埼玉のがけ条例——埼玉県建築基準法施行条例第6条

埼玉のがけの決まりは第6条です

埼玉県では、「がけ高」が2メートルを超えるがけの下端(かたん)から水平距離で「がけ高の2倍以内」に建物を建てる場合——または、その建物の敷地を造成する場合——原則として「高さ2メートルを超える擁壁」が要ります(2メートル超は条文が置いた擁壁の下限で、実際に必要な高さ・構造は、がけと地盤の条件で決まります)。

先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありませんまず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って計画地を所管する建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。

擁壁(ようへき)は、がけの土が崩れないように支える構造物です。塀とは役割が違います。条文が対象にするのは「建築物」で、住宅に限る書き方ではありません。第6条第1項ただし書の例外は3つあり、どれにも条文に「認められる」という言葉が付いています

この記事は、いわゆる埼玉県の「がけ条例」——正式には埼玉県建築基準法施行条例(昭和35年条例第37号)第3章「がけ」=第6条——を、現行条文(埼玉県法規集。令和8年8月28日時点の表示で、基準日 令和6年4月1日状態。最終改正 令和6年3月29日条例第24号)から読んだ整理です。

「がけ条例」の実体は、建築基準法施行条例の第6条です

埼玉のがけの決まりは第6条です
「がけ条例」は通称です。正式には埼玉県建築基準法施行条例(昭和35年条例第37号)の第3章「がけ」=第6条にがけの規制が置かれています(第1条)。確認審査が省略される場合でも、条例への適合義務は残ります。

「がけ条例」は通称です。建築基準法第40条は、地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模により、この章の規定又はこれに基づく命令の規定のみによっては建築物の安全、防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合に、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加できると定めています。埼玉県はその委任を受けた建築基準法施行条例の第6条に、がけの規制を置いています(第1条)。建築確認の対象となる計画では、この条例への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例の適用は、建築物・設計者の区分と建築基準法第6条の4・施行令第10条で決まり、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち、特定行政庁(建築確認を担当する県または市町村)が規則で定める規定が審査省略の対象になり得ます。審査が省略される場合でも、条例への適合義務は残ります。

どこからが対象か——「がけ高2メートル超」。測り方は条文に定義があります

がけ高は2分の1勾配の斜線で測ります
がけ高はがけの下端を過ぎる2分の1こう配の斜線をこえる部分について、がけの下端からその最高部までの高さ(第6条第1項)。県の解説の図では、2段以上のがけは位置関係により一体のがけ(高さはH1+H2)とみなされる場合と、別々に扱う場合が示されています。

第六条 がけ高(がけの下端を過ぎる二分の一こう配の斜線をこえる部分について、がけの下端からその最高部までの高さをいう。以下この条において同じ。)二メートルをこえるがけの下端からの水平距離ががけ高の二倍以内のところに建築物を建築し、又はその敷地を造成する場合においては、高さ二メートルをこえる擁壁を設けなければならない。

埼玉県建築基準法施行条例 第6条第1項本文

読み方はこうです。がけの下端から「2分の1勾配」(水平2に対して垂直1)の斜線を引き、その斜線をこえる部分について、下端から最高部までの高さを「がけ高」として測ります。この斜線は、がけの勾配そのものを測るものではなく、「斜線をこえる部分」があるかを判定するために引きます。こえる部分がある場合は、その部分の最高部までの高さをがけの下端から測ります——斜線より下の高さを差し引く、という意味ではありません。この測り方でがけ高が2メートルを超えるがけが、第6条第1項の対象です——2.0メートルちょうどは当たりません(条文は「こえる」です)。県の逐条解説の図では、2段以上のがけは位置関係によって一体のがけ(高さはH1+H2)とみなされる場合と、別々のがけとして扱われる場合が示されています。

