千葉県では、30度を超え高さ2メートルを超えるがけ(土質調査等で、風化の著しくない硬岩盤と確認された部分を除く)の近くに、居室(きょしつ=居住・執務・作業などに継続して使う部屋)のある建物を原則建てられません。
先にすることは、3つです。がけ条例がかかっても、建てられないと決まったわけではありません。まず、土地の売買契約を結ぶ前に動く(すでにお持ちの土地なら、設計を始める前に)——買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。つぎに、建築士に現況の測量図・断面図・配置案を用意してもらう。そのうえで、その図面を持って計画地を所管する建築行政の窓口へ、条例の当てはめを確かめる。高さも角度も距離も、目測で判断しないでください。確かめる中身は、この記事の最後の「売買契約の前に、専門家と確かめること」にまとめてあります。
範囲は、がけの上なら下端(かたん)からがけ高の1.5倍、がけの下なら上端(じょうたん)からがけ高の2倍。正確には、この範囲に入れてはいけないのは建物全体ではなく、外壁や構造耐力上主要な部分のうち、がけ崩壊の影響を受ける地上部分です。そして例外の一つに、「構造耐力上安全な擁壁が設置されているとき」があります——擁壁(ようへき=がけの土が崩れないように支える構造物。塀とは役割が違います)が、建てるための道になる条例です。
この記事は、いわゆる千葉県の「がけ条例」——正式には千葉県の建築基準法施行条例第4条——を、現行条文(千葉県法規集・基準日 令和8年8月28日。最終改正 令和6年12月24日条例第46号=令和7年4月1日施行)から読んだ整理です。
「がけ条例」の実体は、建築基準法施行条例の第4条です

「がけ条例」は通称です。実体は建築基準法施行条例(昭和36年千葉県条例第39号)で、条例全体は建築基準法第39条・第40条などの委任を受けています(第1条)。いわゆる「がけ条例」の第4条は、法第40条に基づく制限の付加です。法第39条に基づく災害危険区域の規定は、第3条の2・第3条の3に別に置かれています。建築確認の対象となる計画では、第4条への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例の適用は、建築物・設計者の区分に応じて建築基準法第6条の4・施行令第10条で決まり、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁(建築確認を担当する県または市町村)が規則で定めた規定が審査省略の対象になり得ます。第4条への適合義務は、審査の範囲とは別に生じます。そして、確認申請の提出先は行政庁だけではありません——建築確認は、業務区域・業務範囲に対応する指定確認検査機関(民間の確認検査機関)にも申請できます(建築基準法第6条の2)。条例の当てはめやただし書の扱いをどこへ相談するかは、申請先によって変わります——指定確認検査機関へ申請するなら、まずその機関へ。審査上の疑義について、指定確認検査機関は所管の行政庁に照会できます。
どこからが「がけ」か——30度超・高さ2メートル超

第四条 がけ(地表面が水平面に対し三十度を超える角度をなす硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外の土地で高さ二メートルを超えるものをいう。以下同じ。)の上にあつてはがけの下端から当該がけの高さの一・五倍、がけの下にあつてはがけの上端から当該がけの高さの二倍に相当する距離以内の場所に居室を有する建築物を建築してはならない。
千葉県 建築基準法施行条例 第4条第1項本文
定義を分解すると、この条例の「がけ」は3つの条件がそろった土地です——①地表面の角度が水平面に対して30度を超える、②高さが2メートルを超える、③硬岩盤ではない(除かれるのは土質調査等で硬岩盤と確認された部分です。風化の著しい硬岩盤は「硬岩盤」から除かれる=がけに含まれ得ます)。30度以下の斜面は、この条例の「がけ」ではありません。高さも同じで、2.0メートルちょうどは当たりません(条文は「超える」です)。
