滋賀県にヤードの構造を規制する条例はありません ただし金属くずを扱うなら、規模に関係なく公安委員会の許可が要ります

滋賀県にヤードの構造を規制する条例はありません ただし金属くずを扱うなら、規模に関係なく公安委員会の許可が要ります

滋賀県に、ヤードの構造を規制する条例はありません。囲いも、積み上げの高さも、床の基準も、条例にも公安委員会規則にも書かれていません。

ただし、金属くずを扱うなら、規模に関係なく許可が要ります。面積も、重量も、台数も、下限がありません。そして許可を出すのは知事ではなく、公安委員会です。

滋賀県の条例は1957年(昭和32年)2月1日から施行されています。千葉県のヤード条例より67年前です。ただし、狙っているものがまったく違います。

この記事は、条例と公安委員会規則の条文から、順にたどります。「無い」ことも、この記事の中身です。

これは環境の条例ではなく、防犯の条例です

これは防犯の条例です
これは防犯の条例です

正式には「滋賀県金属屑回収業条例」(昭和31年12月25日滋賀県条例第58号)。目的の条文が、すべてを決めています。

この条例は、金属屑回収業者の営業基準その他必要な事項を規定することにより、金属類に関する犯罪を防止し、もつて公共の秩序を維持することを目的とする。

犯罪を防止し、公共の秩序を維持する。

千葉県・茨城県・埼玉県・福島県・山梨県・群馬県のヤード条例も、兵庫県も鳥取県も、目的は生活環境の保全です。滋賀県だけが盗品の流通を止めることを目的にしています。

目的が違えば、規制の手段も違います。だから滋賀県の条例には、保管施設の構造基準がひとつもありません。代わりに、本人確認・帳簿・品触れ・差止といった、捜査に直結する道具が並んでいます。

所管も違います。知事ではなく、滋賀県公安委員会です。

囲いも、高さも、床の基準もありません

囲いも高さも床の基準もありません
囲いも高さも床の基準もありません

条例の章立てを見てください。

目次 第1章 総則(第1条・第2条) 第2章 金属屑商(第3条―第11条) 第3章 金属屑行商(第12条―第15条) 第4章 営業基準(第16条―第21条) 第5章 雑則(第22条―第27条) 第6章 罰則(第28条―第31条) 付則

保管施設の構造を定める章が、そもそも存在しません。

「営業基準」という章名を見て、施設の基準を連想しないでください。第4章の中身は、取引と記録の基準です。相手方の確認、不正品の申告、営業場所の制限、品触れ、差止、帳簿、帳簿の廃棄。物の積み方に関する規定は、ひとつもありません。

条例の全文と、公安委員会規則の全文を検索した結果を書いておきます。

  • 「囲」「塀」「柵」「フェンス」——出現ゼロ
  • 「高さ」「材質」「構造」「荷重」——出現ゼロ
  • 「積」「火災」「汚水」「飛散」「騒音」「悪臭」——出現ゼロ
  • 「面積」「平方」「図面」「計算」——出現ゼロ

条例にも規則にも、ひとつもありません。規則の中身は、許可申請・許可証・行商の証・差止令書・帳簿・従業者名簿の様式と手続だけです。

ですから「滋賀県の条例で囲いが義務」と書いてある解説を見かけたら、それは誤りです。囲いを求めているのは、この条例ではありません。

許可は公安委員会。営業所ごとです

許可は公安委員会、営業所ごとです
許可は公安委員会、営業所ごとです

第3条 金属屑商になろうとする者は、営業所ごとに、滋賀県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

2つ、確かめてください。

ひとつ。宛先は公安委員会です。知事ではありません。窓口は所轄警察署を経由します。ほかの県のヤード条例が知事あてなのと、まったく違います。

ふたつ。単位は「営業所ごと」です。事業者ごとではありません。営業所が2か所あれば、許可も2件要ります。

そして「営業所」には、営業の目的で使う住所や居所も含まれます。自宅を拠点にしていても、営業所に当たり得ます。

管理者の規定もあります。

2 前項の場合において、自ら管理しないで営業所を設けようとするときは、その営業所の管理者を定めなければならない。

必ず管理者を置く、ではありません。自分で管理するなら不要です。

変更の手続きは、2つのルートに分かれます。

金属屑商は、本籍、住所(法人の場合においては、主たる事務所の所在地または代表者の住所)、営業所の名称もしくは所在地または氏名に異動を生じたときは、その日から10日以内にその旨を公安委員会に届け出て許可証の書換を受けなければならない。

第9条 金属屑商は、営業所を移転しようとするとき、または管理者を新たに定め、変更し、もしくは廃止しようとするときは、公安委員会の承認を受けなければならない。

第8条第3項は「異動を生じたとき」の事後の届出(10日以内)、第9条は「しようとするとき」の事前の承認です。移転は承認、名称の変更は届出。取り違えないでください。

