災害のごみを、誰がどこへ運ぶのか 制度が変わる3つの点と、8月23日締切の意見募集

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震で、いま各地に仮置場が置かれています。同じ時期に、災害で出たごみをどう扱うかという法律が変わり、その細かい中身を決める政令案が、8月23日の12時まで意見募集にかかっています

この記事は2026年8月19日10時時点で公表されている条文と資料をもとに書いています。

いま、仮置場が置かれています
いま、仮置場が置かれています

いま、熊本で起きていること

熊本では、仮置場が開かれています
熊本では、仮置場が開かれています

環境省が公表している数字です。

災害廃棄物に特化した資料では、2026年8月11日17時時点で熊本県内11自治体18か所の仮置場が開設中とされていました。その後、2026年8月19日10時時点では、10自治体16か所となっています。西原村は8月7日、上天草市は8月16日に開設を終了しました。いずれも公表中の仮置場に限った数字です。

開設中は宇土市、宇城市、美里町、御船町、嘉島町、甲佐町、芦北町、益城町、八代市、氷川町の10自治体です。

資料には、仮置場ごとの受入期間も載っています。多くは8月末から9月30日までで、八代市は12月末まで、氷川町と芦北町は「未定」とされています。受入期間には終わりがある、ということです。

公費解体は、まだ受付前です
公費解体は、まだ受付前です

一般の公費解体・撤去については、2026年8月17日付けの事務連絡の時点で、各市町村で準備中であり、申請の受付は開始していないとされています。原文は「現時点で、各市町村において公費解体・撤去の準備中であり、申請の受付を開始していません」です。件数の公表もありません。

ただし、これとは別に八代市と氷川町では、緊急公費解体が始まっています(8月19日10時時点の資料)。二次被害のおそれがある建物などについて、自治体の判断で先に解体するものです。一般の申請受付と緊急公費解体は、別の枠だということです。

災害廃棄物の発生量については、今回確認した環境省の公表資料では、2026年8月19日10時までにトンや立方メートルで示された推計値は見当たりません。住家被害は33,552棟(全壊1,515棟、大規模半壊105棟、半壊1,425棟、一部破損13,581棟、分類未確定16,926棟)と公表されていますが、資料には「推計値を含むものであり、今後修正が入る可能性あり」と注記があります。そして、これは棟数であって、ごみの量ではありません。

6月19日に、法律は公布されています

法律は、6月19日に公布されています
法律は、6月19日に公布されています

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」は、2026年6月12日に参議院本会議で可決され、6月19日に令和8年法律第43号として公布されました。今回の政令案に直接関係し、災害廃棄物の処理の流れを変える主な改正は、次の3点です。改正法にはこのほかにも、都道府県や市町村が、非常災害廃棄物適正処理業者や関係する自治体との間で協定を締結するよう努める規定(新第5条の6の2・新第6条の4)などが置かれています。

表1 今回の政令案に直接関係する3つの改正(令和8年法律第43号)
条文変わることいまの状態
第6条の2
第3項・第5項
現行でも認められている再委託に加えて、再受託者からその先への「再々委託」ができるようになります。委託基準に従うことに加え、再々委託では一般廃棄物処理計画に従うことが条件です 法律で確定
施行日は未定
第9条の3の3
第1項
政令で定める施設については、施設設置の届出に生活環境影響調査の結果を記載した書類を添えなくてよいことになります 法律で確定
対象施設は政令案の段階
第9条の3の4 都道府県知事が、申請に基づいて非常災害廃棄物の処分に使う最終処分場の設置者を平時から指定できるようになります。対象は一般廃棄物の最終処分場(政令で定めるもの)と、第15条の2の5第1項により一般廃棄物処理施設として設置されている産業廃棄物の最終処分場です 法律で確定
更新期間は政令案の段階
政令案に関係する改正は、この3点
変わるのは、3か所です

① 委託の先の、そのまた先へ

① 委託の先の、そのまた先へ
① 委託の先の、そのまた先へ

災害が起きると、市町村は片付けごみや解体ごみの収集・運搬・処分を民間に委託します。委託を受けた事業者が、別の事業者に頼むこと(再委託)は、これまでも特例で認められていました。

ただし、その先がありませんでした。審議会の資料には、こう書かれています。

「最終処分に関し再々委託ができず、処理先の確保に、円滑さが損なわれる場面があった。」

被災地の外にある業界団体を通じて、その団体に加盟する多くの事業者や最終処分場へ振り分ける、という形が取りにくかったということです。国会でも、被災自治体の中の処理業者が被災していたり、能力が足りなかったりする状況が、改正の理由として説明されています。