測り方は、県の逐条解説の図で示されています——がけの下端は「30度を超える部分のうち、最も低い地点」です。下に30度以下のゆるい斜面が続く場合も原則は同じですが、その30度以下の部分が上から落下して堆積したものと判断できるときは、その高さも考慮することが望ましいとされています。がけの判定と、がけの上側の範囲に使う高さHは、下端から引いた30度勾配線を超える部分について、下端から最高部までの高さで取ります。2段以上のがけは、位置関係によっては一体のがけ(高さはH1+H2)とみなされます。
ただし、第4条の「がけ」に当たらない斜面や、第4条の範囲の外でも、安全の検討が不要になるわけではありません。建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には、建築基準法第19条第4項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。個別の計画がその「おそれのある場合」に当たるかは、がけの状態・距離・地盤・建物の計画などによって判断されます。第4条の数字は「条例の建築制限の入口」であって、「安全検討の入口」ではありません。
範囲は非対称——がけの上は1.5倍、がけの下は2倍

禁止の範囲は、がけの上に建てるなら、がけの下端からがけ高の1.5倍、がけの下に建てるなら、がけの上端からがけ高の2倍です。上端がはっきりした単純ながけなら、高さ4メートルで、上は6メートル・下は8メートルの水平距離です。上端がはっきりしない場合の「考え方の一例」として、逐条解説の図0-2は、がけ下側の範囲を、斜面の接点を通る1:2の勾配線と地盤面(G.L)の交点までとする例を示しています。この例には、接点の高さH’が2メートル以下の場合も含まれます——がけ自体の判定に使う高さH(2メートル超)とは別のものです。個別の地形の測り方は、窓口で確認してください。
そして禁止されるのは「居室を有する建築物」の建築です。「居室」とは、居住・執務・作業・集会・娯楽などの目的のために継続的に使用する室をいいます(建築基準法第2条第4号)。また、ここでいう「建築」には新築だけでなく、増築・改築・移転も含まれます(同条第13号)。工事を伴わない用途変更も、建築基準法第87条第2項により、第39条第2項・第40条に基づく条例の規定が準用されることがあります(同条第3項などの例外もあります)。居室のない建物を居室のある用途に変える場合などは、適用関係を窓口で確認してください。また、現行の第4条に適合しない既存の建物が、直ちに違反建築物になるとは限りません——規定の施行・適用の時点で適法にあった建物や敷地には、建築基準法第3条第2項の既存不適格(きそんふてきかく=建てたときは適法だった建物)の扱いがあります。増築・改築・移転・用途変更のときに既存部分へどこまで現行規定が及ぶかは、同条第3項などの関係規定による個別の確認です。既存不適格であることは、安全が確認されていることを意味しません。居室を有する建築物の外壁又は構造耐力上主要な部分のうち、がけ崩壊の影響を受ける地上部分がこの範囲に入る計画は、次の例外のどれかに該当しない限り建てられません。県の逐条解説では、制限を受ける部分は外壁と構造耐力上主要な部分(崩壊の影響を受ける地上部分)で、居室のない部分も制限の対象に含まれるとされています。
第4条第1項ただし書の例外は4つ。「構造耐力上安全な擁壁が設置されているとき」が、その一つです

ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
同 第4条第1項ただし書
一 がけの下に建築物を建築する場合において、次のいずれかに該当するとき。
イ 建築物の外壁及び構造耐力上主要な部分(がけの崩壊による衝撃を受けるおそれのない部分を除く。)を鉄筋コンクリート造(がけの崩壊による衝撃に対し破壊を生じないものに限る。)その他これと同等以上の耐力を有する構造とし、かつ、必要に応じ当該外壁の開口部からの土砂の流入を防止するための有効な壁等を設置するとき。
ロ がけと建築物との間に、がけの崩壊に対して建築物の安全上支障のない塀等が設置されているとき。
二 建築物を建築する場合において、建築物の位置ががけから相当の距離にあり、がけの崩壊に対して安全であるとき。
