鹿児島のがけ条例——建築基準法施行条例第3条

がけの高さの2倍以上、離します

鹿児島県では、高さ2メートルをこえるがけに近接して建物を建てるとき、がけの上ならがけの下端から、がけの下ならがけの上端から、建物との間に「がけの高さの2倍以上」の水平距離を保たなければなりません。対象は居室の有無を問わず、建築物全般です。がけの上に鉄筋コンクリート造などの重い建物(条文の「重量建築物」)を建てるなら、この数値を安全上支障がない程度に増大させなければなりません。第1項・第2項の例外は、第3項の「安全上支障がないと認められる場合」——その中身は県が取扱要領で公開しています(許可仮設などの別の特例は後述)。そして急傾斜地崩壊危険区域は、条例第26条により、そのまま「災害危険区域」になります。

この記事は、いわゆる鹿児島県の「がけ条例」——正式には建築基準法施行条例(昭和46年鹿児島県条例第33号)第3条(がけに近接する建築物)と、第26条・第27条(災害危険区域)——を、県例規集の現行条文(令和6年条例第27号までの改正を織り込んだもの)と、県の「がけに近接して建築する建築物の取扱要領」(令和2年6月2日施行)から読んだ整理です。建築確認の対象となる計画では、第3条への適合も原則として確認審査の対象です。確認特例の適用は、建築物・設計者の区分に応じて建築基準法第6条の4・施行令第10条で決まり、法第39条から第41条までに基づく条例規定のうち特定行政庁が規則で定めた規定が審査省略の対象になり得ます。第3条への適合義務は、審査の範囲とは別に生じます。そして、確認申請の提出先は行政庁だけではありません——建築確認は、業務区域・業務範囲に対応する指定確認検査機関にも申請できます(建築基準法第6条の2)。条例の当てはめやただし書の扱いをどこへ相談するかは、申請先によって変わります——指定確認検査機関へ申請するなら、まずその機関へ。審査上の疑義は、機関から所管の行政庁へ照会される扱いです。

どこからが「がけ」か——条例は「高さ2メートルをこえるがけ」、30度は県の要領の定義です

第3条 建築物が高さ2メートルをこえるがけに近接する場合は、がけの上にあつてはがけの下端から、がけの下にあつてはがけの上端から、建築物との間にそのがけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。
2 鉄筋コンクリート造等の重量建築物をがけの上に建築しようとする場合にあつては、前項の数値を安全上支障がない程度に増大しなければならない。
3 前2項の規定は、建築物の用途、規模若しくは構造若しくは擁壁の設置又はがけの状況により建築物が安全上支障がないと認められる場合には適用しない。

建築基準法施行条例(鹿児島県)第3条

条文そのものには「がけ」の定義規定がなく、「高さ2メートルをこえるがけ」とだけ書かれています。何度からを「がけ」と扱うかは、県の取扱要領が定義しています——「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなし,かつ,高さが2メートルを超える土地」(要領第2)。鹿児島市の案内も同じ定義で説明しています。つまり実務上は、勾配30度超・高さ2メートル超の斜面が入口です。

距離は「がけの高さの2倍以上」——がけの上も下も。がけの上の重い建物なら、さらに増やします

保つ距離は、がけの上に建てるなら「がけの下端から」、がけの下に建てるなら「がけの上端から」、それぞれ水平距離でがけの高さの2倍以上です。高さ3メートルのがけなら、上下とも6メートル以上になります。第2項はがけの上の重い建物の定めです——鉄筋コンクリート造等の重量建築物をがけの上に建築する場合は、この数値を安全上支障がない程度に増大しなければなりません。どれだけ増やすかの一律の数字は条文になく、設計側で安全の根拠を示すことになります。

第3条の中の例外は第3項の一本。「認められる場合」の中身は、県の取扱要領にあります

第3項は号立てのない一文で、建築物の用途・規模・構造、擁壁の設置、またはがけの状況により「建築物が安全上支障がないと認められる場合」には第1項・第2項を適用しない、と定めます。何が「認められる場合」に当たるかは、県の取扱要領第3が3つの系統で示しています——いずれかに該当すれば足ります

以下は、鹿児島県の取扱要領による整理です。鹿児島市内では、市の「がけ規制の手引き」と市の申請様式による取扱いがあり、県要領と異なる部分があります。その他の特定行政庁・限定特定行政庁の所管区域も、申請様式と具体の運用は、建築地を所管する窓口で確認してください。