面積・重量・台数の下限がありません

面積・重量・台数の下限がありません
面積・重量・台数の下限がありません

第5条 金属屑商でない者は、営業所を設けて金属屑を売買し、もしくは交換し、または委託を受けて、売買し、もしくは交換してはならない。

この条文に、数量の敷居がありません。面積が何平方メートル以上とも、何トン以上とも、何台以上とも書かれていません。

営業所を設けて金属屑の売買・交換を業として行えば、規模にかかわらず許可が要ります。

そして「委託を受けて、売買し、もしくは交換」も禁止の対象です。自分で買い取らない仲介型も入ります。

ここが、滋賀県のいちばん面白いところです。規模と規制の向きが、ほかの県と真逆になっています。

  • 千葉県・福島県・山梨県——面積が大きいヤードほど、重い規制がかかる
  • 滋賀県——小規模でも許可が要る。ただし大規模なヤードでも、構造の規制はまったくかからない

何が「金属屑」なのかも見ておきます。

この条例において「金属屑」とは、金属製品(半製品を含む。)その他の金属類(廃品を含む。)であつて次の各号に該当しないものをいう。
(1) 正常な生産工程により生産させたもので、その生産目的に従い、売買させ、交換され、加工され、または使用されるもの
(2) 古物営業法(昭和24年法律第108号)第1条第1項の古物

「金属くず=廃棄物」ではありません。半製品も廃品も含む、広い定義です。除かれるのは、正常な生産工程で作られて生産目的どおりに流れているものと、古物営業法の古物です。

取引相手の本人確認が義務です

本人確認があるのは滋賀だけです
本人確認があるのは滋賀だけです

ここが、この条例の心臓部です。

第16条 金属屑回収業者は、金属屑を売買し、もしくは交換し、または委託を受けて売買し、もしくは交換しようとするときは、身分証明書の呈示を求める等の方法によつて相手方の住所、氏名、職業および年齢を確認しなければならない。

住所・氏名・職業・年齢の4点。身分証明書の呈示を求める等の方法で確認します。義務者は金属屑商と金属屑行商の両方です。

兵庫県にも鳥取県にも、本人確認の規定はありません。兵庫県の特定物の管理簿には搬出先しか書きませんし、鳥取県の記録は取引年月日と品目・数量の2項目だけで、相手方の欄すらありません。

3県のうち、本人確認があるのは滋賀県だけです。盗品の流通を止めるという目的が、そのまま条文になっています。

違反すると、こうなります。

第29条 第6条、第12条第1項、第16条もしくは第17条の規定に違反し、または第19条の規定による警察署長の発する保管命令に違反した者は、6月以下の拘禁刑または3万円以下の罰金に処する。

本人確認を怠ると、刑罰の対象です。

帳簿に保存期間がありません。捨てるには警察署長の承認が要ります

帳簿に保存期間がありません
帳簿に保存期間がありません

第20条 金属屑商は、営業所ごとに帳簿を備え、売買もしくは交換のため、または売却もしくは交換の委託により、金属屑を受け取り、または譲り渡したときは、そのつど、次に掲げる事項を記載しなければならない。
(1) 取引の年月日
(2) 品目および数量
(3) 物品の特徴
(4) 相手方の住所、職業、氏名、年齢および特徴
(5) 第16条の規定により行つた確認の方法

「物品の特徴」と「相手方の特徴」まで書きます。そして、どうやって本人確認をしたかも記録します。

ここで、多くの解説が間違えるところがあります。この条例に、帳簿の保存年数は書かれていません。

第21条 金属屑商は、前条の帳簿を廃棄しようとするときは、営業所所在地の所轄警察署長の承認を受けなければならない。
2 金属屑商は、前条の帳簿を損傷し、亡失し、または盗み取られたときは、直ちに前項の警察署長に届け出なければならない。

年数が過ぎたら捨てられる、という作りではありません。承認が下りるまで持ち続ける建て付けです。「滋賀の帳簿は何年保存」と書いてあったら、条文にない数字です。

この条例で保存期間が明示されているのは、品触書の3月間だけです。

2 金属屑商は、前項の品触れを受けたときは、その品触書に到達の日付を記載し、その日から3月間これを保存しなければならない。

なお帳簿の義務がかかるのは金属屑商だけで、金属屑行商に帳簿を課す条文はありません。

従業者名簿もあります。

第22条 金属屑商は、営業所ごとに従業者名簿を備え、従業者を雇い入れたつど、その者の本籍、住所、氏名、生年月日および雇入年月日を記載しなければならない。

ただし従業者名簿の不備には、罰則がありません。後で出てくる第30条の列挙に、第22条は入っていないからです。

条例が「保管」に触れるのは、2つの場面だけです

条例が「保管」に触れるのは2場面だけ
条例が「保管」に触れるのは2場面だけ

「保管」という語が条例に出てくるのは、3か所しかありません。そのうち施設の話は、ひとつもありません。

ひとつめは差止です。

第19条 金属屑商が買い受け、もしくは交換し、または売却もしくは交換の委託を受けた金属屑について、盗品または遺失物であると疑うに足りる相当な理由がある場合においては、警察署長は、当該金属屑商に対し、30日以内の期間を定めて、その金属屑の保管を命ずることができる。