三 建築物を建築する場合において、構造耐力上安全な擁壁が設置されているとき。
四 建築物を建築する場合において、がけの形状及び土質により、がけの崩壊のおそれがないとき。
- 第1号(がけの下に建てる場合だけ)——建物側を守る型。イ=崩壊の衝撃を受けるおそれのない部分を除く外壁と構造耐力上主要な部分を、崩壊の衝撃で破壊を生じない鉄筋コンクリート造など同等以上の構造にし、必要に応じて土砂の流入を防ぐ壁等を設置する。ロ=がけと建物の間に、崩壊に対して安全上支障のない塀等を設置する
- 第2号——建物の位置ががけから相当の距離にあり、崩壊に対して安全であるとき。条例の本文に数値はありませんが、県の逐条解説に運用の例があります——がけの下なら下端から50メートルを超えて離れている場合のほか、谷・川で土砂の影響が弱まる場合(ただし、想定する崩壊土砂の体積と、谷・川で低減される体積を踏まえて範囲を検討し、崩壊に対する安全を確認できる場合に限ります)。がけの上なら構造計算等で建物の安全を確認できる場合のほか、構造計算のいらない小規模な建築物(木造2階建て程度)について、深基礎・杭基礎・地盤改良の例が解説の図に示されています——杭は支持杭に限られ、根入れ・鉛直支持力・杭の配置の条件が、地盤改良には工法と配置の条件が付いています。いずれも基礎・杭・改良体を安息角(30度、又は土質試験から求めた角度)の線より深い側(安息角以深)に確保し、建物の荷重ががけや既設の擁壁に不利な影響を与えず、崩壊のときにも建物の安全が保たれることの確認までがセットです。工法の名前だけで該当が決まるものではありません
- 第3号——構造耐力上安全な擁壁が設置されているとき
- 第4号——がけの形状と土質により、崩壊のおそれがないとき
なお、この4つとは別に、建築基準法第85条第1項の特例があります。対象は、特定行政庁が指定する非常災害区域等の内での、①災害により破損した建築物の応急の修繕——同項により建築基準法令の規定が適用されず、国土交通省の通知は破損した部分の修繕について、工事の着手時期を問わないことを示しています——と、②国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建築する応急仮設建築物、③被災者が自ら使用するために建築する延べ面積30平方メートル以内の応急仮設建築物です(②③は災害発生の日から1か月以内に工事に着手する場合に限られ、ただし書により防火地域内に建築する場合は除かれます)。同条第2項には、災害時の公益上必要な用途(停車場・官公署等に類するもの)の応急仮設建築物と、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場等に類する仮設建築物について、法第39条・第40条等を適用しない特例が別にあります。第1項・第2項の応急仮設建築物を工事完了後3か月を超えて存続させるには、その日前に特定行政庁の許可が必要です(同条第3項。期限前に申請し、期限までに処分がされないときは、処分がされるまで存続できます——同項ただし書。許可は、特定行政庁が安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるときに、2年以内の期間を限って行われます〔第4項〕。被災者の需要に応ずるに足りる適当な建築物が不足するなどの特別の必要があり、安全上・防火上・衛生上支障がなく、かつ公益上やむを得ないと認める場合は、1年を超えない範囲での延長・再延長があり得ます〔第5項〕。この期間延長には、あらかじめ建築審査会の同意が必要です(官公署・病院・学校その他の公益上特に必要なものとして国土交通省令で定める用途の応急仮設建築物の延長は除きます)〔第8項〕)。さらに、特定行政庁が法第85条第6項・第7項または第87条の3第6項・第7項により許可した建築物には、条例第52条により条例全体が適用されません。いずれも、一般の建築計画にそのまま使える例外ではありません。