  • (1)擁壁等でがけの安全対策が講じられている場合——都市計画法第29条の開発許可を受けて造成され検査済証の交付があるもの、宅地造成等規制法(要領原文の法令名・旧法)第8条の許可+検査済証のあるもの、建築基準法第6条の確認を受けて築造され検査済証の交付があるもの——この3つは、工事検査済証の交付後、のり面に擁壁の継ぎ足し又はコンクリートの突き出し等(要領の定義語で「擁壁の継ぎ足し等」)を行っていないことが条件です。ほかに、急傾斜地崩壊危険区域の防災工事が完了しているもの(この類型に検査済証の条件は書かれていません)。なお、鹿児島市の手引きは「宅造許可」を、現行の盛土規制法(旧宅地造成等規制法を含む)に基づく許可として整理しています——県要領を適用する区域で、現行法(第12条・第30条)の許可・検査済証を旧法第8条と同じ類型として扱うかは、所管窓口で確認してください。それ以外の擁壁等は、設計図書と現地調査等により安全が確認できるもの
  • (2)建築物側の対応——物置や畜舎等で居室を有しない床面積100平方メートル未満のもの、土砂災害特別警戒区域内で、県の「土砂災害特別警戒区域内に建築する建築物の取扱要領」第2第1項の規定に適合させたもの(同項は急傾斜起因の区域の定めです)、イエローゾーン(急傾斜)内で令第80条の3または令第82条の5第8号に適合させたもの(以上の3つは、がけ下に建築する場合に限ります)。そしてピロティ状建築物や深基礎等の対策で、設計図書と現地調査等により安全が確認できるもの
  • (3)危険宅地連絡協議会で「安全上支障がない」と判断されたもの(建築主事による建築確認が行われるものに限る)——がけが堅固な土質、がけ崩れの危険のない旨の専門学識経験者(博士等)による証明書・意見書、がけ下に設置する流土止めで「急傾斜地崩壊防止工事技術指針」又は構造計算等によるもの、治山事業・道路事業等でがけ面の防災工事が完了しているもの、(1)に掲げる造成地で過去に災害の発生した箇所、(1)に掲げる造成地周辺部の宅地目的外の土地等(自然がけがある場所等)、その他判断が困難なもの。ただし、建築物の用途が、病院、診療所(患者の収容施設のあるものに限る)、老人ホーム、児童福祉施設等、又は体育館、集会所その他これらに類するもので、かつ、延べ面積100平方メートル以上のものについては、原則として適用しないとされています

鹿児島市の特殊建築物の取扱いは、この県要領とは別です。市の手引きは、病院・診療所(患者の収容施設のあるものに限る)・児童福祉施設等その他これらに類する建築物について、手引きに列挙する5つの場合(増築等で危険宅地調査連絡協議会が建築はやむを得ないと判断した場合や、検査済証のある造成地・擁壁等の場合など)を除いて、条例第3条第3項の適用を認めない取扱いを示しています——この部分に100平方メートルの面積基準は書かれていません。市の手引きのフローでは、これらの用途の新築・用途変更は「原則建築不可」の側に整理されています。また、急傾斜地の崩壊を原因とするレッドゾーン・イエローゾーン内で令第80条の3等に適合する建築物も、位置関係によっては市の「がけ相談」が必要です——市の手引きは、イエローゾーン内のみに位置する場合は位置関係にかかわらず全件、局所的にレッドゾーン内に位置する場合、がけの影響を多方面から受ける場合を、がけ相談の対象としています。

(1)の急傾斜防災工事・その他の擁壁、(2)のイエローゾーン適合・ピロティ状/深基礎、(3)の全部を使う場合は、県建築主事の所管案件では、要領の別記様式(宛先は鹿児島県建築主事)による適用申請書を提出します(要領第4)。鹿児島市では、市が公開する「建築基準法施行条例第3条第3項の規定の適用申請書(申請要領様式第4)」を使用します。その他の所管区域では、提出先と様式を各窓口で確認してください。なお、(2)の物置等について、県の要領は「居室を有しない」「床面積が100㎡未満」、鹿児島市の資料は「人が継続して使用しない」「延べ面積100㎡以下」(倉庫・畜舎等)と、数字の境界だけでなく、面積の種類や要件の言い回しも分かれています(どちらも原文のままです)——「境界付近だからどちらか」ではなく、建築地を所管する行政庁の取扱いを確認してください。どの系統も、条文の要件は「安全上支障がないと認められる」ことで、名前や書類の種類だけで自動的に例外になるわけではありません。

