で判定し、一体とみなす場合は高さをH1+H2として扱います。「2メートルをこえる」であって「以上」ではありません。

第10条 がけの高さ(がけの下端を通る30度の勾配の斜線をこえる部分について、がけの下端からその最高部までの高さをいう。以下同じ。)が2メートルをこえるがけの下端からの水平距離ががけの高さの2倍以内の位置に建築物を建築する場合は、がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて安全な擁壁を設けなければならない。

静岡県建築基準条例 第10条本文

「がけの高さ」は、がけの下端を通る30度勾配の斜線をこえる部分がある場合に、その部分の最高部までを下端から測ります——この斜線は、こえる部分があるかを判定するために引くもので、斜線より下の高さを差し引く意味ではありません。2.0メートルちょうどは当たりません(条文は「こえる」です)。この高さが2メートルをこえるがけの、下端から水平距離で高さの2倍以内が対象の範囲です。県の解説の図では、2段のがけは下の段の下端からの30度線(AE線)の内外で判定し、一体とみなす場合は高さをH1+H2として扱います。

ただし、勾配・高さの要件を満たさず第10条の規制対象にならない斜面・がけや、2倍の範囲の外でも、安全の検討が不要になるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。個別の計画がその「おそれのある場合」に当たるかは、がけの状態・距離・地盤・建物の計画などによって判断されます。

対象は原則「建築物」全般。義務は「応じて、安全な擁壁」です

安全な擁壁で、第10条の義務は満たせます
義務の形は「がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて」安全な擁壁——一律の仕様ではありません。擁壁には法第88条・令第142条が適用され、判断には盛土規制法施行令の技術的基準や盛土等防災マニュアルが参考とされ、同令第17条の認定がされている擁壁は基準を満足(県の解説)。この枚が言っているのは、第10条の義務を満たすという意味です——法第19条第4項・災害危険区域・土砂災害の区域は、別に確認してください。

条文が対象にするのは「建築物を建築する場合」で、居室の有無を問う書き方ではありません——住宅も、倉庫や車庫のような建物も対象になり得ます。なお、建築基準法第85条第6項・第7項または第87条の3第6項・第7項の許可を受けた仮設建築物には、条例第49条により条例全体が適用されません。「建築」には新築だけでなく、増築・改築・移転も含まれます(建築基準法第2条第13号)。工事を伴わない用途変更も、同法第87条第2項により条例の規定が準用されることがあります(同条第3項などの例外もあります)。法第3条第2項により規定の適用を受けない既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)の建物は、その不適合だけで直ちに違反になるわけではありません(既存の建物のすべてが既存不適格に当たるわけでもありません)。県の解説にある増築の図の例は第10条の2(第50条の緩和対象)に関するもので、第10条について増築・改築等をする場合の適用は、これとは分けて窓口で確認してください。

義務の形も独特です——一律の仕様ではなく、「がけの形状若しくは土質又は建築物の位置、規模若しくは構造に応じて」安全な擁壁を設けること。県の解説では、擁壁には建築基準法第88条・施行令第142条が適用され、「安全な擁壁」かどうかの判断には盛土規制法施行令の技術的基準や、盛土等防災マニュアルの解説が参考になるとされています。そして、盛土規制法施行令第17条の認定がされている擁壁は、この基準を満足しているとされています。なお、令第142条第1項が求めるのは、掲げる基準に適合する構造方法です。あわせて、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法も認めています。基準に適合していれば足ります——大臣が定めた構造方法でなければならない、という意味ではありません。

第10条ただし書の例外は2つだけです

第10条ただし書で外れるのは2つ
第10条ただし書の第1号は「堅固な地盤を斜面とするがけ又は特殊な構造方法若しくは工法によつて保護されたがけ」、第2号は「がけ下に建築物を建築する場合において、その主要構造部を鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とした建築物」。県解説の例は、被害を受けるおそれのある部分に開口部がないものなど。