新しい規定では、その先へも委託できるようになります。ただし無条件ではありません。条文は条件を2段階に書き分けています。

  • 受託者から再受託者へ——市町村が委託する場合の政令の基準(一般廃棄物処理委託基準)に従うこと
  • 再受託者からその先へ——上の委託基準に加えて、一般廃棄物処理計画に従うこと

なお、特別管理一般廃棄物である非常災害廃棄物については、第6条の2第5項が別に定めています。この場合は「特別管理一般廃棄物処理委託基準」に従うことになり、再々委託では一般廃棄物処理計画にも従う必要があります。

② 調査の書類を省ける施設を、政令で決める

② 調査の書類を省ける施設を決める
② 調査の書類を省ける施設を決める

非常災害のときには、既存の民間施設を使ったり、必要な処理施設を早く立ち上げたりする必要があります。ところが施設を設置する届出には、生活環境影響調査の結果を記載した書類が要ります。

新しい第9条の3の3第1項は、「生活環境の保全上の支障が生ずるおそれの少ない一般廃棄物処理施設として政令で定めるもの」については、この書類を省いて届け出られることにしました。法律としては確定しています。

条文の作りを見ておきます。届出に添えるのは「調査の結果を記載した書類」ですが、改正後の第9条の3の3第1項は、政令で定める施設については、その代わりに「第8条第2項各号に掲げる事項を記載した書類」を添えればよいとしています。差し替えです。ですから対象になる施設では、調査の結果を記載した書類そのものが要らなくなり、その書類を縦覧に供する手続もなくなります。

ただし、制度全体から生活環境影響調査がなくなるわけではありません。対象は政令で定める施設に限られ、それ以外は従来どおりです。自治体の条例などに基づく別の手続まで一律に不要になるとも限りません。

もう一つ、これは特別管理一般廃棄物ではない非常災害廃棄物についての特例です。特別管理一般廃棄物である非常災害廃棄物については、新しく設けられる第9条の3の3第2項が別に定めていて、そちらには生活環境影響調査の結果を記載した書類の添付が求められています

ここで大事なのは、どの施設を対象にするかは政令に委ねられていて、まだ決まっていないという点です。いま意見募集にかかっている政令案は、次の5つを挙げています。

表2 政令案が定めようとしている施設(新第5条の6の2) ※未確定。特別管理一般廃棄物である非常災害廃棄物は、この添付省略の対象外です
非常災害廃棄物の種類処理の方法
廃プラスチック類切断
紙くず破砕
繊維くず破砕又は切断
ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものを除く)及び陶磁器くず破砕
コンクリートの破片その他これに類する不要物選別
政令案が挙げているのは、5つの組み合わせ
政令案が挙げているのは、5つの組み合わせ

政令案の説明文には、こうあります。「多量の廃畳、廃瓦、廃石膏ボードその他非常災害により損壊した建物において生ずるこれらに類する非常災害廃棄物を処理するもの」。

つまり畳・瓦・石膏ボードという名前で施設が並ぶわけではありません。政令案が並べているのは、廃棄物の種類と処理方法の組み合わせです。3品目は、なぜこの手当てが要るのかを説明する代表例として挙げられています。

なぜ、この3つが名指しされたのか

なぜ、畳・瓦・石膏ボードなのか
なぜ、畳・瓦・石膏ボードなのか

中央環境審議会の意見具申(2026年4月7日)に、理由が書かれています。

「廃棄物処理法第15条で規定する産業廃棄物処理施設以外の産業廃棄物の処理施設(畳、瓦、石膏ボードの破砕施設等)で当該産業廃棄物の処理を行う事業者が、当該産業廃棄物と同種の災害廃棄物の処理を行う場合について、手続きの簡素化を図るなど、一般廃棄物処理施設の設置に係る災害時特例措置を拡充すべきである。」

畳・瓦・石膏ボードを扱う施設は、第15条の許可が要る産業廃棄物処理施設に当たらない場合があります。そのため、既存の災害特例(第15条の2の5第2項)を使えませんでした。使えなければ、施設のある市町村に条例がない限り、通常の設置許可を取るしかありません。