第1号のイ・ロの耐力・安全の確かめ方について、逐条解説は土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内の居室のある建築物に使う構造方法(建築基準法施行令第80条の3)と同等の方法を、方法の一つとして挙げています。なお、逐条解説の本文は「土砂災害特別警戒区域内のがけ」について、土砂災害防止法第9条第2項により知事が定めた事項を用いて計算しなければならないとし、同じ解説の図1-5の注記は「計画建築物が土砂災害特別警戒区域内の場合」に知事が定めた力・高さを用いて検討すると書いています——主語が2通りあるため、がけと建築予定位置の一方だけが区域内にある計画の取扱いは、担当窓口に確認してください。ロの「塀等」について、逐条解説は、常時土圧を受けない形態の待受け擁壁が「擁壁」ではなく「塀」に分類される場合もある、と注記しています。名称が待受け擁壁であれば当然にロに当たる、というものではありません。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。
どの号に該当するかは、言い分だけでは決まりません。逐条解説では、まず設計者等が計画地周辺の状況調査をもとに判断することとされています。建築確認で直接審査されない場合もあるため、設計の段階で担当窓口にも確認してください。がけのある計画は、早い段階で建築士と、がけの所在地と建物の規模に応じた建築確認申請の受付窓口に相談してください(担当の窓口は、千葉県「建築物に関する手続の担当窓口及び書類の経由(1)」のページで確認できます)。
第4条第1項第3号の擁壁には、同条第2項の追加条件があります

2 前項第三号の擁壁は、次の各号に定めるものでなければならない。
同 第4条第2項
一 高さ五メートルを超える擁壁は、鉄筋コンクリート造であること。
二 擁壁の上部の地表面に雨水その他の地表水を排水することができるような排水施設を設けていること。
高さ5メートルを超える擁壁は鉄筋コンクリート造であること(第4条第2項第1号)。そして擁壁の上の地表面に、雨水などを排水できる施設を設けること(同項第2号)。「構造耐力上安全」であることは、この第2項の条件に加えて、建築基準法施行令第142条への適合、検査済証や許認可・確認検査の状況、既設擁壁の維持保全・変状(割れ・歪み・傾斜)・補修の状況などを踏まえて確認します——次の逐条解説の整理のとおりです。なお、令第142条第1項が求めるのは、掲げる基準に適合する構造方法です。あわせて、これと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法も認めています。基準に適合していれば足ります——大臣が定めた構造方法でなければならない、という意味ではありません。
県の逐条解説では、第3号の擁壁は既存の擁壁だけでなく、建築と同時に設置する擁壁も含むとされています。この場合の擁壁は建築基準法施行令第142条に規定する擁壁とし、建築基準法第88条により準用される第7条・第7条の2に基づく検査済証の交付を受けた擁壁のほか、逐条解説が列挙する他法令に基づく検査済証が交付された区域内の擁壁が挙げられています。既設の擁壁では、関係法令の許認可や確認・検査の状況と、管理の状態を確認し、割れ・歪み・傾斜等があるときは必要な補修が行われているかまで見て、総合的に構造耐力上の安全を確かめることとされています。
急傾斜地崩壊危険区域は「災害危険区域」。開口部の向きに決まりがあります

第三条の三 災害危険区域内に住居の用に供する建築物を建築する場合においては、当該建築物の居室の窓その他の開口部は、直接がけに面して設けてはならない。ただし、当該建築物の構造若しくは位置又は急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第二条第三項に規定する急傾斜地崩壊防止工事その他の工事の施行状況によりがけの崩壊による被害を受けるおそれがないときは、この限りでない。
同 第3条の3
千葉県は、知事が指定した急傾斜地崩壊危険区域を、建築基準法第39条の「災害危険区域」に指定しています(第3条の2)。その区域内に住居の用に供する建築物を建築する場合、その建物の居室の窓などの開口部を、直接がけに面して設けてはならない——建物の構造や位置、または急傾斜地崩壊防止工事などの施行状況により、被害を受けるおそれがないときを除きます。がけ条例(第4条)とは別の決まりとして、重なってかかることがあります。敷地が急傾斜地崩壊危険区域に入っているかは、県の公表資料や、県・市町村の窓口で確認できます。敷地の一部だけが区域と重なる場合は、建物を建てる位置が区域内に入るかを確認します。なお、区域内での切土・盛土や工作物の設置などは、この条例とは別に、急傾斜地法第7条第1項により知事の許可が必要になることがあります——急傾斜(砂防)の担当窓口にも確認してください。