排水の措置と、2倍以上離れていても配慮——要領は範囲の外まで見ています

要領第5は敷地の排水を求めます——がけの下なら、がけの下端への流水を防止できる措置。がけの上なら、がけの反対側に敷地勾配をとり排水溝を設けるなど、がけへの流水・浸水を防止する措置です。要領第6は範囲の外の話です——がけの上下端からがけの高さの2倍以上離れた場所でも、がけの土質や形状、山裾の傾斜地である場合など、がけ崩れや土石流による被害が予想される場合は安全上の配慮を行う、と明記しています。これは建築基準法第19条第4項の考え方と重なります——建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれがあると判断される場合には、同項により、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければなりません。距離が取れていることは、安全検討の終わりではありません。

レッドゾーンとの関係——急傾斜由来だけが「みなし」でつながっています

県の「土砂災害特別警戒区域内に建築する建築物の取扱要領」は、両者の関係を明文でつないでいます。急傾斜地の崩壊を原因とするレッドゾーン内に居室を有する建築物を建てる場合は、まず令第80条の3または令第82条の5第8号への適合が求められます(要領の文言は「適合すること」=義務です)。適合すると、その急傾斜地については条例第3条第3項の「安全上支障がないと認められる場合」に該当するものとみなされます——ただし、建築物がその急傾斜地のがけ上にある場合や、別のがけ(高さ2メートル超)に近接している場合は、条例第3条の適用を受けます土石流・地滑りを原因とするレッドゾーンに、「みなす」の定めはありません——令第80条の3等への適合が求められ、それとは別に、高さ2メートル超のがけに近接するなら第3条がそのまま適用されます。令第80条の3には、土石等の高さ等以上の高さの門・塀(外壁等と同等以上の耐力をもつ、大臣が定めた構造方法のもの)が衝撃を遮るように設けられている場合のただし書があり、その場合の申請図書も要領に定められています。なお、レッドゾーン(土砂災害防止法)と急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法)は別の指定です。この「みなし」や取扱要領の例外が効く宛先は条例第3条第3項で、災害危険区域の住居禁止(第27条)を解くものではありません——そちらは第27条ただし書の特定行政庁の認めが別に必要です。なお鹿児島市の手引きは、この第3条の判断(安全上支障がないと認められること)を、市の承認を得たうえで第27条ただし書に該当する場合の一つとして挙げています(市手引き5の3))。

これとは別に、レッドゾーン内で区画形質の変更を伴う開発行為(都市計画法第4条第12項)をして、予定建築物が制限用途であるもの=特定開発行為には、都道府県知事の許可が必要です(土砂災害防止法第10条第1項。非常災害の応急措置など、同項ただし書の政令で定める行為は除かれます)。制限用途は、予定建築物の用途で、住宅(自己の居住の用に供するものを除く)並びに高齢者・障害者・乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設・学校・医療施設(政令で定めるものに限る)「以外の用途でないもの」です(同条第2項)。「以外の用途でない」という二重否定なので、これら以外の用途であることが確定していないもの——用途が決まらないまま造成する場合など——も制限用途に含まれます(公的な手引きも、用途未定の建築物を制限用途として整理しています)。開発行為を伴わない建築だけの場合は、この許可の対象ではありません。レッドゾーン内の居室を有する建築物について、令第80条の3に対応する2つの方法——外壁等(外壁・構造耐力上主要な部分のうち、土石等の高さ等以下で、土砂災害の原因となる自然現象〔河道閉塞による湛水を除く〕により衝撃が作用すると想定される部分)を所定の構造にするか、土石等の高さ等以上の高さで、外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法による門・塀を、衝撃を遮るように設けるか——と、改修への補助の枠組みは、レッドゾーンの家と土地で整理しています。

急傾斜地崩壊危険区域は、そのまま「災害危険区域」です——住居は原則、建てられません

(災害危険区域)
第26条 法第39条第1項に規定する災害危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第3条第1項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域とする。
(建築の制限)
第27条 前条の災害危険区域においては、住居の用に供する建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が建築物の構造若しくは敷地の状況又は急傾斜地崩壊防止工事の施工により被害をうけるおそれがないと認める場合は、この限りでない。