ただし、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
(1) 堅固な地盤を斜面とするがけ又は特殊な構造方法若しくは工法によつて保護されたがけで、安全上支障がないと認められる場合
(2) がけ下に建築物を建築する場合において、その主要構造部を鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とした建築物で、がけ崩れ等に対して安全であると認められる場合

同 第10条ただし書
  • 第1号(堅固な地盤・特殊な構造方法等で安全上支障がない場合)——①堅固な地盤を斜面とするがけ、または②特殊な構造方法・工法で保護されたがけで、安全上支障がないと認められる場合。県の解説の例は——調査の結果、盛土規制法施行令第8条第1項第1号イ又はロ(イ=別表第一の土質・勾配による区分。(1)・(2)の場合分けがあり、中欄の角度を超え下欄の角度以下のがけは上端(じょうたん)から下方に垂直距離5メートル以内の部分に限られます。ロ=土質試験その他の調査・試験に基づく地盤の安定計算により、擁壁の設置が必要でないと確かめられた崖面)に該当し、かつ湧水・浮き石等がなく風化のおそれがないことを確認した自然がけ/同号イ又はロに該当し、かつ同令第15条の石張り・芝張り・モルタル吹付け等の保護をした切土のがけ/土質試験等に基づく地盤の安定計算等で、がけの安全を確認したもの/擁壁以外の特殊な工法の急傾斜地崩壊防止施設等で保護され、技術的に安全性が確認できるもの/がけ上または法面に建てる場合に、基礎を深く定着させ建物の荷重等ががけに影響を及ぼさないもの、又はがけ崩れの影響を受けないよう設計されたもの——などです
  • 第2号(がけの下に建てる)——主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段。建物の構造上重要な部分)を鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造とした建物で、がけ崩れ等に対して安全であると認められる場合。県の解説の例は、基礎・主要構造部の全部又は一部をRC造等とし、被害を受けるおそれのある部分に開口部がないなど、がけが崩れても安全と認められるものです

どちらの号も、条文に「認められる」が付いています——言い分だけでは決まらず、建築確認の対象となる計画では、地盤・構造の資料をもとに確認の審査の中で判断されます。規制の範囲に既に擁壁がある場合も、その擁壁が「安全な擁壁」といえるか(資料と現況)の確認からです。がけのある計画は、早い段階で建築士と、県・市の建築指導の窓口へ。県は第10条の解説詳細版と、その質問と回答も公開しています(詳細版のうち「審査取扱い」は、静岡県が特定行政庁となる建築物が対象です——市が特定行政庁となる計画では、取扱いが異なる場合があります)。

がけ規制とは別の県独自基準——対象となる計算でZ×1.2(第10条の2)

Z×1.2は、がけ付近に限りません
基準は知事告示(平成29年告示第219号)です。特定天井に係る規定・建築設備等に係る令第5章の4の規定で用いるZと、四分割法の側端部分の必要壁量には乗じません。耐震等級2・3や一定の長期優良住宅の構造部分は告示第2項で適用除外、既存不適格の一定の増築等には条例第50条の緩和があります。

第10条の2は、がけ付近の建築物だけを対象とする規定ではありません。がけ付近に限らず適用される県独自の上乗せ基準で、この記事では、第10条第2号の建物側の対策との関係があるため、併せて取り上げています。