都市計画区域の外でも、第4条はかかります

この条例には、都市計画区域内に限って適用する条文の列挙があります(第3条)。第4条は、その列挙に含まれていません。市街化調整区域や都市計画区域の外の土地でも、がけの条件に当たれば対象です。
罰則は50万円以下。設計者等に、建築主等の故意による違反なら建築主等にも

第53条第1項は、第4条や第3条の3を含む列挙規定への違反について、その建築物・工作物・建築設備の設計者(設計図書を用いずに施工した場合、または設計図書に従わずに施工した場合は工事施工者)を50万円以下の罰金に処すると定めています。違反が建築主・築造主・設置者の故意によるときは、その建築主等にも同じ刑が科されます(同条第2項)。法人の代表者や、法人・個人の従業者等が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか、その法人・人にも罰金刑が科されます(第54条)。ただし書で除かれるのは、代理人・使用人その他の従業者の違反について、法人・人が防止のため相当の注意・監督を尽くしたと証明できた場合の法人・人への刑だけです——行為者本人や、代表者自身の違反を免責するものではありません。
そして建築確認の対象となる計画では、第4条への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例(法第6条の4・令第10条)による審査省略は、建築物・設計者の区分と、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定の範囲で決まります——適合義務は、審査の範囲とは別に生じます——がけ高の1.5倍・2倍の範囲にかかる土地では、擁壁の費用や構造の制約を、土地選びの段階から織り込んで検討することになります。
是正命令は、建築主・所有者などに来ます(法第9条第1項)
罰則の名宛人が原則として設計者でも、是正命令の相手方は別です。建築基準法第9条第1項は、違反した建築物・敷地について、当該建築物の建築主、工事の請負人(下請人を含みます)・現場管理者、建築物または敷地の所有者・管理者・占有者に対して措置を命ずることができる、と定めています。故意かどうかは、この条の要件ではありません。命じられるのは工事の施工の停止のほか、除却(じょきゃく=取り壊し)・移転・改築・増築・修繕・模様替・使用禁止・使用制限その他、違反を是正するために必要な措置です。建てたあとに除却や使用禁止を命じられ得るのは、建築主・所有者などです——設計者は、設計者であることだけでは名宛人に挙げられていません。命令に従わないと、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です(法第98条第1項第一号)。条例の罰則は罰金だけですが、こちらは拘禁刑もあります。
売買契約の前に、専門家と確かめること

確かめるのは、土地の売買契約を結ぶ前です。買ったあとでは、擁壁の費用や配置の制約を、土地の値段に織り込みにくくなります。がけの高さと、がけからの距離は、現況の測量図と断面図がないと自分では判断できません——測量と図面は建築士に、条例の当てはめは所管の建築行政の窓口に確かめてください。どこを上端・下端とみるかも、窓口に確かめてください。
- ① 敷地内に限らず、計画地の周辺に、30度超・高さ2メートル超のがけがあるか。敷地境界で区切らず、建築予定位置まで1.5倍・2倍の範囲が及び得るがけを確認します(第4条第1項。風化の著しくない硬岩盤と土質調査等で確認された部分は除く)
- ② 居室を有する建築物の外壁・構造耐力上主要な部分(がけ崩壊の影響を受ける地上部分)が、がけの上なら下端から1.5倍・がけの下なら上端から2倍の範囲に入るか。入るなら、例外のどれかに該当しない限り建てられません