これは個別の物に対する命令で、施設の基準ではありません。

ふたつめは立入検査です。

第24条 警察官は、必要があると認めるときは、営業所もしくは金属屑の保管場所に立ち入り、帳簿もしくは金属屑を検査し、または関係者に質問することができる。

条例は保管場所の存在を前提にしてはいますが、その場所がどうあるべきかは、何も定めていません。立ち入る主体は公安委員会ではなく警察官です。

営業場所の制限もありますが、これも保管場所の話ではありません。

第17条 金属屑商は、その営業所または取引の相手方の住所もしくは居所以外の場所において、買い受け、もしくは交換し、または売却もしくは交換の委託を受けるため、金属屑商以外の者から金属屑を受け取つてはならない。

取引をしてよい場所の制限であって、保管場所の制限ではありません。そして制限がかかるのは「金属屑商以外の者から」受け取る場合です。金属屑商どうしの取引は、この条文の対象外です。

罰則は拘禁刑。無許可がいちばん重い

罰則は拘禁刑。無許可がいちばん重い
罰則は拘禁刑。無許可がいちばん重い

第28条 第5条の規定に違反し、または第25条の規定による処分に違反した者は、1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金に処する。

無許可営業が、この条例でいちばん重い罰則です。1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。

そのほかは、こうなっています。

  • 第29条——本人確認(第16条)、営業場所の制限(第17条)、保管命令(第19条)などの違反。6月以下の拘禁刑または3万円以下の罰金
  • 第30条——表示(第11条)、帳簿(第20条・第21条)、品触書の保存(第18条第2項・第3項)などの違反、および警察官の立入または検査を拒み、妨げ、または忌避した者。2万円以下の罰金

ここで、資料を読むときの注意があります。刑法等の一部を改正する法律により、2025年6月1日から「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。滋賀県のこの条例も、令和7年6月1日施行の版で改められています。

ネット上に残る解説の多くは、まだ「懲役」と書いています。兵庫県の条例も同じ日に拘禁刑になっているので、同じ落とし穴があります。

では、滋賀県のヤードには何もかからないのか

何もかからないわけではありません
何もかからないわけではありません

そうではありません。この条例に構造の規制がない、というだけです。

金属スクラップを屋外に置いている事業場には、この条例とは別に、次のようなものがかかり得ます。

  • 廃棄物処理法——扱っているものが廃棄物に当たれば、保管基準(囲い、積み上げ高さ、掲示板など)がかかります。有害使用済機器の保管・処分を業として行う場合は、第17条の2の届出も
  • 自動車リサイクル法——使用済自動車の引取り・解体・破砕
  • 消防法・建築基準法——火気や工作物の扱い
  • 騒音規制法・振動規制法・水質汚濁防止法——作業に伴う影響

そして、国の制度が動いています。金属スクラップの屋外保管を正面から規制する枠組みが、法律のレベルで整えられようとしています。この点は当サイトのスクラップヤードに許可制が入る(1) うちのヤードは許可が必要になるのかから始まる連載で扱っています。

いま滋賀県で構造の規制がないことは、これからもないという意味ではありません。

いま、確かめておくこと

いま、確かめておくこと
いま、確かめておくこと
  • 扱っているものが「金属屑」に当たるか。半製品も廃品も含みます。除かれるのは、正常な生産工程で生産目的どおりに流れているものと、古物営業法の古物だけです
  • 営業所を設けて金属屑を売買・交換しているか。委託を受けての売買・交換も含みます。規模の下限はありません
  • 当たるなら、営業所ごとに公安委員会の許可を受けているか。知事ではありません
  • 自ら管理しない営業所なら、管理者を定めているか
  • 取引のたびに、身分証明書の呈示を求める等の方法で、相手方の住所・氏名・職業・年齢を確認しているか
  • 営業所ごとの帳簿に、取引の年月日・品目および数量・物品の特徴・相手方の住所職業氏名年齢および特徴・確認の方法をそのつど書いているか
  • 帳簿を捨てるには、営業所所在地の所轄警察署長の承認が要ります。年数で捨てられません
  • 営業所の見易い場所に、金属屑商であることを証する表示をしているか
  • 営業所ごとに従業者名簿を備えているか
  • 営業所を移転するなら、事前に公安委員会の承認。氏名・住所・営業所の名称などが変わったら、その日から10日以内に届出
  • 品触れを受けたら、品触書に到達の日付を記載し、その日から3月間保存しているか
  • 囲いや積み上げ高さについては、この条例には基準がありません。ただし廃棄物処理法など、ほかの法令がかかっていないかを別に確かめてください

手続きや解釈の判断は、営業所の所在地を管轄する警察署、または滋賀県警察本部にご確認ください。


出典

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