第10条の2 建築物は、地震に対して安全な構造のものとして、建築物の各部分の耐力、変形限度等について知事が定める基準に適合するものでなければならない。

同 第10条の2第1項

静岡県は、想定される南海トラフの地震に備えて、昭和59年から地震地域係数(Z)を割り増す県独自の基準を運用し、これを条例で義務化しています(第10条の2。基準は知事告示=平成29年告示第219号)。中身は、適用対象の構造計算(施行令第88条第1項のZを用いる地震力等の計算)で、Zの数値に1.2を乗じること、告示で定める木造の必要壁量の計算で、必要壁量に1.2を乗じること(1.32倍の運用は平成14年10月に始まり令和7年3月31日までで、令和7年4月1日施行の改正により1.2倍に変わりました。旧基準による猶予は最長で令和8年3月31日まで——経過措置の扱いが関わる計画は、着手時期等を窓口で確認してください)など。適用除外もあります——特定天井に係る規定と、建築設備等に係る施行令第5章の4の規定で用いるZには乗じず、四分割法の「側端部分の必要壁量」にも乗じません。所定の評価・認定等を受けた耐震等級2・3や一定の長期優良住宅の構造部分は告示第2項で適用除外となり、既存不適格建築物の一定の増築等には条例第50条(知事が定める範囲)の緩和があります。がけ対策として建物側の道(第2号のRC造等)を選ぶ場合も、その建物の構造は適用対象の範囲で、この上乗せ基準を踏まえて設計することになります。第1項の建築物に準ずるものについて、知事が安全上支障がないと認める場合は適用しない定めもあります(同条第2項。解説の例は、南海トラフで想定される地震動等を用いて構造設計したものなどです)。

災害危険区域は二階建て——急傾斜地の区域と、津波・高潮などの知事指定区域

災害危険区域は2種類あります
第3条が区域を決め、第4条が住居の用に供する建築物の建築を原則禁止します。①は急傾斜地法に基づき知事が指定すると自動的に災害危険区域になり、②は関係市町長の意見を聴いて指定・告示されます。例外は構造若しくは敷地の状況又は急傾斜地崩壊防止工事等の施行により、知事がおそれがないと認める場合。

第4条 災害危険区域内においては、住居の用に供する建築物は、建築してはならない。ただし、当該建築物の構造若しくは敷地の状況又は急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条第3項に規定する急傾斜地崩壊防止工事等の施行により、知事ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがないと認める場合は、この限りでない。

同 第4条

静岡県の災害危険区域(建築基準法第39条)は2種類あります——①急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法に基づき知事が指定。指定されると自動的に災害危険区域になります)と、②津波・高潮・出水等により危険が生ずるおそれのある区域のうち、知事が指定する区域(関係市町長の意見を聴いて指定・告示。第3条)。区域内では住居の用に供する建築物の建築が原則禁止で、例外は建築物の構造・敷地の状況・急傾斜地崩壊防止工事等の施行により、知事がおそれがないと認める場合です。県の解説では、RC造等でがけに面する部分に開口部のないものなどが例示され、認定は昭和57年の運用基準を参考に判断し、必要に応じて関係機関・関係部局と協議して決定するとされています。沼津土木事務所の整理表では、この解除申請は建築確認申請の提出前までと整理されていますが、これは同事務所管内の取扱いを示した資料です——現在の提出時期・手続の順序は、計画地を所管する窓口に確認してください。県の案内では、建築物の一部が区域内に入る場合だけでなく、建築物の敷地の過半が区域内となる場合(建築基準法第91条)も、解除の手続を行うとされています——区域の境界が敷地にかかるときは、建物の位置と敷地の両方を確認してください。区域の位置は県の地理情報システム(GIS)で確認できます。なお、急傾斜地崩壊危険区域内での切土・盛土や工作物の設置などは、この認定とは別に、急傾斜地法第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります(砂防担当窓口へ)。

罰則は第51条・第52条。確認審査の要否と、条例の適用の有無は別です

罰金は設計者、命令は建築主・所有者等
第51条第1項です。名宛人には切替えがあります——認定建築材料等の全部又は一部として異なる建築材料・部分を引き渡した者、設計図書を用いずまたは従わずに施工した工事施工者(異なる材料・部分を引き渡され、それを使って施工した場合は、この切替えから除かれます)。法人・人にも罰金刑(第52条)。建築主は故意のときだけ。是正命令(法第9条第1項)の相手方は建築主・工事の請負人・現場管理者・所有者・管理者・占有者で、故意は要件ではありません——命令違反は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法第98条第1項第一号)。

