塀の歴史

塀の歴史

塀の始まり

塀は家と並び世界最古の建築物だろうと思われます。樹上生活をやめ地面に降りた古代の人類は様々な捕食動物から自らの身を守るために寝床の周りを木の枝などで囲ったことがそのスタートではないでしょうか。
写真のようなツリーハウスをみると楽しい気持ちになるのは、樹上生活のころの名残なのかもしれませんね。

ツリーハウスと少女

アフリカに見る塀の原型

写真はアフリカタンザニアのマサイ族の家とそれを囲む木の枝で出来た「塀」であり、まさしく私の考える「塀の原型」です。

家を中心とした敷地の外周にトゲトゲ、イガイガした木の枝を重ね簡単には入れないようになっています。
狭いゲートがありここは夜になると戸をしめ野生の獣の侵入を有効に防ぐ物となっています。

樹上生活の時に持っていた、地上と木の上の高さという上下の防御空間を、塀を用いることにより家との水平の防御空間として、家族の安心を守るためのツールとしています。

【塀の原型】東アフリカ タンザニアのマサイ族の家 木の枝で出来たフェンスに囲まれる

古代の塀

その後、家や集落を守る塀(柵)として発達していきました。日本でみられる古い塀としては吉野ケ里遺跡にて集落を守る背の高い木の塀を確認することができます。

吉野ヶ里遺跡

環濠と組合せ得た塀で外敵から守る様子がわかります。また人の侵入を阻む背の高い塀が2 重に作られることにより、集落の内と外を明確に分け、守りを固める意思がわかります。

中世の塀

貴族や武士の時代には家を守る土塀が発達し敵の攻撃や侵入を防ぐ役割を担ってきました。木造建築の多い日本においては背の高い土塀は防火用途としても大いに期待されていたようです。

京都寺町の塀

京都寺町の石と土、瓦を組み合わせた塀。貴重な資産、人命を守るためにくまなく張り巡らされています。
観光客が賑やかにすれ違いますが、家と塀の狭間の空間でも圧迫感はなく安心感に囲まれます。

京都御所

京都御所を守る背の高い塀と、立派な門。
門を中心に塀が御所を安全に取り巻く。御所の建物は屋根などの高い部分しか見えずプライバシーを十分に確保。門、塀はその立派な姿をあらわにし中の建物が見えなくてもその格の高さを表現しています。

ヨーロッパにおける石積みの塀

何年も持つ石積みの塀。
地震がなければとても良い選択の塀となるでしょう。

戦後の塀

近年では板塀や土塀の問題を解決したブロック塀が一気に普及。過密化に伴う火災対策などに一定の成果を上げましたが、地震に弱いことが露呈し、塀の無いオープン外構やよりライトなフェンスが増えてきました。

ブロック塀

震災や空襲の経験を活かし燃えやすい木造住宅を守るように作られたブロック塀は戦後急速に日本中に普及しました。素材の入手性、施工の用意さ、塀としての能力が一見高いため多くの場所で使われました。
しかしながら地震に弱いことがわかり、近年では高いブロック塀は避けられています。

長年使われたブロック塀

基礎がブロック塀より幅広くしっかりと露出し、透かしブロック2種類用いるなど、丁寧な施工により長寿を迎えた。しかしながら頂部の笠木の脱落などが見られ寿命を迎え始めているのがわかります。

万年塀

苔むし、外観がなじんできた万年塀はなんとなく神社に似合います。柱に切り込みを入れ板を差し込む簡易な構造。柱に大きな重量がかかり、傾いている万年塀もまれに見かけられ、安全性には疑問が残る。ウェット工法のブロック塀にくらべドライ工法で一歩進んでいるが、クレーンが高価な時代に開発された商品といえるのではないでしょうか。

金属フェンス

現代の住宅で多く見られる金属製のフェンス。見通しがよく安価だが、プライバシー性能、耐久性、防犯性に劣るメッシュフェンス。外から丸見えのためカーテンを開けられず悩む家庭が多いようです。

新時代の塀

これまで経てきた塀の歴史から学び、安全で長持ちするプレキャストコンクリート塀「塀のねっこ」。
実物大の耐震振動実験を日本で初めて行い、その安全性を確保しました。

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