ただし、第6条第1項の規制条件(がけ高2メートル超)に当たらない斜面・がけや、2倍の範囲の外でも、安全の検討が不要になるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。個別の計画がその「おそれのある場合」に当たるかは、がけの状態・距離・地盤・建物の計画などによって判断されます。第6条の数字は「条例の擁壁義務の入口」であって、「安全検討の入口」ではありません。

かかる範囲は「下端から、がけ高の2倍以内」。建てるときも、建築物の敷地の造成も

上も下も、起点はがけの下端です
条文は「がけ高2mをこえるがけの下端からの水平距離ががけ高の2倍以内のところに建築物を建築し、又はその敷地を造成する場合」(第6条第1項)。道路・水路・別の敷地を挟んでいても、水平距離で判定します。

範囲の起点はがけの下端で、そこから水平距離で「がけ高の2倍以内」。がけの上も下も、この距離の中に入れば対象です。上端(じょうたん)がはっきりした単純ながけなら、がけ高3メートルで、下端から水平に6メートル以内が範囲になります。県の逐条解説の図でも、基点(下端)から両側にがけ高の2倍を取り、その間では、擁壁を設ける等・安全であると認められる場合以外は、建築物の建築もその敷地の造成もできない、と示されています。

対象になる行為は2つです。「建築物を建築し、又はその敷地を造成する場合」——「建築」は建築基準法第2条第13号の定義で、新築だけでなく増築・改築・移転を含みます。なお、法第3条第2項の要件を満たす既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)——規定の施行・適用の際に現に存し、又は工事中で、その施行・適用により適合しなくなった建物・敷地には、その適合しなくなった規定は適用されず、現行基準に合わないことだけで直ちに違反にはなりません。その建物に増築・改築・移転・大規模の修繕・模様替や用途変更をするときは、法第3条第3項・第86条の7・第87条第2項/第3項(用途変更の準用と各号の除外)による適用関係を、個別の計画ごとに窓口で確認してください。これとは別に、災害後に建築する停車場・官公署等に類する公益上必要な用途の応急仮設建築物や、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場等に類する仮設建築物には、法第85条第2項により法第40条を含む一定の規定を適用しない特例があります。第1項・第2項の応急仮設建築物を工事完了後3か月を超えて存続させるには、その日前に特定行政庁の許可が必要です(同条第3項。期限前に申請し、期限までに処分がされないときは、処分がされるまで存続できます——同項ただし書。許可は、特定行政庁が安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるときに、2年以内の期間を限って行われます〔第4項〕。被災者の需要に応ずるに足りる適当な建築物が不足するなどの特別の必要があり、安全上・防火上・衛生上支障がなく、かつ公益上やむを得ないと認める場合は、1年を超えない範囲での延長・再延長があり得ます〔第5項〕。この期間延長には、あらかじめ建築審査会の同意が必要です(官公署・病院・学校その他の公益上特に必要なものとして国土交通省令で定める用途の応急仮設建築物の延長は除きます)〔第8項〕)(応急仮設住宅は、国の整理では第2項の「公益上必要な用途に供する応急仮設建築物」に含まれるとされ、設置の主体・区域・着工時期により、非常災害区域等・1か月以内着工などの要件がある同条第1項の対象になる場合もあります——第1項の応急仮設建築物を防火地域内に建築する場合は、この特例は使えません)。災害時の一時的な用途変更には、別に法第87条の3の特例があります——非常災害区域等内の建築物を、住宅・病院その他これらに類する建築物で国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために使用する「災害救助用建築物」とする用途変更(災害発生の日から1か月以内の着手に限る。防火地域内を除く——第1項)や、学校・集会場その他これらに類する公益的建築物への用途変更(法第39条・第40条等を適用しない——第2項)で、変更完了後3か月を超えて使い続けるには同条第3項の許可(期限前に申請していれば処分まで使用可)が必要です。そして建てるときだけでなく、その建築物の敷地を造成する場合も対象です。また、条文が対象にするのは「建築物」で、居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)の有無を問う書き方ではありません——倉庫や車庫のような建物も、対象になり得ます。