- ③ ①で第4条の「がけ」に当たらない場合や、②の範囲の外でも、がけ崩れ等の被害を受けるおそれがないかは別に確認。おそれのある場合は、建築基準法第19条第4項の安全上適当な措置が必要です
- ④ 例外4つ——がけ下の建物側対策(衝撃を受けるおそれのない部分を除く外壁・構造耐力上主要な部分を、がけ崩壊の衝撃で破壊を生じないRC造など同等以上の耐力の構造とし、必要に応じ流入防止。または安全上支障のない塀等)/相当の距離/構造耐力上安全な擁壁/形状・土質で崩壊のおそれなし——のいずれかに該当するか。判断は状況調査・構造検討をもとに行い、確認審査で直接確認されない場合もあるため、担当窓口にも確認します
- ⑤ 第3号の「構造耐力上安全な擁壁」で対応するなら——擁壁の上部の地表面には排水施設(第4条第2項第2号。高さの条件はありません)、高さ5メートルを超える擁壁は、加えて鉄筋コンクリート造(同項第1号)。令第142条への適合、検査済証・許認可・確認検査の状況、既設擁壁の維持保全・変状・補修などを踏まえた安全確認も必要です
- ⑥ 住居の用に供する建築物を建てる位置が、急傾斜地崩壊危険区域(=災害危険区域)に入らないか。入るなら、原則としてその建物の居室の窓その他の開口部を直接がけに面して設けない——ただし、建物の構造・位置、または急傾斜地崩壊防止工事などの施行状況により、被害のおそれがない場合を除く(第3条の2・第3条の3)
- ⑦ 都市計画区域の外でも第4条はかかります(第3条の列挙に第4条は無い)。建築基準法第3条や、第85条各項(要件・ただし書つき)の特例、条例第52条などの適用除外を除き、建築確認が不要な区域・規模でも条例の基準そのものは適用されます。既存の建物は、法第3条第2項・第3項の既存不適格の扱いを別に確認。適用される規定に違反すれば、是正命令(除却・使用禁止などを含む法第9条の措置)や罰則の対象になり得ます
- 確認申請の提出先は、行政庁だけではありません。建築確認は、業務区域・業務範囲に対応する指定確認検査機関にも申請できます(建築基準法第6条の2)。どこへ相談するかは申請先によって変わります——指定確認検査機関へ申請するなら、まずその機関へ。
個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、がけの所在地・建物の規模に応じた建築確認申請の受付窓口にご確認ください。千葉県は、この条例の逐条解説(2025年版)を県のページで公開しています——条文と併せて読むと、規制の趣旨がつかみやすくなります。現行の審査の取扱いは、建築指導の窓口で確認してください。
出典
- 千葉県建築基準法施行条例・解説の案内ページ(県公式。現行条文への導線)
- 千葉県法規集(建築基準法施行条例は 第11編「都市」→第4章「住宅、建築」→第2節「建築」)
- 千葉県建築基準法施行条例とその解説2025年版(第2章 がけ付近の建築物の敷地等 PDF)
- 建築基準法(e-Gov法令検索・第2条・第3条・第6条の4・第7条・第7条の2・第9条・第19条第4項・第39条・第40条・第85条・第87条・第87条の3・第88条)
- 建築基準法施行規則(e-Gov法令検索・第10条の15の8)
- 建築物に関する手続の担当窓口及び書類の経由(1)(千葉県公式)
- 災害により破損した建築物の応急の修繕に係る建築基準法の取扱いについて(国住指第27号・国土交通省通知PDF)
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索・第10条・第80条の3・第142条)
- 軸組構法の確認申請・審査マニュアル(国土交通省PDF)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索・第9条第2項)
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(e-Gov法令検索・第7条第1項)
- 急傾斜地崩壊危険区域内の行為の許可(千葉県公式)
擁壁の形や種類については、擁壁の選び方にまとめています。条例に当てはまるかどうかは、この記事に書いた窓口で確かめてください。