同 第26条・第27条

鹿児島は、急傾斜地法で指定された急傾斜地崩壊危険区域が、自動的にそのまま災害危険区域になる型です(第26条)。区域内では住居の用に供する建築物の建築が原則禁止で、例外は特定行政庁が、建築物の構造・敷地の状況、または急傾斜地崩壊防止工事の施工により「被害をうけるおそれがない」と認める場合です(第27条ただし書)。この認めを受ける承認の手続は県・市の細則に定めがあります——計画がかかりそうなら、確認申請の前に窓口へ。なお、急傾斜地崩壊危険区域内では、これとは別に急傾斜地法第7条第1項の行為許可(切土・盛土・工作物の設置など。非常災害の応急措置等のただし書の除外あり)が必要になる場合があります(砂防担当窓口へ)。区域の位置・該当の有無は、建築指導・砂防の窓口で確認してください。

仮設・既存・用途変更——第3条の残り方

雑則と法の特例で、第3条の残り方が変わります。①許可を受けた仮設建築物等——第29条は、法第85条第6項・第7項の許可を受けた仮設興行場等と、法第87条の3第6項・第7項の許可を受けた建築物について、第2章・第3章の規定を適用しないと定めます。第3条は第2章にあるため、これらの許可建築物には、がけの距離規定も適用されません——ただし第5章(第26条・第27条の災害危険区域の制限)は第29条の対象外で、許可建築物にも適用されたままです。また、災害があった場合に建築する停車場・官公署その他これらに類する公益上必要な用途の応急仮設建築物と、工事を施工するために現場に設ける事務所・下小屋・材料置場等に類する仮設建築物には、法第85条第2項により同項が列挙する規定(第39条・第40条を含みます——建築基準法令の全部ではありません)を適用しない特例があり、防火地域・準防火地域内で延べ面積が50㎡を超えるものには第62条が適用されます(同項ただし書)。特定行政庁が指定する非常災害区域等の内では、同条第1項により、災害により破損した部分の応急の修繕は工事の着手時期にかかわらず(国土交通省の通知)、国・地方公共団体・日本赤十字社の災害救助用と、被災者が自ら使用する延べ面積30㎡以内の応急仮設建築物は災害発生の日から1か月以内に工事に着手する場合に、建築基準法令の規定を適用しない特例が別にあります(防火地域内の除外は応急仮設建築物の建築に掛かります)。第1項・第2項の応急仮設建築物を工事完成後3か月を超えて存続させるには、その日前に特定行政庁の許可が必要です(同条第3項。期限前に申請し、期限までに処分がされないときは、処分がされるまで存続できます——同項ただし書)。許可は、安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるときに、2年以内の期間を限って行われます(同条第4項)。被災者の需要に応ずるに足りる適当な建築物が不足するなどの特別の必要があり、安全上・防火上・衛生上支障がなく、かつ公益上やむを得ないと認める場合は、1年を超えない範囲で延長・再延長ができます(同条第5項)。延長には原則として建築審査会の同意が必要で、官公署・病院・学校など省令で定める公益上特に必要な用途の延長は例外です(同条第8項)——この3か月は、第2項に併記された工事現場の事務所等とは別の扱いです。②既存不適格の建物の増築等——法第3条第2項によりこの条例の適用を受けない建築物に増築・改築・移転・大規模の修繕・模様替えをする場合、これらの工事をすれば法第3条第3項第3号・第4号により既存不適格の緩和が切れて条例が適用されるのが原則です(鹿児島市の案内では、既存部分と一体的な増築では規模・接続方法により既存部分に遡及し得る一方、別棟の増築では既存不適格部分に遡及適用は生じないと説明されています)。そのうえで、特定行政庁がその建築物・敷地の状況によりやむを得ないと認めるものは、法第3条第3項第3号及び第4号の規定にかかわらず適用を緩和できます(第28条)——ただし、第28条が緩和の対象に列挙するのは増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替えで、移転は列挙されていません。移転には、法第86条の7第4項による別の緩和があります——同一敷地内の移転か、交通上・安全上・防火上・避難上・衛生上・市街地の環境の保全上支障がないと特定行政庁が認める移転では、法第3条第3項にかかわらず既存不適格の扱いが継続します(施行令第137条の16)。すべての移転が対象になるわけではありません。③用途変更——法第87条第2項により、法第39条第2項・第40条に基づく条例の規定は用途変更にも準用されます。がけの第3条だけでなく、災害危険区域内の住居を制限する第27条も対象です(急傾斜地崩壊危険区域内の建物を住居の用途に変える場合に問題になります)。既存不適格の建物の用途変更は法第87条第3項が別に定めており、原則は準用で、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合や、政令で指定する類似の用途相互間の変更で一定の条件を満たす場合などの各号が除外です——第1号(増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合。移転は列挙されていません)は用途変更を理由とする準用から外れるという意味で、これらの工事そのものは②の法第3条第3項と緩和規定で別に判定します。個別の当てはめは窓口で確認してください。