第6条第1項ただし書の例外は3つ。どれも「認められる」が要ります

どれか1つでよいが「認められる」が要る
擁壁(ようへき)は、がけの土が崩れないように支える構造物です(塀とは役割が違います)。第1号は安全上、第2号は構造耐力上支障がないこと。第3号の主要構造部は解説では全部又は一部。第1号の切土の目安は土質と勾配で決まり、勾配が表の中欄を超え右欄以下のときだけ、がけの上端から垂直距離5m以内の部分に限られます(中欄以下ならがけ全体が目安の対象です)。該当は土質や構造の資料で裏付け——確認審査の対象なら、その資料をもとに審査されます。

ただし、次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。
一 斜面のこう配が三十度以下のがけ、堅固な地盤を切つて斜面としたがけ又は特殊な構法によるがけで安全上支障がないと認められるものの場合
二 がけ上に建築物を建築する場合において、がけ又は既設の擁壁が構造耐力上支障がないと認められる場合
三 がけ下に建築物を建築する場合において、その主要構造部が鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造で、がけの崩壊に対して安全であると認められる場合

同 第6条第1項ただし書
  • 第1号(がけそのものの性質)——①斜面の勾配が30度以下のがけ、②堅固な地盤を切って斜面としたがけ、③特殊な構法によるがけ、のいずれかで、かつ安全上支障がないと認められるもの。勾配が30度以下というだけで、自動的に例外になる書き方ではありません。切土のがけについては、土質と勾配による目安が県の逐条解説に示されています——ただし、勾配が表の中欄を超え右欄以下の場合に擁壁不要の目安となるのはがけの上端から垂直距離5メートル以内の部分に限られます。適用には土質・勾配・高さの確認が必要です
  • 第2号(がけの上に建てる)——がけ、または既設の擁壁に構造耐力上支障がないと認められる場合。逐条解説は、土質試験等に基づく地盤の安定計算でがけの安全が確かめられたとき、その他構造耐力上支障がないと認められる場合、としています
  • 第3号(がけの下に建てる)——建物の主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段。建物の構造上重要な部分)(逐条解説では全部又は一部)が鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造で、がけの崩壊に対して安全であると認められる場合。構造種別の名前だけでは足りず、条文自体が「安全であると認められる」ことまで求めています

射程に注意してください。第2号と第3号は、条文上「建築物を建築する場合」の例外です。建築を伴わず、建築物の敷地として造成する場合には、第2号・第3号は適用対象ではありません。

規制の範囲に、既に擁壁がある場合は、新設や例外の検討に入る前に、その擁壁が使えるか——第2号の「既設の擁壁が構造耐力上支障がない」に当たるかを含めて——の確認から入ります。何をもって確かめるかは擁壁の状態と計画によるので、検査済証などの資料の有無とあわせて、個別の判断になります。そして、3つの号にはどれも「認められる」という言葉が付いています——言い分だけでは決まらず、例外への該当は土質や構造の資料で裏付けます。第6条が確認審査の対象となる計画では、その資料をもとに審査されます(確認特例により審査が省略される場合でも、適合義務は残ります)。がけのある計画は、早い段階で建築士と、敷地・建物の区分を所管する建築行政の窓口(所管先は、県の「建築行政の窓口」の案内ページで確認できます。指定確認検査機関(民間の確認検査機関)に申請する予定なら、その機関にも)に相談してください。

第6条第1項に基づく擁壁を設けるなら——令第142条と、条例が足す摩擦の条件

擁壁を設ければ、第6条の義務は満たせます
第6条の擁壁要件を満たします——がけ崩れ等のおそれがあれば、法第19条第4項の措置も別に要ります。令第142条第1項は腐食しない材料、裏面の排水の水抜穴と砂利等、構造計算などの基準に適合する構造方法か、同等以上として国土交通大臣が定めた構造方法を求めています。摩擦角は土質が堅固で支障がない場合は45度以下、摩擦係数は土質が良好で支障がない場合は0.5以下です。第6条の義務を満たせます。満たせるのは、そこまでです——法第19条第4項・災害危険区域・土砂災害の区域は、別に確認してください。