これは机上の話ではありません。平成28年熊本地震で、実際に起きています。

表3 過去の災害で、実際に起きたこと
災害記録されていること
平成28年
熊本地震
施設のある市に条例がなく、特例を使えませんでした。受託者は通常の施設設置許可を取っています。市が条例を改正したのは同年12月、届出の特例で移動式破砕機を設置できたのは翌1月です。
県外の廃石膏ボード処理施設も、条例がないことと、施設が特例の対象でないことから利用できず、再資源化が可能な状態のものも埋立処分されました
平成30年
7月豪雨
倉敷市では、畳などについて第9条の3の3に基づく移動式破砕施設が使われました。一方、廃石膏ボードは主に民間の管理型最終処分場で埋立処分されています
令和元年
東日本台風
既存の産業廃棄物処理施設を使う特例の届出が89件、届出処理量の合計は53,217トンでした(破砕55件・焼却18件・安定型埋立14件・管理型埋立2件)。この数字は届出時の量であって、実績処理量ではありません
令和6年
能登半島地震
石川県の被害報(2024年7月5日現在)では、能登地域の最終処分場計4施設が使用不可とされています。
その後、環境省の検討会(令和7年2月27日)で石川県は「最終処分場については4施設が被災し、うち1か所は搬入道路の土砂崩れにより、現在も使用できない状況にあります」と説明しています。
審議会のヒアリング資料にも「処分先の不足」が挙げられています
平成28年熊本地震で、起きたこと
平成28年熊本地震で、起きたこと
過去の災害で、記録されていること
過去の災害で、記録されていること

熊本地震の記録には、こうあります。「条例が制定されていなかったことから当該特例規定を適用できなかった」。そして廃石膏ボードについては、「再資源化が可能な状態のものであっても埋立処分を行った」。

古い石膏ボードには石綿を含むものがあり、大量のボードについて品番を一枚ずつ確かめるのが難しかったことも、埋立が選ばれた理由として記録されています。

ここは誤解されやすいところです

ここは、誤解されやすいところです
ここは、誤解されやすいところです

「生活環境影響調査があるせいで、施設の設置が何日遅れた」という数字を探しました。今回確認した環境省の法案資料、審議会資料、検討会資料および議事録の範囲では、見つかりませんでした。「遅れがなかった」という意味ではありません。数字として集計・公表されたものが見当たらない、ということです。

近い数字はいくつかあります。ただし、どれも別のものです。

  • 最大30日(最終処分場は60日)——第9条の3第3項・第4項です。知事が届出の内容について計画の変更や廃止を命じることができる期間で、その間は原則として施設を設置できません。第9条の3の2により、あらかじめ知事と協議して同意を得た施設には、この待機の規定が適用されません。生活環境影響調査や縦覧に実際に要した日数ではありません
  • 1月間——熊本市が2016年12月に改正した条例が定めた、調査書の縦覧期間です。市長が特に必要と認める場合は短縮できるとされています。条例上の標準的な期間であって、実際に1か月遅れたという記録ではありません
  • 最短9日・最長559日・平均279日——2019年東日本台風で、届出をした施設が実際に処理を行った期間です。待たされた期間ではありません

一次資料で確認できるのは、熊本地震について「三者間の調整に手間と時間を要することとなった」という記述までです。その時間が、調査・縦覧・許可審査・契約・工事のどこにどれだけかかったのかを分けた数字は、確認できませんでした。

③ 最終処分場を、平時から決めておく

③ 最終処分場を、平時から決めておく
③ 最終処分場を、平時から決めておく

3つめは、新しく作られる制度です。都道府県知事が、申請に基づいて、非常災害廃棄物の最終処分場の設置者を指定できるようになります。

これは災害が起きてから新しい処分場を造れるようにする制度ではありません。基準に適合する既存の最終処分場の設置者を、申請に基づいて、あらかじめ指定しておく仕組みです。

対象は条文で絞られています。一般廃棄物側は「一般廃棄物の最終処分場で政令で定めるものに限る」。産業廃棄物側は「産業廃棄物の最終処分場であつて、第15条の2の5第1項の規定に基づき一般廃棄物処理施設として設置されているものに限る」。焼却施設や破砕施設は対象ではありません。

指定の基準は3つです。技術上の基準に適合していること、申請の内容が廃棄物処理計画に適合していること、そして申請者の能力が処分を円滑かつ迅速に、継続して行うに足りること。