第51条第1項は、第4条・第10条を含む列挙規定への違反について、当該建築物・工作物・建築設備の設計者を20万円以下の罰金に処すると定めています。名宛人(なあてにん=命令や罰則を受ける人)には切替えがあります——設計図書に記載された認定建築材料等の全部又は一部として、それと異なる建築材料・建築物の部分を引き渡した場合はその引渡者、設計図書を用いずまたは従わずに施工した場合は工事施工者(ただし、異なる材料・部分を引き渡され、それを使用して施工した場合は、この施工者への切替えから除かれます)——第10条の2は、この列挙には含まれていません。違反が建築主・工作物の築造主・設置者の故意によるときは、その建築主等にも同じ刑が科されます(同条第2項)。法人の代表者や、法人又は人の代理人・使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をした場合は、行為者を罰するほか、その法人又は人にも罰金刑が科されます(第52条)。

そして建築確認の対象となる計画では、条例への適合も原則として確認審査の対象です。ただし県の取扱いでは、三号建築物(建築基準法第6条の4第1項第3号)を建築士が設計する場合、第10条の2のZ×1.2を確認する図書は、確認申請への添付を省略できます(木造の壁量計算は省略の対象外とされています)——図書を省略できる場合でも、条例への適合義務は残ります。建築確認が不要であることだけを理由に、第10条・第10条の2が適用外になるわけではありません(前述の法令・条例上の適用除外・緩和に当たる場合は別です)。第10条の違反は条例第51条の罰則の対象で(第10条の2は同条の列挙に含まれていません)、違反建築物は是正命令(建築基準法第9条。除却(じょきゃく=取り壊し)・使用禁止などの措置を含みます)の対象になり得ます。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていません命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。条例の罰則は罰金だけですが、こちらは拘禁刑もあります。

土砂災害の区域の話は、別の法律です

土砂災害の区域は別の法律です
レッドゾーンでは、住宅(自己居住用を除く)や、高齢者・障害者・乳幼児等が利用する社会福祉施設・学校・医療施設を建てるための土地の区画形質の変更=特定開発行為の許可が問題になります(非常災害の応急措置と、仮設建築物のための開発行為は除かれます)。守り方と補助は当サイトのレッドゾーンの家と土地へ。

がけの近くの土地は、この条例とは別に、土砂災害防止法の土砂災害警戒区域(イエローゾーン)または土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されていることがあります。警戒区域では警戒避難体制の整備などが行われ、レッドゾーンでは、住宅(自己居住用を除く)や、高齢者・障害者・乳幼児など特に防災上の配慮を要する人が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるもの)を建てるための土地の区画形質の変更(特定開発行為)の許可や、居室を有する建築物の構造規制(建築基準法施行令第80条の3)が問題になります。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為には、許可が要りません(同項ただし書、同法施行令第5条)。特定開発行為でなくなるわけではありません。入口も基準もこの条例とは別物です。最新の指定状況と区域の境界は、県が公表する指定の図書で確認してください。市町のハザードマップは避難の確認に有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。擁壁の選び方も合わせてどうぞ。

売買契約の前に、専門家と確かめること

売買契約の前に、専門家と確かめること
この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士条例の当てはめは所管の建築行政の窓口です。個別の判断は建築士と、県・市の建築指導の窓口へ。県は条例と解説の一体版〔令和8年4月版〕・第10条の解説詳細版・その質問と回答を公開しています。詳細版の審査取扱いは静岡県が特定行政庁となる建築物が対象で、市が特定行政庁となる計画の取扱いは、所管の窓口で確認してください。

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に確かめてください。どこを上端・下端とみるかも、窓口に確かめてください。