2 前項の擁壁の構造は、令第百四十二条の規定によるほか、土の摩擦角が三十度以下(土質が堅固で支障がない場合においては、四十五度以下)であつて、基礎と地盤との摩擦係数が〇・三以下(土質が良好で支障がない場合においては、〇・五以下)の場合にも安全なものとしなければならない。

同 第6条第2項

第1項の義務で設ける擁壁の構造は、まず建築基準法施行令第142条によります——同条第1項各号の基準(鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造、裏面の排水のための水抜穴と、その周辺の砂利等、構造計算で確かめる安全性など)に適合する構造方法か、これと同等以上に擁壁の破壊・転倒を防止できるものとして国土交通大臣が定めた構造方法が求められます。そのうえで条例は、土の摩擦角30度以下(土質が堅固で支障がない場合は45度以下)であって、基礎と地盤との摩擦係数0.3以下(土質が良好で支障がない場合は0.5以下)の場合にも安全であることを足しています。

都市計画区域の外でもかかります。市町村条例に置き換わる仕組みもあります

都市計画区域の外でもかかります
列挙は都市計画区域・準都市計画区域の外では適用しない条文のものです(第2条第1項)。市町村条例に置き換わっても、法第3条第2項で市町村条例の規定が適用されない建築物・敷地には、県条例の相当規定が適用されます(第2条第3項)。がけの規定の数字が違うこともあり得ます

この条例には、都市計画区域・準都市計画区域の外では適用しない条文の列挙があります(第2条第1項)。第6条は、その列挙に含まれていません。都市計画区域の外の土地でも、がけの条件に当たれば対象です。第6条が適用される新たな建築・建築物の敷地造成には、建築確認を要しない計画であっても適合義務があります。第6条に違反する建築物又は建築物の敷地は、建築基準法第9条による是正命令(除却(じょきゃく=取り壊し)・使用禁止などの措置を含みます)の対象になり得ます。刑事罰は、第57条・第58条の名宛人(なあてにん=命令や罰則を受ける人。設計者・工事施工者・故意のある建築主等・法人等)と要件に該当する場合に問題になります。

2 市町村が法第四十条及び第四十三条第三項の規定に基づき制定する条例(次項において「市町村条例」という。)の規定が、この条例の趣旨に即したものであり、かつ、この条例と同等以上の効果が期待できるものとして知事が認めるときは、規則の定めるところにより、第二章から第四章まで及び第五章の規定は、当該市町村の区域内においては、適用しない。

同 第2条第2項

もうひとつ、市町村の条例への置き換えの仕組みがあります。市町村が建築基準法第40条等に基づく条例を定め、県条例の趣旨に即し、同等以上の効果が期待できると知事が認めるときは、規則の定めるところにより、第6条を含む章の規定は、原則としてその市町村の区域では適用されません。ただし第2条第3項により、建築基準法第3条第2項で市町村条例の規定が適用されない建築物・敷地など(いわゆる既存不適格)には、その規定に相当する県条例の規定が適用されます。敷地のある市町村でどちらの条例がかかるか——がけの規定の数字が違うこともあり得ます——は、建築地を所管する建築行政の窓口で確認してください。なお、市町村条例への置換えで県条例が適用されなくなった場合でも、その日より前の行為への罰則は従前どおりです(第57条第3項)。