罰則は第31条・第32条——設計者等に20万円以下。適合の義務は、審査とは別に残ります

第31条第1項は、第3条第1項・第2項第27条を含む列挙規定への違反について、当該建築物(又は建築設備)の設計者(設計図書を用いないで工事を施工し、または設計図書に従わないで工事をした場合は、その工事施工者)に20万円以下の罰金を定めます(第26条は列挙から除かれています)。違反が建築主(または建築設備の設置者)の故意によるときは、当該設計者又は工事施工者を罰するほか、建築主等にも同じ刑が科されます(同条第2項)。法人の代表者や、法人・人の代理人・使用人その他の従業者が業務に関して違反行為をした場合は、行為者を罰するほか、その法人・人にも罰金刑——ただし免責の対象は限られています。代理人・使用人その他の従業者の違反行為について、その防止のため当該業務に対し相当の注意・監督が尽くされたことの証明があったときに、その法人・人に科されないだけです(第32条ただし書)。そして、違反建築物は是正命令(建築基準法第9条。除却・使用禁止などの措置を含みます)の対象になり得ます。

「シラス」の数字は、条例ではなく擁壁の審査基準にあります

シラス台地の県ですが、条例第3条にも取扱要領にも、シラス・ボラといった土質区分は出てきません。土質の数字が出てくるのは、県の「擁壁構造審査基準」(擁壁の確認審査の基準。令和6年6月10日施行の改正まで確認)です——別表第3の土質別角度で、「砂利,真砂土,関東ローム,硬質粘土その他これらに類するもの(シラス※)」は35度とされ、※印で「シラスは,現地の土質状況を踏まえ,必要があれば土質試験や硬度調査を行い,土質の判断をすることが望ましい」と注記されています。この審査基準の対象は、建築基準法第88条第1項による確認・完了検査の対象となる、高さ2メートルを超える擁壁です(基準第2)。そして別表第3は「第9関係」の土質別角度——高さの異なる一連の擁壁(上下2段以上)の位置関係や、斜面上に擁壁を設ける場合の後退位置を判定するための角度で、シラス一般の安定勾配でも、すべての擁壁計画に一律に適用される設計角度でもありません。土質は、注記のとおり、現地の土質状況を踏まえ、必要があれば土質試験・硬度調査を行って判断することが「望ましい」とされています——これはシラスの土質区分の判断についての注記で、これとは別に、同基準の「参考 注意事項」1(5)は擁壁の設置場所の地盤について、地質調査及び土質試験を必ず行うよう定めています。

鹿児島市は、県条例の運用に厚い手引きがあります

鹿児島市の手引きも、がけ規制の根拠を県条例第3条(ほかにレッドゾーンの構造規制と、県条例第26条・第27条の災害危険区域)で説明しています——市の独自条例によるがけ規制は、手引きの列挙にはありません。ただし市は「鹿児島市建築基準法がけ規制の手引き」(令和8年4月改訂)を公開しており、がけ相談を省略できる類型や、等高線の入った地形図による断面図の作成方法を載せています。既設擁壁の調査報告書の様式は、手引きが案内する市ページからダウンロードする形です。市の案内では、範囲内外確認のための現地調査や断面図作図等のサービスは行っていない(確認は原則、計画側の現地調査による)とされています。危険宅地調査連絡協議会(市の手引きの名称)に諮る案件もあるため、がけのある計画は早い段階で建築士と、建築地を所管する建築指導の窓口へ