指定を受けた設置者は、非常災害時に、市町村から委託基準に従ってその処分場での処分の委託を受けることを求められたときは、正当な理由がある場合を除き、その委託を受けなければなりません。一方で、定期検査は免除されます。

指定の基準は、3つです
指定の基準は、3つです

なぜ必要なのか。審議会の資料は、民間の最終処分場の側の事情を書いています。

「施設の処理能力が大幅に減少し、通常の事業に支障を来すおそれ」

残りの容量は限られています。そこに災害廃棄物が大量に入れば、通常の事業ができなくなる。だから受け入れをためらう。それを、平時のうちに市町村用の受入容量を確保しておく形に変えよう、という組み立てです。

政府は国会で、制度の目的をこう説明しています。「埋め立てざるを得ない災害廃棄物の最終処分場を平時から把握しておくため」。

令和6年能登半島地震では、石川県の被害報(2024年7月5日現在)で、能登地域の最終処分場計4施設が使用不可とされていました。その後、環境省の検討会(令和7年2月27日)では、石川県が「4施設が被災し、うち1か所は搬入道路の土砂崩れにより、現在も使用できない状況にあります」と説明しています。1年2か月たっても、1か所は戻っていなかったということです。

ただし、この4施設がこの制度の直接の理由だと明記した資料は見当たりません。政府は提案理由で「令和六年能登半島地震等、最近の災害対応において得られた教訓等」と述べています。環境省の整理も、再々委託ができないこと、委託先の確保、仮設処理施設の手続、将来の大規模災害に備えた最終処分容量の確保を並べたものです。能登を含む複数の課題を踏まえた制度化、と読むのが資料に忠実です。

まだ決まっていないこと

まだ決まっていないことを、分けておきます
まだ決まっていないことを、分けておきます

ここまでが法律で確定している部分です。決まっていないものを、はっきり分けておきます。

  • 施行日——非常災害廃棄物に関する規定は「公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日」から施行されます。その政令は、本稿執筆時点で出ていません
  • 対象施設の5類型——政令案の段階です
  • 最終処分場の指定の更新期間——政令案は5年としていますが、確定ではありません

政令案の資料には「令和8年9月上旬 公布」「令和8年9月中旬 施行」という予定が書かれています。ただし、これは資料に記載された予定であって、確定した日付ではありません。資料自体に「スケジュールは今後変更の可能性」がある旨が書かれています。

8月23日の12時まで、誰でも意見を出せます

8月23日 12時まで、誰でも意見を出せます
8月23日 12時まで、誰でも意見を出せます

この政令案は、e-Govのパブリックコメントにかかっています。法律を通すかどうかの意見募集ではありません。法律はすでに成立・公布済みで、今回対象になっているのは、委託の基準、特例の対象施設、最終処分場の指定の更新期間などを定める政令案です。

  • 案件名——廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令案
  • 案件番号——195260048
  • 公示日——2026年7月24日
  • 締切——2026年8月23日 12時00分
  • 提出方法——e-Govの意見提出フォーム。電話での提出はできません

意見の概要と、それに対する考え方は、募集期間の終了後にまとめて公表される予定です。

現場で災害廃棄物を扱ったことがある方、仮置場の運営に関わったことがある方は、5類型の書きぶりを一度読んでみる価値があります。「この種類が抜けている」「この処理方法では現場に合わない」という指摘は、実際に手を動かした人にしか書けません。

もう一つの、大きな課題

条文に出てこない、もう一つの課題
条文に出てこない、もう一つの課題

最後に、法律の条文には現れないところを1つ。意見具申は、施設や制度の前に、人の問題を挙げています。

「ともに自治体のマンパワー・ノウハウ不足が大きな課題」

意見具申には、災害廃棄物処理計画の策定率は都道府県100%、市町村86%と書かれています。その後に公表された法案の参考資料では、令和6年度末時点の市町村の策定率は90%とされています。いずれにしても、策定済みであっても、仮置場の候補地、水害の想定、民間団体との協定などが十分に反映されていないことが課題として挙げられています。

仮置場をどこに置くか、誰に運んでもらうか、どこで処分するか。これを災害が起きてから探すのか、前から決めてあるのかで、最初の1週間がまったく違うものになります。今回の改正は、その「前から決めておく」側を、制度として支えようとするものです。

この記事は公表されている条文と資料を読んだ整理であって、個別の判断ではありません。実際の手続については、都道府県または市町村の担当窓口へご確認ください。

出典

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