罰則は第57条・第58条。適合の義務は、審査とは別に残ります

罰金は設計者、命令は建築主・所有者等
第57条第1項は、第6条を含む列挙規定(そのうち第4条から第8条まで)への違反を対象にしています。是正命令は建築基準法第9条第1項で、名宛人は建築主・工事の請負人・現場管理者・所有者・管理者・占有者——故意は要件ではありません命令に違反すると3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法第98条第1項第一号)。法人の代表者や従業者等が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか法人・人にも罰金(第58条)。ただし、違反防止のため業務に相当の注意・監督を尽くしたことの証明があれば、その法人・人には罰金刑を科しません。

第57条第1項は、第6条を含む列挙規定(「第4条から第8条まで」)への違反について、その建築物・工作物・建築設備の設計者(設計図書を用いずに施工した場合、または設計図書に従わずに施工した場合は工事施工者)を50万円以下の罰金に処すると定めています。違反が建築主・工作物の築造主・設置者の故意によるときは、その建築主等にも同じ刑が科されることがあります(同条第2項)。法人の代表者や従業者等が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか、その法人・人にも罰金刑が科されます(第58条)——ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意・監督を尽くしたと証明できた場合の法人・人への刑だけです。

そして建築確認の対象となる計画では、第6条への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例(法第6条の4・令第10条)による審査省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まります——適合義務は、審査の範囲とは別に生じます——がけ高2倍の範囲にかかる土地では、擁壁の費用や構造の制約を、土地選びの段階から織り込んで検討することになります。なお、建築物の確認済証が交付されたことは、既存のがけや擁壁そのものの恒久的な安全性を保証するものではありません。

是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)

罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていません命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。条例の罰則は罰金だけですが、こちらは拘禁刑もあります。

土砂災害の区域の話は、別の法律です

土砂災害の区域は別の法律です
土砂災害防止法の区域です。特別警戒区域では特定開発行為の許可居室を有する建築物の構造規制最新の指定と区域の境界は、県が公表する指定の図書で——ハザードマップは作成時点の指定のことがあります。くわしくはレッドゾーンの家と土地(/redzone-guide/)へ。

がけの近くの土地は、この条例とは別に、土砂災害防止法の土砂災害警戒区域(イエローゾーン)または土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されていることがあります。警戒区域では警戒避難体制の整備などが行われ、特別警戒区域では、これに加えて、住宅(自己居住用を除く)や、高齢者・障害者・乳幼児など特に防災上の配慮を要する人が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるもの)を建てるための土地の区画形質の変更(特定開発行為)の許可や、居室を有する建築物の構造規制などが問題になります。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う開発行為と、仮設建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為には、許可が要りません(同項ただし書、同法施行令第5条)。特定開発行為でなくなるわけではありません。入口も基準もこの条例とは別物です。最新の指定状況と区域の境界は、県が公表する指定の図書で確認してください。市町村のハザードマップは避難の確認に有用ですが、作成時点より後の指定が反映されていないことがあります。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。擁壁の選び方も合わせてどうぞ。

売買契約の前に、専門家と確かめること

売買契約の前に、専門家と確かめること
この表は、自分で判定するためのものではありません——測って図にするのは建築士条例の当てはめは所管の建築行政の窓口です。3つの例外は第6条第1項ただし書の第1号・第2号・第3号——建築を伴わない敷地の造成で検討できるのは第1号だけです。土砂災害警戒区域・特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域は別の法律なので、あわせて所管の窓口で確認してください。

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に確かめてください。どこを上端・下端とみるかも、窓口に確かめてください。