いま、確かめておくこと

  • ① 計画地の中や周りに、勾配30度超・高さ2メートル超の斜面があるか(30度は県要領の定義。条例の文言は「高さ2メートルをこえるがけ」です)
  • ② がけの上なら下端から、がけの下なら上端から、建物までの水平距離が「がけの高さの2倍以上」あるか(第3条第1項)
  • ③ がけの上に鉄筋コンクリート造等の重い建物を建てるなら、距離をさらに増大(第2項。増やす量の一律の数字は条文になく、設計側で根拠を示します)
  • ④ 距離が取れないなら、第3項——以下は県の取扱要領の3系統です。鹿児島市は、倉庫等の要件・面積の種類、レッド・イエローでがけ相談を省略できる条件、特殊建築物の取扱いが県要領と異なるため、市の手引きで別に判定します。擁壁等——開発・旧宅造・建築確認によるものは検査済証+交付後にのり面への「擁壁の継ぎ足し等」がないこと/急傾斜の防災工事は工事完了(検査済証の条件なし)/その他の擁壁等は設計図書・現地調査等——/建築物側(がけ下に限り、物置・畜舎等で居室なし・床面積100㎡未満〔市資料は「以下」表記——境界は窓口確認〕、急傾斜地の崩壊を原因とするレッドゾーンで県の別要領第2第1項に適合〔⑧参照〕、急傾斜地の崩壊を原因とするイエローゾーンで令第80条の3等に適合。ピロティ状・深基礎はがけ下限定なし)/協議会判断(病院・老人ホーム等で延べ面積100㎡以上には、この協議会ルートを原則として適用しない)。適用申請書が要るのは(1)の急傾斜防災工事・その他の擁壁、(2)のイエロー適合・ピロティ状/深基礎、(3)です(要領第4)
  • ⑤ 敷地の排水——がけ下なら下端への流水防止、がけ上なら反対側への勾配と排水溝など(要領第5)
  • ⑥ 2倍より離れていても、がけ崩れ等の被害を受けるおそれがないかは別に確認(要領第6)。おそれがあると判断される場合は、建築基準法第19条第4項の安全上適当な措置が必要です
  • ⑦ 建てる位置が急傾斜地崩壊危険区域(=災害危険区域)に入らないか。入るなら住居用は原則禁止——特定行政庁の認めが例外の道で、承認の手続は確認申請の前に。区域内の切土・盛土・工作物の設置などは、急傾斜地法第7条の行為許可も確認(砂防担当窓口へ)
  • ⑧ レッドゾーン・イエローゾーンとの位置関係。急傾斜レッド内の居室ある建築は、令第80条の3等への適合がまず義務で、適合するとその急傾斜地について第3項該当とみなす扱い——がけ上の場合や別のがけには第3条がかかります。土石流・地滑りレッドに「みなし」はありません。このみなしだけでは、⑦の住居禁止(第27条)は解けません(県要領)——第27条ただし書の特定行政庁の認め(承認申請)が、確認申請の前に別に要ります。ただし鹿児島市の手引きは、「3.県条例第3条によるがけ規制」において安全上支障がないと認められる場合を、市の承認を得ることで第27条ただし書に該当する場合の一つとして挙げています(市手引き5の3))。所管の窓口で確認してください
  • ⑨ 高さ2mを超える擁壁の確認・完了検査には、県の擁壁構造審査基準。別表第3の土質別角度(シラスを含む区分は35度)は、上下2段以上の擁壁や斜面上の擁壁の位置を判定するための角度(第9関係)で、一律の設計角度ではありません。シラスの土質区分は、現地の土質状況を踏まえ、必要があれば土質試験や硬度調査を行って判断することが望ましいとされ、擁壁の設置場所の地盤は地質調査・土質試験を必ず行う(参考・注意事項1(5))と、書き分けられています
  • ⑩ 建築確認が不要なことだけを理由に、第3条が外れるわけではありません。適合義務は審査の範囲とは別に生じます。例外は、第29条の許可仮設(第3条も適用されません)や法第85条の特例、第28条の緩和、移転についての法第86条の7第4項・施行令第137条の16の緩和など、根拠のあるものに限られます

個別の敷地でどう当たるかの判断は、建築士と、建築地を所管する建築指導の窓口にご確認ください。県は条例・取扱要領・擁壁構造審査基準を「建築行政実務必携」のページで公開しています——条文と併せて読むと、規制の趣旨がつかみやすくなります。現行の審査の取扱いは、建築指導の窓口で確認してください。


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