  • ① 計画地の周辺に、「がけの高さ2メートル超」のがけがあるか。高さは、下端を通る30度勾配の斜線をこえる部分がある場合に、その最高部までを下端から測ります(第10条。2段のがけの扱いは県の解説の図へ)
  • ② 建てたい位置は、がけの下端から水平距離で「がけの高さの2倍以内」に入るか(同条。がけの上も下も対象。居室のない建物も対象になり得ます)
  • ③ ①・②で第10条の規制対象にならない場合でも、がけ崩れ等の被害を受けるおそれがないかは別に確認。おそれのある場合は、建築基準法第19条第4項の安全上適当な措置が必要です
  • ④ 範囲に入るなら——原則は、がけの形状・土質や建物の位置・規模・構造に応じた「安全な擁壁」。判断には盛土規制法施行令の技術的基準等が参考とされ、同施行令第17条の認定がされている擁壁は基準を満足とされています(県の解説)。既にある擁壁は、資料と現況の確認から
  • ⑤ 例外は2つ(第1号・第2号)——第1号は、堅固な地盤・特殊工法で保護されたがけのほか、がけ上・法面の建物をがけに影響させない、またはがけ崩れの影響を受けないようにした設計など(県解説の例示)。第2号は、がけ下で主要構造部をRC・SRC造とし、崩れに対して安全と認められる建物。どちらも「認められる」が条文の言葉で、名前だけで自動的に例外にはなりません
  • ⑥ 建物の構造計算は、県独自の上乗せ——適用対象の構造計算で地震地域係数Z×1.2・告示で定める木造の必要壁量×1.2(第10条の2・知事告示。1.32倍は平成14年10月から令和7年3月31日までの旧基準です。特定天井に係る規定・建築設備等に係る令第5章の4の規定のZ、四分割法の側端部分の必要壁量には乗じません。所定の評価・認定等を受けた耐震等級2・3や長期優良住宅の構造部分、既存不適格の一定の増築等〔第50条〕、南海トラフ想定の設計等での知事認定には、適用除外・緩和があります)
  • ⑦ 住居の用に供する建築物を建てる位置が災害危険区域に入らないか——建物は区域外でも、敷地の過半が区域内となる場合(法第91条)も、県の案内では解除手続の対象です。静岡は急傾斜地の区域+津波・高潮・出水等の知事指定区域の2種類です(県のGISで確認)。入るなら原則建築禁止——構造・敷地の状況・防止工事等により知事が認める場合が例外。切土・盛土・工作物の設置などは、別に急傾斜地法第7条の知事の許可が必要になることがあります(第3条・第4条)
  • ⑧ 建築確認が不要なことだけを理由に、第10条・第10条の2が適用外になるわけではありません(適用除外・緩和に当たる場合は別)。第10条の違反は条例第51条の罰則の対象です(第10条の2は同条の列挙に含まれていません)。是正命令(除却・使用禁止などを含む建築基準法第9条の措置)の対象になるかは、これとは別に判断されます
  • ⑨ 土砂災害警戒区域・特別警戒区域に入っていないか。こちらは別の法律です。最新の指定は、県が公表する指定の図書で確認(ハザードマップは作成時点の指定のことがあります)

個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、県・市の建築指導の窓口にご確認ください。静岡県は、条例と解説の一体版〔令和8年4月版〕、第10条の解説詳細版、その質問と回答を公開しています——条例の内容と、静岡県が特定行政庁となる場合の審査取扱いを確認できます。市が特定行政庁となる計画の取扱いは、所管の窓口で確認してください。

出典

  • 静岡県建築基準条例・同解説〔令和8年4月版〕(県公式PDF)
  • 静岡県建築基準条例第10条の2に係る添付図書について Ver.3.1(県公式PDF)
  • 静岡県地震地域係数(Zs)の義務化・概要版〔平成29年10月施行当時の旧基準資料。木造壁量の倍率は令和7年4月1日から1.2〕(県公式PDF)
  • 平成29年静岡県告示第219号〔令和7年6月6日改正後〕(県公式PDF)
  • 静岡県建築基準条例改正Q&A Ver.8(県公式PDF)
  • 同・解説詳細版の質問と回答〔令和5年12月1日時点〕(県公式PDF)
  • 静岡県 建築確認申請等について(掲載元ページ)
  • がけに関する規制の整理表(沼津土木事務所・県公式PDF)
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第87条・第87条の3・第88条・第91条)

擁壁の形や種類については、擁壁の選び方にまとめています。条例に当てはまるかどうかは、この記事に書いた窓口で確かめてください。

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