  • ① 計画地の周辺に、がけ高2メートル超のがけがあるか。敷地の中・隣地に限りません。がけ高は、下端を通る2分の1勾配の斜線をこえる部分がある場合に、その部分の最高部までを下端から測ります(第6条第1項)
  • ② 建てたい位置・建築物の敷地として造成したい範囲は、がけの下端から水平距離で「がけ高の2倍以内」に入るか(同項。がけの上も下も対象。道路・水路・別の敷地を挟んでいても、水平距離で判定します)
  • ③ 建築物を建てる場合は、①の測り方で第6条の規制条件に当たらない斜面・がけや、②の範囲の外でも、その建物ががけ崩れ等の被害を受けるおそれがないかを別に確認。おそれのある場合は、建築基準法第19条第4項の安全上適当な措置が必要です。建築を伴わず、建物の敷地だけを造成する場合は、第6条と、造成に関係する別法令の手続・基準を確認します
  • ④ 入るなら——既にある擁壁が使えるか(検査済証等の資料と現況)の確認から。使えなければ、第6条第1項・第2項に適合する擁壁を設けるか、第1項ただし書への該当を検討。建築物を建てる場合は例外3つの型(がけの性質で安全上支障がないと認められる/がけ上でがけ・既設擁壁に構造耐力上支障がないと認められる/がけ下で、主要構造部(解説では全部又は一部)をRC・SRC造とし、がけの崩壊に対して安全と認められる)を検討。どの号も条文に「認められる」が付いており、名前や数字だけで自動的に例外にはなりません。建築を伴わず、建築物の敷地として造成する場合は、第2号・第3号は適用対象外。必要な資料・調査・計算は例外の型と計画で異なり、確認審査の対象となる場合は、それらの資料をもとに審査されます(確認特例により省略される場合でも、適合義務は残ります)
  • ⑤ 第6条第1項に基づく擁壁を設けるなら——令第142条第1項(各号の基準に適合する構造方法、または同等以上として国土交通大臣が定めた構造方法)+摩擦角30度以下(土質が堅固で支障がない場合は45度以下)・摩擦係数0.3以下(土質が良好で支障がない場合は0.5以下)の場合にも安全であること(第6条第2項)
  • ⑥ 敷地のある市町村の条例に置き換わっていないか(第2条第2項。知事が認めた市町村では、規則の定めるところにより、第6条を含む章は原則として市町村条例に置き換わります。既存不適格には県条例の相当規定が適用される例外も——第2条第3項)。所管の建築行政の窓口へ
  • ⑦ 都市計画区域の外でも第6条はかかります(第2条第1項の列挙に第6条は無い)。第6条が適用される新たな建築・建築物の敷地造成には、建築確認を要しない計画でも適合義務があります。違反する建築物・敷地は是正命令(建築基準法第9条。除却・使用禁止などの措置を含みます)の対象になり得て、刑事罰は第57条・第58条の名宛人・要件に該当する場合です
  • ⑧ 土砂災害警戒区域・特別警戒区域に入っていないか。こちらは別の法律です。計画地が急傾斜地崩壊危険区域に入る場合は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条の行為許可(切土・盛土・工作物の設置など。ただし書の除外あり)も、所管の窓口で確認します。最新の指定は、県が公表する指定の図書で確認(ハザードマップは作成時点の指定のことがあります)

個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、敷地・建物の区分を所管する建築行政の窓口(所管先は、県の「建築行政の窓口」の案内ページで確認できます。指定確認検査機関に申請する予定なら、その機関にも)にご確認ください。埼玉県は、この条例の解説(「埼玉県建築基準法施行条例と解説」)を県のページで公開しています——条文と併せて読むと、規制の趣旨がつかみやすくなります。現行の審査の取扱いは、建築指導の窓口で確認してください。

出典

  • 埼玉県法規集データベース(入口)「第9編 住宅都市」→「第3章 建築」→建築基準法施行条例(条文の直接表示・令和8年8月28日時点の表示で確認)
  • 埼玉県 建築基準法施行条例の案内ページ
  • 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条・第6条の4・第9条・第19条第4項・第40条・第85条・第86条の7・第87条・第87条の3)
  • 国土交通省「第三次答申に向けた主な審議事項と議論の方向性(資料編)」32頁・仮設建築物に関する制限の緩和(法第85条)の概要(PDF)

擁壁の形や種類については、擁壁の選び方にまとめています。条例に当てはまるかどうかは、この記事に書いた窓口で確かめてください。

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